大人のアスペルガー症候群とは|特徴・診断・頼れる支援先を解説

更新日:2026/05/31

アスペルガー症候群は、2013年発表のDSM-5以降、独立した診断名としては使われなくなり、現在は「ASD(自閉スペクトラム症)」に統合されています。

一方で「アスペルガー」という言葉で自分を理解しようとする大人は今も多く、仕事や対人の場面で同じような困りごとが繰り返されるという声もよく聞かれます。旧アスペルガーに該当する方の多くは「知的発達の遅れを伴わないASD」と位置づけられ、特性理解と環境調整が支援の中心になります。

本記事では、大人のアスペルガー(現ASD)の特徴・困りごと・診断の流れ・頼れる支援先について紹介します。

アスペルガー症候群って何?

ここから、アスペルガー症候群という名称の歴史と、現在の診断上の位置づけを整理します。

名前はどこから来たの?

「アスペルガー症候群」という名称は、1944年にオーストリアの小児科医ハンス・アスペルガーが、対人関係の困難さと特定領域への強い関心を持つ子どもたちを報告した症例に由来しています。

その後1981年、英国の精神科医ローナ・ウィングがアスペルガーの報告を再評価し、「アスペルガー症候群」という名称で英語圏に紹介したことから、世界的に知られるようになりました。

日本でも1990年代後半から2000年代にかけて、「知的発達の遅れを伴わない自閉的特性のある方々」を理解する概念として広く使われるようになっていきました。

古い診断基準ではどう扱われていた?

1994年に発表された米国精神医学会の診断基準DSM-Ⅳでは、「アスペルガー障害(Asperger’s Disorder)」として、広汎性発達障害(PDD)のひとつに位置づけられていました。

WHO(世界保健機関)のICD-10でも「アスペルガー症候群」として、広汎性発達障害のサブカテゴリのひとつに含まれていました。

この時期に「アスペルガー」と診断を受けた方の多くは、現在30代以降の世代に該当します。

2013年にASDへ統合された経緯

2013年に米国精神医学会が発表したDSM-5では、それまで広汎性発達障害の下位分類として整理されていた「自閉性障害」「アスペルガー障害」「小児期崩壊性障害」「特定不能の広汎性発達障害」などを、すべて「ASD(自閉スペクトラム症/Autism Spectrum Disorder)」という単一の診断カテゴリに統合する方針が示されました。

統合の背景には、アスペルガー障害と高機能自閉症などの境界が臨床現場で明確に区別しづらく、共通する特性のスペクトラム(連続体)として捉えるほうが、本人の状態理解と支援設計に資するという考え方があります。

WHOのICD-11(2018年承認)でも、アスペルガー症候群を含む下位分類は廃止され、「自閉スペクトラム症」に整理されました。

今はどう扱われている?

DSM-5以降、新たに「アスペルガー症候群」と診断されることは原則ありません。

ただし、以下のような扱いになっています。

  • DSM-Ⅳ/ICD-10時代に「アスペルガー症候群」と診断された方は、その診断が無効になるわけではなく、現在の医療機関では「ASD(自閉スペクトラム症)」として位置づけ直されるケースが多いとされています。
  • 新たに受診する方で、旧アスペルガー特性に該当する場合は、「ASD(知的発達の遅れを伴わない/日常生活の支援必要度が比較的軽度)」として診断されることが一般的です。
  • 検索や日常会話では「大人のアスペルガー」という表現が今も使われており、本人や家族の理解の入口として機能している側面もあります。

本記事では、現在のASDの一部に位置づけられている「旧アスペルガー特性に該当する大人」を念頭に、特徴や支援を解説していきます。

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大人のアスペルガーの主な特徴は?

