うつ病で休職するには|流れ・手続き・傷病手当金・過ごし方を解説
更新日:2026/05/31
朝、布団から出られない。会社に行こうとすると涙が止まらないという状態のなかで「うつ病で休職するにはどう動けばよいのか」を調べはじめる方は少なくありません。
うつ病による休職は、受診→診断書→会社への相談→傷病手当金→療養→段階的な復職準備という流れで進みます。焦って戻ると再発しやすい傾向もあり、主治医や会社と協力しながら段階を踏む社会的なプロセスです。
本記事では、うつ病で休職する際の流れ・手続き・傷病手当金・期間の過ごし方・復職プロセス・医療リワークや自立訓練の活用について紹介します。
休職の前に知っておきたい3つの前提
うつ病で休職を検討するとき、最初に押さえておきたい前提が3つあります。
前提1|「うつ病かもしれない」と感じたら受診が起点
休職を考える前に、まず必要なのは医療機関の受診です。
「最近ずっと眠れない」「食欲がない」「会社に行こうとすると涙が出る」「楽しめていたことが何も楽しくない」――こうした状態が2週間以上続いている場合、精神科または心療内科への受診を検討する目安とされています。
厚生労働省「みんなのメンタルヘルス」でも、うつ病の代表的な症状として「気分の落ち込み」「興味・喜びの喪失」「食欲・睡眠の変化」「疲れやすさ」「集中力の低下」「自分を責める気持ち」などが挙げられており、これらが日常生活や仕事に支障をきたしている場合は専門医の判断を仰ぐことが推奨されています。
「うつ病かどうか分からないのに病院に行っていいのか」と迷う方もいらっしゃるかもしれませんが、診断するのは医師の役割です。受診の段階で症状の有無や程度を判断してもらえます。
前提2|休職するかどうかは「主治医の判断」が起点になる
会社に対して休職を申し出る際には、原則として主治医の診断書が必要になります。
「自分はもう限界だから休みたい」という気持ちだけで会社に伝えても、休職制度を利用するには医学的根拠が求められるのが一般的です。
主治医は、症状の重さ、生活機能の低下、就労継続の可否を総合的に判断したうえで、「○か月の休養を要する」と診断書に記載します。
逆に、主治医が「いま無理に通勤を続けると症状が悪化する」と判断した場合、ご本人が「まだ頑張れる」と感じていても休職を勧められるケースがあります。
医療職以外が「休んだほうがよい/まだ大丈夫」を決めるのは難しい領域のため、判断の中心は必ず主治医に置くことが大切です。
前提3|休職制度は「会社ごとに違う」前提で確認する
休職制度そのものは法律で一律に定められているわけではなく、会社の就業規則によって「休職期間の上限」「給与の有無」「復職の条件」などが異なります。
一般的には、勤続年数に応じて休職可能期間が定められているケース(例:勤続3年未満は6か月、3年以上は1年6か月など)が見られますが、会社によって幅があります。
休職を申し出る前に、就業規則の「休職」「私傷病休職」の項目を確認し、自社のルールを把握しておくと、見通しを立てやすくなります。
就業規則がどこにあるか分からない場合は、人事・総務部門に「休職制度について教えてほしい」と問い合わせれば、必要な情報を案内してもらえることが一般的です。
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– 休職とは?種類や手当の受け取り方、申請の流れ、デメリット
うつ病で休職するまでの流れ(5ステップ)
ここから、うつ病で休職を開始するまでの具体的な流れを5ステップで整理します。
ステップ1|医療機関を受診する
最初に行うのは、精神科または心療内科の受診です。
初診の予約は、心療内科の場合は数日〜1週間程度で取れることが多いですが、精神科では1か月以上待つケースもあります。
「すぐに受診したい」場合は、自治体の保健所や精神保健福祉センターに相談すると、近隣の医療機関や緊急時の対応窓口を紹介してもらえることがあります。
初診時には、現在の症状(不眠・食欲低下・気分の落ち込み・通勤困難など)、仕事や生活で起きている支障、これまでのストレス要因などを伝えます。
「うまく説明できる自信がない」という方は、症状や困りごとをメモにまとめて持参すると、医師に伝えやすくなります。
ステップ2|主治医に「休職が必要か」を相談する
