コミュニケーション障害の特徴と原因|大人の対処法と相談先を解説

更新日:2026/05/30

「会話のキャッチボールが続かない」「言いたいことが言葉にならない」「相手の表情から意図を読み取れない」――こうした状態が長く続いていて、自分は「コミュニケーション障害」なのではないかと検索されている方が増えています。

「コミュニケーション障害」という言葉は、ネット上で「コミュ障」という略称で広く使われている一方、医学的には「コミュニケーション症群」と呼ばれる発達症のグループを指す用語でもあります。両者は重なる部分もあれば、別ものとして整理したほうがよい部分もあります。

この記事では、医学的な定義・種類・特徴・原因・大人の困りごと・対処法・相談先までを順に整理しました。

結論:「コミュニケーション障害」は医学用語とネット用語の両面を持つ

最初に結論をお伝えします。

「コミュニケーション障害」という言葉には、大きく二つの使われ方があります。

ひとつは、医学的な意味です。

国際的な診断基準であるDSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)では、「コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群」というカテゴリが置かれており、言語症・語音症・小児期発症流暢症(吃音)・社会的(語用論的)コミュニケーション症などが含まれます。

もうひとつは、ネット上で広く使われる略語「コミュ障」としての意味です。

医学的な診断とは関係なく、「人と話すのが苦手」「初対面で緊張してうまく話せない」「会話が続かない」といった自覚的な困りごとを指す言葉として、若年層を中心に定着しています。

このふたつは混同されがちですが、医学的な「コミュニケーション症群」は発達期に現れる神経発達症のひとつであり、診断と支援の対象になります。ネット用語としての「コミュ障」は、医学的な状態を必ずしも意味するものではなく、性格傾向や経験不足、別の精神疾患(社交不安症など)が背景にある場合も含めて使われています。

逆にいえば、自分の状態が「医学的に整理が必要な領域なのか」「環境調整やスキルの習得で楽になる領域なのか」を見分けることが、対処の第一歩になります。

本記事では、ご本人・ご家族が一緒に活用できるよう、以下の要素を順に扱います。

  • コミュニケーション障害とは(医学用語とネット用語の整理)
  • コミュニケーション症群の種類(言語症・語音症・吃音・社会的コミュニケーション症)
  • 特徴と背景にある要素
  • 原因と関連する要因
  • 大人が抱えやすい困りごと
  • 対処法10選
  • 医療機関に相談する目安
  • 福祉サービスでの整理の進め方
  • よくある質問

それぞれ、現場で見てきた一般的な傾向もまじえてお伝えしていきます。

コミュニケーション障害とは|医学用語とネット用語の整理

「コミュニケーション障害」と検索してたどり着いた方の多くは、「自分の状態にこの言葉が当てはまるのか」「医療機関に相談する必要があるのか」を知りたいはずです。

まずは、医学用語としての位置づけと、ネット用語としての位置づけを切り分けて整理します。

医学用語としての「コミュニケーション症群」

医学的には、コミュニケーションに関する困難は「コミュニケーション症群/コミュニケーション障害群」として整理されています。

DSM-5(米国精神医学会が定める診断基準)では、神経発達症群のなかにコミュニケーション症群が位置づけられており、主に発達期(おおむね小児期)に現れる特性として扱われています。

「コミュニケーション症」という呼び方と「コミュニケーション障害」という呼び方は、同じ概念を指しています。

日本精神神経学会は2014年に、DSM-5の翻訳にあたって「disorder」の訳語として「障害」と並んで「症」を採用する方針を示しており、最近の医学文献では「コミュニケーション症群」という表記が増えています。

ICD-11(国際疾病分類第11版)でも、神経発達症群(Neurodevelopmental disorders)のなかに発達性発話または言語症が位置づけられています。

ネット用語としての「コミュ障」

一方で、ネット上の「コミュ障」は、医学的な診断とは独立して使われる略語です。

「初対面の相手と話せない」「雑談が続かない」「友達がうまく作れない」など、対人コミュニケーションに対する自覚的な苦手感を、本人や周囲がカジュアルに表現する言葉として広まりました。

背景には、生まれ持った気質(人見知り・内向性)、経験不足(対人場面の少なさ)、自信の低下、別の精神疾患(社交不安症・うつ病など)、発達特性(自閉スペクトラム症など)など、さまざまな要素が含まれます。

