知的障害・学習障害の20代、就職前に自己理解を深めた体験談

更新日:2026/07/09

「人前に立つと、うまく話せない」「一度にたくさんのことを言われると、頭がいっぱいになってしまう」
高校卒業後に就職を考え始めたKさん(20代・知的障害/主に学習障害)が最初に向き合ったのは、このコミュニケーションの不安でした。就職を意識するほど、「自分にできるだろうか」という気持ちが大きくなっていったといいます。

Kさんが選んだのは、すぐに就職を目指すのではなく、まず自分を知ることから始められる場所でした。この記事では、Kさんが約1年のあいだにコミュニケーションの不安と向き合い、自己理解を深めて「人の役に立つ仕事をしたい」という目標にたどり着くまでの歩みを紹介します。

プロフィール

  • Kさん
  • 年代 : 20代
  • 診断名 : 知的障害(主に学習障害)
  • エンラボ歴:約1年
  • 好きなこと:アニメ・ドラマ・映画鑑賞、体を動かすこと

ご自身の困りごと

  • 言葉の意味を理解するのに時間がかかる
  • 一度に多くのことを処理することが苦手
  • 人とのコミュニケーションが苦手

就職前に感じたコミュニケーションの不安

Kさんが自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジに通い始めたのは、高校卒業後、就職を考え始めたことがきっかけでした。

ただ、就職そのものよりも前に、気になっていたことがありました。人とのコミュニケーションです。

「人前に立つと緊張してしまう」 「曖昧な指示だと、何をすればいいのか分かりづらい」

言葉の意味を理解するのに時間がかかったり、一度に多くのことを処理するのが苦手だったり。こうした特性から、Kさんは働くイメージを描く前の段階で立ち止まっていました。

Kさんにとって、これは「がんばりが足りない」という話ではありませんでした。言葉の受け取り方や情報を処理するペースに、Kさんなりの特性があったのです。

エンラボカレッジを選んだ理由

進路を考えるなかで、Kさんは就労移行支援の事業所も見学したそうです。

そのうえでKさんが選んだのが、コミュニケーションや自己理解に時間をかけられるエンラボカレッジでした。すぐに就職活動へ進むより、まず「自分はどんなことが得意で、どんなことが苦手なのか」を知るほうが、自分には合っていると感じたといいます。

エンラボカレッジは、就職だけをゴールに置く場所ではありません。生活する力・人と関わる力といった土台を整えたうえで、就職・進学・復職など、その人の進みたい方向を一緒に考えていきます。Kさんのように「働きたい気持ちはあるけれど、その前に準備したいことがある」という方にとって、自分のペースで進められる環境です。

学生イベントで変わったきっかけ

通い始めたばかりのころのKさんは、聞かれたことに答えるだけで精いっぱいだったといいます。

変化のきっかけになったのが、学生が企画するイベントでした。ハロウィンパーティーの準備を通して、いろいろな学生と話す機会が増えていったのです。

「話してみたら、思ったより楽しかった」

そうした小さな成功体験が積み重なるうちに、Kさんは少しずつ自信をつけていきました。やがて自分から積極的に発言するようになり、新しく入ってきた学生を気にかける場面も見られるようになったそうです。

一方で、相手を優先しすぎて無理をしてしまい、体調を崩すこともありました。今は、人を思いやる気持ちと自分の体調のバランスをどう取るか、というテーマに取り組んでいます。

気持ちを立て直す方法は、Kさんなりに見つけています。中高時代に全国大会に出場した経験のあるバドミントンを、今も友達と楽しむこと。好きなアニメやドラマを観ること。体を動かし、好きなものに触れる時間が、Kさんを支えています。

