軽度知的障害と仕事|困りごと10例と向いている職種を解説
更新日:2026/05/30
「仕事のミスが続いて、自分は職場に向いていないのではと感じる」「指示が理解しきれず、同じ失敗を繰り返してしまう」――そんな悩みを抱えながら働いている方も、少なくないのではないでしょうか。
軽度知的障害は、外から気づかれにくいぶん、職場で「努力不足」「やる気がない」と誤解されやすい特性を持っています。本人にとっても、「なぜ自分はうまくいかないのか」が長く分からないまま、職場を転々としてしまうケースが見られます。
この記事では、軽度知的障害のある方が仕事の場面で抱えやすい困りごと10例と対処法、向いている職種、利用できる支援サービスを整理しました。
結論:困りごとは「本人の努力」ではなく「仕組み・環境・支援」で整える
最初に結論からお伝えします。
軽度知的障害のある方が職場で抱える困りごとは、本人の努力だけで乗り越えるものではなく、業務の進め方・職場の環境・外部支援の3方向から整えていくものです。
口頭指示が苦手な方には可視化の仕組みを、複数業務の同時並行が難しい方には優先順位を整理する時間を、人間関係に疲れやすい方には休憩時間の使い方を――それぞれの困りごとに合わせて、職場側と一緒に工夫していく姿勢が前提になります。
向いている仕事の特徴は、手順が明確・変化が少ない・丁寧さが評価されるという3点です。
清掃・軽作業・データ入力・倉庫業務・製造ライン補助など、定型業務を中心とした職種が長く続けやすい傾向があります。
そのうえで、自分の特性・得意・苦手を整理した「自分の取扱説明書」を持って職場とすり合わせていけると、定着のしやすさが大きく変わってきます。
本記事では、その手がかりとして以下を順に扱います。
- 軽度知的障害と仕事の関係性
- 仕事でよくある困りごと10例
- 困りごとへの対処法(業務工夫+ツール活用)
- 向いている仕事の特徴と職種例
- 仕事選びの5つのポイント
- 利用できる支援サービス
それぞれ、わたしたちが現場で見てきた一般的な傾向もまじえてお伝えしていきます。
軽度知的障害と仕事の関係性
軽度知的障害のある方の働き方を考えるうえで、まず制度上の位置づけと、なぜ仕事で困りごとが起きやすいのかを整理しておくと、その後の話が理解しやすくなります。
軽度知的障害の定義と特徴
知的障害は、おおむね18歳までに現れる、知的機能と適応機能の両面に持続的な制限がある状態として整理されています。
知能検査の結果や適応機能の評価をもとに、軽度・中等度・重度・最重度の4区分に分かれており、軽度はIQ50〜69が目安とされています。
軽度知的障害のある方は、日常会話が成り立ち、簡単な読み書きや計算もできるため、外から見ただけでは気づかれにくい区分です。
一方で、抽象的な指示の理解、複雑な手順の同時処理、見通しを立てる作業、お金や時間の管理といった部分で、つまずきが起きやすい傾向があります。
大人の軽度知的障害の特徴をより詳しく整理した記事もご用意していますので、合わせて大人の軽度知的障害の特徴|仕事の困りごとと活用できる支援もご覧ください。
仕事の場面で困りごとが顕在化しやすい理由
軽度知的障害のある方は、学校生活では「成績にばらつきはあるが、なんとか卒業できた」というケースが少なくありません。
ところが、社会人になると要求される能力の種類が変わり、困りごとが一気に顕在化することがあります。
学校では「決まった時間に決まった授業を受け、決まった範囲の宿題をこなす」という、ある程度パターン化された生活が中心です。
これに対して、職場では「複数の業務を同時に進める」「臨機応変な判断をする」「相手の意図を察する」「自分から報告・連絡・相談を判断する」など、見えにくい力が求められます。
この差分が、軽度知的障害のある方にとっては、学校時代との大きなギャップとなって表れます。
雇用率と就労実態
厚生労働省の調査によれば、知的障害のある方の民間企業での雇用は、軽度・中度の方を中心に進んでいます。
雇用形態としては、障害者雇用枠での就労、一般雇用での就労、就労継続支援A型・B型での福祉的就労など、複数の選択肢があります。
「障害者手帳がないと雇用されないのか」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、療育手帳を取得していない方が一般雇用で働くケースも多く、選択肢は一つに限定されません。
