うつ病で障害年金は受け取れる?働きながらの申請を解説します
更新日:2026/07/13
うつ病で長く治療を続けるなかで、「働くのが難しい時期に、障害年金という支えがあると聞いた」と調べ始める方は少なくありません。
障害年金は、うつ病などの精神疾患も対象となり得る公的年金です。一定の要件を満たせば、現役世代の方も対象となります。
一方で、「働いていると受け取れないのではないか」「どのくらいの状態なら対象になるのか」「申請しても認められないのではないか」など、不安や迷いを抱えて手続きに踏み出せない方もいらっしゃいます。
この記事では、うつ病のある方が障害年金の対象となるかどうかの考え方や等級の判断基準、働きながら申請する場合の留意点を、公的な情報をもとに解説します。
うつ病も障害年金の対象となり得る
初診日の加入制度で年金の種類が決まる
うつ病で初めて医師の診療を受けた日(初診日)に、どの年金制度に加入していたかによって、受け取れる年金の種類や等級の範囲が変わります。
初診日に会社員や公務員などで厚生年金に加入していた場合は、障害厚生年金の対象となるのが一般的です。
障害厚生年金には1級から3級まであり、1級・2級に該当した場合は障害基礎年金もあわせて支給されます。
一方、初診日に国民年金に加入していた場合(自営業・無職・学生、あるいは厚生年金加入者の扶養に入っていた方など)は、障害基礎年金の対象となり、支給の範囲は1級または2級です。
会社勤務を始めてから初めてうつ病で受診したというケースでは、障害厚生年金の対象となる可能性があります。在職中に受診した記録やカルテが、後の手続きで極めて重要になります。
年金の種類・金額・要件の全体像は、以下の関連記事もあわせてご確認ください。
障害認定日は原則として初診日から1年6か月後
障害年金を請求できるようになるのは、原則として初診日から1年6か月を経過した日(障害認定日)以降となります。
この障害認定日の時点で、障害の状態が国を定める等級に該当していれば、その時点に遡って請求できる場合があります。
もし、認定日の時点では該当しなかった場合でも、その後さらに症状が進行・悪化し、該当する状態になったときには、65歳に達する日の前日までに請求を行う「事後重症請求」という方法が認められる場合があります。
等級と認定の考え方
うつ病による障害年金の認定は、病名そのものだけでなく、日常生活や社会生活にどの程度の制限や支障があるかをもとに総合的に判断されます。
日常生活能力をもとに総合的に判断される
精神障害の等級判定は、国が定めた「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」に示された基準に沿って行われます。
このガイドラインでは、医師が記入する精神の障害用の診断書にある「日常生活能力の判定」と「日常生活能力の程度」という評価項目をもとに、認定される等級の目安が定められています。
判定の対象となるのは、適切な食事の摂取、身辺の清潔保持、金銭管理と買い物、他者との対人関係、社会的な手続きや危機の対応など、日常生活における具体的な場面です。
これらに家族や周囲のどの程度の援助が必要となっているかを総合的に見て、等級が判断される仕組みです。
そのため、同じ「うつ病」という診断名であっても、生活や就労への影響の程度によって判断は一人ひとり異なる場合があります。
症状が伝わる診断書が大切になる
うつ病は症状に波が生じやすく、診察時の短い時間だけでは、比較的落ち着いて見えることも少なくありません。
そのため、医師の診察だけでは見えにくい「ふだんの在宅生活での困りごとや制限」が、診断書や、自身で作成する「病歴・就労状況等申立書」を通じて客観的に伝わることが極めて大切になります。
日頃の体調や生活の状況をメモなどに記録しておき、主治医の診察時に普段の様子を具体的に伝えておくことが、適切な意思疎通につながる場合があります。
働きながらでも申請できる
「働いていると障害年金は受け取れないのではないか」と考えて、申請をためらう方は少なくありませんが、働きながら受給されている方もいらっしゃいます。
就労している事実だけで不該当になるわけではない
国の定めるガイドラインでは、就労している場合であっても、その事実だけをもって直ちに等級に該当しないと判断するものではないと明記されています。
審査においては、単に働いているかどうかだけでなく、以下のような就労の実態が総合的に考慮されます。
- 就労継続支援などの福祉的な就労か、あるいは一般就労か
- 職場でどのような配慮や援助(業務内容の軽減、休憩時間の調整など)を受けているか ・周囲の援助がなければ就労が困難な状態かどうか
たとえば、周囲の手厚いサポートや配慮のもとで短時間だけ働いているような場合は、その実情をふまえて障害状態が判断されることになります。
クローズ就労の場合の留意点
障害を職場に開示せずに一般雇用で働く「クローズ就労」の場合、職場での配慮が得られにくく、心身に大きな負担がかかりやすい傾向があります。
注意したい点として、周囲の特別な配慮を受けずに一般就労で継続して勤務できている場合、審査において「日常生活能力が一定以上ある」と判断され、等級に該当しにくくなる場合があります。
そのため、クローズ就労であっても「実際には他者のサポートを必要としている」「体調に波があり、欠勤や早退を繰り返している」といった就労の実態がある場合は、診断書や病歴・就労状況等申立書を通じて、その客観的な事実を正確に伝えることが極めて重要です。