My Lab.で深めた自己理解

Kさんが一番好きだと話すプログラムが、My Lab.です。

My Lab.は、自分の特徴や得意・不得意をまとめ、周囲に自分の凸凹や必要なサポートを伝えられる『自分/支え方マニュアル』を作っていくプログラムです。

「自分に障害があることは分かっていたけれど、新しく知ることが面白い」

Kさんはそう話します。自分のことを知っていくなかで、「他人に自分の障害をうまく説明できるようになりたい」という気持ちも芽生えてきました。

自己理解は、ひとりで机に向かって完成させるものではありません。Kさんの場合、ほかの学生の意見を聞き、「自分とは違う考え方がある」と知ることが、自分を見つめ直すヒントになったといいます。

「自分だけでは気づけなかった凸凹を知れた」 「何が苦手で、どうすればできるようになるのかが分かってきた」

苦手を無理になくすのではなく、苦手とのつき合い方が見えてくる。それが、仕事や生活のしやすさにつながっていくとKさんは考えています。

「人の役に立つ仕事をしたい」という将来の目標

自己理解を深めるなかで、Kさんのなかに芽生えたのが「人の役に立つ仕事をしたい」という思いでした。

背景には、家族への気持ちもあります。安定した仕事に就いて、親孝行をしたい——。そんな願いから、Kさんは今、介護の仕事に関心を持っています。

ただ、進路をひとつに絞り込んでいるわけではありません。ほかにもやってみたいことがあり、スタッフと相談しながら、自分のペースで探しているところです。

「就職しなければ」と急かされるのではなく、自分の気持ちに正直に、進む方向を一緒に考えていく。Kさんの歩みは、そんな進み方の一例です。

スタッフから見たKさんの変化

最初の頃は緊張が目に見えて感じ取れたKさんでしたが、学生企画イベントをきっかけに周囲とよく話をするようになってきたと思います。

元々、色んな方とコミュニケーションが取れたらいいなというお気持ちをお持ちで、他学生への声のかけ方や心配に感じたことをどう発信していくか、一緒に考えてきました。

エンラボで他学生との交流を通して、少しずつご自身から声をかけられるようになっていきました。さりげない接し方や他者を気遣うコミュニケーションをこの一年で多く目にする機会がありました。

Kさんの「人のためになりたい」という気持ちが、行動につながっているのが素敵だなと思います。

体験から見えてきたこと

Kさんの約1年は、「就職できたかどうか」という結果だけで語れるものではありません。

自分だけでは気づけなかった凸凹を知り、ほかの人との違いから対処のヒントを見つけ、「人の役に立ちたい」という自分の軸にたどり着く。そうした一つひとつの積み重ねが、Kさんの土台になっています。

もしあなたが、今のKさんと同じように「働きたいけれど、その前に自分を知りたい」と感じているなら、まず自己理解から始めるという選び方もあります。答えを今すぐ出す必要はなく、スタッフと相談しながら、自分のペースで進めていけます。

知的障害・学習障害と就職のよくある質問

知的障害があっても就職できる?

働き方の選択肢はさまざまです。障害者雇用や一般雇用、就労継続支援など、自分に合った形を選べる場合があります。

大切なのは、就職を急ぐことより、自分の得意・苦手を知り、必要な配慮を周囲に伝えられるようになることだと考えられます。進め方については関連ページも参照してください。

自己理解はどうやって深める?

Kさんの場合、My Lab.というプログラムで『自分/支え方マニュアル』を作りながら、自分の特徴を整理していきました。ひとりで考えるだけでなく、ほかの人の意見を聞いて「違い」に気づくことも、自己理解を深めるきっかけになる場合があります。焦らず、少しずつ言葉にしていくことが土台になります。

学習障害のコミュニケーションの困りごと、どんな工夫がある?

「曖昧な指示が分かりづらい」「一度にたくさん言われると処理しきれない」といった困りごとには、指示を一つずつ確認する、メモや図で見える形にする、といった工夫が役立つ場合があります。自分に合った工夫は人それぞれです。

障害や生活のことまずは
相談しませんか?

あなたのお悩みやお困りごとについてお聞かせください。

見学・体験も随時受け付けております。