ご本人の希望・特性・体調と、職場側の配慮の有無を組み合わせて、合う働き方を選んでいく姿勢が前提となります。
「向いていない仕事」ではなく「合っていない仕組み」
軽度知的障害のある方が「仕事が長続きしない」という悩みを抱えるとき、その背景には本人の能力よりも、職場側の仕組み・指示の出し方・配慮の有無が影響している場合があります。
口頭指示だけで動かされる職場、マニュアルが整っていない職場、報連相の基準が曖昧な職場では、軽度知的障害のある方は実力を発揮しづらくなります。
逆に、手順がマニュアル化され、指示が文書化され、報連相のルールが明確な職場では、安定して働き続けられる方が多くいらっしゃいます。
「自分は仕事に向いていない」と決めつける前に、「この仕組みが自分に合っていないのかもしれない」と捉え直していく視点が、長く働くうえで大切になります。
仕事でよくある困りごと10例
ここからは、軽度知的障害のある方が職場で直面しやすい困りごとを10項目に整理してお伝えします。
「これは自分の話だ」と感じる項目があれば、後半でお伝えする対処法と支援制度を、合わせて参考にしてみてください。
困りごと1|口頭指示だけで動くのが難しい
「あれ、よろしく」「あとはお任せ」のような短い口頭指示では、何を・どこまで・いつまでにやればよいかがつかみづらく、結果として手戻りが発生しやすくなります。
メモを取ろうとしても、相手のペースが速いと書き切れず、後で確認しようにも何を聞き直せばよいか分からなくなることもあります。
困りごと2|複数の業務を同時並行で進められない
電話対応・来客対応・PC作業・上司からの呼び出しが一度に重なると、優先順位がつけられず、どれも中途半端になってしまうケースがあります。
「いまやっていることが終わってから次に進みたい」のに、それを許してくれない職場環境では、混乱とストレスが積み重なっていきます。
困りごと3|マニュアルが長文だと頭に入らない
文字量の多いマニュアルや手順書を渡されても、要点をつかむのが難しく、結局聞き直すことになって申し訳なさを感じる方もいらっしゃいます。
「読んでおいて」と言われても、どこが重要で、どこを覚えるべきかが判断できず、全部を漠然と読み流してしまう経験もよく聞かれます。
困りごと4|暗算・計算ミスが続く
会計・在庫管理・売上集計など、数字を扱う業務でミスが起きやすくなります。
電卓を使えば防げるミスでも、「暗算でやるのが当たり前」という空気のある職場では、頼りづらい雰囲気があります。
ダブルチェックの仕組みがあるかどうかで、負担感が大きく変わる業務です。
困りごと5|時間管理・スケジュール調整が苦手
「あと何分」「次の業務までの余裕」「来週の会議までに準備する量」がつかみづらく、休憩のタイミングを逃したり、締め切り間際に焦ったりしてしまうことがあります。
複数の予定が並行して動くと、頭の中で整理しきれず、忘れ物・遅れ・抜けにつながりやすい場面です。
困りごと6|報連相のタイミングが判断できない
「これは報告したほうがよいのか」「自分で判断してよいのか」の線引きが難しく、上司から「もっと早く言ってほしい」と注意を受けて落ち込むケースがあります。
逆に、些細なことまで何度も確認しに行き、「自分で考えて」と言われて萎縮してしまうこともあります。
判断のたびに迷う負担が、思った以上に大きい困りごとです。
困りごと7|雑談・職場の人間関係に疲れやすい
会話のテンポについていけず、笑顔でやり過ごすうちに、休憩時間が一番疲れる時間になってしまうことがあります。
ランチや飲み会で何を話せばよいか分からず、「人付き合いが悪い」と思われたくなくて無理に参加し、消耗してしまうケースも見られます。
困りごと8|突発業務・トラブル対応が苦手
定型業務はこなせても、急なシフト変更・トラブル対応・繁忙期の対応で混乱しやすい傾向があります。
「いつもと違うこと」が起きると、何を優先すればよいか整理できず、固まってしまうこともあります。
困りごと9|「自分はできない」と感じて続かない
ミスや注意が積み重なると、「自分はこの仕事に向いていない」「次の職場でもダメだろう」と感じ、離職を繰り返してしまうケースがあります。
その背景には、本人の能力よりも、職場側の説明・指示の出し方・配慮の有無が影響している場合があります。
