場面緘黙(選択性緘黙)とは|症状・原因・治療法と医療相談の目安
更新日:2026/05/30
「家では普通に話せるのに、学校や職場ではまったく声が出ない」――場面緘黙(選択性緘黙)について、ご本人やご家族からよくいただくご相談です。
場面緘黙は、本人の性格や努力不足、わがままで起きているものではなく、不安症のひとつとして位置づけられている状態です。早期に環境を整え、医療や心理の専門職による支援を受けることで、話せる場面を少しずつ広げていけると考えられています。
この記事では、場面緘黙の症状・特徴・原因・子どもと大人の違い・治療や支援の選択肢・医療機関を受診する目安までを順に整理してお伝えします。
結論:場面緘黙は「不安症の一種」で、環境調整と専門的支援で話せる場面は広げられる
最初に結論からお伝えします。
場面緘黙(選択性緘黙)は、家庭など安心できる場面では話せるのに、学校・職場・初対面の人の前など特定の社会的状況では声が出ない状態が続く、不安症のひとつとして位置づけられています。
そのうえで、次の3点を押さえておくと、この先の判断がしやすくなります。
ひとつめは、場面緘黙は「話したくない」のではなく「話したいのに話せない」状態であり、本人の性格やわがまま、努力不足によるものではないということ。
ふたつめは、米国精神医学会のDSM-5や世界保健機関(WHO)のICD-11では、不安症(不安障害)の枠組みに位置づけられており、医療機関や心理職による支援の対象となること。
みっつめは、早期に気づいて環境を整え、医療や心理の専門職と連携することで、話せる場面が少しずつ広がっていくケースが多く報告されていることです。
「話せないのは本人のせい」と捉えるのではなく、「不安が高まりやすい状態のなかで、どう環境と関わり方を整えていくか」を一緒に考えていく姿勢が、本人と周囲の両方にとって現実的だと考えています。
なお、場面緘黙の状態を判断するには医療機関での診察が必要です。本記事の内容はあくまで一般的な情報整理であり、診断の代わりにはなりません。
場面緘黙(選択性緘黙)とは
場面緘黙(ばめんかんもく)は、家庭などの安心できる場面では普通に話せるのに、学校・職場・特定の社会的な場面では一貫して話すことができない状態が続く、不安症の一種です。
英語では「Selective Mutism(選択性緘黙/セレクティブ・ミューティズム)」と呼ばれ、日本語の医学用語でも「選択性緘黙」と表記されます。一般には「場面緘黙」「場面緘黙症」という呼び方が広く使われていますが、いずれも同じ状態を指します。
「話したくない」のではなく「話せない」状態
場面緘黙でよく誤解されるのは、「話したくないから黙っている」「わざと無視している」という見方です。
実際には、本人は「話したい」「答えたい」と思っているにもかかわらず、強い不安によって声が出せない状態になっている、と現在では理解されています。
家ではよくしゃべる、家族や仲のよい友人とは話せる、しかし学校や職場、初対面の場面になると言葉が出てこない――こうした特徴的なパターンが、場面緘黙の状態像です。
DSM-5・ICD-11での位置づけ
米国精神医学会の診断基準DSM-5では、場面緘黙(選択性緘黙)は「不安症群/不安障害群」のひとつとして整理されています。
世界保健機関(WHO)のICD-11でも、同様に不安症の枠組みに位置づけられており、医療機関や心理職による支援の対象として扱われる状態です。
「精神疾患の一種」と聞くと身構えてしまう方もいらっしゃるかもしれませんが、ここでお伝えしたいのは、本人の努力不足や性格の問題として片づけられるものではなく、医療や心理の専門職による支援が想定されている状態だということです。
発症の時期と頻度
場面緘黙は、おおむね2〜5歳ごろの幼児期から学童期にかけて発症することが多いとされています。
幼稚園・保育園や小学校入学など、家庭から外の社会的環境に出る場面で「話せないこと」に気づかれるケースが多く見られます。
発症率は子ども全体の0.2〜0.5%程度と報告されており、決して珍しい状態ではありません。ただし、家庭では普通に話せるため周囲に気づかれにくく、見過ごされたまま思春期や成人期に至るケースもあります。
「話さないこと」が学業・仕事・対人関係に影響する状態
