【エンラボストーリー】ASDとうつで“困っているのに伝わらない”私が、自分を理解してもらえる場所に出会った
公開日:2025/09/02

「うまく伝えられない」「どう伝えればいいか分からない」
そんな悩みを抱えていたAさんは、エンラボカレッジの自立訓練(生活訓練)を通じて、少しずつ自分の思いを言葉にできるようになっていきました。
その姿勢や変化は、実習先の企業からも高く評価され、就職という次のステップへとつながりました。
自分のペースで通いながら、社会とのつながりを育んできたAさんの歩みを伺いました。
※写真はイメージイラストです。
プロフィール
- 名前:Aさん(仮名)
- 年代:20代
- 診断名:うつ病、ASD(自閉スペクトラム症)
- エンラボ歴:1年2ヶ月
困りごと
- 実際は困っているのに、「困ってなさそう」と誤解されることが多かった
- 複数人の会話にうまく入れず、黙ってしまうことが多かった
- 自分の気持ちを整理して言葉にするのが難しかった
見学で感じた「ここなら通えるかも」という安心感
ーエンラボを知ったきっかけを教えてください。
大学を卒業して就職活動に踏み出せず、最初は就労移行支援事業所に通っていました。半年ほど通ってアルバイトも始めたのですが、体調や環境が合わずに1年ほどで退職してしまって……。
次の選択肢を悩んでいたときに、前に通っていた事業所のスタッフさんが「エンラボっていう場所もあるよ」と紹介してくれたんです。
ーエンラボを紹介されてから、すぐに見学をしたのでしょうか?
見学にはわりとすぐ行きました。紹介されたあと、スタッフさんが日程も一緒に組んでくれて、2週間も経たないうちに見学できたと思います。
ー見学の時の印象は覚えていますか?
第一印象は「落ち着いていて、安心できそうな場所」でした。人が多い場所やにぎやかな雰囲気がちょっと苦手なので、自分にとってはとても心地よく感じました。
カフェみたいに綺麗で、本がたくさん置いてあって、好きな席に座って自由に過ごしている方たちの姿を見て、「ここなら通えるかも」と思えたのを覚えています。
ー体験利用の中で、印象に残っていることはありましたか?
印象に残っているのは、誰かの意見を否定しないルールがきちんと共有されていたこと。
私は自分の意見を出すのが得意じゃないのですが、それでも「ここなら話してみてもいいかな」と思えるような空気がありました。
「無理しなくていい」と思えた場所だから、通い続けられた

※スタッフと利用について話し合うAさん
ーエンラボの利用を決めたきっかけを教えてください。
見学や体験を通して、「ここなら無理せず通えるかも」と思えたことが一番の理由です。
人と関わるのが苦手というわけではないけれど、あまり話しかけられすぎても困ってしまう私にとって、ちょうどいい距離感のある場所でした。
ーエンラボはどのくらいのペースで通い始めましたか?
最初から週4〜5日くらいで通っていました。午前だけの通所もありましたが、基本的には1日通して参加していました。
ー続けて通うことができた理由は何でしょうか?
無理に「がんばらなきゃ」と思わなくてよかったからです。エンラボでは、自分のペースで過ごしていい空気があって、それが私にはすごく合っていました。
あと、プログラムが楽しくて、自分自身について知れる時間が多かったのも、続けられた理由のひとつだと思います。
気持ちを伝えるのが苦手、だから“整理して言葉にする”ことを練習をした
ーご自身の「困りごと」と向き合う中で、どんなことを意識していましたか?
私はもともと、「自分が困っていることをうまく伝える」のが苦手で。
周りからは「そんなに困ってるように見えないよ」って言われることがあって、すごくギャップを感じていました。
だから、エンラボでは「どう困っているのか」を整理して言葉にすることを意識して取り組んでいました。
ー印象に残っているワークやプログラムはありますか?
「マイラボ」と「感情学」のプログラムが特に印象に残っています。
マイラボでは、視覚情報が得意なのか、聴覚情報が得意なのかなど、自分の特性をチェック形式で“見える化”できて楽しかったです。
感情学では、「どんなときに不安を感じやすいか」などを振り返りながら、自分の感情と向き合う良いきっかけになりました。
ー人との関わりで印象に残っていることはありますか?
黒板に気持ちや考えを書くワークが好きでした。
声に出して話すのは少し勇気がいりますが、文字にすることで自然に表現しやすくなって、それが他の人との会話のきっかけにもなっていました。
また、スタッフさんに「そう思っていたんですね」と受け止めてもらえる経験が重なっていく中で、「伝えてもいいんだ」と思えるようになりました。
少しずつ、“伝えられる私”が見えてきた

※ワークに積極的に参加するAさん
ー気持ちを言葉にすることに、変化はありましたか?
最初は「できる気がしない」が口癖だったのですが、通所を重ねるうちに、「ちょっとならやれるかも」に変わっていきました。
振り返りの時間に自分の感じたことを伝えるようになって、「言えば伝わる」という体験が増えていったんです。
ー人との関わり方について、どんな変化がありましたか?
自分のことをちょっとだけ開示してみると、ちゃんと受け止めてくれる人がいる──そう感じられるようになったことで、人との関わりも少しずつ楽になりました。
ーエンラボに通って、自分自身にどんな変化を感じていますか?
「私はこういう人間なんだな」って、少しずつ言えるようになった気がします。自己理解が進んだことが、自信につながっていると思います。
目標は、安心して働けるようになること

※本を読むAさん
ー現在のお仕事について教えてください。
現在は、障害者雇用枠で事務補助のようなお仕事をしています。見学や実習を通じて、「ここでやってみよう」と思えた職場です。
最初は不安もありましたが、実際に働いてみると、自分なりのペースでできていて安心しています。
ーこれからの目標はありますか?
少しずつ勤務時間を増やして、ゆくゆくは正社員になれたらと思っています。個人的には、将来的に実家を出て、自立した生活ができるようになりたいです。
【スタッフの声】焦らず、一歩ずつ。“伝える力”を育みながら進んだ日々
Aさんは通所のなかで、焦らずに自分と丁寧に向き合いながら、一歩ずつ着実に歩みを進めていかれました。
特に印象的だったのは、「自分の困りごとをどう伝えればよいか」をじっくり模索しながら、実際に言葉にし、周囲とつながろうとする姿勢です。
不安や戸惑いを抱えながらも、それを正直に表現し、試行錯誤しながら少しずつ“伝える力”を育てていく様子には、私たちスタッフも学ぶことが多くありました。
自分らしさを大切にしながら、安心できる環境の中で少しずつ力を発揮していくAさん。
その穏やかな歩みが、これからもAさんらしく広がっていくことを、心から応援しています。