「自分が悪い」と一方的に思い込まず、職場との相性も含めて整理することが大切です。
困りごと10|ハラスメント・不当な扱いに気づきにくい
無理な仕事を断れない、不当な扱いに気づきにくい、相談できる相手がいない――こうした状況で、ハラスメントの被害を受けやすい傾向があります。
「自分が悪いから怒られている」と捉えてしまい、長く我慢を続けてしまうケースも見られます。
社外の相談窓口や支援機関とつながっておくことが、自分を守るうえで大切になります。
これらの困りごとは、軽度知的障害だけでなく、発達障害・うつ・不安障害などとも重なる部分があるため、医療機関での総合的な評価とあわせて整理していくことが望ましいとされています。
困りごとへの対処法(業務工夫+ツール活用)
ここからは、先ほどの困りごとに対する一般的な対処法をお伝えします。
「本人の努力」だけに頼るのではなく、「仕組み」「環境」「支援」の3方向から整えていく考え方が前提になります。
対処1|指示は「メモ・チェックリスト・写真」で可視化する
口頭指示を「あとから見返せる形」で残すことで、抜けや勘違いを減らせます。
職場側に「メモを取りたいので、少しゆっくりお願いします」と伝えるところから始めるとスムーズです。
スマートフォンのメモアプリ、音声録音、業務手順の写真撮影など、自分が一番続けやすい方法を選んでみてください。
オープン就労
オープン就労とは、軽度知的障害など障害のことを職場に伝えたうえで働くことです。軽度知的障害について職場の方が知っているため、先ほど紹介した対処法も相談しやすくなるというメリットがあります。
セミオープン就労
セミオープン就労とは、人事と上司だけなど限られた人にだけ軽度知的障害のことを伝える働き方です。対処法は上司など障害について知っている方と進めていきます。同僚は軽度知的障害があることを知らないため、困ったことがあったときに相談できる先が少なくなるといった特徴があります。
クローズ就労
クローズ就労とは、軽度知的障害のことは職場に伝えない、障害のない方と同じ働き方です。自身で対処法や困った時の相談方法を身につけている方に向いていますが、軽度知的障害のことを職場に伝えていないので、障害のことについて相談は基本的にできません。
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対処2|業務の優先順位を朝のうちに一緒に整理する
朝の数分間、上司や先輩と一緒に「今日やる順番」を整理する時間をつくると、安定して進めやすくなります。
5〜10分の習慣で、その日一日のミスや手戻りが大きく減ることがあります。
「自分一人では優先順位がつけられない」ことを正直に共有しておくと、職場側も伴走しやすくなります。
就労継続支援A型
就労継続支援A型は、利用する方と事業所が雇用契約を結んだうえでスタッフから支援を受けながら、仕事に取り組んでいきます。労働契約を結んでいるため、最低賃金が保障された給与が支払われることが特徴です。
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就労継続支援B型
就労継続支援B型は、利用する方と事業所は雇用契約を結ばないで利用します。雇用契約を結ばないことで、A型よりもらえる報酬は少なくなりますが、仕事の内容や勤怠などに比較的融通がきくという傾向があります。そのため、体調や障害の状況に合わせて利用しやすい特徴があります。
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対処3|長文マニュアルは要点抜粋+図解に置き換える
支援者や同僚と一緒に「自分用マニュアル」を作っておくと、長文マニュアルの内容を必要なときだけ参照できます。
職場の合理的配慮として、簡易マニュアルの作成を相談することもできます。
写真・矢印・チェックボックスを組み合わせると、頭に入りやすい形になります。
対処4|数字業務はダブルチェックの仕組みを取り入れる
数字を扱う業務には、別の人が確認する工程をあらかじめ組み込むと、安心して取り組めます。
「あなたが信用されていないからチェックがある」のではなく、「ミスを未然に防ぐためにチェックがある」と理解しておくと、負担感が下がります。
電卓・チェック表・カウンターなど、外側の道具を遠慮なく使ってよい、というスタンスが大切です。