DSM-5では、場面緘黙の診断基準として「話さないことが学業・職業上の成績、または対人的コミュニケーションを妨げている」ことが挙げられています。
つまり、単に「人見知りが強い」「無口な性格」というレベルではなく、本人の生活・学業・仕事に支障が出ている状態が、場面緘黙として支援の対象になります。
「うちの子は人見知りが強いだけかもしれない」と感じる場合でも、学校や園で長期にわたって話せない状態が続き、本人や周囲が困っているようであれば、医療機関や心理職への相談を検討する価値があります。
場面緘黙の症状・特徴
場面緘黙の症状は、「話せない場面」と「話せる場面」のコントラストがはっきりしている点が特徴です。
本人によく見られる行動面・身体面・心理面の特徴を順に整理します。
行動面の特徴
行動面では、次のような特徴が見られることがあります。
ひとつめは、特定の場面で声が出ないこと。授業中の発表・先生からの質問・職場での会議・初対面の人との会話など、社会的な状況で声が出にくくなります。
ふたつめは、声以外の手段でコミュニケーションを取ろうとすること。うなずく・首を振る・メモを書く・指差すなど、非言語の方法で意思を伝えようとするケースが多く見られます。
みっつめは、表情が硬くなる・動きが少なくなるといった「固まる」状態。緊張が高まると、声だけでなく動き全体が止まってしまうこともあります。
よっつめは、特定の人とは話せるが特定の人とは話せないなど、対人関係によって話せるかどうかが変わること。家族とは話せるが先生とは話せない、友人とは話せるが先生やクラス全体の前では話せない、というパターンが代表的です。
身体面の特徴
身体面では、話そうとした際に次のような反応が見られることがあります。
呼吸が浅くなる・心臓がドキドキする・手足が冷たくなる・お腹が痛くなる・吐き気が出るなど、不安が強くなったときの自律神経系の反応が起こりやすい傾向があります。
学校や職場に行く前にお腹が痛くなる・体調を崩しやすいなど、登校・出勤そのものに身体症状が出ることもあり、不登校や休職と重なるケースも少なくありません。
心理面の特徴
心理面では、次のような状態が見られます。
「話したいのに話せない」「うまく言葉が出てこない」というもどかしさ、「みんなに変に思われているのではないか」という不安、「答えなければいけないのに答えられない」自己否定感などが、本人の中に積み重なっていきやすい傾向があります。
成人期まで持ち越したケースでは、長年「話せない自分」を責め続け、自己肯定感が低下しているケースもあります。
「単なる人見知り」との違い
「うちの子は人見知りが強いだけでは」「内気な性格だから」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
一般的な人見知りや内向的な性格と場面緘黙の違いとして挙げられるのは、次のような点です。
人見知りや内向的な性格は、慣れることで徐々に話せるようになっていくケースが多いとされています。一方、場面緘黙では、同じ環境に長く通っていても、特定の場面では一貫して話せない状態が続く傾向があります。
また、場面緘黙では「話せないこと」が本人の学業・仕事・対人関係に明確な支障をもたらしている点も、医療や支援の対象として整理される基準になります。
「人見知りなのか、場面緘黙なのか」を本人や家族だけで判断するのは難しいため、長期にわたって話せない状態が続いて本人や周囲が困っている場合は、医療機関や心理職への相談を検討することをおすすめします。
本記事における「症状の例」の扱い
本記事で挙げた行動面・身体面・心理面の特徴は、場面緘黙の方によく見られる状態の例として整理したものです。
これらをご自身やお子さんの状態と照らし合わせるための「セルフ判断ツール」として使うことは意図していません。
「場面緘黙かもしれない」と感じた場合は、医療機関や心理職に相談し、専門職による評価を受けたうえで方向性を一緒に整理していくことをおすすめします。
場面緘黙の原因(最新の知見)
場面緘黙の原因については、これまでさまざまな仮説が提示されてきましたが、現在の研究では「単一の原因によるものではなく、複数の要因が組み合わさって生じる」と考えられています。
「親の育て方が悪い」「本人がわがままだから」といった理解は、科学的な根拠が乏しいとされています。
