発達障害の「グレーゾーン」大人の特徴・チェックの方法はある?仕事探しや手帳についても解説します。

公開日:2024/02/05

「発達障害のグレーゾーン」とは、発達障害の特性がありながら診断基準を満たしていない状態のことを指して使われる言葉です。一般的に使用されているいわゆる俗称で、正式な診断名などではありません。

発達障害のグレーゾーンと聞くと程度が軽いというイメージもあるかと思いますが、本人は日常生活や仕事で多くの困難を抱えているということも珍しくありません。

また、発達障害のグレーゾーンの方は診断がないことから、受けることができる支援が少ないという困りごとも聞かれます。そのため、自身で対策することやグレーゾーンの方も利用できる支援を探していくことが大事です。

今回は発達障害のグレーゾーンの特徴や困ること、仕事探しで活用できる支援機関、自分でできる対処法などを紹介します。

発達障害のグレーゾーンとは?

発達障害の特徴が表れているが診断にはいたらない方を、「発達障害のグレーゾーン」と呼ぶことがあります。発達障害のグレーゾーンとは白でも黒でもどちらでもない「灰色」の状態として用いられる言葉で、正式な診断名ではありません。しかし、診断は下りなくても発達障害の特徴があり、対人関係や仕事などさまざまな場面で困りごとを抱えている方も多く、その状態が続くことでうつ病などの二次障害につながることも考えられます。

正式な診断名ではない

発達障害のグレーゾーンは、あくまで発達障害の特徴がみられるが診断基準は満たしていないという方に対して一般的に使われることがある言葉で、医学的な診断名ではありません。

 

発達障害の診断には国際的な基準があり、医師は問診や心理検査と呼ばれる各種検査などを行ったうえで、その基準と照らし合わせて診断を下します。

 

検査などを行った結果、発達障害の特徴に当てはまる項目はあっても、必要な分を満たしていない場合が、いわゆる発達障害のグレーゾーンです。

 

医師から直接「グレーゾーン」という言葉で伝えられるのではなく、「検査の結果ADHDの傾向が見られましたが診断にはいたりませんでした」ともう少し具体的に教わることが多いようです。

グレーゾーンだと症状が軽い?

また、発達障害のグレーゾーンでは診断基準に満たないことから、「症状が軽いのでは」と感じる方も多いと思います。

 

しかし、実際には発達障害のグレーゾーンの方で仕事など様々な場面で辛い思いをしている方もたくさんいます。

 

そもそも発達障害の困りごとは、本人の特性と周囲の環境が合わないことで生じるといわれています。

 

発達障害のグレーゾーンの方も、例え特性があまり強くなくても、環境との相性によって多くの困難を抱える可能性があるといえます。

 

また、そういった困難な状況が長く続くことで、うつ病や適応障害などの精神面の不調や頭痛や不眠などの身体面の不調が表れることもあります。このことは、二次障害と呼ばれています。

 

このように、発達障害のグレーゾーンは症状が軽いわけではなく、また二次障害にいたらないためにも、今ある困りごとを減らしていくことが大事だといわれています。

 

なお、二次障害も正式な診断名ではなく、発達障害のグレーゾーンの影響で困りごとが続き、心身に不調が出ることを指して一般的に使われる用語です。

大人の発達障害とは

子供のころは発達障害と気づかれずに、大人になってから判明することを「大人の発達障害」と呼ぶことがあります。こちらも、正式な診断名ではなく一般的に使われる言葉です。

 

発達障害は先天的な脳機能の偏りによって生じる障害ですが、子供のころは環境と合っていたり周りのフォロー体制が整っていたりと、発達障害の特徴が出ずに本人も周りも気づかないという場合があります。

 

それが大人になるにつれて、大学生活や就職活動、一人暮らし、仕事など環境が変わることによって困りごとが顕在化し、発達障害と判明することも多くあります。

 

また、発達障害は特性によってASDやADHDなどに診断名が分かれています。このあと診断名ごとの特徴や仕事での困りごと例を紹介します。

 

発達障害のグレーゾーンの方も傾向として当てはまるものがあると思いますので、参考としてご覧ください。

ASD(自閉スペクトラム症)

発達障害の中でもASD(自閉スペクトラム症)は、「対人関係やコミュニケーションの困難」や、「特定の物事へのこだわりや興味関心の偏り」があります。

 

