障害年金とは?種類・金額・申請の流れをわかりやすく解説します
更新日:2026/07/03
病気やけがで働きづらさを抱えるなかで、「障害年金という制度があると聞いたけれど、自分や家族も受け取れるのだろうか」と考える方は少なくありません。
障害年金とは、病気やけがによって生活や仕事に一定の制限が生じたときに、現役世代も含めて受け取れる可能性がある公的な年金制度です。
「働けないことを証明するための制度」と受け止められがちですが、本来は生活の土台を支え、次の一歩に備えるための役割を持っています。
一方で、「いくらもらえるのか」「障害者手帳がないと申請できないのか」など、分からないことが多くて手続きに踏み出せない方もいらっしゃいます。
この記事では、障害年金の種類や金額、受給のための基本的な要件、申請の流れ、20歳前に初診日がある場合の取り扱いまでを、公的な情報をもとに分かりやすく解説します。
障害年金とは
まず、障害年金がどのような制度であるかを整理します。
現役世代も対象となる公的年金
障害年金とは、病気やけがによって日常生活や仕事に一定の制限が生じたときに支給される公的年金です。
年金というと65歳から受け取る老齢年金を思い浮かべる方が多いかもしれません。
障害年金はそれとは異なり、原則として20歳から65歳未満の現役世代の間に初診日(初めて医師の診療を受けた日)がある方を主な対象として、生活を支えるために支給される点が大きな特徴です。
なお、20歳前に初診日がある場合でも、20歳に達したときから受け取れる仕組みがあります。
対象となる病気やけがは幅広く、手や足の障害、内臓の疾患といった身体の障害だけでなく、うつ病や統合失調症などの精神疾患、知的障害、発達障害なども含まれる場合があります。
外見からは分かりにくい病気や障害であっても、日常生活や仕事への影響の程度が国の定める基準に該当すれば、支給の対象となることがあります。
「障害者手帳」とは別の制度
障害年金と障害者手帳は、混同されやすいものの、それぞれ別の制度です。
障害者手帳は福祉サービスや各種割引などを受けるための証明であり、障害年金は金銭的な給付(年金)を受けるための制度です。
等級の区分も、判定を行う機関も異なります。
そのため、障害者手帳を持っていなくても障害年金を申請できる場合があり、反対に手帳があるからといって自動的に障害年金が支給されるわけではありません。
それぞれの要件を個別に確認する必要があります。
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障害基礎年金と障害厚生年金の違い
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があります。
どちらの対象になるかは、原則として初診日にどの年金制度に加入していたかで決まります。
初診日にどの制度に加入していたかで決まる
障害の原因となった病気やけがで、初めて医師の診療を受けた日を「初診日」と呼びます。
この初診日に国民年金に加入していた場合は、障害基礎年金の対象となります。
自営業の方、専業主婦・主夫の方、学生、無職の方(20歳以上60歳未満)などが該当します。
一方、初診日に厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金の対象となります。会社などに勤めて厚生年金に加入していた方が該当します。
なお、障害厚生年金の1級または2級に該当する方は、障害基礎年金もあわせて受け取れる仕組みになっています。
対象となる障害等級が異なる
障害基礎年金が支給されるのは、国の定める障害等級が1級または2級に該当する場合です。
障害厚生年金は、これに加えて3級も対象となります。
さらに、初診日から5年以内に病気やけがが治り(症状が固定し)、3級よりやや軽い障害が残ったときに、一時金として支払われる「障害手当金」の仕組みもあります。
そのため、同じ病気やけがであっても、初診日に加入していた制度によって受け取れる年金の種類や範囲が異なる場合があります。
障害年金はいくら?令和8年度の金額
ここでは、もっとも問い合わせの多い「いくら受け取れるのか」を整理します。
以下は、令和8年度(2026年度)の障害基礎年金の額です。
障害基礎年金の年金額(令和8年4月分から)
障害基礎年金は、障害の重さに応じた等級によって定額が支給されます。
- 1級:年額1,059,125円(昭和31年4月2日以後生まれの方)
- 2級:年額847,300円(昭和31年4月2日以後生まれの方)
※昭和31年4月1日以前に生まれた方は、1級が年額1,056,125円、2級が年額844,900円となります。
1級の年金額は2級の1.25倍に設定されています。
また、生計を維持している子がいる場合は、これに「子の加算」が上乗せされます。
子の加算額は、2人目までは1人につき243,800円、3人目以降は1人につき81,300円です。
ここでいう子とは、18歳になった後の最初の3月31日までの子(高校を卒業する年齢までの子)、または20歳未満で障害等級1級・2級の状態にある子を指します。
障害厚生年金の年金額
障害厚生年金は、過去の厚生年金への加入期間や報酬(給与・賞与など)に応じて計算される「報酬比例」の仕組みをとっています。
そのため、受け取れる金額は一人ひとり異なります。
障害等級が1級または2級の場合は、この報酬比例の年金額に、先ほどの障害基礎年金が加算されて支給されます。