不安症としての位置づけと「素因」
場面緘黙はDSM-5・ICD-11ともに不安症(不安障害)の枠組みに位置づけられており、もともと不安を感じやすい気質(行動抑制傾向)を持つお子さんに多く見られると報告されています。
「初めての場面で身構えやすい」「新しい環境への適応に時間がかかる」「慎重で観察的な傾向が強い」――こうした気質は、生まれ持ったものに近い「素因」として理解されており、本人や家族の責任ではないとされています。
遺伝的要因
場面緘黙のあるお子さんの家族には、社交不安症や不安症の傾向のある方が見られるケースが多く、遺伝的要因が一定程度関わっていると考えられています。
ただし、「親が不安症だから子も必ず場面緘黙になる」という単純な関係ではなく、遺伝的な素因のうえに他の要因が組み合わさって発症するものと理解されています。
環境要因
家庭以外の場面で強い不安や緊張を感じる状況が続くこと、引っ越しや転校など環境の大きな変化、言語や文化の異なる環境への移行などが、発症のきっかけになるケースがあるとされています。
ただし、環境要因単独で場面緘黙が「起こる/起こらない」というものではなく、本人の素因と組み合わさって症状に表れると考えられています。
神経発達症が併存するケース
場面緘黙のあるお子さんのうち、自閉スペクトラム症(ASD)や言語発達のゆっくりさが併存しているケースも報告されています。
「人とのコミュニケーションそのものに難しさを抱えている」状態と、「特定の場面で話せない」状態とが重なって表れることがあるため、専門職による丁寧な見立てが大切になります。
発達障害との関連を整理する場合は、医療機関や心理職と相談しながら進めていくのが現実的です。
「親の育て方は原因ではない」
ご家族から「自分の育て方が悪かったのではないか」「もっと外に連れ出すべきだったのではないか」とご相談いただくことが少なくありません。
現在の知見では、親の育て方そのものが場面緘黙の原因になるとは考えられていません。
そのうえで、本人が安心して過ごせる家庭環境・学校環境・職場環境を整えることは、症状や困りごとの軽減につながると考えられています。
ご家族が自分を責めるのではなく、本人と一緒に環境を整える視点を持っていただくと、長い目で見て安心です。
二次的な心理的影響
場面緘黙そのものとは別に、本人が「話せないことを責められた経験」「失敗を予期して不安を強める経験」を重ねることで、自己肯定感の低下や社交不安、抑うつ状態などが二次的に重なるケースもあります。
成人期の場面緘黙のある方では、不安症や抑うつなど他の心理状態が重なることもあるため、医療機関での総合的な見立てを受けることが望ましいと考えられています。
子どもの場面緘黙と大人の場面緘黙の違い
場面緘黙は幼児期から学童期に発症することが多い一方、症状の出方や本人の感じ方は、年齢によって大きく変わります。
「子どもの場面緘黙と、大人の場面緘黙は同じものなのか」というご相談もよくいただきます。
子どもの場面緘黙の特徴
子どもの場面緘黙では、家庭では普通に話せるのに、保育園・幼稚園・学校で声が出ない状態が長く続くのが典型的なパターンです。
幼児期には「人見知りが強い」「慣れていないだけ」と捉えられやすく、医療機関や心理職への相談につながるのが学童期以降になるケースも少なくありません。
学校での具体的な困りごととしては、次のような場面が挙げられます。
授業中の発表ができない・先生からの質問に答えられない・友達と話せず孤立しやすい・グループ活動で意思を伝えにくい・給食や休み時間に困っても助けを求められない――こうした場面が積み重なることで、本人の学業や対人関係に影響が及びます。
学校では話せないが家では普通に話している、というギャップから、「学校でわがままを言っている」「甘えているだけ」と誤解されてしまうケースもあります。
早期に学校と家庭と医療・心理職とが連携し、「話せないのは本人の努力不足ではない」という理解を共有することが、二次的な心理的負担を防ぐうえで大切だと考えられています。
大人の場面緘黙の特徴
子どものころから場面緘黙が続いて成人期に至るケース、成人期に入って職場や対人場面で初めて困りごとが顕在化するケースなど、大人の場面緘黙にはいくつかのパターンがあります。
大人の場面緘黙でよく見られる困りごととしては、次のような場面が挙げられます。