対処5|時間管理はタイマー・スケジュール共有を活用する
仕事中のタイマー、終業時刻のアラーム、スケジュール共有アプリなど、外側の道具を遠慮なく使ってよい、というスタンスが大切です。
スマートウォッチの振動アラーム、卓上の砂時計、付箋に書いた締め切り日など、自分が見やすい・気づきやすい方法を組み合わせてみてください。
対処6|報連相のルールを職場とすり合わせる
「どんな時に・誰に・どう報告するか」のルールを上司と一緒に作っておくと、判断のたびに迷う負担が減ります。
「迷ったら30分以内に一報する」「金額が関わる判断は必ず確認する」など、自分用のルールを持っておく方法もあります。
報告内容のテンプレート(「いつ・何が・どうなった・どう対応した」)を決めておくと、報告そのものもしやすくなります。
対処7|休憩時間の過ごし方を「ひとり時間」として整える
無理に雑談に加わらず、一人で休憩を取る選択肢があってよい、と整理しておくと、午後の集中力を保ちやすくなります。
職場側にも、休憩スペースの使い方を相談するとよいでしょう。
「一人で食事を取りたい」「短い時間だけ参加する」など、無理のない関わり方をあらかじめ決めておくと、人間関係の疲れを減らせます。
対処8|突発対応はパターン化しておく
「急なシフト変更が来たら、いったん持ち帰って翌日に答える」「トラブル時はAさんに連絡」など、対応パターンをあらかじめ決めておくと、急な場面でも動きやすくなります。
「困った時はこうする」というルールが一つあるだけで、混乱の度合いが大きく変わります。
対処9|「自分に合う働き方」を整理する時間を持つ
自分の特性・得意・苦手・配慮事項を整理した「自分の取扱説明書」のような書類があると、就職・転職時に職場とすり合わせやすくなります。
エンラボカレッジの自立訓練(生活訓練)では、この整理を「My Lab.(マイラボ)」というプログラムで時間をかけて行っています。
職場に提出する書類としても、自分が振り返る道具としても、長く役立つツールです。
対処10|社外の相談先・支援機関とつながっておく
ハローワークの障害者窓口、地域の障害者就業・生活支援センター、就労移行支援、自立訓練(生活訓練)など、社外で相談できる場所を持っておくことが、長く働き続けるうえでの安心につながります。
一人で抱え込むほど解決が遠ざかってしまうため、「困る前に」つながっておく姿勢が大切です。
仕事の困りごとを整える具体的な進め方は、大人の発達障害の相談先・支援機関の紹介もあわせて参考になります。
向いている仕事の特徴と職種例
「自分にはどんな仕事が向いているのか」――軽度知的障害のある方が転職や就職を考える際に、よく抱かれる問いです。
ご本人の特性・好み・経験によって異なるため、一律に「これがおすすめ」とは言えませんが、一般的に続けやすい傾向のある仕事の特徴と、職種例を整理してお伝えします。
向いている仕事の3つの特徴
軽度知的障害のある方が長く続けやすい仕事には、おおむね次の3つの特徴があるとされています。
特徴1|手順が明確で、マニュアル化されている
「何を・どこまで・どうやって」が明確に決まっている業務は、判断のたびに迷う負担が少なく、安定して取り組みやすくなります。
逆に、「臨機応変に判断してほしい」「空気を読んで動いてほしい」と求められる業務は、消耗しやすい傾向があります。
特徴2|変化が少なく、繰り返しが多い
毎日同じ流れの業務は、慣れるほどミスが減り、自分のペースが作りやすくなります。
繁忙期と閑散期で業務内容が大きく変わる職場、季節ごとにシフトが変動する職場よりも、定型業務が中心の職場のほうが続きやすいケースが多く見られます。
特徴3|丁寧さ・正確さが評価される
スピードよりも丁寧さが求められる業務は、「自分のペースで取り組んでよい」という安心感があります。
検品・組み立て・データ入力など、「速さよりも正確さ」が重視される仕事は、定着率が高い傾向があります。
職種例1|清掃・施設管理
清掃業務は、手順がパターン化されており、一人で黙々と取り組める時間が多いため、軽度知的障害のある方の就労先として安定しています。
オフィスビル・商業施設・ホテル・病院など、勤務先の選択肢も広く、地域内で見つかりやすい職種です。
職種例2|軽作業・倉庫業務
ピッキング・梱包・検品・仕分けなどの倉庫業務は、手順がマニュアル化されていることが多く、定型業務として続けやすい職種です。
