コミュニケーション障害|診断・特徴・原因や対処法について解説します。

公開日:2024/03/29

「人とうまく話せない」「状況に合わせた振る舞いができない」などコミュニケーションで悩んでいる方も多いと思います。それが社会生活に大きな影響が出ている場合はコミュニケーション障害が背景にあるかもしれません。

コミュニケーション障害とはインターネットなどでよく使われている俗に言う「コミュ障」とは違い、医学的に診断基準が定められているものもあります。

今回の記事ではコミュニケーション障害の概要や種類、対処法などをまとめて紹介します。

コミュニケーション障害とは

コミュニケーション障害とは話をまとめることや思った通りに発音することが困難で、コミュニケーションに支障が出ることがある障害のことです。コミュニケーション障害には言語症や社会的コミュニケーション症などいくつか種類があり、それぞれ症状や対処法に違いがあります。そのため、自身の症状を理解し適切な対応をしていくことが困りごとを改善させていくことにもつながります。

コミュニケーション障害の症状

コミュニケーション障害の主な症状としては、「話したいことをうまくまとめることができない」「話す内容は浮かんでいてもうまく発音できない」「話始めにつっかえてしまうことがある」「状況に応じた振る舞いが苦手」といったものがあります。

 

こういった症状があることで、コミュニケーション障害のある方は日常生活や仕事において人と接したり発表をしたりといった場面において困ることが多いと言われています。

 

なお、コミュニケーション障害というとインターネット上でも「うまく話せない人」「会話がかみ合わない人」などを指して使われているのを見たことがあると思います。しかし、これらは俗称として使われている言葉で根拠がないことも多く、医学的なコミュニケーション障害とは別のものです。

 

今回は医学的に診断基準があるコミュニケーション障害について種類や症状、対処法などを紹介していきます。

コミュニケーション障害の診断

医学的にコミュニケーション障害はコミュニケーション症ともいい、アメリカ精神医学会の診断基準である「DSM-5」によると以下の5つに分かれています。

  • 言語障害(言語症)
  • 語音障害(語音症)
  • 小児期発症流暢障害(小児期発症流暢症)
  • 社会的(語用論的)コミュニケーション障害(社会的(語用論的)コミュニケーション症)
  • 特定不能のコミュニケーション障害(特定不能のコミュニケーション症)

こういったコミュニケーション障害は、多くの場合は子どものうちに症状が表れると言われています。しかし、コミュニケーション障害は大人になってから発症することや、子どものころは特に困難を感じておらず大人になってコミュニケーションが複雑化することで表面化することも考えられます。

 

また、コミュニケーション障害と聞くとどの病院を受診したらいいか迷うかもしれません。コミュニケーション障害は発達障害の中に位置づけらえているため、「コミュニケーション障害かもしれない」と感じたときは、発達障害の診断ができる精神科や心療内科、発達障害外来のある総合病院などを受診するといいでしょう。

コミュニケーション障害の種類と特徴

先ほどコミュニケーション障害の5つの種類を紹介しました。この章ではコミュニケーション障害の種類ごとに症状や特徴など詳細をお伝えしていきます。

言語障害(言語症)

言語障害とは、話すことや書くことに困難がある障害のことです。語彙や頭の中で文章を組み立てること、話したいことを人に伝えることなどが苦手で、周囲の人とのコミュニケーションに難しさを感じることが多いと言われています。

 

言語障害は乳幼児期と幼いころから生じると言われていますが、実際に気づかれるのは言語能力が安定したあとの幼児期が多くなっています。

 

また、話すことの困難が知的障害や聴覚障害、ASD(自閉スペクトラム症)などによるものである場合は言語障害とは診断されません。

語音障害(語音症)

語音障害とは、思った通りに発音することが難しい障害のことです。明瞭な発音が難しく、伝えたい内容がうまく伝わらないという困りごとが生じると言われています。

 

通常は発音に誤りがあっても5歳ごろには安定してくると言われています。しかし、5歳以降も正しい発音が難しい状態が続くと、語音障害と診断されることがあります。

 

また、語音障害は口蓋裂(こうがいれつ)などの身体的な問題や聴覚障害などによるものではないことが、診断の条件となっています。

小児期発症流暢障害(小児期発症流暢症)(吃音:きつおん)

小児期発症流暢障害は以前は吃音(きつおん)とも呼ばれており、話し言葉がうまく出てこない障害のことです。

 

 小児期発症流暢障害では以下のような状態になることがあります。

  • 連発:「あ、あ、あ」など話し始めの音を繰り返す
  • 伸発:「あーーーまい」など話し始めの音を伸ばす
  • 難発・ブロック:「・・・あまい」話し始めの音を出せずに間が空く

 

この中でも音を繰り返す連発が多く見られると言われています。また、症状には波がありスムーズに話せるときもあれば、うまく言葉が出ないときもあります。

 

2~5歳に発症することが多いとされていますが、小学校入学以降に発症する場合もあると言われています。

 

社会的(語用論的)コミュニケーション障害(社会的(語用論的)コミュニケーション症)