受診時、または通院を続けるなかで、主治医に「いまの状態で仕事を続けられるか」「休養が必要か」を相談します。
主治医が休養を必要と判断した場合、「うつ病のため○か月の休養を要する」といった内容の診断書を発行してもらえます。
診断書の作成費用は、医療機関や様式によって異なりますが、おおむね3,000〜5,000円程度が一般的とされています(健康保険適用外)。
会社所定の様式がある場合は、初回受診前に人事に確認し、所定様式を持参すると二度手間になりません。
傷病休職
傷病休職は、労働災害以外の病気や怪我によって働けなくなった際に取得する休職のことです。うつ病や身体的な怪我などが原因となることが多いと言われています。
事故欠勤休職
事故欠勤休職は、傷病以外の理由による休職のことです。例えば逮捕・拘留されたことにより働けない場合や、その他自己都合による休職などが該当します。
留学休職
留学休職とは、海外留学を理由とする休職のことです。今後の業務に必要な知識やスキルを取得するための留学に対して使用されることがあります。
出向休職
出向休職とは、他社に出向することになった場合に取得する休職のことです。出向期間が終わったら元の会社に復職をします。
このような休職以外にも、会社独自の休職制度を設けている場合もあります。
ステップ3|会社(上司・人事)に休職を申し出る
診断書を受け取ったら、上司または人事担当者に休職の意思を伝え、診断書を提出します。
伝え方は、対面が難しい場合はメールや電話でも構いません。
「○月○日に主治医から休養が必要と診断されました。診断書を添付しますので、休職の手続きについてご案内ください」といった簡潔な伝え方で問題ありません。
詳細な症状や経緯まで一度に説明する必要はなく、必要な情報は会社側から順次質問されるかたちで整理されていきます。
申し出のタイミングは、診断書を受け取った後できるだけ速やかに行うのが一般的です。
「休職を申し出ること自体に罪悪感がある」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、療養の必要性は医師が判断しているものであり、申し出は本人の権利として認められています。
ステップ4|社内手続きを行う
会社によって流れは異なりますが、一般的には次のような手続きが行われます。
休職届の提出(会社所定の様式に記入)、引き継ぎ業務の整理(可能な範囲で)、休職開始日の確定、休職期間中の連絡方法の確認、健康保険・社会保険の継続手続きの確認、傷病手当金申請書の入手などです。
引き継ぎ業務については、症状が重い場合は無理に整理せず、上司に「いまの状態ではここまでしか引き継げません」と率直に伝えて構いません。
「完璧に引き継いでから休まないと迷惑がかかる」と感じやすい時期ですが、症状が重いタイミングで無理に業務を続けることは、回復をかえって遅らせる要因になります。
ステップ5|休職を開始する
社内手続きが完了したら、休職期間が始まります。
休職開始後、しばらくの間は会社からの連絡を最小限にしてもらうことを上司・人事に依頼するのが一般的です。
「業務関連の連絡は人事担当の○○さんに窓口を一本化してほしい」「緊急時以外は連絡を控えてほしい」など、休職期間中の連絡ルールを明確にしておくことで、療養に集中しやすくなります。
仕事関連のメール・チャットの通知は、可能であればオフにすることをおすすめします。
休職中の経済支援|傷病手当金の仕組み
「休職したいが、お金の不安が大きい」――これは多くの方が抱える現実的な懸念です。
休職中の生活を支える代表的な制度が、健康保険の「傷病手当金」です。
傷病手当金の概要
傷病手当金は、業務外の病気やけがで働けない期間の生活を支えるために、健康保険から支給される給付金です。
支給される金額は、おおむね「標準報酬日額の3分の2」とされています。
支給期間は、支給開始日から通算して最長1年6か月です(2022年1月以降は通算期間に変更されています)。
支給要件(4つ)
傷病手当金を受給するためには、次の4つの要件をすべて満たす必要があります。
要件1:業務外の事由による病気やけがで療養中であること。
要件2:労務不能であること(仕事に就けない状態であること)。
要件3:連続して3日間(待期期間)休んでいること。
要件4:休んだ期間について給与の支払いがないこと(または支給額が傷病手当金より少ないこと)。
