就労継続支援とは?A型・B型・就労移行との違いを詳しく解説します。

公開日:2023/07/04

障害のある方の働くことへの支援として、就労継続支援があります。就労継続支援とは、一般企業等で就職が難しい方に、働く機会や生活のサポートを提供する障害福祉サービスのことです。

就労継続支援はA型とB型に分かれていることや、同じ障害福祉サービスに就労移行支援もあることから、「違いが分からない」「私はどのサービスが合っているのだろう」と感じている方もいるのではないでしょうか。

今回は就労継続支援の概要、A型・B型、就労移行支援との違い、利用期間や利用料金などについて紹介します。

就労継続支援とは

就労継続支援とは、一般企業などで働くことが困難な障害のある方を対象として、事業所内で生産活動など働く機会の提供を行っている障害福祉サービスのひとつです。A型とB型の二種類があり、二つの大きな違いとしてA型では事業所と利用者が労働契約を結びながら利用し、B型では労働契約は結ばずに利用するという点があります。

 

どちらも障害のある方の支援を定めた障害者総合支援法という法律の中の、障害福祉サービスのひとつという位置づけです。

 

就労継続支援は令和3年時点でA型B型合わせて約18,000事業所あり、合計50万人以上の方が利用しています。

 

内訳で見ると、就労継続支援A型が4,130事業所があり、98,620名が利用しています。

 

対して就労継続支援B型では14,407事業所あり、401,977人が利用していて、B型の方が事業所数、利用者数ともに多くなっています。

就労継続支援B型とは

就労継続支援B型とは、企業などへの就職が困難な方を対象に雇用契約を結ばずに、生産活動などの働く機会や訓練とともに、生活や体調の困りごとへの支援を提供している障害福祉サービスのひとつです。

労働契約を結んでいないため就労継続支援A型と比べて、体調など自分のペースに合わせて通いやすいという特徴があります。

 

対象者

就労継続支援B型は、一般的な企業など雇用契約に基づいた働き方が難しいとされた障害のある方が対象者となっています。

 

具体的な対象者は以下のような方々です。

・過去に就労経験があるが、年齢や体力の面で一般企業に雇用されることが困難となった
・50歳以上の方、または障害基礎年金1級を受給している
・上記には該当しないが、就労移行支援事業者など他のサービスを利用した結果、就労継続支援B型の利用が適切と判断された方

引用:厚生労働省「障害者の就労支援について」

 

利用するには障害者手帳は必須ではなく、自治体から発行される「障害福祉サービス受給者証(受給者証)」が必要となります。

仕事内容

就労継続支援B型では、生産活動などの名称で働く機会を提供しています。仕事内容としては軽作業が多い傾向にありますが、詳細は事業所ごとに異なります。以下に仕事内容の例を記載します。

 

就労継続支援B型の仕事内容の一例

 

  • 農作物の収穫・販売
  • パンなどの製造やカフェ運営
  • 名刺やチラシなどの印刷
  • アクセサリーの製作
  • 清掃や除草作業
  • オフィス用品の組み立て
  • 郵便物の仕分けや封入作業など

給料・工賃(賃金)

就労継続支援B型では生産活動の対価として、工賃と呼ばれるお金が支払われます。
工賃の金額には明確な決まりはなく、行った作業などにより異なります。

 

令和3年度の就労継続支援B型の平均工賃は月16,507円でした。10年前の月13,586円と比べて高くなっており、金額は年々上昇傾向にあります。

利用料・利用期間

就労継続支援B型の利用期間と利用料について紹介します。

 

まず、就労継続支援B型では利用期間が決まっていないため、事業所と利用契約が続く限り利用することが可能です。

 

次に、就労継続支援B型は事業所から支援を受けた分の利用料を毎月支払います。利用料は利用者の世帯所得によって支払う金額の上限が設定されており、その上限を超えて支払うことはありません。


利用料の上限は以下の表のとおりです。例えば生活保護受給世帯や、市町村民税非課税世帯では就労継続支援B型の利用料は0円となります。

 

(注1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。

(注2)収入が概ね670万円以下の世帯が対象になります。

(注3)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。

 

作図参考元:厚生労働省「障害者の利用者負担」

 

就労継続支援A型とは

就労継続支援A型とは、事業所と利用者が雇用契約を結んだうえで、働く機会や訓練の提供、その他日常生活の支援を提供している障害福祉サービスのひとつです。

労働契約を結んでいるため、働く時間などに決まりがあることや、最低賃金が保障された給与を受け取ることができるという特徴があります。

 

対象者

就労継続支援A型の対象者は、一般企業などで働くのは難しいが、事業所内で雇用契約を結んで働くことが可能と判断された65歳未満の障害のある方です。

 

具体的には以下のような方々が対象者となっています。

① 移行支援事業を利用したが、企業などへの就職に結びつかなかった方

② 特別支援学校を卒業して就職活動を行ったが、企業などへの就職に結びつかなかった方
③ これまで働いた経験があって、現在どこにも雇われていない方

 


参考元:厚生労働省「障害者の就労支援について」

 

