精神科デイケアとは?目的や対象・プログラム内容・メリット・デメリットについて解説します

公開日:2024/04/20

精神疾患のある方の体調安定や社会復帰を目指す場として精神科デイケアがあります。「主治医から勧められた」という方もいるのではないでしょうか?

ただ、精神科デイケアという名前になじみがなく、目的や、具体的な活動内容などがわからないという方もいると思います。

今回は精神科デイケアの目的や、対象者、精神科デイケアでよくあるプログラム内容、利用するメリットやデメリットがあるのかなどを解説します。

精神科デイケアとは?

精神科デイケアとは、精神疾患のある方を対象として、他の利用者やスタッフとの集団活動や個人活動を通して、日常生活の安定や社会復帰を目指していく通所型のサービスです。

 

精神科デイケアの活動としては、障害理解や体調安定の講座、集団でのコミュニケーション訓練、運動系や文化系の取り組みなど、さまざまなプログラムがあります。

 

その中から個人個人の目標に合わせた活動を選んで利用していきます。

精神科デイケアの実施場所

精神科デイケアの実施場所は複数あります。その名の通り精神科で実施していることもあれば、公的な施設で実施している場合もあります。

 

精神科デイケアの主な実施場所は以下の通りです。

  • 病院
  • 精神科クリニック
  • 保健所
  • 保健センター
  • 精神保健福祉センター

 

精神科デイケアはスタッフも医療関係の資格などを持っている方が多くいます。具体的には看護師、精神保健福祉士、心理士、作業療法士などがスタッフとして働いています。

 

それぞれの精神科デイケアごとに目的や対象となる障害、年齢、活動内容などが異なっています。生活の安定を目的としてしている場所や、障害理解や再発防止を目的としている場所、社会復帰を目的としている場所などさまざまです。

 

利用の流れもそれぞれの実施場所で異なっており、通院中の病院であれば主治医やケースワーカーに相談することになります。通院先以外であれば、直接実施場所に問い合わせて利用の流れを確認してみてください。

精神科デイケアの種類

精神科デイケアの他にも精神科ショートケアなどの種類があり、それらをまとめて精神科デイケア等と呼ばれています。

 

基本的な内容は共通する部分が多いですが、以下のように標準利用時間がそれぞれ異なっています。

  • 精神科ショートケア:日中の3時間
  • 精神科デイケア:日中の6時間
  • 精神科ナイトケア:午後4時以降の4時間
  • 精神科デイナイトケア:日中~夜間の10時間

 

このように利用時間の長さや時間帯が異なっていて、利用者は体調やライフスタイルによって適したサービスを選んでいきます。

 

今回はその中でも実施場所や利用者が多い精神科デイケアについて紹介していきます。

精神科デイケアの目的

精神科デイケアの目的は数多くあり、主なものとしては精神疾患の再発防止、生活リズムの安定、体力や集中力の回復、社会復帰、就労準備、対人関係スキルの向上などが挙げられます。各精神科デイケアではこういった目的を達成するためにも、居場所の提供や自己理解のワーク、グループでのコミュニケーション訓練などさまざまなプログラムを実施しています。

 

利用者は主治医や精神科デイケアのスタッフと相談しながら、自身の状況に合わせて目的を設定し、通所する日数や時間、必要なプログラムを決めて利用していきます。

 

厚生労働省の調査によると、精神科デイケアを利用する目的として「生活をするための力をつけるため」が一番多く、半数を超えていました。続いて多かったのが「周囲の人達とうまく付き合うため」という対人関係についてで、こちらもほぼ半数の方が目的としていました。

 

精神科デイケアの主な利用目的は以下のようなものです。

  • 生活をするための力をつけるため:57.7%
  • 周囲の人達とうまく付き合うため:48.4%
  • 自分の生活を楽しむため:41.2%
  • 自分なりの生きがいや目標をもつため:39.9%
  • 症状のコントロールや症状悪化時の対処をできるため:39.6%

