【発達障害で悩む大人向け】自己肯定感が低くなりやすい理由と対処法を解説!
公開日:2025/01/14
発達障害のある方は、自身の特性が原因となって自己肯定感が低下することがあります。自己肯定感とは、ありのままの自分を肯定し、今の自分の能力や価値を受け入れる感覚のことを指します。自己肯定感が高い人と低い人にはそれぞれ特徴があり、自己肯定感が低いとさまざまなデメリットも考えられます。本記事では、発達障害のある方の自己肯定感が低くなりやすい理由を解説するとともに、自己肯定感を高めるための具体的な対策もご紹介します。自己肯定感に悩んでいる方は、ぜひチェックしてみてくださいね。
「自己肯定感」とは?
自己肯定感とは、自分をありのままに受け入れ、肯定的に捉える感覚を指します。これは他者との比較ではなく、自身の存在価値を認め、尊重し、自己信頼を持つ心の状態です。この感覚は、人間関係や仕事、自己実現において重要な基盤となり、幸福感にも大きな影響を与えます。
自己肯定感が高い人は、自分の強みや弱みを正確に認識し、他者の評価に左右されず、自分の価値をしっかりと理解しています。一方、自己肯定感が低い人は、他者の評価や意見に過度に依存し、自分の価値を見失いやすい傾向があります。このような人は、些細な失敗でも自分を責め、自信を喪失しやすく、他者との関係に不安を抱きやすいことがあります。
自己肯定感が高い人の3つの特徴
自己肯定感が高い人には、日常生活や行動、考え方において共通する特徴が見られます。以下に挙げる3つの特徴を通じて、自己肯定感が高い人の姿を理解し、自分自身と照らし合わせてみましょう。
①主体性がある
自己肯定感が高い人の多くは、自分の意思で物事を決定し、行動に移す力を持っているという特徴が見られます。他者に依存しすぎることなく、自分の価値観や目標に基づいて選択するため、自分の人生を主体的に動かしていくことができます。
このような主体性がある人は、他者の評価や意見に流されず、自分の意志を大切にします。また、困難な状況でも自分なりの方法で解決しようとするため、責任感があり、行動力があります。仕事や趣味においても主体性を発揮し、自分の意見をしっかりと伝えることができ、周囲からも信頼を得やすくなるでしょう。
②行動や志向が前向きで、努力を続けられる
自己肯定感が高い人は、常に前向きな志向を持ち、目標を達成するための努力を惜しみません。「できるかどうか」よりも「どうすればできるか」に焦点を当て、ポジティブな考え方で行動することが特徴です。
さらに、努力することそのものにも意義を見出すことで、結果に一喜一憂することなく成長し続けることが期待できます。新しいスキルの習得やチャレンジングな仕事に取り組む際も、自分の成長を楽しみながら取り組むことができるでしょう。このような態度がさらなる挑戦や成果を生み出し、自己肯定感をさらに高める機会を生み出しやすいと考えられます。
③失敗を恐れない
自己肯定感が高い人は、失敗したからと言って、自分の価値が損なわれたと考えないことも特徴です。失敗を学びの一部と捉え、そこから何を得られるかに目を向けており、挑戦することをためらわず、行動することに積極的です。
例えば、新しいプロジェクトや未知の分野に足を踏み入れる際も、「失敗しても次に活かせる」と考えるため、不安に囚われることが少なくなります。この柔軟な姿勢は、精神的な安定感や持続的な挑戦心をもたらし、自分自身への信頼をさらに強固なものにするでしょう。
自己肯定感が低い人の3つの特徴
自己肯定感が低い人にも、自己肯定感が高い人と同様に、日常の思考や行動に共通して見られる特徴があります。これらの特徴を理解することで、自分自身の状況に気づくことができるでしょう。ここでは、代表的な3つの特徴を解説します。
①他者と比較してしまう
自己肯定感が低い人は、自分の価値を他者との比較によって測りがちです。他人の成功や優れた点を見るたびに、自分の不足や欠点を強く意識してしまい、自己評価が下がる原因となります。
例えば、職場で同僚が昇進したり、友人が目標を達成したりすると、それを祝福する気持ちよりも、自分との違いに目が向き、劣等感を抱くことがあります。こうした比較の習慣は、必要以上に自分を否定的に捉え、自己肯定感をさらに低下させる悪循環を生み出します。他者ではなく、過去の自分と比較して成長を感じる視点を持つことが大切です。
②過去の失敗などトラウマを抱え、精神的に不安定
自己肯定感が低い人は、過去の失敗や否定的な経験を忘れることができず、それを心の中で繰り返し再生してしまう傾向があります。これにより、未来に対する不安や自己否定の感情が増幅され、精神的に不安定になることがあります。