医学的なコミュニケーション症群に該当するケースもあれば、まったく該当しないケースもあり、ひとくくりにはできません。

ふたつの言葉を切り分ける意味

ネット用語の「コミュ障」と医学用語の「コミュニケーション症群」を切り分けることには、現実的な意味があります。

切り分けることで、「自分は対処すべき領域なのか、医療機関で相談すべき領域なのか」を判断しやすくなります。

「コミュ障だから仕方ない」と諦めるのではなく、「自分の状態がどの背景から来ているか」を整理することが、無理のない対処につながります。

なお、医療機関で相談すべきかどうかの目安については、後半の「医療機関に相談する目安」で改めて整理します。

似た概念との違い

コミュニケーションに関する困難は、コミュニケーション症群以外にも複数の概念と重なります。

自閉スペクトラム症(ASD)でも、社会的コミュニケーションの困難が中核症状のひとつとして含まれます。

社交不安症(SAD)では、人前で話す・人に注目される場面に対する強い不安が、結果としてコミュニケーションの回避につながります。

選択性緘黙(場面緘黙)では、家庭など特定の場面では話せるが、学校など別の場面では話せない状態が続きます。

これらは独立した概念ですが、症状の現れ方は重なる部分があるため、医療機関での評価が整理に役立ちます。

コミュニケーション症群の種類

DSM-5で整理されているコミュニケーション症群には、複数のサブタイプがあります。

それぞれの特徴を順に整理します。

4つのサブタイプ

サブタイプ 主な特徴
言語症 語彙・文法・談話の習得と使用に持続的な困難
語音症 発音や音の組み立てに持続的な困難
小児期発症流暢症(吃音) 話し始めや音の繰り返し・引き伸ばし・詰まりが続く
社会的(語用論的)コミュニケーション症 会話の文脈や状況に合わせた言葉の使い方に困難

言語症

言語症は、語彙の習得・文法の使用・談話(まとまった話を組み立てる)の各側面に持続的な困難がある状態として整理されています。

会話のなかで使える言葉が少ない、文を組み立てるのが難しい、話の筋を順序立てて伝えるのが難しいといった特徴が現れます。

知的機能の制限や聴覚障害、別の医学的状態などでは説明できない場合に、言語症と整理されます。

学童期に学習面の遅れとして気づかれるケースが多いですが、大人になってからも会話や文書作成の場面で困難が続くことがあります。

語音症

語音症は、発音や音の組み立て(特定の音を別の音に置き換えてしまう、音を省略してしまうなど)に持続的な困難がある状態として整理されています。

聞き手が話の内容を理解しにくくなることが特徴で、年齢相応の発音の発達と比べて遅れが続いている場合に該当します。

多くは小児期に気づかれ、言語聴覚士によるトレーニングなどで改善が見られるケースが多いとされています。

小児期発症流暢症(吃音)

小児期発症流暢症は、話し始めの音や音節を繰り返してしまう、音を引き伸ばしてしまう、言葉が詰まって出てこない、といった流暢性の困難が続く状態です。

一般に「吃音(きつおん)」として知られています。

発症は幼児期(2〜5歳ごろ)に多く、自然に軽快するケースも一定数あるとされていますが、大人になっても症状が続く方も少なくありません。

人前で話す場面、電話応対、自己紹介など、特定の状況で症状が強まりやすい傾向があります。

吃音のある方は、症状そのものよりも、「うまく話せないかもしれない」という予期不安や、症状を隠そうとする努力に大きなエネルギーを使っているケースが多くあります。

社会的(語用論的)コミュニケーション症

社会的コミュニケーション症は、言葉そのものの理解や発音には大きな困難がない一方で、「状況に応じた言葉の使い方」「会話の文脈に合わせたやりとり」に持続的な困難がある状態です。

具体的には、次のような特徴が挙げられます。

  • 場面に合わせた言葉遣いの切り替えが難しい(同じ口調で誰にでも話してしまう)
  • 会話のやりとりで順番を守ったり、相手のサインを読み取ったりするのが難しい
  • 比喩・冗談・遠回しの表現を文字通りに受け取ってしまう
  • 文脈に応じて言葉の意味を推測することが難しい

自閉スペクトラム症(ASD)と症状が重なる部分がありますが、自閉スペクトラム症ではみられる「限定された興味」「常同的な行動」がない場合に、社会的コミュニケーション症と整理されます。

サブタイプの境界は重なる

実際には、ひとつのサブタイプに当てはまる方もいれば、複数のサブタイプが重なって現れる方もいらっしゃいます。

また、コミュニケーション症群と自閉スペクトラム症、知的障害、学習症などが併存するケースもあります。

「どの分類に当てはまるか」を厳密に決めることよりも、「どんな場面でどう困っているか」を整理することが、対処に直接つながります。

知的障害のある方のコミュニケーション特性については、知的障害のコミュニケーション特性|困りごとと支援機関の活用を解説もあわせて参考にしてください。

コミュニケーション障害の特徴

コミュニケーション症群の有無にかかわらず、コミュニケーション面の困りごとを抱えている方には、いくつかの共通した特徴が見られます。

ご自身やご家族の状態を整理する材料としてご覧ください。

言語面の特徴

言語面では、次のような特徴が見られることがあります。

  • 思いついたことを言葉に置き換えるのに時間がかかる
  • 語彙が限られていて、伝えたい内容に合った言葉が出てこない
  • 文を組み立てるのに時間がかかり、話が途中で止まる
  • 文書を書くのが苦手で、要点を整理した文章にまとめにくい