大人になってから違和感を持つ方は、子どもの頃から続いていた特性が、就職や結婚など社会的役割が変わったタイミングで顕在化することが多いとされています。

対人関係でつまずきやすい

最も中核的な特徴とされるのが、対人関係や社会的コミュニケーションのとりにくさです。

具体的には、以下のような場面で違和感が現れやすい傾向があります。

  • 相手の表情や声のトーンから気持ちを推測することが苦手
  • 会話のなかの「行間」や「比喩」「冗談」を文字通りに受け取ってしまう
  • 自分の関心のあるテーマを一方的に話し続けてしまい、相手の反応に気づきにくい
  • 集団のなかでの「暗黙のルール」や「空気」がつかみにくい
  • 距離感のとり方が極端になりやすい(近すぎる/遠すぎる)

「悪気はないのに誤解される」「自分なりに頑張っているのに人間関係でつまずく」――そうした経験を繰り返してきた方が、大人になってから「もしかして」と気づかれるケースが多くみられます。

強い興味とこだわりがある

特定の物事への強い関心や、決まった手順への強いこだわりも、中核的な特徴のひとつです。

具体的には、以下のような形で現れることがあります。

  • 自分の関心のある分野(鉄道・歴史・プログラミング・特定のジャンルの音楽など)に深く没頭する
  • 物の並び方や作業手順が決まっていないと落ち着かない
  • 通勤ルートや一日の予定が変わると強いストレスを感じる
  • 同じ食事・同じ服装を好む傾向がある

このこだわりは、適した環境では「集中力」「専門性」「正確さ」として強みになる一方、変化が多い職場やマルチタスクが求められる場面では負担になりやすい側面があります。

感覚の感じ方に偏りがある

ASD全般に共通する特徴として、感覚の偏りがあります。

  • 蛍光灯の光が眩しすぎてつらい
  • 人混みのざわめきや特定の音が耐えられない
  • 服のタグや特定の素材が肌に触れると不快
  • 強い匂いで体調を崩しやすい
  • 痛みや空腹・疲労に気づきにくい(感覚鈍麻)

感覚過敏が強いと、通勤電車・オフィスの照明・会議室の雑音などが大きな負担となり、業務そのもの以前に「環境に居続けること」自体が消耗の原因になるケースがあります。

マルチタスクや予定変更が苦手

仕事の場面で表面化しやすいのが、マルチタスクや突然の予定変更への対応の苦手さです。

  • 複数の業務を同時に進めると、優先順位がつけられず混乱する
  • 「これもお願い」と途中で割り込まれると、もとの作業に戻れなくなる
  • 急な会議や予定変更で、一日の段取りが立て直せなくなる
  • 段取りを自分なりに組み上げた上で進めたいので、「とりあえずやって」と言われると動けない

「決まった手順を正確にこなす業務」では高いパフォーマンスを発揮する一方、変動の多い業務では消耗が早く、定期的に体調を崩すパターンが見られます。

疲れやストレスに気づきにくい

感覚鈍麻の傾向があると、自分の疲労やストレスに気づくのが遅れがちです。

「気づいたときには動けなくなっていた」「ある日突然出勤できなくなった」というかたちで二次障害(うつ病・適応障害・不安障害など)が顕在化することがあります。

「頑張れているうちは頑張る」というスタイルになりやすいため、定期的な振り返りや、第三者(主治医・支援者・家族)と一緒に体調を確認する仕組みが大切になります。

なぜ大人になってから気づく?

近年、「大人になってから初めて発達障害の診断を受ける方」が増えているとされています。

背景としては、以下のような要因が挙げられます。

  • 子ども時代は「変わった子」「真面目すぎる子」として理解され、診断につながらなかった
  • 学校生活では成績や決まったルールへの適応で乗り切れたが、就職後の対人関係や臨機応変な業務で行き詰まった
  • 結婚・出産・転職などのライフイベントで、新しい役割への適応が難しくなった
  • 自分の子どもが発達障害の診断を受けたことをきっかけに、自分の特性を振り返るようになった

「いまさら診断を受けても」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、診断は「自分を責めない理由」「環境調整の根拠」「支援につながる入口」として大きな意味を持つことが多いとされています。

仕事ではどんなことに困りやすい?