待期期間の3日間は、土日祝日・有給休暇を含めてカウントされ、待期完成後の4日目から支給対象になります。
休職期間
どのくらい休職できるかは会社によって異なります。勤続年数によって変わる場合もあるので、事前に確認しておくようにしましょう。
休職中の給与や手当
休職中は基本的に給与は支払われないことの方が多いと言われています。その場合でも、会社独自に何かしらの手当が支払われることもあるため、あらかじめ確認しておくといいでしょう。会社から給与が支払われない時は、傷病手当金を受給できる場合があります。傷病手当金については後ほど詳しく紹介します。
社会保険料の支払方法
休職中にも社会保険料(健康保険、厚生年金)を支払う必要があります。これは休職中に給与が出ない場合でも支払うことになるため、注意が必要です。社会保険料は多くの場合、給与から天引きという形で支払っていますが、休職で給与が出ない場合には別の方法で収めることになります。方法は会社によっても異なりますが、何かしらの手段で支払う必要があることを覚えておくといいでしょう。
なお、労働保険料(雇用保険、労災保険)は実際に支払われた給与に基づいて支払うため、休職中に給与が出ない場合には支払う必要はありません。
休職中の連絡方法
休職中はうつ病の回復度合いの確認や、傷病手当金、社会保険料の支払いについてなど様々なことで会社と連絡を取る必要があります。ただ、うつ病の方の中には「連絡が負担」と感じる方もいると思います。気になる方はあらかじめ休職期間の連絡方法(電話がいいかメールがいいかなど)や頻度などを打ち合わせしておくと、うつ病の療養に専念することにもつながるでしょう。
復職へのサポート
うつ病での休職期間が終わったら会社へ復職することになります。しかし、休んでいた状態からいきなり復職をするとそれまでとのギャップが負担となる場合もあります。会社によっては復職のために慣らし業務などのサポートをしていることもあります。休職後にうつ病の再発を防止するためにも、どのようなサポートを行っているか確認しておくといいでしょう。
会社でサポートがない場合には、自立訓練などのサポートが利用できる場合があります。自立訓練(生活訓練)ではうつ病で休職中の方に対して、生活リズムの安定や自己理解、ストレスコントロール方法の取得など、復職後も安定して働くためのサポートを提供しています。
自立訓練(生活訓練)事業所のエンラボカレッジでは無料での相談を実施中です。「うつ病で休職中にすることがない」「復職が不安」などのお悩みがある方は、一度お問い合わせください。
申請の流れ
傷病手当金の申請は、原則として本人または会社が「健康保険傷病手当金支給申請書」を健康保険組合または協会けんぽに提出します。
申請書は、本人記入欄、事業主記入欄、療養担当者(医師)記入欄の3つで構成されており、それぞれに記入してもらう必要があります。
医師の記入欄については、診療を受けている医療機関で記入を依頼します(文書料が発生するケースが多く、おおむね300〜2,000円程度が目安です)。
申請から振込までは、おおむね2週間〜2か月程度かかるとされています。
初回支給までに時間がかかるため、最初の数か月分の生活費は、貯蓄や家族からの一時的な支援で乗り切る想定をしておくと安心です。
詳細な手続きや必要書類については、加入している健康保険組合または協会けんぽにご確認ください。
傷病手当金と退職
休職期間中に退職に至った場合でも、一定の条件を満たせば傷病手当金を継続して受給できるケースがあります。
具体的には、退職日までに継続して1年以上健康保険の被保険者であったこと、退職日に労務不能の状態であり傷病手当金を受給しているか受給要件を満たしていることなどが条件となります。
退職前に「いまの傷病手当金は退職後も継続できるか」を健康保険組合に確認しておくと、退職後の見通しが立てやすくなります。
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– 休職とは?種類や手当の受け取り方、申請の流れ、デメリット
自立支援医療と障害年金
うつ病の通院が長引く場合、医療費の自己負担を軽減できる「自立支援医療(精神通院医療)」の制度があります。
申請が認められると、精神科の通院医療費の自己負担が原則1割になります。
また、症状が長期化し日常生活や就労に著しい制限がある場合は、障害年金(精神障害)の申請対象になる可能性があります。