EC市場の拡大で求人が安定しており、未経験から始めやすい点も特徴です。
職種例3|製造ライン補助
工場での組み立て・検査・梱包など、ライン作業は手順が固定されており、同じ作業を繰り返すことが基本となります。
「丁寧さ・正確さ」が評価される現場が多く、軽度知的障害のある方の就労実績が積み重なっている職種です。
職種例4|データ入力・事務補助
決まった形式に沿ったデータ入力、書類のスキャン、ファイリングなどの事務補助業務は、PC操作の基本を身につけた方に選びやすい職種です。
集中して取り組める時間が長く、対人接触が比較的少ない点が魅力です。
職種例5|飲食店の調理補助・厨房補助
ファストフード店・チェーン店の調理補助は、業務がマニュアル化されており、定型業務が中心です。
接客が苦手な方でも、厨房内の業務であれば対人接触を抑えながら働けます。
職種例6|農作業・園芸関連
農作業・畑作業・園芸店での業務は、自然のリズムに沿った定型業務が多く、屋外で身体を動かしながら働きたい方に選ばれます。
季節ごとの作業内容に違いはあるものの、「畝を作る」「種を蒔く」「水をやる」など、一連の流れがパターン化されている職場が多いです。
職種例7|介護助手・福祉施設の補助業務
介護施設のシーツ交換・食事配膳・清掃補助など、補助業務に特化したポジションは、軽度知的障害のある方の就労先として広がっています。
「ありがとう」と直接言ってもらえる機会が多く、やりがいを感じやすい職場でもあります。
職種例8|小売店のバックヤード業務
スーパー・ドラッグストア・コンビニのバックヤードでは、検品・品出し・在庫管理など、定型業務が中心となります。
接客が前面に出ない業務を選びやすく、勤務時間の柔軟性もある職種です。
向いていないとされる傾向のある仕事
逆に、軽度知的障害のある方にとって負担が大きくなりがちな仕事の傾向もあります。
- 営業職など、臨機応変な判断と対人折衝が求められる仕事
- 複雑な計算・財務・経理業務
- マルチタスクが日常的に発生するコールセンターや受付業務
- 抽象的な企画・提案を求められる業務
ただし、これらは「絶対に向いていない」というわけではなく、職場の配慮や本人の特性次第で続けられるケースもあります。
「自分に合う仕事」を一律に決めつけず、見学・体験・職場実習などで確かめていく姿勢が大切です。
軽度知的障害のある方の就職・就職先については、知的障害の方の就職・就職先・進め方もあわせてご覧ください。
仕事選びの5つのポイント
「向いている仕事」を見つけるうえで、求人票の表面的な情報だけでなく、自分にとって続けやすい仕事かどうかを判断する視点を持っておくと、ミスマッチを減らせます。
5つのポイントに整理してお伝えします。
ポイント1|業務がマニュアル化されているか
求人票や面接の段階で、「業務マニュアルはありますか」「新人にはどのように業務を教えていますか」と確認してみてください。
口頭で教えるだけの職場、先輩の動きを見て覚える文化の職場では、軽度知的障害のある方が立ち上がりに苦労しやすい傾向があります。
「マニュアル化されている」「研修期間がしっかりある」職場は、長く続けやすい候補になります。
ポイント2|障害者雇用か一般雇用か
軽度知的障害のある方の就労には、障害者雇用と一般雇用の2つの選択肢があります。
療育手帳を取得している方は、障害者雇用枠での応募が可能で、職場側に配慮を求めやすい環境を得やすくなります。
一般雇用で応募する場合は、特性をどこまで開示するか、面接時にどう伝えるかをあらかじめ整理しておくとよいでしょう。
ポイント3|通勤距離と勤務時間の負担はどうか
「仕事の内容」だけでなく、通勤距離・勤務時間・シフトの組み方が、自分の体力と無理なく合うかも大事な判断軸です。
通勤に往復2時間かかる職場、夜間シフトが多い職場、月単位でシフトが変動する職場は、慣れるまでに時間がかかります。
「業務は合っているけれど続かない」原因の多くは、勤務条件にあると言われます。
ポイント4|相談できる人が職場内にいるか
困った時に相談できる先輩・指導役・人事担当が職場内にいるかどうかは、定着率を大きく左右します。
面接や見学の段階で、「困ったときに誰に相談すればよいか」「相談しやすい雰囲気か」を、自分の感覚で確かめてみてください。
