吃音(きつおん)とは|原因や治し方・チェックリストについて解説します。
公開日:2024/03/29
吃音(きつおん)とは「わ、わ、わ、わたしは」など話しはじめの音を繰り返したり、「わーーーたしは」など伸ばすなど、言葉がスムーズに出てこないことがある発話障害です。子どもが発症することが多いですが、大人が発症することもあり、仕事でのコミュニケーションや会議での発表などで困りごとが生じると言われています。
吃音は自然治癒することもありますが、言語聴覚士による訓練や認知行動療法、環境調整を行って困りごとを減らしていくことが多くあります。
今回の記事では、吃音の症状や原因、治療方法、「吃音かも」と思ったときのチェックリスト、大人の吃音の相談先などを紹介します。
吃音とは
吃音とは、話す際に言葉が滑らかに出てこない発話障害のことをいいます。吃音の読み方は「きつおん」といい、主な症状として話す際に「一部の音を繰り返す」「言葉を引き伸ばす」「言葉がなかなか出てこない」などがあります。吃音は多くの場合は幼少期に発症すると言われていますが、大人になっても症状が治まらなかったり、大人になってから発症する場合もあると言われています。自然治癒することもありますが、言語聴覚士のもとでの訓練や環境調整によって困難を減らしていくこともあります。
吃音のある方はうまく話すことができなかった経験から、人前で話すときに緊張してしまい、そのことでさらに話すことができなくなるなど日常生活や仕事において困難を抱えている場合もあると言われています。
なお、吃音は以前は「どもり」とも呼ばれていましたが、差別的な表現ということで現在使用されることはほとんどありません。
吃音の種類や特徴
吃音には「発達性吃音」と「獲得性吃音」の2種類があり、吃音のある方の9割が発達性吃音だとされています。
発達性吃音は主に2~5歳の子どものころに発症することが多く、発症率は幼児の約8%程度と言われています。2語文と言って「ごはん たべる」「ボール 取って」など、2つの言葉を使ってコミュニケーションを取るようになるころに症状が現れることが多いとされていますが、まれに小学校に入学以降に症状が現れることもあると言われています。
発達性吃音は、年齢や調査で比率は変動しますが、男性に多いという調査結果もあります。
吃音のある方のうち7~8割は時間がたつとともに自然に症状が治まっていきますが、大人になってからも症状が残る場合もあります。
子どものころは吃音により幼稚園や保育園、小学校などで友達と話したり、人前で発表する場面でうまく言葉が出ないことで困ってしまうという場合が多く見られます。
大人で吃音がある方は、日常生活のコミュニケーションだけでなく、仕事における上司や同僚、取引先とのやりとりや、会議における発表などで困ることが多いと言われています。
もう一つの吃音である獲得性吃音はストレスや神経の疾患により、主に10代後半以降に発症すると言われています。
吃音の原因
発達性吃音の原因としては、本人の生まれつきの体質的要因が大きく関係していると考えられています。その他にも子どもが成長する過程の発達的要因や、周りの環境との兼ね合いである環境要因も絡んでくると考えられています。吃音は親の子育てが原因と言われていた時もありましたが、現在では吃音と子育ては関係ないとされています。
体質的要因
吃音の体質的要因とは、子どもがもともと持っている吃音になりやすい性質のことです。遺伝的要因もここに含まれており、吃音が発症する原因の8割を占めているとも言われています。
発達的要因
子どもが成長するにしたがって、身体能力や言語能力、あるいは感情などの情緒が一気に発達する時期に心身のバランスが取れなくなることが影響していると言われています。
環境要因
ここで言う吃音の環境要因とは、その人が置かれている状況や関わる人たちのことで、具体的にどういう環境だと発症しやすいかはまだはっきりとはわかっていません。
獲得性吃音の原因
もう一つの吃音である獲得性吃音には、神経学的疾患や脳の損傷により発症する「獲得性神経原性吃音」と、ストレスなどが原因となって発症する「獲得性心因性吃音」という種類があります。どちらの獲得性吃音も発達性吃音と違って大人になってから発症することが多いのが特徴的です。
吃音の症状
吃音は言葉がスムーズに出てこないという症状がありますが、その中でも多いのが一部の音を繰り返す「連発」、一部の音を伸ばす「伸発」、言葉がなかなか出てかない「難発」という3つの症状です。それぞれ詳しく紹介します。
連発
吃音における連発は一部の言葉を繰り返すことで、特に話しはじめの言葉を繰り返すことが多いと言われています。
連発の例
・「明日は」→「あ、あ、あ明日は」
・「おはよう」→「お、お、お、おはよう」
などのように、言葉を繰り返して話すことがあります。
伸発
吃音における伸発は一部の言葉を引き伸ばして話すことを言います。最初の言葉から次の言葉までの間が空いてしまうことが多いと言われています。
伸発の例
・「明日」→「あーーーした」
・「またね」→「まーーーまたね」
などの例があります。
難発
吃音における難発は言葉のはじめの音がなかなか出てこない状態を言います。
難発の例
・「おはよう」→「・・・・・・おはよう」
・「またね」→「・・・・・またね」
などのように話はじめの音が遅れることがあります。
