就労継続支援A型とは?どんな人に向いている?仕事内容・給料・利用料など紹介します。

公開日:2023/07/04

就労継続支援A型とは、障害のある方へ働く場所や支援を提供している場所のことです。就労継続支援A型の利用者は事業所と雇用契約を結んで実際の仕事を行い、その分の給料を受け取ることができます。

ただ、就労継続支援にはA型だけでなくB型もある他、就労移行支援などさまざまなサービスがあり、何を選んだらいいのかと悩んでいる方もいると思います。

この記事では、就労継続支援A型の概要や仕事内容、平均給料、利用料や、就労継続支援A型に向いている人などを紹介します。

就労継続支援A型とは

就労継続支援A型とは、障害のある方への就労支援の一つで、事業所は利用者と雇用契約を結んだうえで、実際の業務や働くためのスキル向上の訓練を提供するほか、生活や体調に関するサポートを行う障害福祉サービスの中の一つです。業務内容はカフェの運営や、クリーニング、Webサイトの作成など多岐にわたり、就労継続支援A型では雇用契約を結ぶため、利用者には最低賃金が保障された給料が支払われます。

就労継続支援A型にはどんな人が通っている?

まず、就労継続支援A型は、一般的な企業などで働くことは難しいが、事業所内で雇用契約を結んで働けると見込まれる65歳未満の障害や難病のある方が対象となっています。

 

実際に以下のような方が就労継続支援A型を利用しています。

  •  他の就労支援を利用したが、就職にいたらなかった方
  •  特別支援学校で就職活動を行ったが、卒業後も就職にいたらなかった方
  •  今までに企業などで働いた経験があるが、現在はどこにも雇用されていない方

 

平成30年からは65歳以上であっても、それまでに就労継続支援A型を利用していた方が引き続き利用するなど、一定の条件に合えば利用可能となりました。

 

また、難病の方も利用可能となっていますが、すべての難病が対象となるのではなく、厚生労働省から指定された難病の方が利用可能です。

 

参考元:厚生労働省「障害者総合支援法の対象疾病(難病等)」

障害者手帳ではなく受給者証が必要

就労継続支援A型は障害のある方への支援を定めた障害者総合支援法の中の、障害福祉サービスに該当します。

就労継続支援A型を含む障害福祉サービスを利用するには、自治体に申請し「障害福祉サービス受給者証(受給者証)」を取得することが必要となります。

 

就労継続支援A型の利用は障害者手帳の所持は必須ではなく、主治医の意見書などがあれば利用できる場合があります。詳しいことは自治体の障害福祉窓口などでご確認ください。

就労継続支援A型の利用者数

就労継続支援A型の利用者数は、令和元年の調査で72,197人となっています。事業所は全国にあり、こちらも令和元年時点で3,842箇所あります。

 

また、就労継続支援A型の年齢別の利用割合ですが、40代の方が18,723人と一番多くなっています。ただ、他の年代も1万人を超える利用数がいるなど、年代による差はそれほど見られませんでした。

 

参考元:厚生労働省「障害者の就労支援について」

就労継続支援A型利用者の障害種別

次に利用されている方の障害割合です。

こちらは令和2年時点の調査になりますが、精神障害(発達障害含む)の方が47.8%と最も多く、その後に知的障害の方の34.5%、身体障害の方の16.8%、最後に難病の方の1%です。

 

このように平均で言うと就労継続支援A型では、精神障害(発達障害含む)の方が一番多く利用していますが、事業所によってその割合は大きく異なります。

 

参考元:厚生労働省「障害者の就労支援について」

就労継続支援A型とB型の違いとは?

就労継続支援には「就労継続支援A型」だけでなく、「就労継続支援B型」もあります。

就労継続支援A型と就労継続支援B型は名称が似ていることもあり、違いがなかなかわからないという声もよく聞きます。

 

まず、どちらも障害のある方へ働く機会や、働くためのスキル取得の訓練を行う点では共通しています。ではどこが違うのかというと、大きなところでは雇用契約の有無があります。

 

就労継続支援A型は「雇用型」と呼ばれ、利用者は事業所と雇用契約を結んだうえで利用します。一方就労継続支援B型は「非雇用型」と呼ばれ、利用者は事業所と雇用契約を結ばずに利用するという違いがあります。

 