「忙しそうな職場で誰にも声をかけられない」状態は、軽度知的障害のある方にとって大きな負担になります。
ポイント5|社外の支援機関とつながり続けられるか
仕事は職場の中だけで完結するものではなく、職場外に相談できる場所があるかどうかが、長く続けるうえで大きく影響します。
就労定着支援、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援の定着サポートなどを活用することで、職場と社外の二段構えで仕事を支えることができます。
「一人で頑張り続けない設計」を意識して、職場選びと支援機関選びをセットで考えてみてください。
利用できる支援サービス
軽度知的障害のある方が仕事を探す・続ける場面で活用できる支援サービスを、整理してお伝えします。
「制度の名前は聞いたことがあるけれど、自分が使えるのか分からない」という方も多いため、主なものを順番に取り上げます。
ハローワーク(障害者窓口)
全国のハローワークには、障害のある方向けの専門窓口があり、専門相談員が求職活動を支援してくれます。
求人の紹介、応募書類の添削、面接対策、職場見学の同行など、無料で活用できるサポートが幅広く用意されています。
療育手帳を取得していない方も相談可能なケースが多いため、まずは最寄りのハローワークに足を運んでみるとよいでしょう。
障害者就業・生活支援センター
「働くこと」と「暮らすこと」を一体で相談できる地域の支援窓口です。
求職活動の支援、職場定着の支援、生活面の相談まで、長期的に伴走してくれます。
ハローワークが「就職活動」を中心に支援するのに対し、こちらは「就職後の暮らし」まで含めて支えてくれる点が特徴です。
就労移行支援
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す方が、職業訓練・職場体験・就職活動支援を受けられる障害福祉サービスです。
利用期間は原則2年で、職業評価・自己理解・ビジネスマナー・パソコン操作などの訓練を受けながら、自分に合った職場を探していきます。
軽度知的障害のある方の利用も多く、療育手帳を取得していない方も、医師の意見書などをもとに自治体の判断で利用できるケースがあります。
就労移行支援の概要は、就労移行支援(就労支援)ってどんなところ?もあわせてご覧ください。
自立訓練(生活訓練)
自立訓練(生活訓練)は、地域生活を送るうえでの生活面の自立を支援するサービスで、生活リズム・対人スキル・自己理解の土台作りを中心に行います。
「働きに出る前に、生活と気持ちをいったん整えたい」「自分の特性をもう少し理解してから次を考えたい」という方は、自立訓練が選択肢として浮上してきます。
利用期間は原則2年で、就労移行支援と同様、療育手帳がなくても利用できるケースがあります。
自立訓練の概要は、自立訓練(生活訓練)とは|対象者・利用期間で詳しく整理しています。
就労継続支援A型・B型
雇用契約のある働き方が難しい段階の方には、就労継続支援A型・B型という選択肢もあります。
A型は雇用契約を結びながら働く形、B型は雇用契約を結ばずに自分のペースで生産活動に参加する形で、利用期間に上限はありません。
「いきなり一般就労はハードルが高い」と感じる方は、B型・A型を経由してステップアップしていく道筋も選べます。
詳細は就労継続支援とは|A型・B型・就労移行との違いもご覧ください。
就労定着支援
就労移行支援を経て一般就労に進んだ方が、就職後3年間にわたって職場定着のサポートを受けられるサービスです。
「就職した後が一番不安」「困ったときに相談できる先がほしい」という方にとって、長く働き続けるうえでの大きな支えになります。
療育手帳・各種手帳制度
療育手帳は、知的障害のある方を対象とした手帳制度で、自治体によって名称が異なります。
軽度知的障害の方も、自治体の判定で対象と認められれば取得でき、税金の控除・公共料金の割引・障害者雇用での応募などにつながります。
詳しくはお住まいの市区町村の障害福祉課でご確認ください。
エンラボカレッジでの就労支援
エンラボカレッジは、神奈川県・東京都・大阪府・宮崎県で自立訓練(生活訓練)を運営している事業者です。
軽度知的障害のある方も、発達障害・精神疾患・診断のない方とともにご利用いただいています。
自己理解と「自分の取扱説明書」作り