職場で電話に出られない・会議で発言ができない・上司や同僚への報告連絡相談が難しい・面接で言葉が出てこない・接客や受付業務が負担になる・職場の飲み会で会話が続かない――こうした場面で困りごとが積み重なることで、就業継続や転職活動に影響が及びます。
子どものころから「話さない子」と扱われ続けてきた経験のある方では、自己肯定感の低下や社交不安、抑うつなどが重なって表れているケースもあります。
大人の場面緘黙では、症状そのものへのアプローチに加えて、長年の経験から積み重なった心理的負担や自己評価への影響にも目を向けながら、本人が安心して過ごせる環境を整えていく姿勢が大切だと考えられています。
思春期に顕在化するケース
幼児期から続いていた場面緘黙が、思春期になって本人の自覚として強く意識されるようになるケースもあります。
「同級生と比べて自分は話せない」「自分だけうまくいかない」という気づきから、自己肯定感の低下や登校への抵抗が強まることがあり、不登校や進路選択への影響が出るケースも少なくありません。
思春期の支援では、医療機関や心理職と連携しながら、本人の気持ちのペースを尊重し、安心できる場をつくっていく姿勢が大切だと考えられています。
場面緘黙の治療・支援のアプローチ
「場面緘黙は治るのか」というご質問を多くいただきます。
結論からお伝えすると、場面緘黙の症状や困りごとは、医療機関や心理職による支援、学校や職場での環境調整、家庭での関わり方の整理を組み合わせることで、話せる場面を少しずつ広げていけると考えられています。
ただし、すべての場面緘黙が「短期間で完全に消える」ことを目標にするわけではない、というのが現在の支援の流れです。
早期発見・早期支援の重要性
場面緘黙は、発症からの期間が長くなるほど、本人の中に「話せない場面の固定化」「予期不安の強化」が積み重なり、状態の整理に時間がかかる傾向があるとされています。
「気づいたときに早めに専門職に相談する」ことが、その後の支援の幅を広げるうえで大切だと考えられています。
「様子を見ているうちに自然に話せるようになるかもしれない」と先延ばしになりがちな状態ですが、長期にわたって話せない場面が続いている場合は、医療機関や心理職への相談を早めに検討することをおすすめします。
認知行動療法・行動療法的アプローチ
場面緘黙への心理的支援としては、認知行動療法や行動療法的アプローチが用いられることがあります。
具体的には、「不安が低い場面から段階的に話せる体験を積み重ねていく」「成功体験を肯定的にフィードバックする」「話せる人・話せる場面を少しずつ広げていく」など、本人の不安に寄り添いながらスモールステップで進めていく方法が中心です。
医療機関や心理職と相談しながら、本人のペースで取り組んでいくのが現実的です。
薬物療法(医師の判断のもと)
場面緘黙そのものに対する薬物療法は、不安症や抑うつなど他の状態が併存する場合に、医師の判断のもとで検討されることがあります。
薬の使用については、医療機関での診察と説明を受けたうえで、本人やご家族と一緒に方針を決めていく流れになります。「薬を使えば話せるようになる」と単純化できる話ではない点には注意が必要です。
学校での環境調整
子どもの場面緘黙では、学校との連携が特に大切になります。
具体的な配慮例としては、次のようなものが挙げられます。
発表や音読を強制せず、書いたものを読んでもらう・うなずきや書字で意思を確認する形にする・少人数や個別の場面から話せる体験を積み重ねる・教室外(保健室・相談室など)で安心できる場をつくる・先生や同級生に場面緘黙への理解を共有する――こうした配慮を学校と家庭と医療・心理職で連携しながら一緒に検討していきます。
特別支援教育や通級指導教室、スクールカウンセラーとの連携も、選択肢のひとつになります。
職場での合理的配慮
大人の場面緘黙では、職場との合理的配慮の相談が現実的な対応のひとつになります。
具体的な配慮例としては、次のようなものが挙げられます。
電話対応をメールやチャットに切り替える・口頭での説明を書面で補う・会議での発言を書面やチャットでの補足にする・面談の場面を1対1や少人数に整える・接客や受付業務の負担を調整する――こうした配慮を、本人の状況と職場の業務内容を踏まえて一緒に検討していくのが現実的です。