大人のアスペルガー特性のある方が、仕事の場面で抱えやすい困りごとを整理します。

曖昧な指示が読み取れない

「いい感じにやっておいて」「適宜判断して」「常識的に対応して」といった曖昧な指示が苦手な方は少なくありません。

  • 何を、いつまでに、どのレベルで仕上げればよいかが言語化されていないと動けない
  • 完成イメージを共有されないまま進めて、後から「思っていたのと違う」と指摘される
  • 上司から「察してほしい」というスタンスを取られると、関係性そのものが消耗する

対策としては、「具体的に何を/いつまでに/どのレベルで」を口頭ではなくテキストで残してもらう、サンプルや完成イメージを共有してもらうなどの環境調整が有効とされています。

雑談や暗黙のルールがつらい

業務そのものより、雑談や昼休みの過ごし方、飲み会の暗黙のルールなどに消耗するケースが多くみられます。

  • ランチをどう過ごせばよいかわからない
  • 雑談の輪に入りづらく、孤立しているように感じる
  • 「飲み会は半強制」のような空気がつらい
  • 「みんながやっているから」というだけの理由で動くことに納得できない

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マルチタスクと割り込みで業務が崩壊

「複数の仕事を抱えてください」「お願い、これも今日中に」が積み重なると、優先順位がつけられず業務が止まってしまうケースがあります。

  • 着手していた業務に戻れなくなる
  • 何から手をつければよいかわからず、フリーズしてしまう
  • 終業時間になっても「今日何をやったかわからない」状態になる

対策としては、業務の優先順位を上司と一緒に整理する、割り込み業務は「いつまでに」を明示してもらう、ToDoリストを可視化するなどが挙げられます。

急な予定変更で消耗する

「明日の朝イチでこの会議に出てほしい」「クライアントから急な依頼が来た」など、予定外の対応で大きく消耗する方は多くいらっしゃいます。

  • 一日の段取りが崩れると立て直せない
  • 突発対応の後に体調を崩す
  • 「変化が読めない仕事」が続くと、出勤そのものがつらくなる

「変動の少ない業務」「ルーチン中心の業務」を選ぶことが、長く続けるうえで効果的とされています。

感覚過敏でオフィスがつらい

業務以前に、オフィス環境そのものが消耗の原因になるケースがあります。

  • 蛍光灯が眩しくて頭痛がする
  • 周囲の話し声・キーボード音・電話の音で集中できない
  • 香水や柔軟剤の匂いで体調を崩す

対策としては、ノイズキャンセリングヘッドホンの使用許可、デスク位置の調整、リモートワークの活用などの環境調整が挙げられます。

うつ病など二次障害の併発

職場での理解が得られず、無理を続けた結果、うつ病・適応障害・不安障害などの二次障害を併発するケースは少なくありません。

就労支援の現場では、アスペルガー特性のある方が二次障害を経て就労移行支援に至るパターンが繰り返し報告されています。「もっと早く特性に気づいていれば」と振り返る方が多いとされており、早期の特性理解と環境調整が大きな意味を持つことがわかります。

二次障害が出てから無理を続けるよりも、「いま自分が消耗している」と気づいた段階で医療機関・支援機関に相談することが、長く働き続けるうえで重要です。

対人や生活ではどう困る?

仕事以外の対人・生活の場面でも、大人のアスペルガー特性のある方が抱えやすい困りごとがあります。

家族や友人とのすれ違い

家庭・友人関係・恋愛関係などで、以下のような困りごとがみられます。

  • パートナーや家族から「気持ちがわからない」と言われる
  • 友人と長く関係を続けることが苦手で、孤立しがちになる
  • LINEやSNSのやりとりで「文字通り」に受け取って誤解が生じる
  • 「冗談」と「本気」の区別がつきにくい