受け取ったあとの更新について
障害年金の認定には、生涯にわたって支給される「永久認定」と、定期的に見直しが行われる「有期認定」の2種類があります。
うつ病をはじめとする精神疾患では、症状に変化が生じる可能性があるため、原則として1年から5年ごとに状態を確認する「有期認定」となるのが一般的です。
そのため、受給が始まったあとも、一定期間ごとに障害の状態を確認するための手続き(障害状態確認届の提出)が必要となります。
うつ病のように症状に波がある場合、更新時の審査で状態が改善していると判断されると、等級が下がったり、支給が一時的に止まったり(支給停止)することがあります。
障害状態確認届(診断書)の提出時期は、対象となる年の誕生月の末日までと定められています。
時期が近づくと日本年金機構から案内と専用の用紙が届きますので、記載された期限や注意事項にしたがって、主治医に診断書の作成を依頼するなどの対応を進めることになります。
年金を支えに、少しずつ生活を立て直す
障害年金は、治療や休養に専念したり、次の一歩に向けて準備したりするための経済的な支えになります。
一方で、「年金を受け取れることになったけれど、いきなり一般企業で働くのはまだ難しい」「まずは生活のリズムから整えたい」と感じる方も少なくありません。
公的な障害福祉サービスの一つである「自立訓練(生活訓練)」は、日常生活や社会生活を営む力を高めるための総合的なサポートを行う仕組みです。
個人の状況に合わせて、生活リズムの安定、対人関係の構築、自己理解の深め方などを、本人のペースで少しずつ整えていくことができます。
障害年金で生活の土台を支えながら、こうした公的サービスを活用して一歩ずつ準備を進めていくことも、これからの安心した暮らしを考えるうえでの選択肢の一つとなります。
なお、サービスの利用にあたっては、お住まいの自治体の窓口への申請等が必要となる場合があります。
よくある質問
Q. 傷病手当金を受け取っていても申請できますか?
A. 傷病手当金と障害年金は、それぞれ異なる目的で設けられた別の制度です。
そのため、傷病手当金を受給している期間であっても、障害年金の申請(請求)を行うこと自体は可能です。
ただし、同じうつ病を理由として、障害厚生年金と健康保険の傷病手当金を同時に受け取れる期間がある場合は、金額の調整(主に傷病手当金側の支給額が減額または停止される調整)が行われます。
詳しい取り扱いや手続きについては、加入している健康保険組合や協会けんぽ、または年金事務所にご確認ください。
Q. 申請が認められなかった場合はどうなりますか?
A. 審査の結果、支給の対象とならない(不該当)と判断された場合であっても、その決定に納得がいかないときは、処分の決定を知った日の翌日から3か月以内に不服を申し立てる手続き(審査請求)を行うことができます。
また、審査請求の決定にも不服がある場合は、さらに再審査請求を行うことも可能です。
判断に迷う場合や手続きに不安がある場合は、全国の年金事務所や、社会保険労務士などの専門の窓口に相談しながら進めることができます。
Q. 障害者手帳がないと申請できませんか?
A. 障害年金と障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳)は、全く別の法律に基づく異なる制度です。
そのため、障害者手帳を持っていなくても障害年金を申請することは可能です。
障害年金の審査は、手帳の有無ではなく、医師が作成する専用の診断書や「病歴・就労状況等申立書」などの書類に基づいて、国が個別に障害の状態を判断します。
関連ページ
―障害者手帳とは?3つの種類と申請方法をわかりやすく解説
まとめ
うつ病のある方も、公的年金の一定の要件を満たせば障害年金の対象となり得ます。
初めて医師の診察を受けた「初診日」に、どの年金制度に加入していたかによって、障害厚生年金か障害基礎年金かに対象が分かれます。
障害の等級は、日常生活や社会生活にどの程度の制限があるかをもとに総合的に判断されます。
現在働いているということだけを理由に対象から外れるわけではなく、職場での配慮や援助の有無など、就労の実態を含めて審査される仕組みです。
制度や手続きは複雑に感じられる部分もありますが、提出書類の準備を一つずつ確認しながら進めていけば、受給への道筋は見えてきます。
分からないことや手続きへの不安があれば、決して一人で抱え込まず、全国の年金事務所やお住まいの自治体の窓口、または専門家への相談を検討してみてください。
障害年金は、これからの生活を立て直し、心身の安定を図るための大切な公的支援です。
制度を正しく理解し活用しながら、ご自身のペースでこれからの働き方や生活について考えていく選択肢としてお役立てください。
この記事について
監修:株式会社エンラボ 専門職チーム
(精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士 在籍)
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。受給の可否や等級は個別の状況によって判断されます。詳しくは、お住まいの自治体・年金事務所・専門の窓口にご相談ください。治療に関する判断については、医療機関にご相談ください。