仕事においては、比喩やあいまいな言い回しが理解できず指示理解や雑談でうまくいかないことや、自分の順番にこだわるあまり仕事に遅れが出るなどの困りごとが考えられます。

ADHD(注意欠如・多動症)

発達障害の中でADHD(注意欠如・多動症)は、特定のことに注意を集中させることが難しい「不注意」や、じっとしていられなくて思ったことをすぐ言動に移す「多動・衝動性」が見られます。

 

仕事においては、ケアレスミスが多い、人の話をさえぎって話してしまう、スケジュール管理が苦手などの困りごとが考えられます。

 

人によって不注意が表れやすい方、多動・衝動性が表れやすい方、両方とも見られる方がいます。

LD(学習障害)

発達障害の中でLD(学習障害)は、知的に遅れはないが「読み」「書き」「計算」など特定の学習だけひどく苦手な傾向が見られます。

 

仕事においては、マニュアルや議事録などを読むのも書くのも非常に時間がかかる、口頭の指示が理解しづらい、お釣りの暗算ができないなどの困りごとが考えられます。

 

関連ページ:発達障害の特徴とは?大人の発達障害の特徴や困りごとを場面・診断別に解説します。

発達障害のグレーゾーンの特徴や困りごと

この章では、発達障害のグレーゾーンの方に見られる特徴や仕事での困りごとを紹介します。

 

発達障害のグレーゾーンの特徴といっても一概にいえるわけではなく、人によってADHDの傾向がある、あるいはASDの傾向があるとそれぞれ異なります。また、それによって対策にも違いがあります。

 

そのため、まずは自分にどのような特徴があるかを把握して対策を講じていく必要があります。

 

ここでは、発達障害のグレーゾーンの方に見られることの多い困りごとを紹介します。自身の傾向をつかむため参考にしてみて下さい。

対人関係がうまくいかない

発達障害のグレーゾーンの方は、普通に話しているつもりなのに相手を怒らせてしまうなど対人関係における困りごとがよく見られます。

 

原因としては、衝動的に相手の話をさえぎって話し続けてることや、自分の興味のあることだけをしゃべる、相手の立場に立って考えるのが苦手でつい失礼なことを言ってしまうなどが考えられます。

仕事の指示の理解が難しい

発達障害のグレーゾーンの方は、上司からの指示がよく理解できないといった困りごともよく挙げられます。

 

理由として考えられることは、「もう少し」「なるべく早く」などのあいまいな指示をされると具体的にどのくらいかを想像するのが難しいため、上司の意図とずれた対応をする結果になるということなどがあります。

仕事でミスが多い

発達障害のグレーゾーンの方は、仕事をする中でケアレスミスが多いという悩みもよく聞かれます。

 

不注意特性が強くて一つの作業に集中できなかったり、よく確認せず衝動的に仕事に手を付けたり、感覚過敏があって人の動きなど刺激が多い場所では集中できなかったりといったことが原因として考えられます。

スケジュール管理が苦手

発達障害のグレーゾーンの方は、スケジュール管理に苦手さを感じている場合も多くあります。

 

原因としては、見通しを立てることや優先順位を決めることが苦手な特性や、スケジュールが決まっていても衝動的に動いた結果守れなくなってしまうこと、不注意でうっかり納期を忘れてしまうことなどが考えられます。

遅刻や忘れ物が多い

発達障害のグレーゾーンの方の困りごととして、職場に遅刻をしたり、書類など必要なものを忘れたり失くしたりといったこともよく挙げられます。

 

原因として、不注意で家を出る時間を忘れたり、衝動的に出発して忘れ物をしたり、あちこちに物を置いてしまい必要な書類がどこにあるかわからなくなるなどが考えられます。

刺激が多い場所ですぐ疲れてしまう

発達障害のグレーゾーンの方には、人の動きや音が多い場所にいると集中が難しくすぐ疲れてしまうという困りごとがある方もいます。

 

視覚過敏があって人などが動いているとそちらに注意がそれることや、他の人が気にならない音もキャッチするため常に負荷がかかっていることなどが考えられます。

周囲の理解が得られにくい

発達障害のグレーゾーンの方は診断がつかないため、なかなか困っていることを周囲に理解してもらうことが難しい傾向にあります。

 

また、自分でも「甘えているのではないか」「努力が足りない」と感じて、自身を追い詰めてしまうことも考えられます。

 

無理をし続けると二次障害にもつながりかねませんので、自身を責めずに発達障害のグレーゾーンの方も相談できる窓口なども活用しながら、困難さの解消に努めていくようにしましょう。

発達障害のグレーゾーンか、チェックする方法はある?