これらは「相手を大切に思っていない」のではなく、「表現や受け取り方の特性によるすれ違い」として整理することができます。

特性を理解した上で、お互いに「言葉で伝える」「文字通りに受け取る前提でやり取りする」など、関係性のルールを話し合うことで負担が軽減されるケースもあります。

生活面で起きやすいこと

生活面では、以下のような困りごとがみられます。

  • 興味のあることに没頭して食事や睡眠を忘れる
  • ゴミ出しや郵便物の確認など「毎日決まったタスク」が抜ける
  • お金の管理が苦手で、衝動的に大きな買い物をしてしまう
  • 役所の手続き・書類の記入が大きな負担になる

これらは「だらしない」のではなく、「実行機能(段取りを立て・優先順位をつけ・遂行する力)の偏り」として整理できることが多いとされています。

家族や支援者のサポート、リマインダーアプリの活用、家計簿アプリの導入などの工夫で、負担を減らしていくことができます。

自己肯定感が下がりやすい

「自分はなぜ普通にできないのか」と長年悩み続けた結果、自己肯定感が低下しているケースは少なくありません。

「自分はダメな人間だ」「努力が足りない」と思い込んでしまっている場合、まず「これは特性によるもの」「努力の量ではなく、向き合い方を変えるとうまくいくこともある」と整理することが、回復への第一歩になります。

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大人のアスペルガー(ASD)の診断|受診先と流れの概要

アスペルガー症候群は、現在の診断基準(DSM-5-TR)では「自閉スペクトラム症(ASD)」に統合されています。診断は、医師がASDの診断基準に照らし、本人・家族からの聞き取り・行動観察・心理検査などを総合して判断するとされています。

受診先は、発達障害(ASD)の診療経験がある精神科・心療内科を選んでみるとよいかもしれません。受診先がわからないときは、発達障害者支援センター・保健所・精神保健福祉センターで地域の医療機関情報を案内してもらえます。

大人になってからの診断では、子どものころのエピソードや学校・職場の客観的な情報があると診断の助けになるとされています。診断基準の項目・大人が診断を受けるまでの4ステップ・費用や期間については、診断にしぼってまとめた以下の記事をご覧ください。

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障害者手帳でどんな制度を使える?

診断を受けた方が利用できる制度を整理します。

精神障害者保健福祉手帳って何ができる?

大人のアスペルガー(現ASD)の診断を受けた方は、「精神障害者保健福祉手帳」の申請対象になることが一般的です。

等級は1級〜3級に分かれており、日常生活や社会生活への支障の度合いに応じて判定されます。

手帳を取得することで、以下のような制度が利用できるようになります。

  • 障害者雇用枠での就職活動
  • 所得税・住民税の障害者控除
  • 公共交通機関の運賃割引(自治体によって異なる)
  • 携帯電話料金の割引
  • 公共施設の利用料減免

手帳取得は任意であり、取得しなくても診断書のみで利用できる制度もあります。

通院費を軽くする自立支援医療

精神科・心療内科への通院や、処方薬の自己負担を軽減する制度です。

医療費の自己負担割合が原則1割になり、所得に応じた上限額が設定されます。

申請は市区町村の障害福祉課で受け付けています。

受給者証で使える障害福祉サービス

「障害福祉サービス受給者証」を取得することで、以下のような障害福祉サービスを利用できます。

  • 自立訓練(生活訓練)
  • 就労移行支援
  • 就労継続支援A型/B型
  • 就労定着支援
  • 相談支援

障害者手帳がなくても、診断書や自立支援医療受給者証をもとに、自治体の判断で障害福祉サービス受給者証が交付されるケースがあります。

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頼れる支援先には何がある?