例えば、過去に失敗したプロジェクトや人間関係のトラブルを「自分のせいだ」と責め続けることで、新たな挑戦に対する意欲を失ってしまいがちです。さらに、トラウマが深い場合、無意識に似た状況を避けようとするため、行動が制限されるケースもあります。こうした状態を克服するには、失敗を過去の一部として受け入れ、それを乗り越える考え方や行動を身につけることが大切です。
③承認欲求が強く、他者からの評価に依存しがち
自己肯定感が低い人は、自分の価値を他者からの評価や承認によって確認しようとする傾向があります。他人に褒められることで一時的に安心感を得ますが、その安心感は長続きせず、さらなる承認を求める悪循環に陥りやすいことが特徴です。例えば、SNSでの「いいね」やコメント数に非常に敏感になり、思うような反応が得られないと大きなショックを受けたり、精神的に不安定になったりする傾向が見られます。仕事においても、自分自身の成長を客観視することが難しく、他者からの評価や目に見える成果に固執し、直接成果とは関係ない業務が疎かになるということも考えられます。承認欲求に振り回されないためには、他者の評価に頼るのではなく、自分自身を認める練習を積み重ねることが必要です。
自己肯定感が低い状態は、自分にとっても周囲にとってもストレスを生む原因となります。これらの特徴を認識し、少しずつ改善を図ることで、より充実した人生を送るきっかけになるでしょう。
発達障害のある方の自己肯定感が低くなりやすい理由
自己肯定感が低くなる背景には、個人の特性やそれまでの経験が密接に関わっています。発達障害のある方全員が必ずしも自己肯定感が低いわけではありませんが、発達障害の特性ならではの要因により自己肯定感が低くなりやすい可能性が考えられます。ここでは、発達障害のある方の自己肯定感が低くなりやすい理由を解説します。
発達障害のASD(自閉スペクトラム症)およびADHD(注意欠如・多動症)についてより詳しく知りたい方は、関連ページをご参照ください。
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①失敗経験が多い、失敗経験を引きずりやすい
発達障害の特性に対する理解が十分でない環境では、本人の行動や思考が「わがまま」や「努力不足」と誤解されることがあります。その結果、周囲から否定的なフィードバックを受けやすく、失敗体験が積み重なりやすくなります。これらの経験は、自己肯定感が低くなる一因となり得ます。
例えば、ASD(自閉スペクトラム症)の場合、対人関係やコミュニケーションの困難を抱えており、空気を読んで発言することが苦手だったり、悪気はなくても相手の気分を害する発言をしてしまったりすることがあります。
また、ADHD(注意欠陥・多動症)の特性として、注意散漫や衝動的な行動が挙げられます。学習障害(LD)のある方の場合は、読み書きや算数など特定の学習分野に困難を抱えています。
これらは全て、発達障害の特性が原因で起きる「困りごと」ですが、発達障害の特性に関する知識や理解がない周囲の人からは、「本人の努力不足」「もっと頑張ればできるはず」「なぜ同じ失敗を繰り返すのか」といった否定的な言葉を投げかけられることが多くなっています。本人としても、努力しても評価されないどころか、周囲の保護者や先生から怒られるといった失敗経験を幼少期から多く経験することになります。
このように、発達障害の特性が理解されず、否定的な評価を受け続けると、失敗経験が蓄積され、それを引きずることで自己肯定感が低下しやすくなります。
②他者と比較して劣等感を感じることが多い
発達障害のある方は、特性により周囲と同じように物事をこなすことが難しい場合があります。そのため、「なぜ周りの人と同じようにできないのか?」と注意される経験が多くなりやすく、自分自身でも他者と比較してしまい、劣等感を抱きやすくなる傾向があります。
例えば、ASD(自閉症スペクトラム症)の特性として、社会的なコミュニケーションが苦手な場合があります。その結果、周囲と同じような友人関係を築くことが難しく、周囲の人が自然に行っていることが自分にはできないと感じることがあります。また、感覚過敏の特性がある方は、特定の音や光の刺激を過剰に受け取ってしまうことがあります。日常生活の中で、周囲の人にとっては平気なことも、自分にとっては強いストレスになって適応できないという経験を重ねることで、自分が周囲より劣っていると感じてしまう場合があります。