ここまで紹介した症状は、単発で現れることもあればいくつかが組み合わさって出てくる場合もあります。
吃音の症状の特徴
吃音の代表的な症状を紹介しましたが、吃音の症状には波がありいつも同じ状態になるとは限りません。言葉が出てくるときもあれば、なかなか出てこないこともあるなど症状は一定ではありません。
さらに、吃音には言葉の症状だけでなく、随伴運動が見られる場合もあります。随伴運動とは言葉を話す際に身体を一緒に動かすことで、頭や手足を動かしたり、瞬きをしたり、顔をしかめたり、身体をねじったりといった動作をする場合があります。
また、何か工夫したことで言葉が出やすかった場合などに、その工夫を繰り返すこともあります。例えば、話す前に「あのー」とつけると言葉が出やすかった場合は、それ以降も「あのー」と言ってから話し始めるといったことがあります。
このように、吃音は連発や伸発といった症状が現れるだけでなく、二次的な影響も多く見られることが特徴です。
さらに吃音で悩むことで精神的な影響が出ることもあり、抑うつ気分や社交不安障害などの二次障害が生じることもあると言われています。
吃音のチェックリスト
自身や周りの人が「吃音かもしれない」と感じていても、自分で判断するのは難しいと思います。ここでは厚生労働省の資料を基にチェックリストを掲載いたします。当てはまると思ったときは、後ほど紹介する相談機関や医療機関に問い合わせてみるといいでしょう。
- 話しはじめの言葉や一部の音を繰り返す
- 話しはじめの音を引き伸ばす
- 最初の言葉が出づらく、力を込めて話す(特に顔をゆがめる様子がある)
- 以上が断続的であっても1年以上続いている
参考ページ:厚生労働省「吃音、チック症、読み書き障害、不器用の特性に気づく「チェックリスト」活用マニュアル」
このチェックリストに挙げた項目以外にも、気になる状態がある方は一人で抱え込まずに相談するようにしましょう。
吃音の治し方
吃音は7~8割が自然に治っていくと言われています。また、吃音自体を明確に治すという治療法は現在のところ確立されていません。そのため、治療というよりもなるべく話しやすくなるように環境調整などの対処法を行っていくことが多いと言われています。
環境調整
環境調整とは吃音で困ることが少なくなるように、周囲の環境や周りの人とのコミュニケーションの取り方を調整していくことです。
具体的な環境調整の方法は年齢や場面によっても異なってきます。吃音のある子どもの場合は、子どもが話し終わるのを周りの大人がゆっくり待つなどして、コミュニケーションを取りやすいようにするといいでしょう。
また、言葉以外のコミュニケーション手段を用意することも方法としてあります。子どもの年齢に合わせて絵の描いたカードを用意したり、文字を書けるボードやアプリを使うなどして、コミュニケーションを取ることの負担を減らしていくといいでしょう。
こういった環境調整を行うには、家庭だけでなく園や学校にも協力をしてもらうことが不可欠です。担当の保育士や担任の先生、学年主任などに相談してみるといいでしょう。園や学校にソーシャルワーカーなど専門家がいる場合も相談してみるといいでしょう。
大人の吃音の場合
吃音のある大人の場合は、仕事において困る方が多いと言われています。吃音の症状によって難しい業務がある場合は、あらかじめ上司や産業医、社内のメンタルヘルス窓口などに配慮として環境調整が可能か相談してみるといいでしょう。
例えば、会議などでの口頭での発表をテキストでの発表に変えさせてもらうことや、上司とのやり取りにおいて文字を表示できるアプリの使用を許可してもらうなどが方法として考えられます。
また、発達性吃音の場合は発達障害者支援法の対象となっていて、場合によっては障害者手帳の取得ができ、障害のある方専用の障害者雇用求人に応募することが可能となります。障害者雇用で働くことであらかじめ吃音の症状を伝えた上で働くことができ、配慮も受けやすくなるというメリットがあります。
障害者手帳の取得を検討される方は、主治医や自治体の障害福祉窓口に相談してみるといいでしょう。
その他の治療方法
環境調整以外にも、言語聴覚士のもとで発話のトレーニングが行われることもあります。ただ、それだけだと再発しやすいため、認知行動療法やカウンセリングなどの精神療法も合わせて行われることが多いと言われています。
また、吃音以外にもうつや社交不安障害などを発症している場合には、そちらの治療を合わせて行っていく場合もあります。
吃音のある方への関わり方
ここでは、周りに吃音のある方がいる場合の接し方を紹介します。吃音のある方が「あ、あ、あ」など言葉につかえている様子があると、つい「ゆっくりでいいよ」と言ってしまいがちですが、それだと吃音のある方にとって負担となる場合があります。
というのも、「ゆっくりでいいよ」と言われてると、吃音のある方はそれまでの経験から「自分の話し方は間違っている」と注意されているように感じてしまうことがあるようです。
また、吃音のある方が話していることを先回りして「こういうことだよね」ということも、助けとなることもありますが、基本的には口を挟んだりせかしたりせずに話し終わるのを待っているのがいいでしょう。
あらかじめどういったコミュニケーション方法が取りやすいのかを、本人に聞いておくのもいいかもしれません。
大人でも吃音になる?