これらは、本人の努力不足ではなく、言語処理の特性として整理されています。

発話面の特徴

発話面(実際に声に出して話す側面)では、次のような特徴が見られることがあります。

  • 発音が不明瞭で、聞き手に伝わりにくいことがある
  • 話し始めに詰まりが出て、最初の音が出にくい
  • 話している途中で音が繰り返されたり、引き伸ばされたりする
  • 緊張する場面で発話の症状が強まる

吃音のある方は、特定の音や言葉に対する苦手意識を持つことが多く、その音を避けるために言い回しを工夫するケースが見られます。

対人面の特徴

対人面(人とのやりとりの側面)では、次のような特徴が見られることがあります。

  • 相手の表情や声のトーンから意図を読み取りにくい
  • 雑談のテンポについていけず、何を話せばよいか分からなくなる
  • 場面に合わせた言葉遣いの切り替えが難しい
  • 冗談や遠回しの表現を文字通りに受け取ってしまい、誤解が生じる
  • 会話のやりとりで「相手の番」「自分の番」のタイミングがつかみにくい

これらは、社会的コミュニケーション症や自閉スペクトラム症の特徴と重なる部分がありますが、必ずしも診断につながるとは限りません。

二次的に現れる特徴

コミュニケーション面の困難が続くと、二次的に次のような状態が現れることがあります。

  • 人と話す場面そのものを避けるようになる
  • 人前で話すことに対して強い不安を感じる
  • 自己評価が下がり、「自分はダメだ」という気持ちが続く
  • うつ症状や不眠など、身体面・気分面の不調が出てくる

二次的な状態が長く続くと、もとの困難そのものよりも、二次的な状態への対処が必要になるケースもあります。

「コミュニケーションの困難」と「そこから生じている二次的な不調」を分けて整理することが、対処の方向性を見極める材料になります。

「会話が成立する」と「お互いに伝わる」は別物

ここまで整理してきた特徴は、必ずしも「会話が成立しないレベル」のものとは限りません。

軽度のコミュニケーション症群や、社会的コミュニケーション症の方は、日常会話そのものはおおむね成立しているケースが多くあります。

しかし本人のなかでは、「言いたいことが言葉にできない」「相手の意図が分からないまま返事をしてしまう」「会話の後で誤解が生じていないか不安になる」など、目に見えない負担が積み重なっています。

「会話が成立しているかどうか」だけで判断せず、「本人がどんな負担を感じているか」を一緒に整理することが大切です。

コミュニケーション障害の原因

「なぜコミュニケーションが難しくなるのか」「自分が悪いのか、育ちの問題なのか」と気にされる方は少なくありません。

医学的に整理されているコミュニケーション症群の原因と、ネット用語としての「コミュ障」の背景に分けて整理します。

コミュニケーション症群の原因

コミュニケーション症群の原因は、ひとつに特定されているわけではありません。

複数の要因が組み合わさって生じる「多因子性」の状態として整理されています。

主な要因として、次のものが挙げられます。

遺伝的要因:吃音や言語症は家族内での発症率が高いことが報告されており、遺伝的素因の関与が示唆されています。

脳の発達上の特性:言語処理に関わる脳領域の発達のばらつきが、言語症や社会的コミュニケーション症の背景にあるとされています。

周産期の要因:早産・低出生体重などが、言語発達にゆるやかな影響を与えるケースがあるとされています。

併存する状態:自閉スペクトラム症・ADHD・知的障害・学習症などとの併存が見られるケースも多くあります。

いずれの場合も、「育て方」や「家庭環境」が直接の原因ではなく、生まれ持った特性として現れる状態だと整理されています。

ネット用語としての「コミュ障」の背景

ネット用語の「コミュ障」の背景には、医学的な要因とは別の要素が含まれます。

気質・性格傾向:人見知り・内向性・繊細さなど、生まれ持った気質の傾向が、対人場面での緊張につながることがあります。

経験不足:対人場面に触れる機会が少なかった、雑談やグループ活動に慣れる機会が少なかった、といった経験不足が、コミュニケーションの不慣れさとして現れることがあります。