さらに、生計を維持している配偶者がいる場合は、一定の要件(配偶者加給年金など)のもとで上乗せされることがあります。
また、3級には年金額が低くなりすぎないよう最低保障額(令和8年度は年額635,500円)が定められています。
ご自身の詳細な見込み額については、年金事務所の窓口や「ねんきんネット」などで確認することができます。
※記載している金額は、日本年金機構が公表している令和8年度(令和8年4月分から)の数値です。
年金額は毎年度、物価や賃金の動向に合わせて改定される場合があります。
最新の情報は、日本年金機構の公式サイトなどでご確認ください。
障害年金の受給要件
障害年金(障害基礎年金・障害厚生年金)を受給するためには、原則として次の3つの要件をすべて満たす必要があります。
1.初診日に関する要件
障害の原因となった病気やけがで、初めて医師の診療を受けた日(初診日)が、次のいずれかの期間内にあることが必要です。
- 国民年金または厚生年金保険の加入期間中
- 20歳前(年金制度に加入していない期間)
- 日本国内に住む60歳以上65歳未満で、年金制度に加入していない期間
この初診日がいつであるかは、その後のすべての手続きの基準になる重要な日付です。
2.障害の状態に関する要件
原則として、初診日から1年6か月を経過した日(障害認定日)、またはその期間内に症状が固定した日に、障害の状態が国の定める障害等級表の基準に該当していることが必要です。
なお、初診日が20歳前にある場合は、障害認定日か、20歳に達した日のいずれか遅い方が基準となります。
障害等級の目安は以下の通りです。
- 1級
他人の介助を受けなければ日常生活のことがほとんどできない状態 - 2級
必ずしも他人の助けを借りる必要はなくても、日常生活が極めて困難で、労働によって収入を得ることが難しい状態 - 3級(※障害厚生年金のみ)
労働に著しい制限を受けるか、または労働に著しい制限を加えることを必要とする状態
3.保険料の納付に関する要件
初診日の前日において、それまでの期間に一定以上の年金保険料を納めている(または免除されている)ことが必要です。
具体的には、次のいずれかの基準を満たしている必要があります。
- 原則(全体の基準)
初診日がある月の前々月までの公的年金加入期間のうち、保険料の納付済期間と免除期間をあわせた期間が3分の2以上あること。 - 特例(直近の基準)
初診日が令和18年3月末日までであり、初診日に65歳未満である場合、初診日のある月の前々月までの直近1年間に保険料の未納がないこと。
ただし、生まれつきの障害や20歳前に初診日があるなど、年金制度に加入していない期間の病気・けがが原因である場合は、この保険料の納付要件は問われません。
障害年金の申請の流れ
障害年金は、受給要件を満たしていても、自動的に支給が始まるものではありません。
ご自身またはご家族による請求(申請)の手続きが必要です。
主な請求の方法
請求の方法には、障害の状態や時期に応じて主に次の2つの方法があります。
ひとつは「障害認定日による請求」です。
初診日から1年6か月が経過した「障害認定日」の時点で、障害の状態が等級に該当している場合に行う方法です。
認定日の翌月分から年金を受け取ることができます。
手続きが遅れた場合でも過去にさかのぼって請求(遡及請求)できますが、法律の規定(時効)により、さかのぼって受け取れるのは一回につき過去5年分が上限となります。
もうひとつは「事後重症による請求」です。
障害認定日の時点では等級に該当しなかったものの、その後症状が悪化して等級に該当する状態になったときに行う方法です。
この場合は、請求書を65歳の誕生日の前々日まで(65歳に達する日の前日まで)に提出して受理される必要があり、請求した月の翌月分から支給されます。
手続きの一般的な進め方
実際の手続きは、おおむね次のような流れで進みます。
- ①年金事務所や市区町村の窓口で相談し、初診日の目安や当時の加入制度を確認する
- ②初診の医療機関で「受診状況等証明書(初診日を証明する書類)」を取得する
- ③現在の主治医に障害年金用の「診断書」の作成を依頼する
- ④これまでの病状や日常生活の状況を振り返り、「病歴・就労状況等申立書」を自身や家族が作成する
- ⑤必要書類をすべてそろえて、年金事務所または市区町村の窓口に提出(請求)する
- ⑥日本年金機構による審査(通常数か月程度)を経て、支給の可否や等級が決定される
必要書類の組み合わせや進め方は、病気・けがの種類や個別の状況によって細かく異なる場合があります。
そのため、早い段階で年金事務所や専門の窓口(社会保険労務士など)に相談しておくと安心です。
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20歳前に初診日がある場合
生まれつきの障害や、20歳になる前に病気やけがの初診日がある場合は、本人がまだ年金制度に加入していない期間にあたります。
この場合は、前述した「保険料の納付要件」が問われずに、障害基礎年金の支給対象となる仕組みが設けられています。
ただし、本人が保険料を納めていない期間の障害に対する給付であることから、他の障害年金とは異なり「本人の所得による支給の制限」が設けられています。
前年の所得が一定の基準を超える場合は、年金の全額または半額(2分の1)が支給停止となります。
その支給停止の対象となる期間は、毎年10月分から翌年9月分までとされています。