これらの制度は、お住まいの市区町村の障害福祉課または年金事務所が窓口です。
主治医や精神保健福祉士に「使える制度はないか」と相談してみると、状況に合った制度を案内してもらえることがあります。
休職期間の過ごし方|3段階で考える
休職期間中の過ごし方は、一般的に「急性期」「回復期」「復職準備期」の3段階で整理されます。
各段階で意識したい過ごし方を順に解説します。
急性期(休職開始〜1〜2か月目)|とにかく休む
休職を開始してすぐの時期は、心身の疲労がピークに達していることが多く、まず「休むこと」が最優先になります。
この時期によく見られる状態として、寝てばかりいる、食欲がない/食べすぎる、頭が回らない、ニュースやSNSも見たくない、家族との会話も億劫、急に涙が出る、自分を責める考えが止まらない――などがあります。
この時期は「何もできない自分」に焦りや罪悪感を抱きやすい時期ですが、症状の重い時期に「何かしなければ」と動こうとすることは、回復を遅らせる要因になることが知られています。
過ごし方として意識したいこと:
- 起きる時間・寝る時間を厳密に決めず、眠れるときに眠る
- 食事は無理に栄養バランスを整えず、食べられるものを少しでも口にする
- 仕事関連の連絡(メール・チャット)は通知をオフにする
- 「今日は○○ができた/できなかった」の振り返りをしない
- SNS・ニュースの閲覧時間を意識的に減らす
- 主治医の指示通りに服薬する
- 通院日だけは守る
家族や同居者がいる場合は、「いまは仕事のことを話したくない」「励ましの言葉より、そっとしておいてほしい」など、自分の希望を伝えておくと、関係がこじれにくくなります。
回復期(2〜4か月目)|生活リズムを少しずつ整える
急性期を過ぎ、少し気力が戻ってきたタイミングが回復期にあたります。
この時期には、朝起きられる日が増える、食欲が戻る、本やテレビに少し興味が向く、近所まで散歩に出られる――といった変化が見られます。
ただし「すっかり治った」と感じやすい一方で、症状の波はまだ大きく、調子の良い日と悪い日が交互に現れる時期でもあります。
過ごし方として意識したいこと:
- 起床時刻を一定に近づける(最初は「12時起き」でも可、徐々に早める)
- 1日1回は外に出る(最初は買い物・散歩・通院など短時間でOK)
- 食事を1日3回に近づける
- 軽い運動(散歩・ストレッチ)を取り入れる
- 趣味や好きな活動を少しずつ再開する
- 「仕事のことを考えない時間」を意識的に作る
- 主治医に「最近の状態」を具体的に伝える
この時期に「もう復職できる」と判断して職場に戻り、再発に至るケースが少なくありません。
ご自身の感覚と主治医の判断を必ずすり合わせ、復職判断は焦らないようにしましょう。
業務外の事由でうつ病などが生じたこと
まず一つ目の条件はうつ病などの傷病が業務以外の状況で生じたということです。例えば家庭環境やその他仕事とは関係のない理由によりうつ病になった場合が当てはまります。もし、うつ病の原因が会社にある場合は傷病手当金ではなく労災補償が対象となる可能性があります。
現在働けない状態なこと
次の条件は現在働けない状態であることです。うつ病などの傷病が働くことができない程度だと認められる必要があります。
連続する3日を含む4日以上働けないこと
傷病手当金には「待期期間」という考え方があり、連続する3日を休むことで待期が成立し、4日目から受給することができます。重要なのは「連続する3日」という考え方で、2日休んだあと1日出勤して、また2日休んでも待期は成立しません。あくまで3日連続で休んだ期間がある必要があります。一度待期が成立してしまえば、その後出勤した日があっても、次に休んだ日から傷病手当金を受給することができます。
休業した期間で給与の支払いがないこと
傷病手当金は休んだ期間に会社から給与が支払われている場合には対象となりません。ただし、その給与が傷病手当金の額よりも低い場合にはその差額が支払われます。例えば休職中は給与が半分の「15万円」しか支払われず、傷病手当金の額が「20万円」だった場合は差し引き「5万円」が支払われるという計算になります。
復職準備期(4か月目以降)|段階的に負荷を上げる
回復期を経て、生活リズムが安定し、気力・体力が戻ってきた段階が復職準備期です。
この時期から、「働く生活に戻るための準備」を段階的に進めていきます。