自信の低下:過去の失敗体験や、長く続いた否定的なフィードバックが、自己評価の低下を通じて、対人場面の回避につながることがあります。

別の精神疾患:社交不安症・うつ病・適応障害などが背景にあり、その症状の一部としてコミュニケーションの困難が現れているケースもあります。

発達特性:診断には至っていない発達特性(自閉スペクトラム症の傾向・ADHDの傾向など)が、対人面の困難の背景にあるケースもあります。

「原因探し」より「対処を整える」

原因の特定は、対処の方向性を考えるうえで一定の意味がありますが、「原因が分からないと対処できない」というわけではありません。

医療機関での評価を受けながら、同時に「いま困っていること」に対する対処を整えていくのが、現実的な進め方です。

ご家族や周囲の方も、「育て方が悪かったのか」「もっと早く気づくべきだったのか」と自分を責めすぎる必要はありません。

これまでの関わりを否定するのではなく、「これからどう関わっていくか」を一緒に整える姿勢が、本人の安心につながります。

大人が抱えるコミュニケーションの困りごと

子ども時代に気づかれずに過ごし、大人になってから困りごとが顕在化するケースは少なくありません。

大人が日常のなかで抱えやすい困りごとを、場面別に整理します。

職場での困りごと

職場では、口頭での指示、書類仕事、対人対応、報告・連絡・相談など、コミュニケーション面の負担が集中する場面が多く存在します。

代表的な困りごととしては、次のようなものがあります。

  • 「あれ、よろしく」など短い口頭指示の意図がつかめず、何度も確認することになる
  • 雑談やランチタイムの会話についていけず、休憩時間がもっとも疲れる
  • 「報告・連絡・相談」のタイミングが判断できず、上司に注意を受ける
  • 電話応対が苦手で、メモが追いつかず内容を取り違える
  • 会議で発言を求められると頭が真っ白になり、何も言えなくなる
  • 「分からない」「困っている」と伝えられず、抱え込んで体調を崩す

職場での困りごとは、本人の能力の問題というよりも、職場側の説明や指示の出し方、配慮の有無が影響している部分も大きいと整理されています。

職場での復職や働き方の見直しについては、大人の発達障害のある方の働き方|配慮事項と相談先もあわせて参考にしてください。

家庭・パートナーとの関係での困りごと

家庭やパートナーとの関係でも、コミュニケーション面の困りごとが積み重なるケースがあります。

具体的には、次のような場面です。

  • 体調や気分の変化を言葉にできず、態度や行動として表してしまう
  • パートナーから「何を考えているか分からない」と言われ、関係がぎくしゃくする
  • 家族の助言を「責められている」と受け取ってしまい、距離が広がる
  • 子どもとの会話で、感情的になりすぎたり、逆に黙り込んだりしてしまう
  • 親族の集まりや冠婚葬祭の場面で、何を話せばよいか分からず辛くなる

家庭の困りごとは、家族の関わり方の問題というより、お互いの伝え方・受け取り方の癖が積み重なっている結果として現れていることが多くあります。

友人関係・恋愛での困りごと

友人関係や恋愛場面でも、コミュニケーション面の困りごとが現れることがあります。

  • 友人を作るきっかけがつかめず、社会人になってから孤立感が強まる
  • グループでの会話に入れず、笑顔だけで合わせてしまう
  • LINEやSNSのやりとりで、何を返せばよいか考え込んで返信が遅れる
  • 恋愛場面で気持ちを伝えるのが難しく、関係が深まらない
  • 「察してほしい」相手と、「言葉にしないと分からない」自分の間に温度差ができる

友人関係や恋愛での困りごとは、本人の努力で解決できる側面と、相性の問題として整理したほうがよい側面の両方があります。

行政手続き・医療機関での困りごと

役所での手続き、病院での説明、契約場面など、改まったやりとりが必要な場面でも困りごとが現れます。

  • 役所の窓口で説明される手続きの意図が分からず、後回しにしてしまう
  • 病院で症状を言語化しにくく、診察に不安が残る
  • 契約書や書類の文章を読み解くのに時間がかかり、サインを保留してしまう
  • 不動産・銀行・行政の窓口で質問しにくく、必要な手続きを諦めてしまう

これらの場面は、本人だけで抱え込まず、家族・支援者・相談支援事業所と一緒に整えていくことができる領域です。

困りごとの背景にある「我慢」

職場・家庭・友人関係・行政場面のいずれの場面でも、本人が抱えやすいのは「分からないけど分かったふりをする」「断れずに引き受ける」「機嫌を損ねないように笑顔で合わせる」といった我慢です。

