適応障害とは?仕事が怖いと感じたときの対処法、原因や症状を解説

公開日:2024/11/21

適応障害とは、強いストレスが原因となって精神的・身体的症状が現れ、日常生活に困難が生じる状態のことです。「仕事」がストレスとなって適応障害が引き起こされることも多く、「会社に行けない」「仕事が怖い」といった悩みを抱える方もいます。
今回は、適応障害で「仕事が怖い」と思ったときの対処法や安心して仕事を続けるためのポイント、適応障害の方が退職・転職するときに気をつけたいことについて解説します。適応障害のある方で、いまの働き方に悩んでいる方や、これからどうすればいいか迷っている方はぜひ参考にしてみてください。

適応障害とは?原因と症状

適応障害とは、ストレス性障害の一つで、何らかのストレスが原因となって心身のバランスが崩れ、日常生活に困難が生じる状態のことを指します。特に、ある一定の状況や出来事がストレスの原因となることが多く、ストレスの原因から離れると症状が次第に改善するケースが多いことが特徴です。

適応障害になる原因

適応障害は、仕事・家庭・恋愛・学校・病気など、生活の中のさまざまな要因が「ストレス」となって引き起こります。例えば、家庭においては、夫婦間や親子間の不和や経済的問題などがストレスの要因となることがあります。他にも失恋、いじめ、受験や就職がうまくいかない、病気の治療、介護など、さまざまなことがストレスの要因となり得ます。

 

仕事においては、仕事内容や職場環境が大きく変わったり、職場の人間関係が悪化したりすることがストレスの要因となる可能性があります。他にも、商談など強いプレッシャーがかかる場面が多い、業務量が多く十分な睡眠・休息が取れない、上司が替わりこれまでとは違う指導をされることが増えたなど、ストレスの要因はさまざまです。ある人にとっては大したことがない変化でも、他の人にとっては強いストレスの要因となり得ます。

 

ストレスがうまく発散できているときは、深刻な問題にならないかもしれません。しかし、ストレスが発散できないまま疲労が蓄積していったり、大きなきっかけはなくても日々の仕事が小さなストレスとして積み重なったりすると、適応障害の症状が見られる場合があります。

適応障害の症状

適応障害でどんな症状が現れるかは、ストレスの内容や置かれている状況、本人の性格などさまざまな要因によって異なります。大きく「精神症状」「身体症状」「行動に関する症状」の3つに分けられ、いずれかが強く出るパターンや、複数の症状が混ざりあって見られるパターンなどがあります。

 

「精神症状」では、気分の落ち込みや焦り、不安、恐怖感などが見られます。著しい意欲の低下や思考力の低下によって、仕事や学業などを続けることが困難になるケースもあります。

 

「身体症状」では、食欲の低下や暴飲暴食、動悸、頭痛、腹痛などさまざまな症状が見られます。神経が過敏になることによって不眠につながるケースや、倦怠感や疲労感が取れないというケースもあります。

 

「行動に関する症状」では、出勤や通学前に身体症状が強く見られ、遅刻や早退・欠勤を繰り返してしまう、無謀な運転やけんかなどの攻撃的な行動が増えるといった症状が見られます。ストレスの原因から離れている休日などには、症状が軽くなるといったケースもあります。

適応障害になりやすい人の特徴

日本システム技術株式会社の調査によると、2018年から2022年の5年間で適応障害と診断された方の数は約1.7倍に増加しており、年々増加傾向にあることがわかります。

 

適応障害患者数推移
参考:適応障害の患者動向について – JAST Lab

 

また、年代別で見てみると20代が最も多く、進学や就職など環境の変化が激しい年代であることが理由として考えられています。

 

適応障害年代別患者数

参考:適応障害の患者動向について – JAST Lab

 

適応障害と診断されるケースは増加傾向にあり、一部の限られた人だけがなる病気ではありません。ストレスのかかる環境にいれば、誰でもなる可能性があります。

 

