完璧じゃなくていい、そう思えるまで ー大人の発達障害と向き合った日々ー【エンラボストーリー】
更新日:2026/07/15
「働きたい気持ちはあるけれど、人と関わるのが怖い」
「完璧主義のせいで、次の一歩を踏み出せない」
先の見えない不安のなかで、自立訓練や就労移行支援を行う「エンラボカレッジ(以下エンラボ)」に出会い、利用を始めた30代のIさん。
落ち着いた環境で通所を続けるなかで、まずは自分の本音や課題に向き合うことからスタートしました。
スタッフからの温かい言葉や、失敗を恐れずに挑戦できる日々のプログラムを経験。
「完璧でなくてもいい、自分から行動していいんだ」と少しずつ思えるようになっていきました。
今回は、Iさんがご自身の特性を深く理解し、他者と関わりながら自立に向けて歩み出すまでの、心の変化のプロセスを語っていただきました。
プロフィール
- Iさん
- 年代: 30代
- 診断名: 自閉症スペクトラム(ASD)
- エンラボ歴: 1年
ご自身の困りごと
- コミュニケーションへの苦手意識
- 面接に対するトラウマ
- 完璧を求めすぎてしまう
変わりたいが何もできずに過ごしていた日々
エンラボを利用する前は、とにかく人と関わりたくないという思いが強くありました。 そのため、自宅の部屋にこもって趣味を楽しむ日々を送っていました。
このままではいけないと分かっていても、焦りばかりが募っていました。 過去の就職活動の面接で「あなたにはこの会社は無理だよ」と言われた言葉が心に深く残り、再び動き出す勇気が出ませんでした。
そのような時期に「大人の発達障害」という言葉を知りました。 自分にも当てはまる部分があるのではないかと、考えるようになったのです。
以前仕事をしていたときは、周囲の会話や業務指示のスピードについていけず、戸惑うことが多くありました。 仕事も人間関係も完璧にこなそうと、自分に無理を重ねていました。
次第に心を休める時間がなくなり、涙が止まらないほどつらくなって退職することになりました。
エンラボとの出会い
エンラボを知ったきっかけは、月に一回行われていた「フードパントリー」でした。 フードパントリーとは、食品の無料配布を行う地域の取り組みです。
その会場に、就労移行支援のスタッフの方が来られていました。 そこで、普段抱えていた生活や仕事についての悩みを相談したことが始まりです。
スタッフの方は、私の置かれている状況をとても親身になって聞いてくださいました。 お話をするなかでエンラボを勧めていただき、その場ですぐに体験の予約を入れました。
体験から利用を決める
体験では、スタッフの方が私の話を丁寧に聞いてくれたことが印象的でした。 自分の気持ちをそのまま受け止めてもらえたことが、何よりも嬉しかったです。
その後、スタッフの方に勧められた心療内科を受診しました。 そこで「自閉スペクトラム(ASD)」という診断を受けました。
エンラボの落ち着いた空間で、静かに過ごせる環境も魅力的でした。 他の利用者の方が、それぞれのペースでプログラムに取り組んでいる姿も見学しました。
それらの様子を見て「ここなら自分に合っているかもしれない」と感じたのです。 自宅で立ち止まっていた日々から一歩進み、自分のペースで少しずつ自立に向けて活動したいと思い、利用を決めました。
利用開始して感じたこと
利用を開始した頃は、コミュニケーションへの苦手意識を和らげたいと考えていました。 「他の利用者の方と話をして、練習がしたい」という思いがあったのです。
しかし、最初は自分から声をかけるきっかけがなかなか掴めずにいました。 「相手と意見が違ったらどうしよう」「言葉に詰まったらどうしよう」と不安になり、話しかけられずにいたのです。
通い始めて最初の2〜3ヶ月は、スタッフの方と話をして、ワークを受けて帰る日々を繰り返していました。 それでも、エンラボへ通い続けました。
通い続けるうちに、周囲の利用者の方々の人柄が少しずつ分かっていきました。 今では、共通の趣味を持つ方と交流を楽しめるようになっています。