大人のアスペルガー(現ASD)の方が頼れる支援先を整理します。

まずは精神科・心療内科

最初の相談先は、精神科・心療内科などの医療機関です。

診断・治療(必要に応じた薬物療法・心理療法)・診断書発行などを通じて、生活と仕事の土台を整える役割を担います。

「医療機関を受診してください」――これは大人のアスペルガー(現ASD)に限らず、発達障害の困りごとを抱えるすべての方への基本的なご案内です。

発達障害者支援センターも頼れる

各都道府県・指定都市に設置されている公的な相談機関です。

発達障害のある本人・家族からの相談を無料で受け付けており、医療機関の紹介・支援機関の案内・関係者の調整など、幅広い役割を担っています。

「どこに相談すればよいかわからない」というときの最初の窓口として、活用しやすい機関です。

就業と生活の両面を支える「なかぽつ」

就業と生活の両面から、障害のある方を支援する公的機関です。

職場定着支援・生活相談・関係機関との連絡調整などを行っており、就職前から就職後まで継続的に関わってもらえるのが特徴です。

ハローワーク専門援助部門

各ハローワークに設置されている「専門援助部門」では、障害のある方の就職活動を専門にサポートする職員が配置されています。

障害者雇用枠の求人紹介・履歴書添削・面接練習・職場見学の調整など、就職活動全般を伴走してもらえます。

就労移行支援は就職までを伴走

一般就労を目指す方が、最大2年間の訓練を受けながら、就職活動と職場定着までを一貫して支援してもらえる障害福祉サービスです。

ビジネスマナー・PCスキル・コミュニケーションスキルなどのプログラムが提供され、企業実習を経て就職に進むパターンが一般的です。

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就労移行支援(就労支援)ってどんなところ?

自立訓練で生活の土台を整える

「働き始める前に、まず生活と気持ちの土台を整えたい」という方が、最大2年間(特例で3年)通える障害福祉サービスです。

生活リズム・対人スキル・自己理解・体調コントロールなど、「働くうえで/生きていくうえで土台になる部分」に時間を使えることが特徴です。

二次障害を経て休職中の方が、復職前のリワークとして活用するケースも増えています。

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自立訓練(生活訓練)とは|対象者・利用期間

いまの状態別に支援先を選ぶ目安

「どの支援先が自分に合うか」を、現在の状態に応じて整理すると、以下のような目安になります。

現在の状態 候補となる支援先
診断を受けたばかり/まだ気持ちが整理できていない 医療機関+発達障害者支援センター
二次障害で休職中/生活リズムが崩れている 自立訓練(生活訓練)+医療機関
生活は整っているが就職活動が不安 就労移行支援+ハローワーク専門援助部門
就職しているが定着に不安 就労定着支援+なかぽつ
雇用契約のある働き方が現時点で難しい 就労継続支援B型

「すぐに就職したい」のか「まず生活を整えたい」のかによって、最適な選択肢は変わります。

大人のアスペルガー(現ASD)の実例|自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジ利用者の事例

※以下は自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジを利用された方の支援事例です(医学的な症例研究ではありません)