社会的(語用論的)コミュニケーション障害とは、語彙力や文法などの基本的な会話能力があるのに関わらず、コミュニケーションにおいて困難が生じる障害のことです。

 

例えば以下のような特徴が見られるとされています。

  • 相手の立場に立った受け答えが苦手
  • あいづちをうつことが苦手
  • 比喩や冗談の理解が難しい
  • 慣用句の解釈が難しい
  • 状況に合わせた言動をすることが難しい

こういった特徴により、学校や職場で対人関係がうまくいかずに悩んでしまうことも多いと言われています。

 

子どものころから生じることが多いと言われていますが、大人になって複雑なコミュニケーションをする機会が増えることで気づく場合もあります。

 

また、こういった特徴がASD(自閉スペクトラム症)や知的障害などによるものではないことが、診断の条件となっています。

特定不能のコミュニケーション障害(特定不能のコミュニケーション症)

特定不能のコミュニケーション障害とは、症状があるがどのコミュニケーション障害の診断基準も満たさない状態のことです。

 

実際にコミュニケーション障害の傾向が表れたり実際に困っていることがあったりするが、これまで紹介した4つのコミュニケーション障害の中のいずれともはっきりとは断定できない場合を指しています。

 

だからといって困りごとが少ないというわけではなく、他のコミュニケーション障害と同じく対策を取っていくといいでしょう。

コミュニケーション障害の原因

コミュニケーション障害の原因については、まだよくわかっていないというのが現状です。

基本的には身体的な疾患や知的障害などが原因ではないものが、コミュニケーション障害と言われています。

 

また、コミュニケーション障害の種類ごとに原因となるものも異なっている可能性があり、現在も研究が続けられています。

 

仮説はいくつか挙げられており、小児期発症流暢障害(吃音)では、元々持っている性質と心身の発達、周囲の人などの環境といった要因が絡み合って発症するのではと言われています。

 

いずれにしても、コミュニケーション障害で困っている場合は、原因だけでなく困りごとを減らしていく対策を考えていくことも重要と言えるでしょう。

コミュニケーション障害のチェック方法はある?

自身や周りの人が「コミュニケーション障害では?」と感じていて、確かめたいという気持ちを持っている方もいると思います。

 

コミュニケーション障害の確実なチェック方法は今のところありませんが、よくある症状に多く当てはまった場合は受診を検討して見ても良いかもしれません。

コミュニケーション障害でよくあるのは以下のような症状です。

  • 言葉がうまく出てこない
  • なかなか話し出すことができない
  • 考えていることをまとめるのが難しい
  • 文章を組み立てるのが難しい
  • 思った通りの発音ができない
  • 言葉の始めの音を繰り返すことがある
  • 比喩や冗談を言われてもよくわからない
  • 状況に合わせたコミュニケーションが苦手

 

コミュニケーション障害には種類も多くあり、困りごとだけで判断するのは難しく、いきなり医療機関に行くのは抵抗がある方もいると思います。そういった方は、一度支援機関への相談を考えてみてはいかがでしょうか。支援機関については後ほど紹介します。

コミュニケーション障害の治療方法とは

コミュニケーション障害は5つの種類に分かれているため、治療方法も種類ごとに異なっています。

 

コミュニケーション障害の中でも言語症や語音症の治療は、言語聴覚士の指導のもとで思った通りに話すことができるように様々な取り組みをしていくことが多くなっています。

 

小児期発症流暢障害(吃音)の場合は、話しやすいように環境を整え、スムーズに話せたという経験を増やしていく治療方法があります。うまく話せたという経験の繰り返しが、脳内の神経ネットワークにもいい影響をもたらし、吃音が減っていくと言われています。

コミュニケーション障害の対処法とは?

コミュニケーション障害による困りごとを軽減するためには、困りごとに合わせた対処法を実践していくといいでしょう。

 

ここではコミュニケーション障害で困っている方の対処法例を5つ紹介します。取り入れることができそうなものがあれば参考にしてみてください。

ルールやマナーを書きだす

人とのコミュニケーションは、会話だけでなくその場のルールやマナーに沿った言動をすることも大切な要素と言えます。会話が苦手でも、ルールやマナーをしっかり守ることで、相手にいい印象を与えることもできると考えられます。

 

ルールやマナーを紙などに書きだしておくことで、状況に応じた対応をしやすくするという方法もあります。

 

例えば「会話するときはあいづちを打つようにする」「会話中は相手の方を見る」などがあります。あらかじめ書いておくことでパターン化でき、意識しすぎて緊張するストレスや、考えすぎることなく実行するための助けとなると考えられます。

 

職場における、ルールやビジネスマナーを学ぶ機会がなく、よくわからないという方は、ビジネスマナーについて書かれた本を読むことや、支援機関で学ぶ方法などがあります。

 

支援機関についてはこの後紹介しますので、ご参考にしてください。

伝え方のマニュアルを作る

コミュニケーションは会話内容だけでなく、伝え方も大事と言われています。例え正しいことを言っていたとしても、伝え方によっては相手を不快にさせてしまうことも考えられます。

 