短期的には場が収まる一方で、長期的には自己評価が下がり、二次的にうつや不安症状が出てくるケースもあります。

コミュニケーションの対処は「やりとりのスムーズさ」だけでなく、「本人の安心」を守るためのものでもあります。

コミュニケーション障害への対処法10選

ここからは、家庭・職場・地域のさまざまな場面で取り入れやすい対処法を、10項目に整理してお伝えします。

「本人ががんばる」だけでなく、「環境を整える」「周囲が伝え方を調整する」「支援とつながる」の3方向から取り入れていく前提です。

対処法1|短い文・具体的な言葉を意識する

長い文や複雑な構造の文は、自分が話す時も相手の話を聞く時も、要点をつかむのに時間がかかります。

自分が話す側の時は「いつ・何を・どこまで」を短い文に区切って伝えることを意識します。

相手の話を聞く側の時は、要点が分からなければ「もう一度教えてください」「メモを取りたいので少し待ってください」と素直に確認するのが現実的です。

対処法2|あいまいな表現の意味を確認する

「適当に」「いい感じに」「ちょっと」など、輪郭がぼやけた表現は、意図の解釈に幅が出やすく、誤解の原因になります。

職場で「適当にやっておいて」と言われたら、「具体的にはどこまで進めればよいでしょうか」「いつまでに終わらせればよいでしょうか」と聞き返すことで、認識のズレを減らせます。

「確認しすぎると失礼かも」と感じる方もいらっしゃいますが、後で手戻りが発生するよりも、最初に確認するほうが結果として周囲の負担も下げられます。

対処法3|視覚的な手がかりを活用する

口頭でのやりとりだけに頼らず、メモ・チャット・図・リストなど、目に見える形を組み合わせると、内容の理解と記憶が安定します。

職場では、口頭で指示を受けた後にチャットで内容を確認する、業務手順をマニュアル化して机に貼っておく、といった工夫が有効です。

家庭でも、買い物のリストを共有する、予定をホワイトボードに書き出すなど、視覚化を取り入れることで、お互いの認識のズレを減らせます。

対処法4|会話のパターンをいくつか持っておく

雑談や自己紹介の場面では、ゼロから話題を考えるよりも、いくつかの定型パターンを持っておくほうが負担が下がります。

  • 仕事の話題(「最近お忙しいですか」など)
  • 天気・季節の話題(「急に冷えてきましたね」など)
  • 共通の話題(同じ部署・同じ趣味・同じ地域など)
  • 質問返し(「〇〇さんは最近どうですか」など)

「会話を盛り上げる」ことを目指すよりも、「無理なく会話を続ける」ことを目指すほうが、現実的な目標になります。

対処法5|「分かりません」と言える関係を作る

「分からない」「もう一度教えてほしい」「無理かもしれない」と伝えられるかどうかは、相手との関係性に大きく左右されます。

職場では、上司との1on1や定期面談で「困っていることはないか」を聞いてもらえる関係を作っておくと、相談しやすくなります。

家庭では、家族に対しても「分からない時は素直に聞いていい」「困った時はすぐ言っていい」というルールを共有しておくと、お互いに楽になります。

対処法6|書類・手続きは一人で抱え込まない

役所の書類、医療機関の同意書、契約書など、抽象度の高い文書を一人で読み解くのは大きな負担になります。

家族・支援者・相談支援専門員と一緒に読み解く、要点を簡単な言葉で書き出してから内容を確認する、といったプロセスを取り入れることで、理解と意思決定を支えることができます。

「代わりに決めてもらう」のではなく、「一緒に整理する」スタンスが大切です。

対処法7|気持ちを言葉にする練習を重ねる

「うれしい」「悲しい」「困っている」「疲れている」など、感情を言葉にする練習を、安心できる場で重ねていくことが、長期的なコミュニケーションの土台になります。

感情を表すカード・10点満点でいまの気分を表すスケールなど、気持ちの大きさや種類を可視化するツールを使うと、本人にとっても言いやすくなります。

家庭で実践する場合は、「正解はない」「自由に答えていい」というメッセージを添えると、自由度のあるやりとりになります。

対処法8|トラブル時の動き方を事前に決めておく

「困った時は誰に連絡する」「分からなくなったら、いったん休憩する」「無理な依頼はその場で答えず、いったん持ち帰る」など、トラブル時の動き方を事前に決めておくと、想定外の状況でも動きやすくなります。

職場では、「報告のタイミング」「相談のルート」「休暇の申請方法」など、業務上の判断パターンを言語化しておくと、判断の負担が下がります。

事前に決めておくことで、「とっさに判断できなくて困る」場面を減らせます。

対処法9|配慮を伝える時は具体的にお願いする

職場や家庭で配慮を求める時は、「コミュニケーションが苦手なので配慮してください」よりも、具体的なお願いに落とし込むほうが伝わりやすくなります。

  • 「メモを取りたいので少しゆっくり話してほしい」
  • 「業務手順を紙に書いて貼っておきたい」
  • 「口頭指示の後に確認のメールがほしい」
  • 「電話応対は最初の3か月は別の方にお願いしたい」
  • 「会議の発言は事前に資料で共有してから話したい」