自分自身でうまくできたという達成感や、周囲から褒められるなどの成功体験が少ないことで、「自分には価値がない」と感じやすいことも考えられます。
③発達障害の特性により、正しく自己認識できない
発達障害の特性として、認知の歪みが発生しやすいことも、自己肯定感が低くなりやすい一因と考えられます。
例えば、白黒思考(=物事を白か黒、0か100かで極端に考える)の場合、小さなミスや一度の失敗でも「自分は全てにおいてダメだ」と極端に考え、自己肯定感が低くなりやすいことが考えられます。他にも認知の歪みとして、反芻思考(=過去のネガティブな出来事を長く引きずりやすい)や、脳の情報処理の偏りにより物事を否定的に受け取る傾向なども考えられます。
加えて、自分自身の強みや弱みを客観視することが難しいと、他者からの評価に依存しやすくなります。他者から否定的な評価を受けた時にも、自分の全人格が否定されたように感じてしまい、自己肯定感が低くなりやすいと考えられます。このような発達障害の特性による思考の癖や自己認識の困難さが、自己肯定感を低くする要因になり得ます。
働く上で、自己肯定感が低いことのデメリット
自己肯定感が低いと、職場でのパフォーマンスや人間関係にさまざまな悪影響を及ぼす可能性があります。以下に具体的なデメリットを5つ紹介します。
①他者からのフィードバックを素直に受け止められない
自己肯定感が低いと、上司や同僚からのフィードバックを個人批判として受け取ってしまいがちです。その結果、過度に自分を責めたり、適切に問題に対処できなかったりすることがあります。これにより、成長の機会を逃し、職場での評価が低下する可能性があります。
②失敗を恐れて消極的になる
自己肯定感が低いと、自分に自信が持てないため、新しい業務や責任のある仕事に対して消極的になる傾向があります。これにより、成長の機会や高い評価を得るチャンスを逃す可能性が高くなります。また、挑戦を避けることで、自己成長が停滞し、昇進や昇給などのキャリアの発展にも影響を及ぼすことが考えられます。
③ストレスを感じやすく、健康リスクがある
自己肯定感が低いと、失敗を恐れるあまり、仕事への不安やプレッシャーを感じやすく、精神的に不安定になったり、慢性的なストレスを抱えてしまったりする傾向があります。これが続くと、メンタルヘルスの問題や身体的な健康リスクが高まります。結果として、仕事のパフォーマンスが低下し、長期的な健康問題につながる可能性があります。
④職場での人間関係で孤立しやすい
自己肯定感が低いと、周囲の人を「協力できる仲間」ではなく「ライバル」と捉えたり、失敗する姿を見せられないと警戒したりする場合があります。結果として、他者とのコミュニケーションに消極的になり、チームワークを発揮しにくくなります。これにより、職場での孤立感が増し、余計に「自分は必要とされていない」「価値がない人間だ」と、さらに自己肯定感が低下する悪循環に陥ることもあります。また、協力が必要な業務でのパフォーマンスにも影響します。
⑤仕事に対するモチベーションが低くなりやすい
自分の能力を過小評価することで、適切な業務の計画やスケジューリングが難しくなります。その結果、仕事ができないと感じ、モチベーションが低下し、業績が下がる可能性があります。また、過去の失敗を引きずりやすいため、「自分はどうせ失敗する」と考え、仕事に対する高いモチベーションを保つことが難しい場合があります。業績や仕事に対するモチベーションが下がることで、他者からの評価も上がらず、さらに自己評価が低くなるという悪循環に陥りやすくなります。
自己肯定感を高めるための7つの対策
自己肯定感は、自分自身を認め、尊重する気持ちを育むことで高めることが可能です。一度自己肯定感が低くなってしまっても、思考の癖や物事の捉え方などを考えることで、自己肯定感を高めることができるでしょう。以下では、具体的な対策を7つご紹介します。
①支援者や身近な人に相談する
自分の気持ちを言葉にして整理し、客観的に自分を見ることが自己肯定感を高める第一歩です。一人で考え込まず、発達障害の特性に理解のある支援者や家族、友人など、自分をよく知る人に相談することで、自分の長所や短所をバランスよく捉えられるようになります。また、人と話す中で見えてくる自分の気持ちを素直に受け止めることで、自己認識が改善し、自分への理解が深まるでしょう。
②うまくできたと思うことをメモに残す
自己肯定感を高めるには、成功体験を積み重ねることが大切です。スモールステップで目標を設定し、達成した際には「自分を褒める」ことを忘れないようにしましょう。具体的には、日記やメモにその日の良かったことを書き起こすと、自分の成長を視覚的に確認でき、ポジティブな気持ちが持続しやすくなります。