吃音は子どもが発症することが多いと紹介しましたが、大人にも吃音で悩んでいる方は大勢います。
まず、吃音は2~5歳が発症のピークで7~8割の方は自然に治っていくと言われていますが、時間がたっても症状が治らずに、そのまま大人になるということもあり得ます。また、大人になってから吃音を発症することもあります。
大人になってから発症する吃音はほとんどが「獲得性吃音」といって、ストレスや疾患の影響で発症するとされています。大人の吃音で困っている場合にも、次の章で紹介する支援機関などに相談してみるといいでしょう。
大人の吃音のある方の相談先
ここでは吃音のある方が相談できる窓口を紹介します。また、発達性吃音がある場合は福祉サービスの利用ができる場合もありますので、そちらも合わせて紹介します。
市町村保健センター
各地域にある保健センターでは、吃音をはじめとする障害に関する相談も受け付けています。専門的な知識を持ったスタッフが相談対応をし、状況に合わせて医療機関や支援機関の紹介を行っています。また、どの年齢の方でも相談することが可能です。
医療機関
吃音で医療機関を受診する場合は、一般的には耳鼻咽喉科やリハビリテーション科、精神科、心療内科などになります。子どもの場合はかかりつけの小児科に相談してみてもいいでしょう。
耳鼻咽喉科には言語聴覚士がいる場合もありますので、気になる方は事前に確認しておくといいでしょう。以下のサイトから確認することができますので、参考にしてみてください。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、年齢に関わらず発達障害の悩みについて本人や家族から相談を受け付けている専門機関です。吃音も発達障害にふくまれるため、相談することが可能です。
発達障害者支援センターでも、相談内容に応じて各種アドバイスや他の支援機関や医療機関の紹介などの支援を行っています。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは吃音など障害のある方の、生活と仕事両面のサポートをしている支援機関です。
相談に対してアドバイスや他の機関の紹介、場所によっては訓練を行うことができる場合もあります。生活だけでなく仕事についても悩みがある場合は相談してみるといいでしょう。
自立訓練
自立訓練は吃音などの障害のある大人を対象とし、自立した生活を営むためのスキルを身につけるためのサポートを提供している支援機関です。
生活の中で吃音による困っていることに対して、スタッフのサポートを得ながら解消方法を探っていくことができます。
自立訓練(生活訓練)事業所の「エンラボ カレッジ」では、一人ひとりの困りごとや希望をヒアリングし、現状を整理したうえで、自立へ向けた計画を立て支援を提供しています。
吃音などコミュニケーションで困っている場合は、どのような場面で困ることが多く、どのような方法やツールを使えば困難が少なくなるか、プログラムや事業所内外での実践をスタッフと振り返り、ご自身に合った方法を探していきます。
また、今後就職を考えている場合には、職場における配慮を一緒に検討していくなどのサポートも行っています。
エンラボ カレッジでは無料の相談を実施中です。「吃音で悩んでいる」「コミュニケーション方法を学びたい」という方は、まずは相談だけでもしてみてはいかがでしょうか?
吃音のまとめ
吃音は話始めの音を繰り返すなど言葉が滑らかに出てこない発話障害のことです。吃音の症状には、連発、伸発、難発などがあり、コミュニケーションにおいて困ることが多いと言われています。
吃音は子どものころに発症することが多く、そのうち7~8割の方が自然に治っていくと言われています。しかし、大人になっても吃音の症状が残る場合や、大人になってから発症することもあり、その場合は仕事で困難を抱えることもあります。また、そのことでうつ病など別の疾患につながることもあり得ます。
吃音の治療では言語聴覚士による訓練や精神療法などがある他、環境調整と言って話しやすい状況を作ったり会話以外の手段を用いてコミュニケーションの負担を減らしていく対処法があります。
ただ、対処法を実行するには自分だけでなく、周りにも吃音のことを知らせる必要があります。一人で勧めていくのが難しいと感じる方は、支援機関を頼ることも検討してみるといいでしょう。
エンラボ カレッジにご相談ください
エンラボ カレッジでは自立訓練(生活訓練)事業所を運営し、障害のある方の自立した生活をサポートしています。
エンラボ カレッジでは障害名だけでなく、一人ひとりの困りごとを伺い、現状を整理したうえで、どのような取り組みを行っていくか計画を作成して支援にあたっています。日常生活だけでなく、希望される方には仕事を見据えた上でのサポートも行っています。
吃音と一口に言っても困っていることは人それぞれです、まずは相談をしてみて一緒に解決策を探ってみませんか?エンラボ カレッジでは随時無料の相談会を行っています。「吃音で困っている」という方はまずはお気軽にお問い合わせください。