就労継続支援A型は雇用契約を結ぶため、労働時間や内容が決まっていることや、労働時間によっては社会保険に加入すること、最低賃金が保障された給料が支払われることなどの特徴があります。

 

就労継続支援B型では、雇用契約を結ばないため仕事の内容や時間などに比較的融通が利き、体調など自分のペースに合わせて通いやすいといった特徴があります。

 

就労継続支援A型の仕事内容

就労継続支援A型ではスタッフのサポートを受けながら仕事をしていきます。一日の勤務時間は利用者によって異なりますが、4~6時間程度が多いようです。

 

具体的に就労継続支援A型で行う仕事内容は事業所ごとに異なっていますので、ここでは主なものを挙げて説明していきます。


就労継続支援A型で行われることが多い仕事内容としては、

  • データ入力などパソコンを使った業務
  • Webサイトやチラシ作成
  • パンなどの製造やカフェ運営
  • 清掃業務
  • 農作物の収穫・販売
  • クリーニングなど

といったものがあります。それぞれ詳しく紹介します。

データ入力などパソコンを使った業務

就労継続支援A型ではパソコンを使った業務として、企業などから依頼を受けて店舗の売り上げ情報やアンケートの回答を専用のシートに入力していく、といったデータ入力などがあります。

 

他にも、取材音声の文字起こしや原稿の誤字脱字のチェックなどの業務などもあります。

Webサイトやチラシ作成

こちらもパソコンを使った業務です。企業のWebサイトを一から作成することもあれば、サイト内の文字の修正や専用のソフトを使ってサイトに使う画像の加工、イラストの作成などを行うこともあります。

 

チラシ作成でも、専用のソフトを使って企業などの宣伝用チラシやポストカードなどを作成していきます。

パンなどの製造やカフェ運営

就労継続支援A型の事業所内の設備を使ってパンやお菓子を製造したり、併設しているカフェの運営を行ったりといった仕事内容もあります。

 

食品を作るだけでなく、お客さんが入るカフェで接客やレジ対応が行えるほか、売り上げの管理など幅広い業務を経験することができる特徴があります。

清掃業務

清掃業務では就労継続支援A型の事業所を離れ、企業、ビル、マンションなどの室内、室外、階段、トイレなどの清掃業務を行います。

他にも、公園や公共施設などの清掃やメンテナンス、除草作業などを行う事業所もあります。

農作物の収穫・販売

就労継続支援A型の事業所が所有や提携している農園で農作物を作って販売をしていくといった仕事内容もあります。

 

育てる植物はさまざまで、種まきから水やり、除草、収穫をした後は、選別や梱包作業も行い出荷します。店舗や移動販売を使って自分たちで直接販売を行う場合もあります。

クリーニング

就労継続支援A型の事業所内にクリーニングの設備があり、ホテルや旅館などから送られてきたシーツや浴衣、タオルなどのクリーニングを行います。

 

業務用の機材を使っての洗濯、乾燥作業から、タオルなどをたたんで梱包し送り返すといった作業まで含まれることが多いです。

就労継続支援A型の給料(賃金)

就労継続支援A型では仕事内容や労働時間に応じて、最低賃金が保障された給料が支払われます。

 

就労継続支援A型全体の平均給料は令和3年度は月81,645円でした。10年前の平成24年度の平均給料が68,691円なので1万円以上増えているなど、平均給料はここ数年上昇を続けています。

 

紹介した就労継続支援A型の給料はあくまで平均ですので、事業所や仕事内容によって大きく異なります。事業所のホームページなどに記載されていることも多いので、選ぶ際の参考にするといいでしょう。

就労継続支援A型の利用料・利用期間

ここでは、就労継続支援A型を利用するのにかかる費用や、利用できる期間について紹介します。

利用料

就労継続支援A型では利用者は事業所から給料を受け取ることができるとお伝えしましたが、同時に支援を受けた分の利用料を支払う必要もあります。

 

就労継続支援A型の利用料は月ごとに計算され、国や自治体が9割負担し利用者が1割を負担するという制度になっています。

さらに、利用者の世帯所得によってひと月に支払う金額に上限が設定されていて、生活保護受給世帯や市町村民税非課税世帯の方は0円で利用することが可能です。

 