仕事で困りごとがあったときに、自身が発達障害のグレーゾーンかチェックする方法がないかと考える方もいると思います。

 

一つの方法としてインターネット上にある発達障害のチェックシートを活用する方法があります。ただ、あくまで発達障害の傾向を知れるものなので、参考程度にとどめるようにしましょう。

 

これまで紹介した特徴や困りごとに当てはまる項目が多いのであれば、発達障害の専門医で検査を受けることも大事です。

 

発達障害の診断名がつかなくても、検査を受けることで自身の傾向をより詳しく知ることができ、今後対策を考えていく上でも大きな助けとなるでしょう。

 

発達障害の検査ができる病院は「お住いの地域 発達障害 検査」などで検索すると出てきます。また、発達障害者支援センターや自治体の障害福祉窓口などに相談することで発達障害の検査ができる病院を紹介してもらえることもあります。

グレーゾーンの方が仕事探しで活用できる機関

発達障害のグレーゾーンの方が就職活動をする際は、自分の特徴を把握して向いている職場を探していくことが大切です。

 

一人で進めるのは難しいと感じることもあると思います。そこで、発達障害のグレーゾーンの方が仕事探しの助けとなる支援制度を活用していくといいでしょう。

 

発達障害のグレーゾーンの方は診断がないため、利用できる支援制度は少なくなりますが、発達障害のグレーゾーンの方も利用や相談が可能な場所は多くあります。

ここで代表的なものを紹介します。

ハローワーク

求人の紹介など雇用に関する様々なサポートをしているハローワークには、障害のある方専用の相談窓口が設置されています。

 

窓口では発達障害などの知識がある職員が担当制で、求人の紹介や就職に関する相談対応、就職活動自体の支援など幅広くサポートしています。発達障害のグレーゾーンの方も基本的に相談することが可能なので、一度問い合わせてみるといいでしょう。

地域若者サポートステーション

地域若者サポートステーションは通称「サポステ」ともいい、49歳までの現在働いていない方に対して就職に関する訓練の提供や就職活動のサポートなどをしています。

 

サポステではコミュニケーションやビジネスマナーのプログラム、職業体験、書類添削や面接練習など様々なサポートをしています。

 

利用条件に障害のあるなしは関わらないため、発達障害のグレーゾーンの方も利用が可能です。

ジョブカフェ

ジョブカフェは若者の就職サポートをしている支援機関で、各都道府県に設置されています。

 

各都道府県ごとに名称や内容が異なっており、例えば北海道では「ジョブカフェ北海道」の名称で、就職相談や就職セミナー、個別カウンセリングなど就職に関するサポートをしています。こちらも発達障害などの診断は必要ないため、お住いの自治体のジョブカフェを確認してみるといいでしょう。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、年齢に関わらず発達障害のある方やその家族へのサポートをしている支援機関で、各都道府県に設置されています。

 

日常生活や仕事に関しての困りごとの相談ができ、相談者の状況に合わせた関係機関の紹介などをおこなっています。発達障害の診断がないグレーゾーンの方も相談することが可能です。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は発達障害など障害のある方へ相談対応やプログラムを提供することにより、自立した生活が営めるようサポートする支援機関です。

 

内容は多岐にわたり、その方の困りごとに合わせてコミュニケーションやスケジュール管理、自己理解などのプログラムを提供している事業所もあります。

 

発達障害の診断や障害者手帳がなくても自治体の判断で利用できることがありますので、一度問い合わせてみるといいでしょう。

グレーゾーンだと障害者手帳は取得できない?

発達障害のグレーゾーンの方は、診断がないため障害者手帳を取得することはできません。

ただし、二次障害によってうつ病など他の障害が生じているときには、その二次障害で取得できる可能性があります。

 

また、障害者手帳がなくても利用できる可能性のある支援機関は多くあります。支援機関に相談することで苦手や困りごとの軽減につながることもありますので、気になる場所があれば一度問い合わせてみるといいでしょう。

グレーゾーンの困りごとの対処法はある?