過ごし方として意識したいこと:
- 起床時刻を勤務時の時刻に合わせる
- 通勤経路を実際に往復してみる(最初は1区間、徐々に伸ばす)
- 平日の日中に図書館・カフェなどで数時間過ごす
- 簡単な書類仕事・読書・PC作業を1〜2時間続けてみる
- 主治医・産業医・人事との復職面談を予定する
- 医療リワーク・自立訓練・就労移行支援などの社会資源の活用を検討する
- 復職後の働き方(時短勤務・在宅勤務・業務量調整)を会社と相談する
この時期に「いきなりフルタイムで戻る」のではなく、リワークや自立訓練を経由して段階的に負荷を上げていく方法が、再発防止の観点から推奨されることが多くなっています。
関連ページ
– 仕事におけるうつ病の症状・対処方法・休職の手順・過ごし方
復職プロセス|段階的な復帰の流れ
復職を判断する際は、ご本人の体調、主治医の意見、会社(産業医・人事)の判断を総合して決定します。
復職プロセスの一般的な流れを整理します。
ステップ1|主治医による「復職可能」判断
復職を考え始めたら、まず主治医に「復職を検討している」と伝え、復職可能かどうかを判断してもらいます。
主治医が「復職可能」と判断した場合、復職用の診断書を発行してもらえます。
ただし「復職可能」の診断は、医学的に就労が可能な水準まで回復したことを示すもので、復職後の業務内容や勤務形態(フルタイム・時短・在宅)は会社との相談で決まります。
ステップ2|会社との復職面談
主治医の診断書を会社に提出した後、産業医・人事・上司との復職面談が設定されます。
面談では、現在の体調、業務遂行能力の自己評価、希望する勤務形態(時短勤務・業務量調整・配置転換など)、復職後に懸念される事項などが話し合われます。
「自分の希望をうまく伝えられない」と感じる方は、面談前に伝えたいことをメモにまとめておくと、整理しやすくなります。
ステップ3|試し出勤・リハビリ出勤(会社による)
会社によっては、いきなりフルタイム勤務に戻すのではなく、「試し出勤」「リハビリ出勤」と呼ばれる段階的な復帰プログラムが用意されているケースがあります。
例えば、最初の2週間は半日勤務、次の2週間は1日6時間勤務、その次から通常勤務――といった段階を踏みます。
この段階で「もう少し負荷を抑えてほしい」「在宅勤務を組み合わせてほしい」など、本人の状態に合わせた調整を会社と話し合うことができます。
ステップ4|本格復職と職場定着
試し出勤を経て、本格復職に至ります。
復職後の数か月は、再発リスクが高い時期とされており、定期的な通院と主治医への状況報告を続けることが重要です。
会社内では、上司・人事・産業医との定期面談、業務量の見直し、ストレスチェックの実施などを通して、定着を支える仕組みが整えられています。
「復職後にまた調子を崩したらどうしよう」と不安に感じる方も多いですが、再発の兆しを早期に捉えて主治医に相談することで、深刻化する前に対処できるケースが多くなっています。
うつ病と仕事の付き合い方や復職後の工夫については、仕事におけるうつ病の症状・対処方法・休職の手順・過ごし方で整理しています。
復職準備期に活用できる社会資源
復職準備期に、生活リズム・対人耐性・業務遂行力を段階的に戻すための社会資源を紹介します。
医療リワーク
医療機関(精神科・心療内科のデイケアなど)が提供する復職支援プログラムです。
主治医の指示のもと、グループでの認知行動療法・集団作業・コミュニケーション練習・通勤訓練などを通して、復職に向けた準備を進めます。
健康保険が適用されるため、自立支援医療を併用すると自己負担を抑えやすい点が特徴です。
医療職(医師・看護師・作業療法士・精神保健福祉士・臨床心理士など)が支援にあたるため、症状の変化に応じた医療的判断を受けながら進められます。
関連ページ
– 精神科デイケアとは|目的・対象・プログラム
– リワークとは|通う意味・特徴・メリット・デメリット・費用・選び方
休養
うつ病は脳がエネルギー不足を起こしている状態と考えられています。そのため、消耗した脳のエネルギーを休養によって回復させていくことが治療の基本と言われています。休職中は「何かしないと」「このままではいけないのでは」と焦ってしまうこともあると思いますが、うつ病の回復のためにも心と体をしっかりと休めることが必要です。もし、自宅にいると家族のことや仕事のことを考えてしまいうまく休むことができない、という場合には入院治療を行うことも方法の一つです。主治医と相談しながら、自身にとってやりやすい方法で治療を進めていきましょう。