具体的なお願いは、相手にとっても「何をすればよいか」が明確になるため、配慮が実現しやすくなります。

対処法10|「自分の取扱説明書」を作る

自分の特性・得意・苦手・配慮事項を、ひとつの書類にまとめておくと、家庭・職場・医療機関で共有しやすくなります。

「言葉での説明より、書いたものを見せたほうが伝えやすい」と感じる場面は多く、本人にとっても繰り返し説明する負担が下がります。

エンラボカレッジの自立訓練(生活訓練)では、この整理を『自分/支え方マニュアル』として、時間をかけて作る時間を用意しています。

詳しくは後半でご紹介します。

「正解」を求めずに続ける

10項目を一度に取り入れる必要はなく、まずはひとつふたつ、自分が取り入れやすいものから試してみるかたちで十分です。

「上手にできる」よりも「無理なく続けられる」ことを優先するほうが、長く続きます。

医療機関に相談する目安

「コミュニケーション面の困りごとは、医療機関に相談すべきなのか」と迷われる方は少なくありません。

明確な基準は個別に異なりますが、目安として整理できるポイントをお伝えします。

相談を検討する目安

次のいずれかに該当する場合は、医療機関への相談を検討する目安になります。

  • 言葉・発音・吃音などの困難が長期間続いており、生活・仕事に支障が出ている
  • 対人場面に強い不安があり、外出や出勤が難しくなっている
  • 気分の落ち込み・不眠・食欲低下など、身体面の不調が続いている
  • 「自分はダメだ」という気持ちが強く、日常生活に影響している
  • 周囲から「発達障害ではないか」と指摘されたことがあり、整理したい
  • 家族・パートナーとの関係に深刻なすれ違いが生じている

これらは「該当したらすぐに受診すべき」ということではなく、相談先を整理するきっかけとして参考にしていただくものです。

相談先の種類

コミュニケーション面の困りごとで相談できる医療機関には、いくつかの種類があります。

精神科・心療内科:気分の落ち込み・不安・適応の困難など、二次的に出ている症状から相談に入りやすい窓口です。

発達外来(精神科・小児科):発達特性の評価を受けたい場合に、専門外来として整備されている医療機関があります。

言語聴覚士外来(耳鼻咽喉科・リハビリテーション科など):吃音・語音症・言語症など、言語面の専門的な評価とトレーニングを行います。

かかりつけ医:相談先が決まっていない場合の最初の窓口として、紹介状をもらうルートとして活用できます。

受診時に整理しておくとよいこと

受診する際は、次のような情報を整理しておくと、医師との対話がスムーズです。

  • いつから困りごとを感じているか
  • どんな場面で症状が強くなるか
  • 日常生活・仕事への影響の程度
  • これまでに受けたことのある相談・診断
  • 家族の同様の症状の有無

「うまく説明できないかも」と心配される方は、要点を箇条書きでメモして、当日それを見ながら話す方法も有効です。

「受診すべきか分からない」時の整理

「医療機関に行くほどではないかもしれない」「大げさかもしれない」と感じる時は、まず地域の保健所・精神保健福祉センターに相談する方法もあります。

保健所・精神保健福祉センターは、医療機関ではないため診断や治療は行いませんが、相談のうえで医療機関や福祉サービスの紹介をしてくれます。

「受診するかどうかを決める前の相談」として活用できる窓口です。

精神科デイケアの位置づけは、精神科デイケアとは|目的・対象・プログラムで整理しています。

エンラボカレッジでの「コミュニケーションを整える」アプローチ

ここからは、エンラボカレッジの自立訓練(生活訓練)で実際にお伝えしている「コミュニケーションを整える時間」の進め方を、参考としてご紹介します。

医学的なコミュニケーション症群の診断がある方に限らず、「自分はコミュ障かもしれない」と感じて相談に来られる方、発達障害・精神疾患の診断のある方、診断のない方も含めて、共通して有効な進め方として整理されています。

8つのプログラムでコミュニケーションに関わる時間

エンラボカレッジでは、8つのプログラム(感情学/コミュニケーション/My Lab./アクティビティ/Life Lab./ソマティック Lab./Social Lab./スキルアップ)を組み合わせて、自分を整える時間をご用意しています。

このうち、コミュニケーションに直接関わるのは次の3つです。

  • コミュニケーション:伝え方や聞き方を、職場や生活の場面に置き換えて学ぶ時間。
  • 感情学:喜怒哀楽の表現方法や考え方のクセを整理し、自分を支える感情と気をつけたい感情を研究する時間。
  • Social Lab.:少人数の社会参加体験を通じて、人との関わり方を実践する時間。