エンラボカレッジの自立訓練では、8つのプログラム(感情学/コミュニケーション/My Lab./アクティビティ/Life Lab./ソマティック Lab./Social Lab./スキルアップ)を組み合わせています。
なかでもMy Lab.は、利用される方が『自分/支え方マニュアル』という独自成果物を作る時間です。
「自分は何が苦手で、何ができるのか」「どんな環境なら動きやすいか」「困った時に頼れる相手は誰か」を、本人と支援者が一緒に整理して、ひとつのマニュアルとして言語化していきます。
このマニュアルは、卒業後の就職・転職時に、職場とすり合わせる材料として使えます。
「次の職場では、自分の特性を踏まえて働きたい」と考えている方にとって、現実的な支えになるツールです。
仕事に必要な土台のプログラム
軽度知的障害のある方が就労準備で取り組まれることが多いのは、特に以下のプログラムです。
感情学:ミスや注意を受けたときに自分を責めすぎないための、感情との付き合い方を学びます。
コミュニケーション:報連相の組み立て方、伝え方・聞き方、職場での距離感を実践的に練習します。
Life Lab.:生活リズム・金銭管理・健康管理など、働き続けるうえでの土台となる生活基盤を整えます。
スキルアップ:PC操作・ビジネスマナー・職業適性チェックなど、就労に直結する実用スキルを補強します。
これらのプログラムを2年間かけて段階的に進めるなかで、「自分に合う働き方」が少しずつ見えてくる方が多くいらっしゃいます。
「就職ありき」ではない設計
エンラボカレッジは、就労移行支援とは異なり、「2年以内に就職する」ことをゴールに設計されていません。
そのぶん、自己理解・他者理解・障害理解・体調コントロールといった、「働くうえで/生きていくうえで本当に必要な土台」に時間を費やせます。
「すぐに就職したい」という方には合いませんが、「焦らず、自分のペースで整えたい」という方には選びやすい場です。
卒業後の進路の多様性
エンラボカレッジの卒業生は、就労移行支援、就労継続支援、一般就労、復職、進学・復学など、多様な進路に進まれています。
軽度知的障害のある方の場合、自立訓練を経て就労移行支援に進み、そこから障害者雇用での一般就労につながるケースが多く見られます。
40代から自立訓練で働き方を見直していった方のプロセスは、40代からの再スタート体験もあわせてご覧いただけます。
当てはまりにくい場面
逆に「すぐに就職したい」「いまの自分の状態でも雇用契約のある働き方を続けたい」という方は、就労移行支援やA型のほうが目的に合いやすい場合があります。
エンラボカレッジは「自立の土台作り」が中心となるため、目的との相性をご確認のうえで、ご検討いただけますと幸いです。
よくある質問
Q1|軽度知的障害があると一般雇用では働けませんか?
働けないわけではありません。
療育手帳を取得せずに、一般雇用で長く勤めている方も多くいらっしゃいます。
ご自身の特性・希望・職場との相性によって、障害者雇用と一般雇用のどちらが合うかが変わってくるため、両方の選択肢を視野に入れて検討するのが現実的です。
Q2|療育手帳がないと支援サービスは使えませんか?
療育手帳がなくても、自立支援医療の受給者証や医師の意見書をもとに、自治体の判断で障害福祉サービス受給者証が交付されるケースがあります。
自立訓練・就労移行支援・就労継続支援などのサービスは、療育手帳の有無だけで利用可否が決まるわけではありません。
詳しくはお住まいの市区町村の障害福祉課にご相談ください。
Q3|軽度知的障害のある人に向いている職種は何ですか?
一律にお答えするのは難しい部分があります。
一般的には、清掃・軽作業・倉庫業務・データ入力・製造ライン補助など、手順が明確で繰り返しの多い仕事が続けやすい傾向があるとされています。
ただし、ご本人の特性・好み・経験によって異なるため、見学・体験・職場実習で確かめていく姿勢が大切です。
Q4|職場に障害のことを伝えるべきですか?
ご本人の判断に委ねられる部分です。
伝えることで合理的配慮を求めやすくなる一方、伝えにくい職場文化もあるため、職場の雰囲気・担当者の理解・自分が求めたい配慮を整理したうえで決めていく形が現実的です。
支援機関と一緒に「どこまで・誰に・どう伝えるか」を整理してから決めると、安心感が高まります。
Q5|仕事が長続きしません。原因は自分にあるのでしょうか?