そのため、伝え方もあらかじめマニュアルを作っておくと、円滑にコミュニケーションを進めるために役に立つといえるでしょう。

 

内容としては、話しかける前に「今よろしいでしょうか?」と聞くようにする。反論がある時は、「◯◯ということですね」と相手の意見を一度受け止めてから自分の意見を述べる。提案を断る時は「ありがとうございます」とまずはお礼を伝え、事情を伝えお断りするなどの伝え方があります。

 

このようにマニュアルを作っておくことで、話す内容は変わらなくても相手の印象をよくするコミュニケーションを取ることにつながります。

 

伝え方もインターネットや書籍で学べるほか、コミュニケーション講座がある支援機関で学んでいくこともできます。

見た目の印象を整える

人の印象は会話だけでなく、装いや、振る舞い、仕草などの見た目の印象も大切と言われています。実際にある調査では表情・声・言葉のどれが一番印象を左右するか測ったところ、表情が55%で声が38%、言葉は7%に過ぎないという結果も出ています。

 

そのため、見た目の印象を整えておくことで、コミュニケーションにもいい影響があると言えるでしょう。

 

見た目の印象をよくするためには、

  • 笑顔を心がける
  • 姿勢をよくする
  • 胸を張る
  • 清潔な服装を心がける
  • 表情が見える髪形にする

などがあります。

 

いきなりすべてを意識するのは難しいかもしれません。そういったときは、一つずつでも取り入れていくといいでしょう。

聞き役に回る

コミュニケーション障害のある方は、話すことが苦手な場合は聞き役に回ることも対処法の一つです。

 

うまく話すことを意識しすぎるとそのことがプレッシャーとなって、さらにうまくいかなくなるということも考えられます。

 

そこで、無理に話そうとせずに聞き役に回ってみてはいかがでしょうか。もちろん、全く話さないわけにはいかないと思いますので、聞き役に回る機会を増やしていくことでもいいでしょう。

 

その際は「自分は話すより聞く方が好き」といったことを周りに伝えておくと、自ら話さなくても話を振られることも少なくなるでしょう。

周りの人に相談する

ここまでコミュニケーション障害のある方が自身でできる対処法を紹介してきました。

しかし、一人で対処法を考えるのが難しいと感じた方もいると思います。

 

そういった時は周りに相談することも方法の一つです。相談することで、相手が理解をしてくれたり、新たな対処法を思いついたりすることがあり、困りごとを減らしていくことにもつながります。

 

周りの人に相談しづらい場合は外部に相談してみることも検討してみるといいでしょう。

自立訓練(生活訓練)事業所の「エンラボ カレッジ」では、コミュニケーションがうまくいかなくて悩んでいるという方の相談を随時受け付けています。

 

相談は無料で実施中なので、「コミュニケーション障害かもしれない」「うまく話せなくて困っている」という方は一度ご相談ください。

大人のコミュニケーション障害の相談先や支援先

ここでは、コミュニケーション障害のある大人の方が相談・利用できる支援機関を紹介します。

 

口頭での相談が苦手な場合は、メールなどで相談受付をしている場所もあります。あらかじめホームページなどで確かめてみるといいでしょう。

発達障害者支援センター

コミュニケーション障害は発達障害に分類されているため、発達障害者支援センターに相談することができます。

 

発達障害者支援センターでは、発達障害のある方やその周りの人からの相談を受け付け、必要なアドバイスや他の支援機関・医療機関の紹介などを行っています。「コミュニケーション障害かもしれない」「どの病院を受診したらいいのだろう」という方も一度相談してみるといいでしょう。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターはコミュニケーション障害を含む障害のある方の、日常生活と仕事の両面で様々な支援を行っている機関です。

 

センターによって支援内容は異なりますが、コミュニケーション講座などのプログラムの提供を行っている場合もあります。仕事だけでなく日常生活にも困りごとがある方は相談してみるといいでしょう。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)はコミュニケーション障害など障害のある方が、自立した生活を送るためのスキル取得のサポートや相談対応などをしている機関です。

 

エンラボ カレッジでは、コミュニケーションプログラムで暗黙のルールや非言語コミュニケーションなどを座学で学びながら、イベントやエンラボカレッジでの生活の中で他の利用者の方と一緒に実践し自分に合った方法を見つけていきます。

 

エンラボ カレッジでは無料での相談も受付中です。「コミュニケーション障害で悩んでいる」「会話がうまくいかない」「対人関係を築くのが苦手」という方は、一度ご相談ください。

コミュニケーション障害まとめ

コミュニケーション障害とは、何らかの原因で会話がうまくいかなかったり、状況に合わせた振る舞いができなかったりと、コミュニケーションで困ることが多い障害のことです。

 

コミュニケーション障害にはいくつか種類があり、それぞれ特徴や困ることが異なっています。そのため、自分自身の特徴を把握して、それに合わせた対処法を考えていくことが困りごとを減らすためにも有効といえるでしょう。

 

ただ、自分の特徴の把握や対処法を考えることが難しい場合もあると思います。そういった時はコミュニケーション障害の方が利用できる支援機関も活用していくといいでしょう。

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