一方で、適応障害になりやすい人には共通して見られる特徴があると言われています。例えば、下記のような特徴が挙げられます。

真面目で責任感が強い

真面目で責任感が強い方は、仕事において最後まで自分の力だけでやり遂げようとしがちです。適切に周囲の力を借りることができないため、一人で悩みを抱えたり、自身のキャパを超えた業務量を担当したりして、過度なストレスがかかりやすくなります。「自分の責任だ」と過度に自分を責めてしまったり、「自分にしかできない」と感じることが多かったりする人は特に注意が必要です。

人から頼まれると断れない

人から頼まれると断れない方は、自分でも気づかないうちに大きなストレスを抱えてしまいがちです。「嫌だ」と思っていることでも引き受けてしまったり、他人の業務まで抱え込んでしまったりすることで、強いストレスがかかりやすくなります。人から頼られ、役に立てると嬉しいと感じる気持ちもあるかもしれませんが、無理をしてしまっては本末転倒です。自分でも気づかないうちにストレスがかかりすぎないよう注意しましょう。

自分よりも他人を優先してしまう

「人から頼まれると断れない」方と同じく、自分のことよりも他人のことを優先して考えてしまう方もストレスを抱えてしまう可能性が高いです。自分の仕事を後回しにして人の仕事を手伝ったり、休んだ人の業務を代わりに進めたりすると、自分自身の仕事がうまく進まず、強いストレスがかかりやすいです。「自分さえ我慢すれば」「自分が頑張ればいい」と感じてしまいがちな人は注意が必要です。

ストレス耐性が低い

ストレスをうまく発散できなかったり、物事に対して人よりもストレスを感じやすかったりする方もいるでしょう。それ自体が悪いということではありませんが、ストレス耐性が低い方は特に適応障害になりやすいため注意が必要です。他人の発言に振り回されやすかったり、ちょっとしたことでもイライラしてしまったりするという自覚のある方は注意してください。

 

他にも下記のような特徴がある場合も、ストレスを感じやすい性質を持っていると言えるでしょう。

 

・物事を徹底的にやらないと気が済まない

・他人の目や評価が気になる

・心配性で傷つきやすい

・気持ちをうまく切り替えられない

・繊細で変化に敏感

・空気を読むのが苦手

 

一方で、このような特徴を持っているからと言って、必ず適応障害になるというわけではありません。大切なのは自分自身の性格・特徴を知った上で、どんな場面でストレスを感じやすいか、またどのようにすればストレスを解消できるのかを知り、上手にストレスと付き合っていくことです。

適応障害とうつ病の違い

「適応障害」と「うつ病」は、似たような身体的・精神的症状が見られますが、症状のあらわれ方などが異なります。

 

例えば「適応障害」の場合、発症の原因となるストレス源が明確にわかることが多くなっていますが、「うつ病」の場合は発症の原因ははっきりしないケースが一般的です。そのため、「適応障害」の場合はストレスに直面しているときだけ症状が見られ、ストレスから離れると症状が出ず、徐々に回復が見られます。対して、「うつ病」の場合は一日中気持ちが落ち込んでおり、何をしていても楽しくないという状態が長く続きます。

 

また、適応障害とうつ病では治療法も異なります。適応障害の場合はまず、ストレス要因から離れるための「環境調整」が行われます。不眠などの症状が出ている場合は補助的に「薬物療法」を行って症状を和らげたり、ストレスから離れられない場合は認知行動療法などの「精神療法」を取り入れたりします。

 

うつ病の場合は、しっかりと休養を取ることが優先されます。うつ病の症状により気分が落ち込んでいる場合は抗うつ薬、しっかりと睡眠が取れない場合は睡眠導入薬など、「薬物療法」を行うことで心身の休養を取ります。ある程度心身の回復が見られたら、「精神療法」も併せて行います。

 

適応障害とうつ病は異なる疾病ですが、適応障害からうつ病へ移行したり、一時は適応障害と診断を受けても、経過観察のうちにうつ病と診断されたりするケースがあります。厚生労働省が行った調査によると、適応障害の診断を受けた方のうち、約40%は5年後にうつ病を含む他の診断名に変更されているというデータもあります。

 