また、65歳になる前から就労継続支援A型を利用しているなど、一定の条件に当てはまる方は65歳以上も引き続き利用が可能です。

 

A型も利用するには障害者手帳は必須ではなく、受給者証が必要となります。

仕事内容

就労継続支援A型の仕事内容も事業所によって違いがありますが、軽作業の他にデータ入力などパソコンを使った仕事を行っている場合も多いようです。仕事内容の一例を紹介します。

 

就労継続支援A型の仕事内容の一例

  • データ入力
  • 書類のスキャン
  • Webサイト作成
  • 清掃や除草作業
  • 農作物の収穫・販売
  • パンなどの製造やカフェ運営
  • クリーニングなど

給料・工賃(賃金)

就労継続支援A型でも、仕事を行った分の報酬を受け取ることができます。雇用契約を結んでいるため、最低賃金が保障されることが特徴です。

 

令和3年度の平均給与は月81,645円でした。こちらも10年前の月68,691円と比べて高くなっており、ここ数年は年々上昇傾向にあります。

 


参考元:厚生労働省「令和3年度工賃(賃金)の実績について」

利用料・利用期間

就労継続支援A型も利用期間に定めはないため、事業所との利用契約が続く限り利用できます。

 

また、同様に支援に対して利用料を支払います。利用料の考え方は就労継続支援B型と同様で、世帯所得により上限が設定されています。

 

(注1)3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合、収入が概ね300万円以下の世帯が対象となります。

(注2)収入が概ね670万円以下の世帯が対象になります。

(注3)入所施設利用者(20歳以上)、グループホーム利用者は、市町村民税課税世帯の場合、「一般2」となります。

 

作図参考元:厚生労働省「障害者の利用者負担

 

就労継続支援A型とB型の違い

就労継続支援A型とB型について紹介してきましたが、それぞれの違いを比較してみましょう。

 

対象者

A型:一般企業などで働くことが難しく、事業所と雇用契約を結んで働くことが可能と判断された65歳未満の障害のある方です。

 

B型:一般企業やA型など雇用契約を結んで働くことが難しいとされた方が対象です。年齢制限はありません。

仕事内容

A型:軽作業の他、パソコンを使ったオフィス系の業務も多い傾向にあります。

 

B型:軽作業の他、パンなどの製造やカフェの運営などが多い傾向にあります。

給料・工賃(賃金)

A型:雇用契約を結ぶため、最低賃金が保障されます。令和3年度の平均給与は月81,645円でした。

 

B型:最低賃金は適用されず、生産活動の対価として工賃が支払われます。令和3年度の平均工賃は月16,507円でした。

利用料・利用期間

A型:利用料は世帯所得により上限があり、利用期間は定められていません。

 

B型:利用料、利用期間共に就労継続支援A型と同様の考え方です。

 

関連記事:就労継続支援A型とは?

関連記事:就労継続支援B型とは?

就労移行支援と就労継続支援の違い

就労継続支援と同様に、障害福祉サービスのひとつとして「就労移行支援」があります。

 

就労移行支援は企業などで働くことを目的とした訓練や、就職活動のサポートを提供している事業所です。

 

就労継続支援との大きな違いとして、就労移行支援は事業所内で働くのではなく、企業などへ就職するための取り組みを中心としている点があります。他にも違いがありますので、それぞれ見ていきましょう。

対象者

就労移行支援:サポートを受けることで企業などへの就職が可能と見込まれる65歳未満の障害のある方です。

 

就労継続支援:企業などへの就職が困難と判断された方が対象となります。A型は65歳未満の方が対象です。

支援内容

就労移行支援:就職のための業務スキルや体調管理能力の訓練や、書類添削・面接練習などの就職活動のサポートなどを行っています。

 

就労継続支援:生産活動などの働く機会の提供や、コミュニケーションや体調管理など日常生活のサポートなどを行っています。

給料・工賃(賃金)

就労移行支援:就職のための活動が中心で、対価が支払われる活動はあまりありません。

 

就労継続支援:仕事内容や労働契約に基づいて対価が支払われます。

利用料・利用期間

就労移行支援:利用料は就労継続支援と同じで世帯所得により上限が決まっています。利用期間は2年と定められており、自治体に必要性が認められた場合は最大1年の延長があります。

 

就労継続支援:利用料は世帯所得によりひと月の上限が決まっています。利用期間は定められていません。

 

自立訓練と就労継続支援の違い

就労継続支援と同じ障害福祉サービスには、「自立訓練」と呼ばれるサービスもあります。

これまで紹介したサービスでは働くための支援が中心でしたが、自立訓練では自立した日常生活を営むのに必要な訓練などを提供しています。

 

自立訓練には「生活訓練」と「機能訓練」の二種類があり、生活訓練では生活能力の訓練が多く、機能訓練では身体的なリハビリテーションを中心に取り組んでいきます。

 

生活能力とは家事、体調管理などの日常生活や、対人関係やコミュニケーションなどの社会生活に必要なスキルのことです。

 