参照:厚生労働省「精神科デイ・ケア等について」

精神科デイケアの費用

精神科デイケアは精神保健福祉センターなど公的な機関で実施している場合には、無料となっている場合もありますが、精神科クリニックなど病院の場合は利用料は医療費という扱いになり、「自立支援医療(精神通院医療)」を利用している方は1割負担となります。その場合の平均的な利用料は700~800円程度が多いようです。

 

利用料に昼食代も含まれることもありますが、交通費は別となっています。実施場所まで遠い場合はある程度費用が掛かることもあるので、利用検討する際は考慮しておくといいでしょう。

精神科デイケアの対象者

精神科デイケアの対象者は、精神疾患がある方や主治医から利用の必要性が認められた方が対象になります。ただし、その他にも病院で実施している場合には、その病院に通院していることや、精神疾患の中でも特定の疾患を対象としているなど精神科デイケアごとに対象者を限定していることもあります。ここではいくつか参考に紹介します。

 

精神科デイケアごとの対象者例

  • 精神疾患の診断がある方
  • 主治医から利用の必要性が認められた方
  • 特定の精神疾患(高次脳機能障害など)
  • その自治体に住んでいる方(公的機関実施の精神科デイケアの場合)
  • 実施場所の病院に通院している方(病院実施の精神科デイケアの場合)
  • 60歳未満など一定の年齢の方

などが利用条件として挙がることがあります。

詳細は精神科デイケアごとに大きく異なり、年齢制限がある精神科デイケアもあれば、「何歳でも利用できる」と記載されている精神科デイケアもあります。利用を検討している方は自身が対象となっているかホームページなどで確認しておくようにしましょう。

精神科デイケアのプログラム内容

精神科デイケアには実施場所ごとに様々なプログラムがあります。中には独自のプログラムを展開している精神科デイケアもありますが、ここでは多くの精神科デイケアで取り入れられているプログラムを紹介していきます。

 

精神科デイケアの主なプログラム

  • 障害理解系プログラム
  • 文化系プログラム
  • 運動系プログラム
  • SST(ソーシャルスキル・トレーニング)
  • 就労支援
  • その他

それぞれ具体的な内容を見ていきましょう。

障害理解系プログラム

自身の障害を理解し、体調の安定やコミュニケーションの方法、再発防止の方法など自分に合った対策を考えていくプログラムです。

 

公認心理士や臨床心理士などによる疾患についての講座を受けることや、個人でワークシートなどをもとにして自己分析していく方法など色々なアプローチがあります。

文化系プログラム

文化系プログラムとは、イラスト作成や書道、手芸などの創作活動を通して、集中力の維持向上などを図っていくプログラムです。

 

他にも、映画鑑賞や音楽鑑賞などを行い、グループで感想を話し合うといったプログラムもあります。

運動系プログラム

運動プログラムでは、他の利用者と一緒に卓球やバトミントンなどの運動を行うことで、体力の維持・向上、心身のリフレッシュ、コミュニケーション能力の向上などを図っていきます。

 

他にもヨガやピラティス教室など、体を動かして精神の安定を目指していく運動プログラムを実施している精神科デイケアもあります。

SST(ソーシャルスキルトレーニング)

SSTとは、ソーシャルスキルトレーニングの略で、対人関係について学んでいくプログラムです。多くの精神科デイケアで取り入れられている手法で、他の利用者と一緒に実際に対人関係で困った場面を取り上げて、解決策を話し合ったりロールプレイで実践したりしながら学んでいきます。

 

SST以外にも、コミュニケーションのコツを学ぶ講座などを開催している精神科デイケアもあります。

就労支援

精神科デイケアにはこれから就職を目指していく方に向けたプログラムを実施している場所もあります。

 

就労支援では、ビジネスマナー講座など就職関連の講座の開催や、スタッフと一緒に希望する就労条件の整理、障害の特性に合わせた合理的配慮の整理などを行っていくことが多いようです。