「特性を理解して環境を整えると、何が変わるのか」を、実例を通じてお伝えします。

実例1|ASD・ADHDのAさんが感情コントロールから働く自信をつかむまで

ASD・ADHDの診断を受けたAさんは、感情のコントロールに悩み、働くこと自体に自信を失っていた時期がありました。

自立訓練を経て、自分の感情の起伏を可視化し、ストレスの対処方法を一つずつ身につけていくなかで、「無理のないペースで働く」という感覚を取り戻していきました。

→ 詳しくは 働く自信をつかむまで をご覧ください。

実例2|ASD・ADHDと向き合いながら自己発信力と働く体力を育んだ20代

ASD・ADHDを持つ20代の方が、自立訓練のなかで「自分の特性を自分の言葉で説明できる」状態を目指し、企業実習を経て就職への一歩を踏み出していきました。

「働きたい」という気持ちはあっても、いきなり就労移行は重いという段階の方が、自立訓練でじっくりと土台を整えた事例です。

→ 詳しくは 自己発信力と働くための体力を育む をご覧ください。

実例3|ASD(自閉スペクトラム症)の自己理解から安定就労へ

ASDの診断を受けた方が、自立訓練を通じて自己理解を深め、自分の特性に合った働き方を見つけて安定就労に至った事例です。

「自分はこういう特性があるから、この働き方が合う」という言語化が進むと、職場での合理的配慮の依頼や、長く続けるための環境調整がスムーズになります。

→ 詳しくは ASDの自己理解から安定就労へ をご覧ください。

業界全体での傾向

就労支援の現場では、旧アスペルガー特性のある方の就職事例として「事務職」「経理事務」「ITエンジニア」「ライター」など、決まった手順や正確さを評価される職種に進まれるケースが多くみられます。

一方で、職場での理解が得られず二次障害を経て就労移行支援に至るパターンも繰り返し報告されており、「早期の特性理解と環境調整」「自分の特性を自分の言葉で説明できる状態づくり」が、長く働き続けるための共通項として浮かび上がります。

公的データから見るASDの就労状況

厚生労働省「平成30年度 障害者雇用実態調査」によると、発達障害のある方の雇用者数は約3万9千人と推計されており、調査の都度増加傾向が報告されています。

そのうち、雇用形態別では正社員が約2割、契約社員・パート等が約6割となっており、職場での合理的配慮を受けながら働く方が一定数いらっしゃることがうかがえます。

出典:厚生労働省「平成30年度 障害者雇用実態調査」(https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05883.html)

向き合うときに大切な5つのこと

ここまでの内容をふまえて、大人のアスペルガー(現ASD)と向き合うときに大切にしたい5つのポイントを整理します。

まずは医療機関を受診する

セルフチェックや書籍だけで自己完結せず、まずは精神科・心療内科などの医療機関を受診してください。

診断を受けることが目的ではなく、「専門家と一緒に自分の状態を整理する」ことが、その後のすべての選択肢の土台になります。

「治す」ではなく「理解して環境を整える」

アスペルガー(現ASD)は、医学的に「治す」病気ではなく、生まれ持った特性です。

「特性をなくす」ではなく、「特性を理解した上で、自分が無理なく続けられる環境を整える」という視点に立つことで、消耗が減り、長く続けやすくなります。

自分の言葉で説明できる状態を目指す

「自分はこういう特性があって、こういう場面で困りやすい。だからこういう配慮があると助かる」――そう自分の言葉で説明できる状態は、職場・家庭・支援者とのコミュニケーションの土台になります。

自立訓練・就労移行支援などのプログラムでは、この「自己理解の言語化」を支援することが、大きな柱になっています。

「いま」と「将来」を分けて考える

「いま消耗していて働けない」状態と、「将来どんな働き方をしたいか」は別の話として整理することができます。

いまは医療機関と自立訓練で土台を整える段階、半年後は就労移行支援で就職準備をする段階、1年後は就職した職場で定着を目指す段階――というように、段階に分けて考えていきましょう。

一人で抱え込まず支援者と考える

家族・友人だけで支えるには限界があるテーマです。

医療機関・発達障害者支援センター・なかぽつ・自立訓練・就労移行支援など、複数の支援先を組み合わせながら、本人と家族が「一緒に考えてもらえる相手」を持っておくことが、長く向き合っていくうえで大きな力になります。

エンラボカレッジでの「特性を言葉にして、次に進む」アプローチ

エンラボカレッジは、神奈川県・東京都・大阪府・宮崎県の11拠点で自立訓練(生活訓練)と就労移行支援を運営している事業者です。

「就職することそのもの」をゴールとせず、「自分の凸凹を理解し、人との関わり方を学ぶ」ことを軸にしている点が特徴です。

アスペルガー特性(現ASD)を持つ方の利用も多く、診断後の方・休職中の方・二次障害を経た方など、さまざまな段階の方をお迎えしています。

自立訓練で「自分/支え方マニュアル」を作る

エンラボカレッジの自立訓練では、ステージ1〜4の4段階で「自分を知る・学ぶ→学んだことができる→学びを応用できる→自信を持ち、次に進める」というカリキュラムを組み立てています。