ストレスを感じた初期の段階で適切な対処・治療を行うことが、早期に適応障害から回復し、今後同じ症状を繰り返さないために重要です。

適応障害で「仕事が怖い」と思ったときの対処法

適応障害になると、「会社に行こうとすると身体が動かない」「仕事のことを考えると、食事や睡眠が十分に摂れない」といったように、「仕事が怖い」と感じやすくなります。そんなとき、どのような対処法があるのでしょうか。

自分の気持ちを否定しない

まずは自分の気持ちを認めることが大切です。「周囲の人も同じような環境で頑張っている」「自分だけ仕事に行かないのは甘え」と自身の気持ちを否定してしまうと、余計にストレスがかかります。

 

一人ひとりストレスに対する耐性の強さは異なります。誰がどれくらいのストレスを抱えているかということは目に見えません。平気そうに見えている人も、大きなストレスを抱えているかもしれません。

 

「会社に行くことができないほど身体の調子が悪い」「仕事が怖いと感じる」といった症状は、許容量を超えたストレスがかかっている証拠です。自分の気持ちを認め、その上で何ができるのかを考えてみましょう。

ストレスの原因を考えてみる

適応障害は、症状を引き起こしているストレス要因が明確になっているケースが多いことが特徴です。自分が何に対してストレスを感じているのか、具体的に分析をしてみましょう。ストレス要因を特定することで、その後の対処法も考えやすくなります。

 

その際、仕事の中でも何に強くストレスを感じているのか深掘りして考えてみましょう。一言で「仕事がストレス」と言っても、仕事内容が自分と合っていないこと、仕事量が多すぎて業務時間内に対応しきれず残業が増えていること、職場の人間関係で苦手な相手と接する機会が増えていることなど、さまざまな要因が考えられます。それらを明確にすると、ストレスの要因から離れるために必要な環境調整の内容も特定できます。

職場の相談窓口(産業医など)に相談する

適応障害になりやすい人の特徴として「真面目で責任感が強いこと」を挙げましたが、そのような方は悩みも一人で抱え込んでしまいがちです。症状が出ているにも関わらず、一人で悩み続けていると、さらに症状が悪化する可能性があります。自分一人で解決しようとせず、信頼できる職場の上司や仲間、友人や家族などに相談するようにしましょう。

 

産業医など、職場に設けられた相談窓口を活用すると、仕事内容や職場環境への理解が早いことから、適切な環境調整方法をスムーズに考えやすい可能性があります。また自分自身から職場に申し出なくても、産業医が職場と連携し、配置換えや業務調整、合理的配慮などを迅速に進めやすいというメリットもあります。

かかりつけ医や医療機関に相談する

職場の上司や産業医などに相談しづらい場合は、社外のかかりつけ医や医療機関などに相談することも可能です。自分一人でストレス要因を特定しようとしても、「これだけの業務をこなすのは当たり前」「深夜まで残業するのは自分の仕事が遅いから」と考えてしまい、客観的に考えることが難しい場合もあります。医師やカウンセラーなどの専門家に相談することで、自分自身が置かれている環境を分析し、ストレス要因が特定しやすくなるかもしれません。

 

精神科や心療内科などの医療機関は予約が取りづらく、特に適応障害の症状が悪化している場合は、自力で予約を取り、病院に行くだけの力が残っていないという可能性も考えられます。早めの段階で専門家に相談することが望ましいでしょう。

休職や転職、退職を検討する

適応障害の原因が仕事であることが明確で、ストレス要因と離れる必要がある場合は、まず「休職」が選択肢に挙がります。休職しても状況の改善がみられないのであれば、「転職」や「退職」も選択肢の一つになるでしょう。

 

しかし、適応障害の症状が強く出ている場合、精神的・身体的な負担が大きく、スムーズに転職活動を進めることが難しい場合も少なくありません。また、納得しない形で転職を行った場合、転職による環境の変化が逆に大きなストレスとなり、適応障害の症状が悪化するリスクもあります。

 

休職や転職、退職などの大きな決断をするときは、自分一人で対応しようとせず、必ずかかりつけ医など客観的な立場でアドバイスをしてくれる第三者の視点を取り入れるようにしましょう。