薬物療法
うつ病では休養とともに、人によっては薬物療法を行っていく場合もあります。休養が大事なのはもちろんですが、辛い症状が現れている状態ではなかなか心が休まらないことがあります。そのような時は、抗うつ薬などを服薬することによって、脳の機能不全を改善していき、うつ病の症状を和らげていきます。
ただ、抗うつ薬は即効性はなく、効果が出るまでに2週間程度かかると言われています。服薬しているのに症状が改善しないからと自己判断で薬を辞めてしまうと、様々な悪影響が考えられます。薬物療法で疑問点や心配がある時は、主治医とよく相談して納得して進めていくようにしましょう。
精神療法
精神療法はある程度うつ病の症状が改善してきてから行われることが多い治療法です。精神療法とはカウンセリングなどによって心に働きかけ、うつ病の原因となっている考え方の調整やストレスへの対処法を身につけていくことを目的としています。自分に合ったストレス対処法を身につけることで、復職後に辛いことがあってもうつ病の再発予防に効果があると言われています。
自立訓練(生活訓練)
障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのひとつで、地域生活を送るうえでの「生活面の自立」を支援する仕組みです。
うつ病で休職した方が、生活リズム・自己理解・対人スキル・体調コントロールといった「働くうえで/生きていくうえで本当に必要な土台」に時間を使うために活用するケースがあります。
利用期間は原則2年で、復職を急がず「数か月から1年程度で復職準備を整えたい」方や、「復職するか転職するかも含めて選択肢を整理したい」方に選ばれています。
関連ページ
– 自立訓練(生活訓練)とは|対象者・利用期間・プログラム内容
就労移行支援
就労移行支援は、2年以内に一般就労を目指す方を対象とした障害福祉サービスです。
復職ではなく転職を選ぶ場合、または休職期間中に退職に至った場合の再就職準備として活用されることがあります。
ビジネスマナー、PCスキル、職業適性の把握、求職活動支援、職場定着支援などを総合的に受けられます。
地域の支援機関
ハローワークの専門援助部門、障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなど、地域には公的な支援機関があります。
復職や転職を考える際に、無料で相談に乗ってもらえる窓口です。
「いま、どこに相談すれば良いか分からない」場合は、まずお住まいの市区町村の障害福祉課または地域の保健所に問い合わせてみると、利用できる窓口を案内してもらえます。
「復職」と「転職」のどちらを選ぶか
休職期間中、「元の職場に戻るか、退職して新しい職場を探すか」で迷われる方も少なくありません。
復職を選ぶ場合は、元の職場の業務内容・人間関係・働き方が「いまの自分の状態に合うか」を見直すことが大切です。
転職を選ぶ場合は、療養期間を十分に取り、自己理解を深めたうえで、次の職場選びの軸を整理してから動くことが推奨されます。
「すぐに次の職場を決めなければ」と焦って動くと、同じパターンを繰り返しやすくなる傾向があります。
関連ページ
– 適応障害の方が転職するには?進め方や成功のポイント、再発防止策
エンラボカレッジでの「休職からの再出発」支援
エンラボカレッジは、神奈川県・東京都・大阪府・宮崎県で自立訓練(生活訓練)と就労移行支援を運営している事業者です。
うつ病で休職された方が、復職前の準備期間として自立訓練を利用されるケース(リワーク的活用)もあります。
「就職ありき」ではない設計
エンラボカレッジは「生活する力・社会で生きる力を身につける」ことを中心に据えており、就職を急がない設計が特徴です。
休職中の方には、復職・転職・進学・就労継続支援への移行など、進路の多様性を保ちながら、本人の希望に沿った選択肢を一緒に整理していきます。
「いずれは元の職場に戻りたい」「復職するか、転職するかをまだ決めかねている」――どちらのご相談も歓迎しています。
8つのプログラムで「自分の取扱説明書」を作る