8つのプログラム(感情学/コミュニケーション/My Lab./アクティビティ/Life Lab./ソマティック Lab./Social Lab./スキルアップ)のなかでも、特にMy Lab.は、利用される方が『自分/支え方マニュアル』という独自成果物を作る時間です。

「自分はどんな特性があるか」「困ったときにどう対処できるか」「周囲にどう伝えるか」を、自分の言葉でまとめていきます。

アスペルガー特性のある方からは、「自分の困りごとを言葉にできるようになって、家族や職場とのやり取りが楽になった」「マニュアルがあることで、新しい環境に進むときの不安が減った」という声を伺うことがあります。

8つのプログラムで生活と仕事の土台を整える

8つのプログラムは、生活・対人・自己理解・就労の4カテゴリをカバーしています。

  • 生活基盤:生活リズム、体調管理、金銭管理、ひとり暮らしの準備、服薬管理
  • 対人:感情コントロール、気持ちの伝え方、距離感、雑談の方法
  • 自己理解:障害(症状)理解、ストレス対処、配慮の言語化、得意・苦手把握
  • 就労:職場ルール、労働習慣、適性把握、PC訓練

アスペルガー特性のある方が消耗しやすい「対人」「自己理解」のテーマに、まとまった時間を使えるのが特徴です。

よくある質問(FAQ)