 

関連ページ:適応障害の休職とは?休職までの流れや会社への伝え方・休職期間中の過ごし方などを紹介

適応障害の方が安心して仕事を続けるポイント

適応障害になっても、退職・転職をせず今のまま働き続けたいという方もいるでしょう。以下のような点を心がけてみると、適応障害の治療と仕事を両立しやすくなるかもしれません。

無理をしない

適応障害の症状が見られて、「仕事が怖い」と感じているような場合は、まずは無理をしすぎないことが大切です。身体症状・精神症状が出ている状態では無理に仕事を続けようとせず、適度に休息を取るようにしましょう。早期の対策によって、症状が長引いたり、悪化したりするリスクを減らすことができるかもしれません。

 

適応障害が原因で会社に行けなかったり、満足に仕事ができなかったりすると、「甘えている」「自分自身がもっと頑張ればいい」と自分を責めてしまうこともあるでしょう。しかし、無理やり仕事を頑張ろうとしても思うように行かず、負のループにはまってしまいがちです。

 

まずは自分が元気なときとは違う状態であること、身体的・精神的症状が出るほど仕事にストレスを感じていることを受け止め、無理のない範囲でできることが何か、考えてみましょう。

業務量を調整する

残業が長期間続いているような、ストレスを感じやすい状態であれば、業務量を減らすことができないか職場に相談しましょう。業務量や労働時間はストレスの原因になりやすいものです。「これくらいは大丈夫」と思っていても、知らない間に業務量が増え、強いストレスを抱えてしまいがちです。自分の体調や精神状態を見ながら業務量をコントロールできればいいのですが、それが難しい場合もあるでしょう。特に適応障害の症状が出ている治療期間の間は、業務量が無理のない範囲に収まるよう、職場に調整を依頼しましょう。

職場環境を調整する

職場環境がストレスの要因となっている場合は、職場環境の調整が必要です。通勤が難しい場合は在宅勤務を増やす、業務を行う場所の騒音がひどい場合は別の場所で勤務したりイヤホンをつけたりするなど、さまざまな調整方法が考えられます。また物理的な調整以外にも、職場の人間関係がストレスの原因ともなり得ます。部署異動や担当するプロジェクトの変更など、ストレスを感じる機会が減るような環境になるよう、職場の上司や人事部などに相談してみてください。

ストレスの原因から離れる

上記の業務量調整や職場環境調整も含まれますが、適応障害を引き起こすストレスの要因から距離を置くことは、適応障害の治療を進める上でも有効な手段です。業務内容が強いストレスの原因となっている場合は担当業務を変更する、今までのやり方から変更するなどの対処が考えられます。

 

ただし、新しいことに挑戦することもストレスになり得ます。自分がどんなことにストレスを感じやすいのか明確にした上で、業務量や業務時間のバランスも見ながら、ストレスの原因となっている事柄から離れられる方法を考えてみましょう。

生活リズムを整える

適応障害から回復するためには、適切な睡眠や食事を摂り、規則正しい生活を送ることが大切です。深夜まで起きていて朝起きれず仕事に行くことができない、食事が十分に摂れず日中仕事に集中できないなど、生活リズムが整わないことで心身が疲労し、余計にストレスを感じやすくなります。まずは眠れなくても、決まった時間にベッドに入る習慣を心がけましょう。

適応障害で休職するときの過ごし方のポイント

現状の環境のまま働き続けることがつらい場合や、まずは心身の休息を優先したい場合は、適応障害を理由に休職することがあるかもしれません。ここでは、適応障害で休職するときの過ごし方のポイントをご紹介します。

休職中の過ごし方

適応障害で休職することになっても、「どう過ごしていいのかわからない」「焦って心が休まらない」という場合もあるでしょう。

 

休職中の過ごし方は、一般的に三つに分けられ、「休養期(治療期)」「活動期」「復職期」と呼ばれています。それぞれの過ごし方のポイントは下記の通りです。

休養期(治療期)