詳しい上限額については以下の表をご覧ください。また、ここで言う世帯所得とは本人と配偶者の所得で、同居している両親や子供の所得は含まれません。

 

(注1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。

(注2)収入が概ね670万円以下の世帯が対象になります。

(注3)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。

 

作図参考:厚生労働省「障害者の利用者負担

 

なお、就労継続支援A型は所得によっては利用料が0円になりますが、事業所に通うための交通費や昼食代などは別途利用者が負担することになりますのでご注意ください。

利用期間

就労継続支援A型は特に利用期間は定められていません。事業所と契約が続く限り利用することが可能です。

 

ただ、労働契約に契約期間が設定されている場合は、その期間が過ぎると再度契約が必要となる場合もあります。事前に契約期間も確認しておくといいでしょう。

就労継続支援A型の利用後はどうなる?

ここでは、就労継続支援A型を利用した方の進路について見ていきます。

 

就労継続支援A型利用後の進路として多いのは就職の25.1%でした。これは他の就労継続支援A型ではなく、一般企業などへ就職した方の割合です。

 

就労継続支援A型では、事業所で仕事をしながら企業へ就職するための訓練や就職活動のサポートも行っており、その結果就職していく方が多くいます。

 

続いて、他の就労継続支援A型へ移った方が11.4%いました。就労継続支援A型は事業所ごとに仕事内容が大きく異なりますので、他の事業所へ移るという場合もあるようです。

 

その他には、同じ障害福祉サービスである就労移行支援や就労継続支援B型、自立訓練などへ移る方も多くいます。

 

就労継続支援A型はどんな人におすすめ?

就労継続支援A型は、支援を受けながら実際の仕事ができることや、給料がもらえることなどが特徴としてあります。

 

そのため、就労継続支援A型は今すぐ企業などで働くのは難しいという方や、支援を受けながら働きたい方、社会参加したい方、給料をもらいながら訓練も行いたい方、などにおすすめといえるでしょう。

 

就労継続支援A型以外にも、障害のある方へのサポートはたくさんあります。

雇用契約を結ぶのが難しい方は就労継続支援B型、就職のための訓練や就職活動に注力したい方は就労移行支援、まずは生活や体調を安定させたい方は自立訓練など、自分の状況に合った障害福祉サービスを利用していくことがおすすめです。

 

就労継続支援A型の選び方

就労継続支援A型の事業所は全国で4,000箇所近くあります。それぞれに特徴や仕事内容が異なりますので、事業所の選び方のポイントを紹介します。

 

今回は以下の4つをお伝えします。

 

  • 仕事内容
  • 給料
  • 雰囲気
  • 事業所の場所

仕事内容

就労継続支援A型の仕事内容は多岐にわたります。仕事内容が合わない事業所を選んでしまうと、利用を続けることも難しくなるでしょう。

 

そのため、まずは自分がどのような仕事をしたいか整理し、その内容に合っている事業所を選ぶことが大事です。

 

また、例えパソコンを使った業務といっても詳細は事業所によって違います。多くの場合は体験実習ができますので、気になる事業所があったら体験させてもらうようにすると選びやすくなると思います。

給料

就労継続支援A型を選ぶ際に、給料も通い続けるために大事な要素です。仕事内容と給料が合っているか、自分の生活にとって必要なだけもらえるか、といった点を確認するといいでしょう。

 

ホームページに掲載されている場合もありますが、ない場合も問い合わせや見学・体験の際にスタッフに確認しておくことが大事です。

 

お金のことはなかなか聞きづらいと思いますが、長く通うことを考えると先に確認しておくことをおすすめします。

雰囲気

就労継続支援A型を選ぶうえで、事業所の雰囲気も選ぶ際のポイントになります。スタッフや他の利用者と合いそうか、仕事が忙しすぎたり、時間が空きすぎたりしないかなどが確認ポイントです。

 

雰囲気はホームページなどで確認するのが難しいですが、合わない場所では長く続蹴るのが難しくなるため見学・体験の際に見ておくようにしましょう。

事業所の場所

就労継続支援A型の事業所がある場所も大事なポイントとなります。事業所の場所が遠いと、通勤時間がかかり疲労やストレスをためることになったり、交通費が多くかかってしまいます。

 

一日単位では小さなことでも、長く通うと大きな負担となることも考えられます。所在地はホームページに掲載されているので、事前に自宅からの通勤時間や交通費を調べておきましょう。