エンラボカレッジでは、感情学/コミュニケーション/My Lab./アクティビティ/Life Lab./ソマティック Lab./Social Lab./スキルアップの8つのプログラムを組み合わせ、約300種類のワークを通して、自己理解と生活力の土台作りを進めます。
なかでもMy Lab.は、利用される方が『自分/支え方マニュアル』という独自成果物を作る時間で、復職後の職場や転職後の新しい職場で「自分の凸凹と必要な配慮を伝える」ためのツールとして継続して活用できます。
「復職したら、また同じ理由で調子を崩すのではないか」と不安を感じている方にとって、「自分が消耗しやすいパターン」「立て直しの方法」「周囲に伝えたい配慮」を言語化する時間は、再発予防の準備になります。
40代から働き方を見直していった方のプロセス
40代になってから自立訓練で生活と働き方を見直し、安定した再出発に至った方のプロセスもあります。
関連ページ
– 40代からの再スタート|自立訓練で生活と働き方が変わった理由
うつ病で休職された方の実例|自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジ利用者の事例
※以下は自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジを利用された方の支援事例です(医学的な症例研究ではありません)。
事例1|感情コントロールから立て直した30代女性のケース
休職をきっかけに「自分の感情との付き合い方」を学び直し、再出発につなげた30代の方の事例です。
休職前は「気持ちの波に振り回されて、職場の人間関係でも消耗していた」状態だったといいます。休職中の自立訓練を通して、感情学のプログラムで自分の怒り・落ち込みのパターンを言語化し、コミュニケーションのプログラムで「断る/頼る」の練習を重ねるなかで、少しずつ「自分を守る術」を身につけていかれました。
事例2|うつとADHDの40代が土台を整え安定就労に進んだケース
40代でうつ病とADHDの診断を受け、休職と離職を経て、自立訓練を経由しながら安定した働き方にたどり着いた方の事例です。
「焦って復職して、また調子を崩す」を繰り返してきたなかで、自立訓練で生活リズムと自己理解の土台を作り直し、自分の特性を職場に伝えられる『自分/支え方マニュアル』を持ったうえで次の就労に進まれました。
関連ページ
– うつとADHDの40代が自立訓練で土台を整え安定した就労へ
業界全体の支援傾向|公的データと業界事例の参考
就労支援の現場では、職場で重なるプレッシャーからうつ病を発症し、休職するものの体調が安定しないまま退職を選択し、その後「働きたい」と思えるようになったタイミングで就労移行支援を経由して再就職に至った30代の方の事例があります。
「休職→退職」というルートをたどった方も、療養期間を十分に取り、社会資源を活用して再出発を準備することで、新しい職場で働き続けられる事例が多数報告されています。
公的データに見る休職とメンタルヘルス
厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」では、過去1年間にメンタルヘルス不調により連続1か月以上休業した労働者がいた事業所の割合は13.5%とされています。
また「患者調査」では、気分[感情]障害(うつ病・双極性障害を含む)の総患者数は約170万人前後で推移しており、社会的に見ても珍しいことではないことが分かります。
「自分だけがおかしいのではないか」と感じやすい時期ですが、同じように悩み、休職を選び、療養期間を経て次に進んでいる方が多くいらっしゃるのが現状です。
出典:厚生労働省「令和5年労働安全衛生調査(実態調査)」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r05-46-50.html)、厚生労働省「患者調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html)
よくある質問(FAQ)
うつ病の診断書はすぐに発行してもらえますか?
初診のタイミングで発行してもらえるケースもあれば、数回の通院後に発行されるケースもあります。
医師は症状の経過や生活機能の状態を踏まえて判断するため、「初診ですぐに必要」と感じる場合は、受診時にその旨を伝えて相談してみてください。
休職できる期間はどれくらいですか?