合理的配慮を申し出る際は、医療機関や心理職、産業医、ハローワーク、障害者就業・生活支援センターなどの支援機関と連携しながら進めていくと、整理がしやすくなります。
家庭での関わり方
ご家庭での関わり方として、いくつか整理しておきたいポイントがあります。
ひとつめは、「話せないこと」を責めたり強要したりしないこと。「なんで話さないの」「ちゃんと答えなさい」といった声かけは、本人の不安をさらに強める方向に働くことがあります。
ふたつめは、家庭が「安心して話せる場」であることを大切にすること。家庭でリラックスして話せている状態を肯定的に受け止め、家庭外の場面の整理は専門職と一緒に少しずつ進めていきます。
みっつめは、本人のペースを尊重すること。「早く話せるようになってほしい」という気持ちは自然なものですが、本人の不安に寄り添いながらスモールステップで進めることが、結果として早道になるケースが多いとされています。
よっつめは、ご家族自身も孤立しないこと。場面緘黙の支援は長期にわたることが多いため、家族会・ピアサポート・専門家への相談など、ご家族自身が支えられる場を持つことも大切です。
「治る/治らない」の二択を超える
場面緘黙への支援を考えるうえで、「治す/治さない」の二択で捉えるのではなく、「困っている場面ごとに、どう向き合っていくか」を一緒に整理する姿勢が大切だと考えています。
「学校では話せないけれど、家ではよく話す」「職場では話せないけれど、友人とは話せる」――場面ごとの状態を整理し、本人が困っている場面の優先順位を一緒に考えながら、医療機関・心理職・学校・職場・家族と連携して環境を整えていくのが現実的な進め方です。
医療機関を受診する目安
場面緘黙について「医療機関を受診すべきか迷う」というご相談もよくいただきます。
こんなときは医療機関への相談を検討
次のような状況に当てはまる場合は、医療機関や心理職への相談を検討することをおすすめします。
ひとつめは、特定の場面で話せない状態が長期にわたって続いている場合です。「保育園・幼稚園・学校で1か月以上話せない状態が続いている」「職場で長期にわたって特定の場面で声が出ない状態が続いている」など、一定期間続いているときは、専門職と一緒に整理する価値があります。
ふたつめは、本人の学業・仕事・対人関係に影響が出ている場合です。授業に参加しにくい・友人関係を築きにくい・仕事の遂行に支障が出ている・登校や出勤そのものが負担になっているなど、生活面への影響が見られるときは、早めの相談が望ましいと考えられています。
みっつめは、本人の心理的な負担が大きくなっている場合です。「話せない自分」を責める言葉が増える・気分が落ち込みやすい状態が続く・身体症状(腹痛・吐き気など)が出ているなど、気持ちの面での影響が見られるときは、早めの相談が望ましいと考えられています。
よっつめは、ご家族の不安が大きい場合です。「このまま続いてしまうのではないか」「学校で困っていないか」など、家族の不安が大きいときは、医療機関や心理職に一度相談し、見立てを共有していただくのが安心です。
受診先の選び方
場面緘黙の相談ができる医療機関は、お住まいの地域によって異なります。
子どもの場合は、児童精神科・小児神経科・小児科のいずれかが入口になります。地域によっては子ども家庭支援センターや児童発達支援センターでも相談に応じています。
大人の場合は、精神科・心療内科が一般的な入口です。職場での困りごとが中心の場合は、産業医や障害者就業・生活支援センターと連携して進めることもあります。
「どこから始めればよいか迷う」場合は、まずはかかりつけの医師に相談し、適切な専門医療機関を紹介してもらう流れもおすすめです。
学校や園との連携を相談したい場合は、スクールカウンセラー・スクールソーシャルワーカー・特別支援教育コーディネーターなど、教育の支援職と一緒に進めていく道筋もあります。
エンラボカレッジでの自己理解アプローチ
場面緘黙のある方が、生活や仕事の困りごとを整理していくための場として、自立訓練(生活訓練)を選ばれる方もいらっしゃいます。
自立訓練は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのひとつで、生活面・対人面・自己理解を整える時間を持つことができます。