体調の管理では自身の障害理解を深めたり、生活リズムを整えたりするための訓練を行い、対人関係やコミュニケーションでは講座で学んだあとに他の利用者とのグループワークで実践するなどしてスキルを身につけていくことが多いです。

 

すぐに働くには不安があり、まずは体調の安定やコミュニケーション能力の訓練をしたい、といった場合の利用が考えられます。

対象者

自立訓練:地域生活を営むうえで、身体機能や生活能力の訓練が必要と見込まれる障害のある方が対象です。対象年齢は定められていません。

 

就労継続支援:企業などへの就職が困難であった方が対象となります。A型の場合は65歳未満の方が対象です。

 

支援内容

自立訓練:生活訓練では、体調管理、コミュニケーション能力などの訓練の提供と、生活に関する相談対応をしています。機能訓練では加えて理学療法士などによる身体的なリハビリテーションも行います。

 

就労継続支援:働く場所の提供とともに、体調管理などの日常生活に関する支援も行っています。

 

給料・工賃(賃金)

自立訓練:生活に関する訓練が中心のため、給料や工賃などが支払われる活動はありません。

 

就労継続支援:仕事や契約に応じた対価が支払われます。A型では労働契約を結び最低賃金が保障された給与、B型では工賃が支払われます。

 

利用料・利用期間

自立訓練:利用期間の定めがあり、生活訓練では24か月、機能訓練では18か月です。それぞれ利用開始時の状況により長くなる場合があります。利用料は就労継続支援と同様に世帯所得により上限が設定されています。

 

就労継続支援:利用期間の定めはありません。また、利用料は世帯所得により支払う額の上限が決まっています。

 

就労継続支援はどんな人におすすめ?

ここでは就労継続支援の特徴をもとに、どんな人におすすめかを紹介します。

他の障害福祉サービスとは異なる就労継続支援の特徴としては、

  • 事業所内で働く機会が多い
  • 対価が支払われる
  • 期間の定めがない

という点が挙げられます。

この特徴を踏まえると就労継続支援は、すぐに企業などで働くことが難しいと感じる方、支援を受けながら働きたいという方、無収入になることに不安がある方などに比較的向いていると言えるでしょう。

就労継続支援を利用するまでの流れ

就労継続支援を利用するには、通う事業所の選択や、自治体への申請などいくつかステップがあります。ここでは利用までの流れを紹介します。

事業所を探す

まずは通いたい事業所を探しましょう。自治体の障害福祉窓口や相談支援事業所などで相談できる他、インターネットでも探すことができます。

 

インターネットでは事業所の公式サイトだけでなく、多くの事業所の情報が集まったサイトもあります。事業所の特徴や支援内容が掲載されていますので、自分に合いそうな事業を探してみましょう。

 

参考元:独立行政法人福祉医療機構「障害福祉サービス等情報検索」

 

見学・体験する

気になる事業所を見つけたら、見学・体験をすることが大事です。一般的に見学ではスタッフが事業所の案内をしてもらえ、体験では他の利用者と一緒の活動を試すことができます。

 

実際に見学・体験をすることで、事業所やスタッフ、利用者の雰囲気や、活動内容が自分に合っているかも判断しやすくなります。

 

見学・体験はひとつだけでなく、複数の事業所で行うことができます。就労継続支援だけでなく、就労移行支援や自立訓練の事業所も見学・体験することができますので、いろいろと試して自身の状況に合った場所を決めましょう。

申請をする

利用する事業所が決まったら、自治体に申請をします。窓口は障害福祉窓口などの名称が多いですが、自治体によって異なりますのでわからない場合は市役所などの総合窓口に問い合わせてみるといいでしょう。

 

審査を経たのちに受給者証が発行されます。この受給者証をもとに利用したい事業所と契約を結ぶと正式に利用が開始できます。

すぐに働くことに不安がある方は

働くことに不安がある方や、体調管理やコミュニケーション能力の訓練を集中的に行いたい、という方には自立訓練(生活訓練)から利用するという方法もあります。

 

自立訓練(生活訓練)では一人ひとりの希望や状況に合わせて家事や生活リズム、障害理解、体調安定などの日常生活の訓練とともに、人とのコミュニケーションの練習やビジネスマナー講座などの働く準備などの支援も行っています。

 

「なかなか体調が安定しない」「人とのコミュニケーションが上手くいかない」「生活を整えてから就活したい」といった方は、自立訓練(生活訓練)の利用を検討してみてはいかがでしょうか。

就労継続支援のまとめ

就労継続支援とは、障害のある方へ働く機会や生活への支援を提供している障害福祉サービスの一つです。

 

A型とB型の二種類があり、A型では労働契約を結び、B型では労働契約は結ばないといった違いがあります。

 

A型もB型も事業所ごとにも仕事内容などに違いがありますので、利用を検討される方は見学や体験をして自分に合っているか確かめることが大事です。

 

働くことにまだ不安がある、まずは体調を整えたい、といった方は同じ障害福祉サービスの自立訓練(生活訓練)の利用を検討することも選択肢の一つです。

障害や生活のことまずは
相談しませんか?

あなたのお悩みやお困りごとについてお聞かせください。

見学・体験も随時受け付けております。