休職を開始したばかりの時期を指します。この時期の過ごし方は、休職の原因となった心身の不調を癒していくことがポイントです。適応障害はストレスが原因で発症すると言われています。この時期の対処方法としては、セルフケアによってストレスを軽減して心の健康を回復させたり、不眠や不安、抑うつ気分が強い場合には薬物療法を行うことが考えられます。この時期はなるべくストレスから離れることが大切で、徐々に生活リズムを整えていきます。

活動期

適応障害の治療や休養によって、適応障害の症状が回復し、意欲も出てくる時期を指します。この時期は、自分が楽しいと感じることを積極的に行い、復職に向けて安定して活動できる時間や量を増やしていくことがポイントです。

 

過ごし方としては、読書や映画鑑賞などの趣味を楽しむことや、ジョギングや軽いスポーツなどを行ってリフレッシュしつつ、体力をつけていくことがおすすめです。ただし、適応障害はストレスによって体調が変化するため、無理に活動量を増やすと再び症状が現れる可能性もあります。最初は短時間から始め、徐々に時間を延ばしたり、複数のことを一気に始めるのではなく一つずつ様子を見たりすることが大切です。

復職期

活動量が増え、働く意欲も高まってきた上で、具体的に職場復帰についての話し合いを行っていく時期を指します。かかりつけ医や会社の人事担当者と相談しながら、復職の時期や復職する部署、復職後の業務量、勤務時間調整など、無理なく復職できるように詳細を決めていきます。無理をして復職後すぐに以前と同じ条件で働こうとすると、また適応障害の症状があらわれる可能性もあります。安心して復職できるよう、しっかりと相談した上で復職プランを決めていきましょう。

 

自分自身でできる準備としては、「復職した後の生活を見据えて、同じ時間に就寝・起床するようにする」「会社までの通勤ラッシュを経験しておく」などが挙げられます。

 

適応障害の方の休職中の過ごし方や休職取得までの流れについては、関連記事でより詳しく解説しています。ぜひ一度参考にしてみてください。

復職したい場合

復職する際の流れは、各企業が定めている就業規則などによって異なります。

 

一般的には、適応障害の症状が回復し、復職したいとなった場合は、まず復職診断書の取得が必要になるケースが多いようです。休職を取得したときや休職期間中に治療を担当したかかりつけ医に相談して、「復職が可能かどうか」判断してもらいましょう。

 

加えて、産業医による復職面談で本当に復職が可能かどうかの判断が行われます。本人が復職する意思があること、生活リズムが整ってきていること、定時に勤務できること、職場の受け入れ支援が準備されていることなど、総合的に見て復職の可否が判断されます。

 

また、具体的にどのような働き方であれば適応障害の再発を防ぎつつ、ストレスの原因から離れて働けるか、職場復帰プランを企業の担当者と相談しながら作成します。並行してリワークプログラムやリハビリ勤務などを行い、問題なく復職できそうか確かめることもあります。企業によって、リワークプログラムやリハビリ勤務などの支援を導入しているかは異なるため、休職から復職する際に相談してみましょう。

適応障害で退職し、再就職するときのポイント

適応障害の症状が見られるとき、現状の職場では回復が見込めないのであれば、退職・転職も選択肢の一つです。一方で、退職する経済的不安や、転職したことによる大きな環境の変化は、適応障害を引き起こすストレスの要因ともなり得ます。退職・転職しても問題ない体調なのかどうかは、かかりつけ医や周囲の信頼できる人との相談も必要でしょう。また、再就職するときには下記のようなポイントを押さえておく必要があります。

自身にとっての「ストレス」をきちんと把握する

適応障害はストレスが原因で引き起こされると考えられています。そのため、自分が何にストレスを感じるのか、適切に把握しておく必要があります。ストレスの原因がわからないと、転職してもまた同じようにストレスを感じ、適応障害が再発・悪化しやすい環境に身を置くことになってしまうかもしれません。どのような職場環境であれば、ストレスを感じる機会が少なく、安心して働き続けることができるのか、事前によく整理しておきましょう。

 