場面緘黙そのものへの治療や心理的支援は医療機関・心理職の領域ですが、「場面緘黙とどう付き合いながら暮らし・働くか」を整理する場として、自立訓練を活用される方もいらっしゃいます。
自立訓練で取り組めること
エンラボカレッジの自立訓練では、8つのプログラム(感情学/コミュニケーション/My Lab./アクティビティ/Life Lab./ソマティック Lab./Social Lab./スキルアップ)を組み合わせて、利用される方の困りごとに合わせた取り組みを進めます。
場面緘黙のある方の場合、たとえば次のような取り組みが想定されます。
感情学では、「話せない場面で感じる不安」「話せないことへの自己否定感」など、感情の動きを整理していきます。
コミュニケーションでは、口頭以外の手段(チャット・メモ・資料・筆談)を組み合わせた伝え方の練習や、自分の特性を周囲に伝える練習を、本人のペースで一緒に進めていきます。
My Lab.では、自分の特性・話しにくい場面・必要な配慮を『自分/支え方マニュアル』として言語化し、卒業後の職場や家族との共有に活用していきます。
ソマティック Lab.では、不安や緊張で身体が固まりやすい状態への気づきと、自分なりの和らげ方を一緒に整理します。
Social Lab.では、安心できる仲間との関わりを通して、少人数の場面から「自分らしくいられる時間」を積み重ねていきます。
医療機関・心理職との連携
自立訓練は、場面緘黙そのものへの治療や心理的支援を提供する場ではありません。
医療機関や心理職による支援を受けながら、生活面・対人面・自己理解の整理を並行して進める使い方が現実的です。
「医療面はクリニックで、生活と仕事の整理は自立訓練で」というように、複数のリソースを組み合わせて利用する形を、利用される方と一緒に検討していきます。
中盤CTA|無料見学・相談のご案内
「自分の状況に近いかもしれない」と感じた方は、エンラボカレッジの自立訓練(生活訓練)の無料見学・相談をご活用ください。
実際の事業所の雰囲気や、プログラムの内容を見たうえで判断いただけます。お住まいの近くの事業所で、まずはお気軽にご相談ください。
オンラインでの相談にも対応していますので、外出に不安のある方も無理なくお問い合わせいただけます。
よくある質問(FAQ)
場面緘黙は大人になってからでも改善できますか?
「治る/治らない」の二択で捉えるのではなく、医療機関や心理職による支援、職場での合理的配慮、生活面の工夫を組み合わせて、話せる場面や困りごとを整理していくアプローチが現在の支援の中心です。
成人期の場面緘黙のある方も、専門職と一緒に方向性を検討することで、無理のない範囲で状況を整えていけるケースが報告されています。
ご自身の状態については医療機関で診察を受けたうえで、専門職と一緒に方向性を検討することをおすすめします。
場面緘黙と人見知りは何が違いますか?
一般的な人見知りや内向的な性格は、慣れることで徐々に話せるようになっていくケースが多いとされています。
一方、場面緘黙では、同じ環境に長く通っていても特定の場面では一貫して話せない状態が続く傾向があり、本人の学業・仕事・対人関係に明確な支障が出ている点が支援の対象として整理される基準になります。
長期にわたって話せない状態が続いて本人や周囲が困っている場合は、医療機関や心理職への相談を検討することをおすすめします。
子どもの場面緘黙は自然に良くなりますか?
「自然に良くなることもあるのか」というご相談はよくいただきます。
幼児期に見られた場面緘黙は、成長過程で症状が落ち着いていくケースもあれば、症状が継続するケースもあるとされています。
家族や周囲が場面緘黙について正しく理解し、本人が安心して過ごせる環境を整えることが大切だと考えられています。
長期にわたって話せない状態が続く場合や本人の負担が大きい場合は、医療機関や心理職への早期の相談をおすすめします。
場面緘黙の原因は親の育て方ですか?
現在の知見では、親の育て方そのものが場面緘黙の原因になるとは考えられていません。
不安を感じやすい気質(素因)に、遺伝的要因や環境要因が組み合わさって発症すると理解されています。
ご家族が自分を責めるのではなく、本人と一緒に環境を整える視点を持っていただくと安心です。
場面緘黙で仕事を続けられますか?
