【エンラボストーリー】不安と強迫性障害を越えて見つけた安心できる居場所
公開日:2025/09/29
 
    強迫性障害の診断を受け、不安から外出や人との関わりを避けていたというOさん。「何度も確認行動を繰り返してしまい、生活に支障がある」という状況に苦しんでいました。
そんなOさんは、エンラボでの取り組みを通じて、自分の中にあるマイナスな気持ちと向き合い、少しずつ新しい環境や人との関係を受け入れられるようになっていきました。
「変えられるのは自分だけ。そして自分自身は必ず変われる」――そう話すOさんに、強迫性障害と自立への歩みについて伺いました。
※写真はイメージイラストです。
プロフィール
- Oさん
- 年代:20代
- 診断名:強迫性障害
- エンラボ歴:約2年半(自立訓練2年+就労移行支援半年)
ご自身の困りごと
- 過度な確認行動
- 外出や人と関わることに強い不安がある
- 引きこもり状態への焦り
強迫性障害と自立に向けた一歩
ー エンラボを利用する前の状況を教えてください。
高校3年生の時、「強迫性障害」と診断されました。
アルバイト先では、やっていないことを「やってしまった」と感じてしまい、不安から何度も確認を繰り返していました。
特にコンビニのレジでは、お釣りを渡したはずなのに「渡していないかも」と不安になり、締め作業にも必要以上に時間がかかっていました。
また、同僚の愚痴を聞くたびに「自分のことを言われているのでは」と感じ、強いプレッシャーの中で働いていました。
通信制高校に通っていたため登校はありませんでしたが、不安感で日常生活もままならず、「卒業も危うい」と感じ、病院を受診しました。
ー 高校卒業後、どのように過ごしていましたか?
通信制高校を卒業した後は、1~2ヶ月ほど引きこもっていました。
その時には、コンビニのアルバイトも大学進学を理由に辞めてしまっていたんですが、実際には将来のことを考える余裕もなく…。
「何かしないと」「社会に出ないとこのまま取り残されてしまう」と焦りはあったんですが、不安が大きくて動けていませんでした。
ー エンラボを知ったきっかけは何でしたか?
母がネットで調べてくれて、「見学に行ってみない?」と声をかけてくれたことがきっかけです。
最初は正直、「外に出たくないな」という気持ちが強かったです。
人見知りだし、新しい環境に対する不安感も強かったので、「不安なことを増やさないでくれよ」と思ったくらいでした(笑)。
ー それでも利用を決めた理由は何だったのでしょうか?
母と一緒に見学に行った初日は、私はほとんど話さず、母がスタッフさんと話しているのを横で聞いているだけでした。
ただ、その日は他の利用者さんがいなかったこともあり、落ち着いた空間だと感じました。黒基調の部屋も静かな雰囲気で、「ここなら通えるかもしれない」と思えました。
また、エンラボの「感情学」にも興味がありました。
自分の気持ちをより詳しく知ることで、強迫性障害による不安を少しでも解決できるのではと期待していました。
マイナスな感情も素直に吐き出せる、安心して過ごせる場所に
 
                ※エンラボで安心して過ごすOさん
ー エンラボに通い始めた当初は、どんな様子でしたか?
最初は週3日、月・水・金の午前中だけ通っていました。
目標は「新しい環境に慣れること」。
「挨拶をする」「とにかく行ければOK」という気持ちで通っていました。
不安感はとても強かったですが、アルバイトのときも「行かなきゃならないなら行く」というタイプだったので、通所自体はなんとかできていました。
ー 通っていくうちに、気持ちに変化はありましたか?
少しずつ通うことに慣れ、週3日から週5日に増えていきました。
午前中だけだったのが午後も残る日が出てきて、最終的には週5日。火曜と木曜は午後まで1日中エンラボで過ごすようになりました。
夏の時期だったので「午前中で帰ると一番暑い時間に外に出るのが面倒」と思ったのもありますが(笑)、一番の理由は「ここに残りたい」と思えたことです。過ごしやすく、友だちもできていたからです。
ー エンラボは、Oさんにとってどのような場所ですか?
印象的だったのは、他の利用者さんが不安やイライラなどのネガティブな気持ちを素直に話していたことです。
「自分もそう感じていいんだ」と思えて、安心しました。
不安が強いときは「どうして私だけこんなにネガティブなんだろう」と悩んでいましたが、ここで過ごす中で「自分だけじゃない」と思えるようになりました。
エンラボは、自分の気持ちを否定しなくていい場所。そう感じています。
自分自身は変えられる。不安と向き合いながら新しい挑戦も
 