例えば、厚生労働省が運営する「こころの耳」では、5分でできる職場のストレスセルフチェックが提供されています。57問の質問に回答することで、自分がどのような事柄にストレスを感じやすいのか把握しやすくなります。

 

外部サイトへ:5分でできる職場のストレスセルフチェック|こころの耳

求人内容や条件をよく調べる

自分のストレスの原因や対処法が整理できたら、転職する前に求人内容や条件をよく調べ、ストレスが少ない環境か、ストレスに対処できる可能性が高いかを判断しましょう。現状と同じような業務内容の場合、転職先でも強いストレスを抱える可能性があります。また、転職先ではなかなか自由に休みが取れないとなると、ストレス解消がしにくい環境になると考えられます。

 

加えて、転職を考えている職場がメンタルヘルスに関する取り組みを行っているかどうかも判断材料となります。転職先がメンタルヘルスに理解があるようであれば、転職後も業務量調整や職場環境の調整など、配慮を受けられる可能性が高まります。採用ページを見るだけではわからない場合は、採用面談のときに聞いてみるのも良いでしょう。

適応障害の方に向いている仕事内容・職場環境

適応障害の原因となるストレスを何に対して感じるかは、人によって異なります。そのため、適応障害の方に向いている仕事内容・職場環境も一概には言えませんが、下記のような特徴がある職場は比較的適応障害の方も働きやすいと言えるでしょう。

 

・残業や休日出勤があまりない

・リモートワークで働くことができ、通勤のストレスが少ない

・転勤や出張など、大きく職場環境が変わることがない

・これまでの自分自身のキャリアが活かせる業務内容

・適応障害の症状を含め、心身ともにつらくなった時に相談したり環境調整を受けたりすることができる

・臨機応変な対応が求められない、業務内容がルーティンワークになっている

・人とのコミュニケーションが多くなく、自分のペースで業務を進められる

・厳しいノルマがなく、プレッシャーがかかる場面が少ない

適応障害の方が仕事で困ったときの相談先

適応障害の方が仕事について悩んでいる場合、以下の連絡先などで相談することができます。

 

こころの健康相談統一ダイヤル

心の健康についての相談を受けたり、医療機関や福祉サービスなどの情報を提供する電話相談窓口です。厚生労働省の管轄で全都道府県と政令指定都市に共通の電話番号が設置されており、相談に対応する曜日・時間は都道府県や政令指定都市によって異なります。

 

電話番号:0570-064-556

 

・働く人の悩みホットライン

一般社団法人日本産業カウンセラー協会が行っている電話相談で、職場や日常生活についての悩みを一人1日1回30分以内で受け付けています。開設時間は月曜日〜土曜日の15:00〜20:00です。

 

電話番号:03-5772-2183

 

・働く人の「こころの耳相談」

厚生労働省が運営する、労働者やその家族、企業の人事労務担当者などから、心の不調などについての相談を受け付ける窓口です。電話・SNS・メールで相談が可能で、電話・SNSの場合は月曜日・火曜日の17:00〜22:00、土曜日・日曜日の10:00〜16:00に受け付けています。メールは24時間受け付けており、受理されたメールは1週間以内を目安に返信が届きます。

 

電話番号:0120-565-455

 

他にも、ハローワークや障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センターなどで相談窓口が設置されています。

 

また適応障害など障害のある方が利用できる障害福祉サービスに「自立訓練(生活訓練)」があります。自立訓練(生活訓練)とは自立した生活を営めるように、利用者にさまざまな訓練の提供や相談対応をしているサービスです。

 

自立訓練(生活訓練)事業所のエンラボカレッジでは、自分の適応障害の症状の現れ方やサインの捉え方を整理し、その対策や対処法をプログラムや事業所内外での実践を通して、スタッフと一緒に考えていくことができます。

 

そして、自分の適応障害の症状の現れ方やサインの捉え方、その対策と対処法をエンラボ カレッジで作成する「自分/支え方マニュアル」に記載することで、復職後や再就職の際に、相手に自分の障害特性をうまく伝えることができ、理解や配慮を得られやすくなります。

 

また、毎日同じ時間に事業所に通うことで生活リズムの構築にもつながっていきます。

 