これらを座学だけでなく、ロールプレイや実際の外出体験と組み合わせて進めることで、頭で理解するだけでなく、身体で慣れていけるよう設計しています。

『自分/支え方マニュアル』でコミュニケーションを言語化

My Lab.(マイラボ)では、エンラボ独自の成果物として『自分/支え方マニュアル』を作成していきます。

このなかで、コミュニケーション面については次のような項目を整理していきます。

  • 自分はどんな伝え方が得意か(口頭・メモ・チャット・絵・身振りなど)
  • どんな伝え方をされると分かりやすいか
  • 苦手な場面はどんな時か(複数人での会話・電話・初対面・抽象的な指示など)
  • 困った時にどんな言葉を使えば助けを求めやすいか
  • 自分を支えてくれる人は誰か(家族・支援者・職場の同僚など)

これらを言語化したマニュアルは、卒業後に職場・家族・医療機関と共有することで、繰り返し説明する負担を減らすツールになります。

「がんばる」ではなく「整える」スタンス

エンラボカレッジでは、「もっとがんばりましょう」と本人を急かす関わり方は、できる限り避けるようにしています。

代わりに、「何があれば動きやすくなるか」「どんな環境なら続けやすいか」を、一緒に整理していく時間を大切にしています。

「自分は努力が足りない」「コミュニケーションが下手だ」と長く感じてきた方にとっては、最初は戸惑うこともあるかもしれません。

それでも、半年・1年と通われる中で、少しずつ「自分は努力不足ではなかった」「環境と仕組みで楽になることがある」と感じられていく方が、現場では多く見られます。

40代から自立訓練で働き方を見直していった方のプロセスは、40代からの再スタート体験もあわせてご覧ください。

「働く前に整える時間」が必要な方へ

「いきなり職場で配慮を求めるのは不安」「家族とのやりとりから整え直したい」「医療機関で診断は受けたが、次にどう進めばよいか分からない」と感じる方にとって、自立訓練(生活訓練)は土台を整える時間として活用しやすい選択肢のひとつです。

エンラボカレッジでは、神奈川・東京・大阪・宮崎の11拠点で自立訓練(生活訓練)と就労移行支援の見学・無料相談を随時お受けしています。

「コミュニケーション面の整理から一緒に進めたい」「家族と一緒に相談したい」というご相談も歓迎しています。

当てはまりにくい場面

逆に「すぐに就職したい」「いまの自分の状態でも雇用契約のある働き方を続けたい」という方は、就労移行支援やA型のほうが目的に合いやすい場合があります。

「いまはまず生活基盤とコミュニケーションを整える時間を優先したい」という方は、自立訓練(生活訓練)が選択肢として浮上してきます。

エンラボカレッジは「自立の土台作り」が中心となるため、目的との相性をご確認のうえで、ご検討いただけますと幸いです。

よくある質問(FAQ)

コミュニケーション障害は治りますか?

コミュニケーション症群のなかでも、種類によって経過は異なります。

語音症は、言語聴覚士のトレーニングなどで改善が見られるケースが多いとされています。

吃音は、幼児期に発症したものが自然に軽快するケースもあれば、大人になっても続くケースもあります。

社会的コミュニケーション症や言語症は、症状そのものを「治す」というより、「うまく付き合う方法を見つける」「環境と仕組みで支える」アプローチが現実的です。

「治る/治らない」よりも、「いまの困りごとをどう減らすか」に焦点を当てるほうが、対処の方向性を見つけやすくなります。

「コミュ障」と「コミュニケーション障害」は同じものですか?

別の言葉として整理したほうが分かりやすいです。

「コミュ障」はネット上で広く使われる略語で、医学的な診断とは独立して「人と話すのが苦手」「会話が続かない」といった自覚的な困りごとを指します。

「コミュニケーション障害」は、医学的にはDSM-5の「コミュニケーション症群」に該当する発達症のグループを指します。

両方が重なるケースもあれば、まったく別の背景から来ているケースもあります。

大人になってからコミュニケーション症群と診断されることはありますか?

あります。

軽度のコミュニケーション症群や、社会的コミュニケーション症は、学校場面では大きな困りごとが目立たないまま大人になり、就職後の職場場面で困りごとが顕在化するケースがあります。

「大人になってから受診するのは遅いのではないか」と心配される方もいらっしゃいますが、大人になってからの整理にも十分な意味があります。

「いまの状態をどう整えるか」を考える材料として、医療機関の評価を活用できます。

家族にコミュニケーション障害がある場合、どう関わればよいですか?

一律の正解はありませんが、現場でよく整理されている工夫としては、「短い文で伝える」「あいまいな表現を避ける」「選択肢を添える」「本人のペースを待つ」「分からないと言える関係を作る」などがあります。

家族にとっても無理のないペースで取り入れることが、長く続く関わりにつながります。

「家族が全部を解決する」のではなく、「一緒に整理する仲間として関わる」スタンスが、お互いに楽です。

職場で配慮を求めたい時、何から伝えればよいですか?