その他

精神科デイケアでは以上のようなプログラムだけでなく、紅葉散策などの季節に合わせたイベントやリラックスタイムといった何もしない時間を設けるなど、実施場所ごとにさまざまなプログラムがあります。

 

精神科デイケアによって多種多様なプログラムが用意されていますので、具体的なプログラムについては、それぞれの精神科デイケアに確認してみてください。

精神科デイケアのメリット・デメリット

精神科デイケアに通うことで、障害理解や体調の管理・生活リズムの安定など多くのメリットがあるように感じますが、中には精神科デイケアに通うことにデメリットを感じられている方もいるのではないでしょうか?ここでは精神科デイケアを利用するうえでのメリット・デメリットについて紹介します。

 

後から困らないためにも、事前にどちらも把握したうえで利用していくといいでしょう。

メリット

精神科デイケアを利用するメリットを紹介します。

 

主なメリットは以下のようなものがあります。

  • 生活リズムが整う
  • 体調の安定や再発予防ができる
  • 体力や集中力の維持・向上
  • コミュニケーションスキルが身につく
  • 社会復帰への準備ができる
  • 就労への準備ができる

それぞれ見ていきましょう。

生活リズムが整う

精神疾患で療養中の方は、体調面や金銭面などにより家に引きこもりがちになる方もいます。また、昼夜逆転などにより睡眠のリズムが乱れているという方も少なくないでしょう。

 

そういった時に精神科デイケアを利用することで、定期的に同じ時間に活動するようになり、朝起きる習慣などが戻ってくることや、食事の時間の安定、日中活動することによる睡眠の質の向上などにより生活リズムが整うというメリットがあります。

体調の安定や再発予防ができる

精神科デイケアで生活リズムが整うとともに、障害理解やストレスコントロールなどのプログラムを受講することができ、自分に合った体調管理方法を見つけていくことができます。それによって体調を安定させたり、疾患の再発を防止していくことができるというメリットがあります。

体力や集中力の維持・向上

精神疾患の療養中は仕事を休んで安静にしていた方も多く、体力や集中力が低下している場合もあります。

 

精神科デイケアで文科系やスポーツ系のプログラムを受けることで、自然と低下していた体力や集中力を回復させていくこともできるというメリットもあります。

コミュニケーションスキルが身につく

精神疾患の原因の一つに対人関係の悩みがある方も多いと思います。精神科デイケアでは、コミュニケーションに特化したプログラムを行っている場所が多く、コミュニケーションスキルを身につけることができます。

 

また、日常的に精神科デイケアのスタッフや他の利用者と話をしたり、一緒にプログラムやレクリエーションに参加することでもコミュニケーションスキルの向上が見込めるというメリットもあります。

社会復帰への準備ができる

ここまで上げてきたように生活や体調が安定することやコミュニケーションのスキルを身につけることで、社会復帰のための準備ができるというメリットがあります。また、活動を通して自分が変わっていくことで自信を得ることができるということも、社会参加への後押しとなるでしょう。

就労への準備ができる

社会復帰を視野に入れた後には、具体的に就労への準備をすることもできます。就労系のプログラムでは、ビジネスマナーなどの実践的なものから、障害とともに働くコツや活用できる支援制度なども学ぶことができます。

 

また、場所によっては他の就労系の支援サービスと連携している精神科デイケアもあります。

デメリット

精神科デイケアを利用するメリットを紹介しましたが、精神科デイケアを利用することのデメリットとなることも紹介したいと思います。

 

精神科デイケアを利用するデメリットはメリットと同様に人によって感じ方が異なるため、一例として参考にしてください。

 