休職期間は法律で一律に定められておらず、会社の就業規則によって異なります。
一般的には、勤続年数に応じて6か月〜1年6か月程度の上限が設定されているケースが多く見られます。
詳細はご自身の会社の就業規則をご確認ください。
休職中に給与は支給されますか?
休職中の給与の有無は会社の就業規則によります。
無給の会社が多いですが、健康保険の「傷病手当金」が要件を満たせば標準報酬日額のおおむね3分の2が支給されるため、こちらで生活を支えることが一般的です。
傷病手当金はいつから支給されますか?
連続して3日間(待期期間)を経過した後、4日目以降の労務不能日について支給対象になります。
申請書の提出後、振込までにおおむね2週間〜2か月程度かかります。
休職中に主治医や会社とどう連絡を取ればよいですか?
主治医とは、定期的な通院(月1〜2回程度が一般的)で状態を共有します。
会社とは、人事担当者を窓口に一本化し、必要な連絡だけを取り合うかたちが望ましいとされています。
緊急時以外の業務関連の連絡は休職期間中は控えてもらうよう、休職開始時に依頼しておくとよいでしょう。
復職はいつ判断すれば良いですか?
ご本人の体調と主治医の判断を起点に、産業医・人事との復職面談を経て決定します。
「もう大丈夫」と本人が感じても、主治医が「もう少し療養が必要」と判断するケースもあれば、その逆もあります。
判断は主治医に必ず相談してください。
休職中に転職活動はできますか?
法律上は禁止されていませんが、休職は「療養のため労務不能」を前提とした制度であるため、休職中の本格的な転職活動は推奨されません。
転職を検討する場合は、いったん退職を選ぶか、復職可能と主治医が判断したタイミングで活動を開始するのが一般的です。
退職後の傷病手当金の継続要件については、加入している健康保険組合に確認することをおすすめします。
復職後にまた調子を崩したらどうすればよいですか?
再発の兆しを感じた段階で、できるだけ早く主治医に相談することが大切です。
「いつもの不眠が戻ってきた」「朝起きるのがつらくなってきた」「業務に集中できない時間が増えた」など、初期の変化を捉えて早めに対処することで、深刻化を防ぎやすくなります。
会社の産業医や人事にも、状態の変化を早めに共有しておくと、業務量の調整など職場側の対応がしやすくなります。
自立訓練や医療リワークはどう違いますか?
医療リワークは医療機関が提供する医療サービスで、健康保険が適用されます。医師・看護師など医療職が支援にあたり、症状の変化に応じた医療的判断を受けながら進められます。
自立訓練(生活訓練)は障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスで、市区町村の障害福祉サービス受給者証で利用します。生活面・自己理解の土台作りを中心に、復職・転職・進学など多様な進路に対応できる柔軟さがあります。
「どちらが自分に合うか」は、主治医や相談支援専門員と相談しながら判断していくのが一般的です。
障害者手帳がなくても自立訓練や就労移行支援は利用できますか?
障害者手帳がなくても、自立支援医療の受給者証や主治医の意見書をもとに、自治体の判断で利用できるケースがあります。
必要なのは「障害福祉サービス受給者証」で、手帳とは別の制度です。
詳しくは市区町村の障害福祉課にご相談ください。
まとめ
うつ病の休職は「受診→診断書→会社相談→休職→療養→復職準備」を主治医と一緒に段階的に進めるプロセスで、傷病手当金が経済面を支えます。急性期・回復期・復職準備期の3段階で過ごし方を変えていくのが基本です。
次の一歩としては、まず主治医に「休職が必要かどうか」を相談し、復職準備期には医療リワーク・自立訓練・就労移行支援などの社会資源の活用を検討してみてください。
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なお、本記事の内容は一般的な情報整理であり、医学的判断や個別の症状については、必ず主治医にご相談ください。
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この記事について【作成・監修】
本記事は、自立訓練(生活訓練)事業所「エンラボカレッジ」を運営する株式会社エンラボの専門職スタッフが作成・監修しています。
【在籍資格】
精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士
【現場での実践】
自立訓練(生活訓練)・就労移行支援などで、診断名・特性に合わせた個別支援を提供しています。
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株式会社エンラボ/設立2015年4月/神奈川県を中心に首都圏・関西・宮崎で11拠点運営