                ※自分支え方マニュアルを作成するOさん
ー エンラボで過ごす中で、印象に残っているエピソードはありますか?
一番印象に残っているのは「自分/支え方マニュアルの発表会」です。
そこで同じ趣味の人と出会えたことが、とても嬉しかったです。
さらに、支え合える仲間に出会えたことも大きな経験でした。
最初は「絶対仲良くなれないタイプ」と思った女の子とも、スタッフさんが会話をつないでくれたおかげで仲良くなれました。
今では一緒に遊びに出かけたり、プログラムの司会に挑戦したり。
友だちの存在は、不安を和らげ、自立への大きな後押しになりました。
ー 素敵ですね!ご自身の中での不安への向き合い方にも変化はありましたか?
はい、大きく変わりました。
以前は「不安や確認行動をなくさなきゃ」と思っていました。
でも今は「うまく付き合っていく」という感覚に変わっています。
たとえば、持ち物は写真を撮って確認する。
人に聞くときも「やったっけ?」ではなく「大丈夫だよね」と確認するようになりました。
包丁を使うのが怖かった時期もありましたが、今では問題なく使えます。
周囲に「これ大丈夫だった?」と確認する回数も、自然に減らせました。
ー その工夫の裏にはどんな気持ちがあったのでしょうか。
「友だちと遊びたい」「一人で出かけられるようになりたい」という思いが強かったです。
だからこそ、不安と上手に付き合いながら、自分なりに工夫して行動を変えることができました。
エンラボに通う中で、強迫性障害のことを「大したことじゃない」「自分で変えられる」と思えるようになりました。
ここでは正解が決まっていないから、どんな考え方も肯定してもらえます。
ネガティブな感情も否定されず、安心して話せる雰囲気がありました。
他の利用者さんの話を聞くうちに「誰でも不安や怒りを持つ」と知り、自分の気持ちを受け入れられるようになったんです。
そして「障害を抱えながらも自分で行動を変えていける」と思えるようになりました。
新しい環境でも、自分のペースで前に進む。次の目標も。
 
                ※目標について明るく話をするOさん
ー 現在は、どのように過ごしていらっしゃいますか。
エンラボでの2年半を経て、いまは障害者雇用のトライアル就労で働いています。
封入作業や事務的な作業を担当していて、少しずつ業務や新しい環境にも慣れてきたところです。
ー お仕事を始める時、不安はありませんでしたか?
もちろん不安はありました。
でもエンラボでの経験があったからか、「大丈夫かもしれない」と思えるようになりました。
部署の同期と一緒にランチに行ったり、50人くらいいる部署の集まりにも顔を出したりしています。
ー 人間関係にも、ポジティブな変化があったんですね。
はい。以前だったら、「うまく話せなかったらどうしよう」「仕事で絶対ミスできない」という不安の方が大きかったと思います。
でも今はうまく自分の中のネガティブな気持ちを受け入れながら、周囲とのコミュニケーションにも前向きに取り組めています。
ー 今の目標について教えてください
正社員になることが今の目標です。
まだまだ覚えることもたくさんありますが、少しずつ仕事の幅を広げて、自分のペースで成長していきたいと思っています。
一歩踏み出すだけで、見える世界は変わる
ー 記事を読んでいる人へ伝えたいことはありますか?
まずは、一歩踏み出してみるだけでもいいと思います。
大きな目標を立てる必要はないし、「今日は行ってみる」「とりあえず話を聞いてみる」みたいな小さなことからでもいい。
私自身も最初はすごく不安で、人と話すのも苦手でしたが、スタッフさんがたくさん話しかけてくれて、少しずつ馴染んでいくことができました。
相槌を打つだけでも、ちゃんとコミュニケーションとして受け取ってくれて、「話さなきゃ」と無理に思わなくても大丈夫でした。
「変わらなきゃ」と焦っていた時、エンラボで学んだのは、“人は変わらない、変えられるのは自分だけ”という考え方。
でもその「自分を変える」というのも、急にじゃなくて、本当に少しずつでいいんだなって思えたし、自分自身は工夫次第で変えられるんだということにも気付かされました。
最初は怖くても、自分自身の気持ちを知ることで、自然と変わっていけるんじゃないかなと思います。