デメリットとなり得ることは以下のようなことです。

  • 利用料がかかる
  • 通う必要がある
  • 希望するプログラムがあると限らない
  • 場所によっては対象に制限がある

それぞれ紹介します。

利用料がかかる

精神科デイケアを利用するには、通院費とはまた別に利用料がかかることがあります。利用料は場所によって異なりますが、病院の場合は原則的に3割負担となっています。ただ、自立支援医療制度を使用すると原則1割負担に抑えることもできるので、覚えておくといいでしょう。

 

また、交通費や何か特別なプログラムを行う場合はその際の費用は自己負担になることもあります。

通う必要がある

精神科デイケアを利用することでさまざまなプログラムを受けることができますが、基本的には実施場所に通っていくことになります。

 

体調が不安定な方や昼夜逆転しているという方には、精神科デイケアに通うこと自体がデメリットと感じるかもしれません。

希望するプログラムがあると限らない

精神科デイケアによってプログラム内容は大きく異なります。そのため、通院中の病院や自宅の近くに希望するプログラムを行っていないという可能性があることもデメリットといえるかもしれません。

場所によっては対象に制限がある

精神科デイケアは対象者を制限している場合があります。実施場所に通院している方や特定の疾患がある方に限定している場合や、年齢制限がある場合があります。利用したいと思っても、自身が対象外で利用できない可能性があるということもデメリットの一つと言えるでしょう。

精神科デイケアと自立訓練の違い

精神科デイケアと同様に障害のある方の生活の安定などを目的としたサービスに自立訓練があります。ここではそれぞれの共通点や違いを紹介します。

 

大きな違いとしては精神科デイケアが精神疾患を対象としているのに対して、自立訓練はすべての障害のある方を対象としている点です。

 

精神科デイケアは精神疾患のある方を対象として、体調安定や対人スキル向上、社会復帰などを目指したプログラムの提供などを行っている場所と紹介しました。

 

対して自立訓練は、精神疾患に限らず、発達障害・精神障害・身体障害・知的障害・難病など、広く障害のある方を対象として、自立した生活を営めるようにさまざまなプログラムの提供や生活への相談対応などを行っている支援機関です。

 

また、精神科デイケアでは体調安定や再発防止などのプログラムを得意としている場合が多く、自立訓練では、自立した生活に必要なスキルの取得や社会復帰に向けた取り組みを得意としていることが多いという違いがあります。

 

まとめると、精神科デイケアは「治療」を目的としていて、自立訓練は「訓練」を目的としているという点が大きな違いとして挙げられます。

 

そのため、まずは通院の延長で体調安定をメインにしたい場合は精神科デイケア、自立した生活や社会復帰をメインにしたい場合は自立訓練が合っていると言えるでしょう。

精神科デイケアと自立訓練は併用できる?

自立訓練と精神科デイケアは別々のサービスであり、併用することも可能です。例えば、精神疾患があって体調がまだまだ安定していない方は、まずは精神科デイケアに通って定期的な活動や体調安定を目指し、安定してきたら自立訓練の併用を開始し、だんだんと通所日数を増やしていく、といった使い方をすることもできます。

 

長い間療養していた方がいきなり社会復帰しようとすると、なかなか思うようにいかずに焦ってしまい、かえって時間がかかるということも考えられます。

 

まずはその時の自分に合った支援から使い始め、だんだんとより目的に近い支援を使っていくということもスムーズに社会復帰するための一つの方法です。

精神科デイケア まとめ

精神科デイケアとは、精神疾患のある方を対象に、体調安定や社会復帰を目指して、活動の場や各種プログラムの提供を行うサービスのことです。

 

精神科クリニックなどの病院や精神保健福祉センターなどの公的機関で実施しています。プログラム内容としては、障害を理解するための講座や、文科系のイラスト作成や映画鑑賞、運動系の卓球やバトミントン、対人関係のスキル向上などさまざまで、就労支援系のプログラムを行っている場合もあります。

 

また、社会復帰のためには自立訓練という支援もあり、精神科デイケアと併用することも可能です。それぞれ特徴を踏まえたうえで、自身の状態や目的と照らし合わせて利用していくといいでしょう。

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