「困っていること」と「あれば動きやすくなること」を、できるだけ具体的に伝えることが第一歩です。

「コミュニケーションが苦手なので配慮してください」よりも、「業務手順を紙に書いて貼っておきたい」「口頭指示の後に確認のメールがほしい」など、具体的なお願いに落とし込むほうが、相手にとっても対応しやすくなります。

『自分/支え方マニュアル』のような書類を一緒に共有すると、繰り返し説明する負担も下がります。

障害者手帳がなくても支援は受けられますか?

受けられるケースがあります。

自治体の判断や医師の意見書をもとに、障害福祉サービス受給者証が交付されれば、自立訓練・就労移行支援などの障害福祉サービスを利用できる場合があります。

詳しくはお住まいの市区町村の障害福祉課でご確認ください。

コミュニケーション症群と自閉スペクトラム症は同じものですか?

別の概念として整理されています。

自閉スペクトラム症(ASD)は、社会的コミュニケーションの困難に加えて、「限定された興味」「常同的な行動」が含まれる神経発達症です。

コミュニケーション症群の社会的コミュニケーション症は、社会的コミュニケーションの困難はあるものの、「限定された興味」「常同的な行動」がない場合に該当します。

両方の特徴が重なるケースも多いため、医療機関での総合的な評価が、整理の助けになります。

エンラボカレッジは、コミュニケーション面の困りごとがある方も利用できますか?

ご利用いただけるケースがあります。

エンラボカレッジは精神・発達障害のある方を主な対象としていますが、診断のない方や、自分の特性を整理したい段階の方も利用されています。

「自分が対象になるか」を含めて、まずは無料の見学・相談をご利用いただくことをおすすめします。

まとめ

「コミュニケーション障害」という言葉には、医学的な意味(コミュニケーション症群)と、ネット用語としての意味(コミュ障)の二つの使われ方があり、両者は重なる部分もあれば、別ものとして整理したほうがよい部分もあります。

医学的なコミュニケーション症群には、言語症・語音症・小児期発症流暢症(吃音)・社会的コミュニケーション症の4つのサブタイプが整理されており、原因は遺伝的要因・脳の発達上の特性・併存する状態など、複数の要因が組み合わさったものとして整理されています。

ネット用語の「コミュ障」は、医学的な診断とは独立して、気質・経験不足・自信の低下・別の精神疾患・発達特性などさまざまな背景から使われる言葉です。

大人になってから困りごとが顕在化するケースは少なくなく、職場・家庭・友人関係・行政手続きなど、さまざまな場面で「分からないけど分かったふりをする」「断れずに引き受ける」といった我慢が積み重なりやすくなります。

対処法としては、短い文・具体的な言葉・視覚的な手がかり・選択肢のある質問・本人のペースに合わせる姿勢・自分の取扱説明書の作成などが、現場で多く使われています。

医療機関への相談は、「困りごとが長く続いている」「二次的にうつ・不安が出ている」「発達特性の整理をしたい」などのタイミングで検討する目安になります。

エンラボカレッジは、自立訓練(生活訓練)と就労移行支援を運営する事業者として、「コミュニケーション面の整理から一緒に進めたい」「家族と一緒に相談したい」というご相談を多く受けています。

エンラボカレッジ 横浜エンラボカレッジ 相模大野エンラボカレッジ 川崎など各事業所で、自立訓練・就労移行支援を提供しています。

「自分にどのサービスが合うのか相談したい」「家族と一緒に見学したい」――そんな方も、まずは一度お問い合わせください。

ご見学・無料相談のご案内

エンラボカレッジでは、自立訓練(生活訓練)と就労移行支援の見学・無料相談を、神奈川・東京・大阪・宮崎の11拠点で随時お受けしています。

「コミュニケーション障害かもしれないと感じて、整理を進めたい」「自分にとって、次に進むべき段階を一緒に整理してほしい」「家族と一緒に話を聞いてみたい」――そうしたご相談も歓迎しています。

ご見学・無料相談のお申し込みは、エンラボカレッジ公式サイト、またはお電話(050-5538-0786/平日10:00-18:00)からお気軽にどうぞ。

事業所の雰囲気・プログラムの実際・通っている方々の様子を、実際に見てから判断いただけます。

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更新日:2026/05/30 公開日:2024/03/29

この記事について【作成・監修】

本記事は、自立訓練(生活訓練)事業所「エンラボカレッジ」を運営する株式会社エンラボの専門職スタッフが作成・監修しています。

【在籍資格】
精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士

【現場での実践】
自立訓練(生活訓練)・就労移行支援などで、診断名・特性に合わせた個別支援を提供しています。

【運営会社】
株式会社エンラボ/設立2015年4月/神奈川県を中心に首都圏・関西・宮崎で11拠点運営

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