就労継続支援A型を利用するまでの流れ

ここでは、就労継続支援A型を利用するまでの流れを紹介していきます。就労継続支援A型では他の障害福祉サービスと異なり、雇用契約を結ぶために「応募」や「選考」といったフローが加わります。

 

それでは、応募や選考も踏まえて就労継続支援A型の利用開始までの流れを見ていきましょう。

事業所を探す

まずは利用する就労継続支援A型の事業所を探します。自治体の障害福祉窓口や相談支援事業所に就労継続支援A型の利用を考えていることを伝えると、事業所の候補や選び方の相談に乗ってもらうことができます。

 

また、就労継続支援A型の事業所はインターネットでも探すことができます。事業所ごとにホームページがありますし、地域の就労継続支援A型を一覧で探すことができるサイトもあるので活用してみるといいでしょう。

 

参考:独立行政法人福祉医療機構「障害福祉サービス等情報検索」

事業所の見学・体験をする

気になる事業所を見つけたら、見学・体験を行うことが大事です。先ほど選び方のポイントで紹介したように、仕事内容や事業所の雰囲気などは実際に見てみないとわからないことが多くあります。

 

一般的に見学ではスタッフが事業所の説明をしてくれ、体験では仕事内容を実際に体験させてもらうことができます。体験は一日だけでなく、数日に行える場合もありますので、積極的に活用するといいでしょう。

 

見学・体験は一つの事業所だけではなく、複数行うこともできます。いくつか見たうえで、一番自分に合いそうな事業所を選んで行くことが大切です。

 

また、就労継続支援A型以外にも、就労継続支援B型、就労移行支援、自立訓練など他の障害福祉サービスも同様に見学・体験することができます。

 

どのサービスを利用するか悩んでいる場合は、他の障害福祉サービスの事業所も見てみるといいでしょう。

事業所へ応募し選考を受ける

就労継続支援A型は雇用契約を結ぶため、一般企業と同じように求人への応募と選考があります。

 

利用したい事業所が決まったら、ハローワークでその事業所の求人へ応募します。応募するにはハローワークの登録が必要となりますので、事前に登録しておくといいでしょう。

 

応募した後は、事業所の選考があります。選考は書類選考と面接を行う事業所が多いようです。面接では志望動機や障害のことなどが聞かれるため、あらかじめ準備をしておくことが大事です。

自治体へ申請する

事業所から採用の連絡が来た後は、自治体に就労継続支援A型の利用申請を行います。申請はお住いの自治体の障害福祉窓口などで可能です。

 

自治体で審査を行ったのちに、受給者証が発行されます。利用予定の就労継続支援A型の事業所に受給者証を持っていき、契約を結ぶことで正式に利用することができます。

 

このように、就労継続支援A型を利用するには応募や選考など企業で働くのと同じような手続きが必要となります。

 

今すぐではなく、体調や生活を整えてから働きたいという方は、自立訓練から利用するという選択肢もあります。

 

自立訓練は、障害のある方が自立した生活を営むことができるように、さまざまな訓練やサポートを行う場所です。

 

生活リズムや障害理解など体調を安定させるための訓練や、周りの人と円滑なコミュニケーションを取るためのスキルの取得など、一人ひとりの困りごとに合わせたサポートを提供しています。

 

人によっては就職に向けた自己分析や、業務に関するスキルや知識の訓練も行っています。

「まずは生活を安定させたい」「コミュニケーションスキルを身につけてから就活したい」といった方は一度お問い合わせください。

 

就労継続支援A型のまとめ

就労継続支援A型は障害福祉サービスのひとつで、利用者と事業所が雇用契約を結んだうえで、仕事や働くための訓練とともに、生活などでの困りごとへの支援を提供する事業所です。

 

就労継続支援A型では雇用契約を結ぶため、手続きには他の障害福祉サービスとは異なり、就労継続支援A型の求人への応募や面接などの選考が含まれます。

 

また、仕事の内容や労働時間に応じて、最低賃金が保障された給料が支払われることも特徴のひとつです。

 

仕事内容や給料は、事業所ごとに違いがありますので、実際に事業所内の見学や仕事の体験を行って、自分に合った事業所を選んでいくことが大事です。

 

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