③短所を長所に言い換えてみる
自己肯定感が低いと、自分の短所にばかり目が向きがちです。しかし、短所は視点を変えることで長所に言い換えられます。たとえば、「慎重すぎる」は「ミスを防げる」、または「丁寧に物事に取り組める」といった長所に言い換えられます。こうした思考の転換を意識的に行うことで、自分への否定的な感情を和らげることができるでしょう。
④思い込みと事実を切り分けて考える
「どうせ自分にはできない」「すべて自分が悪い」といったネガティブな思い込みは、自己肯定感を下げる原因になります。発達障害の特性として、白黒思考や思考が偏りがちといったことが挙げられますが、ネガティブな思い込みに固執するのではなく、実際の評価や他者からのポジティブなフィードバックにも目を向けてみましょう。自分自身の認識と、事実を冷静に分けて考える練習を続けることで、自分自身を過小評価する思考の癖を改善することが期待されます。
⑤完璧主義をやめて、適切に他者の力を借りる
発達障害のある方も含めて、完璧主義に陥ると、自己肯定感が低下しやすくなります。自分の苦手な部分を受け入れ、周囲にサポートをお願いするのは弱さではありません。むしろ、適切に他者の力を借りることで、余計なストレスを減らし、自分の強みを活かす環境を整えられるでしょう。
⑥自分と他者の境界線を見直す
自己肯定感が低い人は、他者の評価に依存しがちです。他者からの評価に一喜一憂するのではなく、自分と他者の境界線を意識し、他者の意見を過剰に気にしない練習をしてみましょう。「自分の価値観を尊重する」ことが、他者に振り回されずに自分らしさを保つ鍵となるでしょう。
⑦過度にストレスを溜めない、自分なりのストレス解消方法を見つける
慢性的なストレスは、ネガティブな思考に陥りやすく、自己肯定感を低下させる大きな要因です。自分がリラックスできる趣味や運動、マインドフルネスなどを取り入れることで、定期的にストレスを解消しましょう。ストレスが減ると、物事を前向きに捉える力が高まり、自己肯定感の向上につながります。
発達障害のある方が自己肯定感に悩んでいるなら、エンラボカレッジに相談してみませんか?
発達障害のある方は、発達障害の特性が原因の一つとなって自己肯定感が低くなりやすいことが考えられます。自分の力で自己肯定感を高めようと思っても、なかなか難しいこともあるでしょう。そのような場合は、発達障害の特性について知識がある専門家や支援員の力を借りることも対策の一つです。
自立訓練(生活訓練)事業所のエンラボカレッジでは、発達障害の特性による思考の癖や行動パターン、コミュニケーションの特徴など、自己肯定感が低下する原因として考えられる要因と対策をスタッフと一緒に考えていくことができます。
例えば「感情学」のプログラムでは、考え方の癖やストレスを感じた時にどのような身体の反応が出るかといったことを理解し、自分自身の感情とどう向き合っていけば良いかを考えることができます。自分一人では気づくことができなかったモヤモヤした気持ちを言語化する上でも役に立つでしょう。
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「自己肯定感が低くて、いろいろなことがうまくいかない」「自己肯定感を高めたいが、自分一人の力で考え方を変えることが難しい」という方は、ぜひ一度ご相談ください。発達障害の特性も考えながら、自己肯定感を高める方法を一緒に考えてみましょう。
まとめ
自己肯定感とは、自分をありのまま受け入れ、存在価値を認める感覚です。自己肯定感が高い人は、主体性がありポジティブな行動を取る一方で、失敗を学びとして受け入れ、人生を前向きに進んでいくことが可能です。反対に自己肯定感が低い人は、他者と自分を比較した上で自分の不足や欠点にばかり目を向けてしまい、過去の失敗を引きずったり他者からの承認に依存したりする傾向があります。
発達障害のある方は、特性による失敗経験や、ネガティブな評価を周囲から受けやすいことなどが理由で、より自己肯定感が低下しやすい可能性があります。もちろん発達障害のある方全員が自己肯定感が低いというわけではありませんが、自分自身の特性や思考の癖を理解し、過剰に自己肯定感を低下させないような対策を考えておくと良いでしょう。もし「自己肯定感が低いことが原因で、つらい思いをしている」「自己肯定感を高めたいと考えているが、どうすれば良いのかわからない」と悩んでいる方は、一度エンラボカレッジの無料相談を活用してみてください。