Q. アスペルガー症候群と自閉スペクトラム症(ASD)は同じものですか?

DSM-5(2013年)以降、アスペルガー症候群はASD(自閉スペクトラム症)に統合され、独立した診断名としては使われていません。

旧アスペルガー特性に該当する方は、現在の医療機関では「ASD(知的発達の遅れを伴わない/支援必要度が比較的軽度)」として診断されるのが一般的です。

「アスペルガー」という名称は今も日常会話や書籍では使われていますが、新規の診断では用いられないとお考えください。

Q. 大人になってから診断を受ける意味はありますか?

意味はあります。

診断は「自分を責めずに困りごとを整理する根拠」「職場・家庭への説明材料」「障害者手帳・障害福祉サービスなどの制度につながる入口」として、大きな役割を持ちます。

「いまさら」とためらわず、気になる場合は医療機関を受診してください。

Q. どこで診断を受けられますか?

精神科・心療内科のうち「成人発達障害の診療を行っている医療機関」で診断を受けられます。

すべての精神科・心療内科が成人発達障害を扱っているわけではないため、受診前に電話で確認することをおすすめします。

地域の発達障害者支援センターに問い合わせると、診療している医療機関を紹介してもらえることがあります。

Q. 障害者手帳は取得したほうがよいですか?

取得は任意で、メリットと留意点を踏まえて判断していただくのが基本です。

障害者雇用枠の利用、税制上の控除、公共サービスの割引など、取得することで広がる選択肢があります。

一方で「家族に手帳取得をどう伝えるか」「就職活動でのオープン・クローズの選択」など、考えるテーマも生じます。

主治医・支援者と相談しながら、本人の納得のいくタイミングで判断するとよいとされています。

Q. アスペルガー特性のある方に向いている仕事は何ですか?

決まった手順を正確にこなす業務(事務・経理・データ入力・校正など)、専門性を深められる業務(IT・研究・ライター・翻訳など)が向いているとされることが多いです。

一方で「人によって違う」ため、自己理解を深めながら、企業実習や体験を通じて自分に合う仕事を探していくのが現実的なアプローチになります。

関連ページ
ASD(自閉スペクトラム症)のある方に向いている仕事

Q. 仕事で疲れすぎて休職してしまいました。どうすればよいですか?

まずは医療機関を受診して、心身の状態を整えることが最優先です。

そのうえで、休職中に「自立訓練(生活訓練)」を利用するという選択肢があります。

エンラボカレッジでも、休職中の方が「リワーク的に利用→復職」というパターンで通われるケースがあります。

復職を目指すのか、退職して別の働き方を選ぶのかも、医療機関・家族・支援者と一緒に考えていけます。

Q. パートナーや家族にどう説明すればよいですか?

「アスペルガー(ASD)という特性があって、こういう場面で困りやすい。だから、こうしてもらえると助かる」と、できるだけ具体的に伝えることが基本になります。

口頭だけで伝えるのが難しい場合は、信頼できる支援者に同席してもらう、書籍やWebサイトを一緒に読むなどの方法もあります。

家族支援を行っている発達障害者支援センターや、家族向けのプログラムを実施している支援機関の活用も検討してみてください。

Q. アスペルガーチェックをやって該当が多かったのですが、診断を受けるべきですか?

Webのチェックは、あくまで「気づきのきっかけ」です。

該当が多い場合でも、Webだけで自己判断せず、医療機関を受診してご自身の困りごとを専門家と一緒に整理してください。

逆に該当が少なくても、生活や仕事で困りごとを感じている場合は、医療機関を受診する価値があります。

Q. 子どもがASDの診断を受けたのですが、自分も似た特性があるかもしれません。

ご自身の困りごとが続いている場合は、医療機関の受診を検討してみてください。

「親自身がASD特性に気づくきっかけ」として、お子さんの診断が役立つことは少なくありません。

ご自身の理解が進むと、お子さんへの関わり方にも余裕が生まれることがあります。

Q. 自立訓練と就労移行支援、どちらを利用すべきですか?

「いまの段階」によって変わります。

生活リズムが崩れている/二次障害から回復途中/自己理解を深めたい段階の方は、自立訓練(生活訓練)が選択肢になります。

生活は整っているが就職活動が不安/2年以内に一般就労を目指したい方は、就労移行支援が選択肢になります。

医療機関・相談支援専門員・各事業所の見学を通じて、自分の段階に合うほうを選んでいきましょう。

まとめ

アスペルガー症候群は、DSM-5(2013年)以降、ASD(自閉スペクトラム症)に統合されました。旧アスペルガー特性のある大人は、対人関係・こだわり・感覚過敏といった特性が仕事や生活の場面で困りごととして現れることがあります。

次の一歩は、気になる場合はまず精神科・心療内科(成人発達障害を診療している施設)を受診すること、並行して発達障害者支援センターなどに相談することです。二次障害を併発する前に動くことが、長く働き続けるための重要なポイントです。

「特性を自分の言葉にして、次に進みたい」という方は、自立訓練(生活訓練)も選択肢のひとつです。エンラボカレッジでも見学・無料相談を随時お受けしています。

ご見学・無料相談のご案内

エンラボカレッジでは、自立訓練(生活訓練)と就労移行支援の見学・無料相談を、神奈川・東京・大阪・宮崎の11拠点で随時お受けしています。

「大人のアスペルガー(現ASD)の診断を受けたばかりで、これからどうすればよいか整理したい」「二次障害から回復しつつあり、次の一歩を考えたい」「家族と一緒に話を聞いてみたい」――そうしたご相談も歓迎しています。

ご見学・無料相談のお申し込みは、エンラボカレッジ公式サイト、またはお電話(050-5538-0786/平日10:00-18:00)からお気軽にどうぞ。

事業所の雰囲気・プログラムの実際・通っている方々の様子を、実際に見てから判断いただけます。

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更新日:2026/05/31 公開日:2023/11/24

この記事について【作成・監修】

本記事は、自立訓練(生活訓練)事業所「エンラボカレッジ」を運営する株式会社エンラボの専門職スタッフが作成・監修しています。

【在籍資格】
精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士

【現場での実践】
自立訓練(生活訓練)・就労移行支援などで、診断名・特性に合わせた個別支援を提供しています。

【運営会社】
株式会社エンラボ/設立2015年4月/神奈川県を中心に首都圏・関西・宮崎で11拠点運営

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