場面緘黙があるからといって、特定の仕事を続けられないと決まっているわけではありません。
電話・会議・接客など、本人が困りやすい場面を整理したうえで、業務の組み立てや合理的配慮を職場と相談していくことで、無理なく続けられる方もいらっしゃいます。
医療機関や心理職、産業医、障害者就業・生活支援センターなどの支援機関と連携しながら、自分に合った働き方を整理していくのが現実的です。
場面緘黙は障害者手帳の対象になりますか?
場面緘黙は不安症のひとつとして位置づけられており、症状や生活への影響の程度によっては、精神障害者保健福祉手帳の対象として認められるケースがあります。
ただし、判断は医師の診断と自治体の審査によりますので、まずは医療機関への相談から進めていただくのが現実的です。
学校での配慮はどう相談すれば良いですか?
学校での配慮を相談する場合は、担任の先生・スクールカウンセラー・特別支援教育コーディネーターなどに、本人や家族の困りごとを書面で整理して伝えるのが現実的です。
医療機関や心理職の意見書を用意できる場合は、書面に添えて学校と共有することで、配慮の検討がスムーズに進みやすい傾向があります。
通級指導教室や特別支援教育の利用についても、教育委員会や学校と相談しながら検討していけます。
大人の場面緘黙はどこに相談すれば良いですか?
大人の場合は、精神科・心療内科が一般的な相談先になります。
職場での困りごとが中心の場合は、産業医・障害者就業・生活支援センター・ハローワークの専門援助部門なども相談先として活用できます。
「医療機関に通うほどではないかもしれない」と感じる場合でも、地域の精神保健福祉センターでは無料の相談を受けられるケースが多いため、まずは一度問い合わせてみるのもひとつの方法です。
まとめ
場面緘黙(選択性緘黙)は、本人の性格やわがまま、努力不足によるものではなく、家庭などの安心できる場面では話せるのに、学校・職場・特定の社会的な場面では話すことができない状態が続く、不安症のひとつとして位置づけられています。
医療機関や心理職による支援、学校や職場での環境調整、家庭での関わり方の整理を組み合わせることで、話せる場面を少しずつ広げていけると考えられています。
「治す/治さない」の二択ではなく、「どんな場面で困っているか」「どんな付き合い方を選びたいか」を整理しながら、複数のリソースを組み合わせて支援を受けていく姿勢が、現在の流れになっています。
場面緘黙についてご自身やご家族の状態を整理したい方は、まずは医療機関や心理職に相談し、専門職と一緒に方向性を検討することをおすすめします。
そのうえで、生活面・対人面・自己理解を整える場として、自立訓練(生活訓練)の活用もひとつの選択肢になります。
エンラボカレッジでは、神奈川県・東京都・大阪府・宮崎県で自立訓練(生活訓練)事業所を運営しており、場面緘黙のある方の生活と仕事の整理を、医療機関や心理職の支援と並行してサポートしています。
「医療機関には通っているけれど、生活や仕事の整理も一緒に進めたい」とお考えの方は、ぜひ一度お問い合わせください。
焦って決める必要はありません。情報を整理して、自分のペースで動き出しましょう。
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無料見学・相談のご案内(CTA)
エンラボカレッジでは、自立訓練(生活訓練)の無料見学・相談を随時受け付けています。
場面緘黙のある方ご本人、またはご家族の方で、「医療機関と並行して生活や仕事の整理を進めたい」とお考えの場合は、お近くの事業所までお気軽にご相談ください。
オンラインでの相談にも対応していますので、外出に不安のある方もぜひお問い合わせください。
「焦って決めずに、まず話を聞いてみたい」という方も大歓迎です。
この記事について【作成・監修】
本記事は、自立訓練(生活訓練)事業所「エンラボカレッジ」を運営する株式会社エンラボの専門職チームが作成・監修しています。
【在籍資格】
精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士・公認心理師
【現場での実践】
自立訓練(生活訓練)・就労移行支援などで、診断名・特性に合わせた個別支援を提供しています。
【運営会社】
株式会社エンラボ/設立2015年4月/神奈川県を中心に首都圏・関西・宮崎で11拠点運営
【本記事の位置づけ】
本記事は一般的な情報の整理を目的としたものであり、医学的な診断や治療の指針となるものではありません。ご自身の状態については、医療機関での診察を受けたうえで、専門職とご相談ください。