所得の基準額は、扶養親族の有無や人数などによって変わります。
例えば、扶養親族がいない単身者の場合、大まかな目安として以下のようになります。
- 全額支給停止
前年の所得が4,721,000円を超える場合 - 半額支給停止
前年の所得が3,604,000円を超える場合
(※各種控除前の「収入」ではなく、控除後の「所得」で判定されます。また、基準額は法改正等で変更される場合があります)
この所得による支給制限は、20歳前に初診日がある場合に特有のルールであり、20歳以降に初診日があって保険料を納めてきた一般のケースには当てはまりません。
ご自身の具体的な所得基準や該当するかどうかについては、年金事務所などの窓口でご確認ください。
受給しながら生活を立て直すという選択肢
障害年金は、生活の不安をやわらげ、治療や次の準備に時間を使うための大きな支えになります。
一方で、「年金を受け取れることになったけれど、この先どのように過ごしていけばいいのか」「いきなり働くのはまだ難しいけれど、少しずつ生活を整えていきたい」と感じる方も少なくありません。
こうした段階では、就職や復職を急ぐのではなく、まずは生活のリズムや自己理解を立て直す時間を持つことが、将来の選択肢を広げることにつながります。
例えば、障害福祉サービスの一つである「自立訓練(生活訓練)」は、日常生活や社会生活を営む力を高めるためのサポートを行う場所です。
生活面・対人面・自己理解の3つの軸を中心に、原則として最長2年間、専門スタッフの支援を受けながら訓練を進めることができます。
障害年金で生活の土台を支えながら、こうした場を活用して少しずつ準備を進めていくことも、これからを考えるうえでの有効な選択肢のひとつです。
どのような場がご自身に合うのかを知りたい方や、現在の状況にあわせた過ごし方を一緒に整理してみたい方は、エンラボカレッジの無料見学・相談などを通じて、具体的な一歩を検討してみることもできます。
よくある質問
Q.働きながらでも障害年金を受け取れますか
A.働いていること(就労していること)だけを理由に、一律に支給されなくなるわけではありません。
ただし、就労の状況は、障害の程度を総合的に判断するうえでの要素のひとつとして重視される場合があります。
特に精神障害や一部の疾患などでは、どのような仕事内容なのか、職場からどのような援助や配慮(時短勤務や作業の軽減など)を受けているかによって、判断が変わるケースがあります。
定期的な更新時にも、日常生活や就労の状況が確認されることがあります。
Q.障害者手帳がないと申請できませんか
A.障害年金と障害者手帳は根拠となる法律が異なる別の制度であるため、手帳を持っていなくても障害年金を申請することは可能です。
障害年金の審査は、主に医師が作成する専用の診断書や「病歴・就労状況等申立書」をもとに行われます。
そのため、手帳の等級と障害年金の等級が必ずしも一致するとは限りません。
Q.一度認定されると、ずっと同じ金額を受け取れますか
A.障害の種類や状態によって異なります。
手足の切断など症状が変わらないとされる「永久認定」を除き、多くの場合は数年ごとに更新の手続き(障害状態確認届の提出)が必要となる「有期認定」となります。
更新の際に提出する診断書などから、障害の状態が改善していると判断された場合は、等級が変わって金額が減少したり、支給が一時停止されたりすることがあります。
Q.申請してからどのくらいで結果が分かりますか
A.提出された書類に不備や確認事項がなければ、申請(請求書の受理)から結果の通知(年金証書の送付など)まで、おおむね3か月〜4か月程度かかるのが一般的です。
ただし、病気やけがの性質によって、あるいは書類の追加提出や医療機関への確認が必要になった場合は、さらに時間を要することがあります。
手続きに不安がある場合は、早めに年金事務所や専門の窓口へご相談されることをおすすめします。
まとめ
障害年金は、病気やけがによって生活や仕事に一定の制限があるときに、現役世代も含めて受け取れる公的な年金制度です。
障害年金には「障害基礎年金」と「障害厚生年金」の2種類があり、初診日にどの年金制度に加入していたかによって対象が分かれます。
令和8年度(2026年度)の障害基礎年金(昭和31年4月2日以後生まれの方)は、1級が年額1,059,125円、2級が年額847,300円と定められています。
受給のための要件や申請の手続きは複雑に感じられるかもしれませんが、順を追って確認していけば、個別の状況に応じた必要な準備が見えてきます。
分からないことや不確かな点があれば、決して一人で抱え込まず、年金事務所やお住まいの市区町村の窓口などに相談してみてください。
障害年金は、単に「働けないこと」を証明するためのものではなく、これからの生活を立て直し、次の一歩に備えるための心強い支えになり得る制度です。
制度の仕組みを正しく理解し、上手に活用しながら、ご自身やご家族のペースでこれからの過ごし方を考えていただければと思います。
この記事について
監修:株式会社エンラボ 専門職チーム
(精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士 在籍)
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。年金額や要件は改定される場合があり、個別の受給可否は、お住まいの自治体・年金事務所・専門の窓口にご相談ください。健康や治療に関する判断については、医療機関にご相談ください。