「自分が悪い」と決めつける必要はありません。
仕事が長続きしない背景には、本人の特性だけでなく、職場側の指示の出し方・マニュアルの有無・配慮の体制が影響している場合があります。
「合っていなかった環境を変える」「自分の特性をすり合わせる準備をする」という視点で、次の一歩を整理してみてください。
Q6|エンラボカレッジは軽度知的障害のある方も利用できますか?
ご利用いただけるケースがあります。
エンラボカレッジは精神・発達障害のある方を主な対象としていますが、軽度知的障害のある方の利用実績もあります。
「自分が対象になるか」を含めて、まずは無料の見学・相談をご利用いただくことをおすすめします。
Q7|就労移行支援と自立訓練、どちらを選ぶべきですか?
「いまの自分はどの段階にいるか」によります。
「2年以内に就職を目指したい」「就職活動と訓練を並行で進めたい」方には就労移行支援が、「働き始める前に生活と気持ちを整えたい」「自分の特性をまず理解したい」方には自立訓練が、それぞれ目的に合いやすいサービスです。
主治医・相談支援専門員・支援者と一緒に整理してから選んでいくと、ミスマッチを減らせます。
まとめ
軽度知的障害のある方が職場で抱える困りごとは、本人の努力だけで乗り越えるものではなく、業務の進め方・職場の環境・外部支援の3方向から整えていくものです。
「口頭指示が苦手」「複数業務の同時並行が難しい」「人間関係に疲れやすい」――こうした困りごとには、それぞれに対応する仕組み・工夫・ツールがあります。
向いている仕事の特徴は、手順が明確・変化が少ない・丁寧さが評価されるという3点で、清掃・軽作業・データ入力・倉庫業務・製造ライン補助などが続けやすい職種として挙げられます。
仕事選びの段階では、業務のマニュアル化・障害者雇用の選択肢・通勤距離・相談相手の有無・社外の支援機関とのつながりを、一つずつ確認していく姿勢が大切です。
利用できる支援サービスは、ハローワークの障害者窓口、障害者就業・生活支援センター、就労移行支援、自立訓練(生活訓練)、就労継続支援A型・B型、就労定着支援など、複数あります。
「自分一人で抱え込まない」「外側の仕組みに頼ってよい」というスタンスを持っていただけると、長く続けられる働き方に近づきます。
エンラボカレッジでは、自立訓練(生活訓練)を通じて、自己理解・生活基盤・働き方のすり合わせを一緒に整える時間をご用意しています。
「焦らず、一緒に整える」――そんなスタンスが合いそうだと感じた方は、無料の見学・相談からお気軽にお越しください。
エンラボカレッジの無料見学・相談のご案内
エンラボカレッジは「誰もが自信を持てる社会を作る」ことを目的として、自立訓練(生活訓練)事業所を運営しています。
事業所内では300以上のワークをもとに、利用される方一人ひとりの特性・状況に合わせた訓練を提供し、「自分を整える時間」を一緒に作っています。
軽度知的障害の傾向のある方、発達障害のある方、診断はないけれど生きづらさを感じてきた方――それぞれのご事情に合わせて、一緒に進め方を考えていきます。
ご相談は、神奈川県の横浜・相模大野・川崎・藤沢・センター南・横浜関内、東京都の蒲田・府中、大阪府のなんば・大阪梅田、宮崎県の宮崎で受け付けています。
オンラインでのご相談も可能です。
「いきなり見学はハードルが高い」と感じる方も、まずはお電話・お問い合わせフォームからご連絡ください。
焦って決める必要はありません。情報を整理して、ご自身のペースで動き出してください。
この記事について【作成・監修】
本記事は、自立訓練(生活訓練)事業所「エンラボカレッジ」を運営する株式会社エンラボの専門職スタッフが作成・監修しています。
【在籍資格】
精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士
【現場での実践】
自立訓練(生活訓練)・就労移行支援などで、診断名・特性に合わせた個別支援を提供しています。
【運営会社】
株式会社エンラボ/設立2015年4月/神奈川県を中心に首都圏・関西・宮崎で11拠点運営