日々のグループワークを通して、他者の多様な考え方を知る機会も増えました。 自分の意見を周りに伝える、とても良い練習の機会になっています。
エンラボで見つけた課題
エンラボへの通所に慣れてきた頃、改めて自分の課題に気づきました。 具体的には、以下の3つのことです。
- 自分への自信のなさ
- 感情の変化と、その整え方
- 完璧を求めすぎてしまうこと
自分への自信のなさから、自分の考えや好きなことを人に伝えることに強い抵抗がありました。 「受け入れてもらえなかったらどうしよう」「否定されて傷つくのが怖い」という不安があり、いつも当たり障りのない会話しかできずにいたのです。
また、イライラや不安、悲しみなどの負の感情が強くなると、やらなければならないことが思うように進まなくなることもありました。 そこからさらに焦って眠れなくなるなど、自分の感情の波とどのように付き合っていくかが課題でした。
さらに、私は「完璧であること」に強くこだわってしまうことにも気づきました。 周りに助けを求めることができず、何でも自分一人で解決しようと頑張りすぎていたのです。
その結果、人と関わることが難しくなり、心も体も疲れ果ててしまいました。 しかし、エンラボで過ごすうちに少しずつ考え方が変わり、完璧でない自分も受け入れられるようになっていきました。
考え方が変わる大きな転機となったこと
日々のワークに参加し、振り返りを重ねるなかで、大きな転機となる出来事がありました。
それは、スタッフの方からかけられた温かい言葉でした。 「自分の気持ちをしっかり言葉にできているね」 「周囲の変化によく気づけているし、感じていることは間違っていないから、自信を持っていいよ」 そう声をかけていただいたのです。
その言葉に背中を押され、「私にもできることがあるのかもしれない」と少しずつ自分を認められるようになりました。
以前は、困っている様子の利用者さんを見かけても、自分から声をかけることはできませんでした。 心配になりながらも、スタッフの方に報告することしかできなかったのです。
しかし今では、誰かが気づくのを待つのではなく、自分から「何か困っていますか」と声をかけられるようになりました。 失敗を恐れず、自分から行動してみようと思えるように、心が少しずつ変化していきました。
失敗しても大丈夫
コミュニケーションのワークに参加するなかで、「エンラボでは失敗しても大丈夫」と学ぶ機会がありました。
それまでの私は、すべてを完璧にこなそうとするあまり、「失敗は恥ずかしいこと」「絶対に避けなければならないこと」と思い込んでいました。
しかしワークを通じて、失敗から学べることもたくさんあると気づいたのです。 今では、失敗を恐れずにさまざまなことに挑戦していきたいと、前向きな気持ちになれています。
自分に合った働き方とは何か
仕事については、まだまだ慎重に自分に何が合っているのか、働き方を探しているところです。
それでも、エンラボに通う前に比べると、不思議と不安は少なくなっています。 自分自身の特性について理解が深まり、苦手だったコミュニケーションにも少しずつ慣れてきたと感じているからです。
今後は、障害者雇用枠を利用して、自分に合った働き方ができる仕事を探したいと考えています。 最初は週5日で働くことが難しくても、自分のペースで長く安定して働ける職場を見つけていきたいです。
読者へのメッセージ
エンラボのスタッフの方は、さまざまな困りごとに親身になって相談に乗ってくれます。
自分が本当にやりたいことや、将来の夢や目標が今は分からなくても大丈夫です。 まずは通ってみて、ワークを受けたり、他の利用者の方と交流したりするなかで、何か新しいきっかけが見つかるかもしれません。
ですから、まずは安心して一歩を踏み出してみてほしいです。
この記事を読んで、利用しようか迷っている方がいれば、勇気を持って踏み出すその一歩が、生活や未来を変えるきっかけになれば嬉しく思います。