関連ページ:自立訓練(生活訓練)とは?就労移行支援との違いやカリキュラム・対象などについて解説します。

 

 

エンラボカレッジでは無料の相談を受け付け中です。「適応障害で休職している」「復職後に適応障害が再発しないか心配」という方は、ぜひ一度ご相談ください。適応障害の原因であるストレスとの向き合い方について、一緒に考えてみましょう。

適応障害に関するQ&A

適応障害の方が仕事で悩みやすいポイントについてまとめました。

Q.適応障害で異動や退職を検討しています。診断書は必要ですか?

「休職」を取得するときは、会社の就業規則などの定めによって医師の診断書の提出が必須の場合があります。一方で、「異動」や「退職」の場合は診断書の提出が必須ではないケースが多いようです。

 

仕事のストレスを減らすため、環境調整を行う目的で「異動」を上司や人事などの担当部署に相談するとき、診断書は必ずしも必要ではありません。ただし医師の診断を受けた証明である診断書があれば、会社側も異動や業務内容の調整などが判断しやすくなる可能性が高くなります。

 

「退職」をする際も、一般的には「一身上の理由」として会社の定めの通り退職手続きを進めれば、わざわざ適応障害が理由であることを述べなくても問題はありません。一方で、引き留めがあった場合に説明することが難しかったり、精神的・身体的につらく退職までの日数を減らしたりしたいときは、診断書を提出することで会社側に配慮が求めやすくなるケースもあるようです。

 

適応障害で仕事がつらいときは、判断力も低下しがちです。退職といった大きな決断は一人では行わず、必ずかかりつけ医など第三者にも相談するようにしましょう。

Q.適応障害で休職したいのですが収入面に不安があります。

休職中、条件を満たすとさまざまな経済的支援制度を活用できる可能性があります。

 

・傷病手当金:

業務外での病気や怪我によって会社を休んだとき、休職中の生活を保証する目的で健康保険から支払われる給付金です。目安としては、自分の給与のおよそ3分の2にあたる額か、全被保険者の平均標準報酬月額の3分の2の額が、支給開始日から最長で1年6カ月間支払われます。

 

・自立支援医療(精神通院医療):

通院による精神医療を続ける必要がある方に対して、医療費の自己負担額を軽減する制度です。公的医療保険による医療費の自己負担額が、3割から1割に軽減され、経済的負担を減らすことができます。

 

・特別障害者手当:

「精神又は身体に著しく重度の障害を有し、日常生活において常時特別の介護を必要とする特別障害者」を対象に、市区町村に申請することで受け取れる可能性のある制度です。令和6年4月より、支給月額は28,840円となっていますが、前年度の所得が一定の基準を超える場合などは対象外です。

 

このようにさまざまな経済的支援制度を活用することで、経済的な不安を軽減しつつ休職することは可能です。ただしどの制度にも適用には条件があり、各種窓口に申請が必要など事前の準備が必須です。休職に入る前に手続きの方法などよく確認しておきましょう。

まとめ

適応障害は、何らかのストレスが原因となって心身のバランスが崩れ、日常生活に困難が生じる状態のことを指します。働いている人の場合、仕事がストレスの原因となることも多く、「朝会社に行こうとすると身体が動かない」「仕事が怖い」などの症状が見られる場合は、適応障害の症状が表れている可能性があります。

 

適応障害の特徴として、ストレスの原因から距離を取ることで回復が見られる点が挙げられます。そのため仕事が強いストレス要因となって適応障害を引き起こしていると考えられる場合は、職場の環境調整を行うことが必要です。特に適応障害の症状が強い場合や、環境調整を行うことが難しい職場の場合は、休職・退職・転職を検討することも必要かもしれません。

 

適応障害の影響もあり、客観的にストレスの原因を特定することが難しい、自分に合ったストレス対処法が見つからないという方は、リワークプログラムなどの支援機関の利用も検討してみてください。適応障害の治療を続けながら働く方法や、どんな職場環境であればストレスを減らして働くことができるかなど、一緒に考えることができます。

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