発達障害のグレーゾーンの方は、仕事などで多くの困りごとを抱えることがあります。また、診断がないことで受けることができる支援が少なく、周囲の理解も得られにくいという環境も辛さの原因となる場合があります。

 

そういった困りごとや辛さを解消していくためには、自身のことをしっかり理解し、対処法を考えていくことが大事です。ここではその方法を紹介します。

自分の特徴の理解する

まずは自分の特徴や困りごとを理解することから始めるといいでしょう。

 

「なんとなく辛い」という状況では、どう対処していいのか考えることもできません。そこで、自己分析をして自分にどのような特徴があり、どういった場面で困ることが多いのかを把握することで、特徴や困りごとに合わせた対処法を講じることができるようになります。

 

自己分析のやり方は複数あり、一つにインターネット上にあるチェックシートを活用する方法があります。

 

参考ページ:高齢・障害・求職者雇用支援機構「発達障害の特性チェックシート」

 

また、自分で進めるのが難しい場合には自立訓練(生活訓練)など支援機関のプログラムで自己分析に取り組む方法もあります。

他の人の対処法などを学ぶ

自己分析ができた後は、対処法を考えていきましょう。こちらも自身で一から考えていく方法もありますが、インターネットなどにある発達障害のある方の対処法をヒントにする方法もあります。ここでもいくつか例を紹介します。

聴覚過敏のある方の対処法例

聴覚過敏があって人の声など周囲の音に敏感に反応し、集中しづらかったり疲れやすかったりする方は、イヤーマフなどの聞こえてくる音を軽減させるアイテムを使う対処法があります。

あいまいな指示が理解しづらい方の対処法例

「なるべく急いでね」などあいまいな指示だとどう動いていいのかわからない、という方はあらかじめ「何時までなど具体的な数字で教えてほしい」と伝えておくといった方法があります。

スケジュール管理が苦手な方の対処法

スケジュール管理が苦手な方の場合は、TODOリストを使って今ある業務を視覚的に把握することや、アプリのリマインダー機能を使うといったツールを使って抜け漏れを防ぐ対処法があります。

 

このように、特徴や困りごとに応じて対処法を実行することで、仕事における困難さを減らしていくことができます。

 

他にも、インターネット上や書籍などで発達障害のある方の対処法例を見ることができますので、いろいろな事例を参考にして自分なりの対処法を探していくといいでしょう。

周囲に理解者を増やす

また、発達障害のグレーゾーンの方が働きやすい環境を作るには、周囲の理解者を増やすことも大切です。

 

先ほど紹介した対処法は自分だけでできるものもありますが、人に協力してもらうことが必要な場合もあります。

 

例えば、イヤーマフやスマートフォンを職場で使っていいかはあらかじめ確認しておくことが大切です。

 

また、指示の出し方での協力をお願いする際も、あらかじめ上司に伝えて対応してもらう必要があります。

 

周囲に協力をお願いするときのポイントは、「こういう理由で苦手だが、この対処法を使うと仕事がしやすくなる」というように、困っていることと対処法をプラスの表現で伝えることです。

 

困っていることだけを伝えても、相手はどう対応していいのかわかりません。また、対処法だけを伝えても会社として動いていいのか判断も難しいでしょう。

 

そこで、働きやすくなるという双方にとってメリットがある伝え方をすることで、周りの方からの理解も得やすくなります。

 

もちろん、職場によってはスマートフォンの持ち込みが不可など対応が難しい場合もあります。自身の特徴と周りの環境がうまくかみ合わないと感じたときは、利用できる支援機関に相談してみる、対処法を実践しやすい職場への転職も視野に入れるなども考えてみるといいでしょう。

発達障害のグレーゾーンのまとめ

今回は発達障害のグレーゾーンの方の特徴や困りごと、仕事をしやすくするための対処法などを紹介しました。

 

発達障害のグレーゾーンの方は困ることが多くあっても、診断がないために利用できる支援が少ないといった状況にあります。

 

そのため、自身で特徴を把握して対処法を実践していくことが大事です。それとともに、発達障害の診断がなくても利用できる支援機関も活用しながら、働きにくさの解消を図っていくといいでしょう。

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