うつ病の方が転職するには?進め方や大事なポイント、受けられる支援を解説

公開日:2024/06/12

うつ病の方で、今の就労環境が自分に合わず転職や退職を考えているものの「うつ病を患う中で転職活動をするのは難しいのではないか?」と不安に感じ、次のステップに進むことができない方も多いのではないでしょうか。まずはしっかり休養期間を取り、うつ病の症状が落ち着いて自分の心と身体を大切にすることが優先です。この記事では、うつ病の方が転職活動を進めるにあたって知っておきたいポイントや、転職活動を成功させるための進め方などを解説します。

うつ病の方の転職活動は不利?

「うつ病が転職活動に不利に働くのではないか」「面接の時にうつ病であることを素直に伝えても良いのだろうか」と迷う方も少なくないでしょう。結論から言うと、うつ病であることは必ずしも転職活動に不利に働くとは限りません。

 

まず企業が「うつ病」の候補者を採用するのを避けるのではないか、という懸念があると思います。

前提として、うつ病での既往歴があっても、寛解している・再発の不安がないといった場合で、かつ「一般雇用」の場合は、うつ病と診断されたことがあるということを申告する義務はありません。

 

一方で、今後も長く働くことを考えると、面接などにおいてうつ病について聞かれた場合、嘘をつかずにうつ病になった背景や現在の状態、どのような配慮のある環境が働きやすいのかなどをきちんと伝えることが望ましいでしょう。

 

企業の側から見て、候補者が複数人いる場合、「うつ病であること」が採用の判断基準に全く影響を与えないとは言えませんが、その他諸々の条件も踏まえて総合的に判断されることが一般的です。

 

むしろ「うつ病であること」が理由で不採用と判断するような企業であれば、うつ病であることを隠して万が一就職できたとしても、入社後にサポートを受けることができず、厳しい労働環境になる可能性が高いと考えられます。

 

就職する側も企業側も安心して採用の意思決定ができるよう、採用試験の時点ではオープンな情報共有を行うことが望ましいでしょう。

 

また、薬の副作用で身体がきつい・通院がある・気力や体力が持たないといった理由から、思うように転職活動を行えないのでは、といった懸念もあるかもしれません。こういった面だけで見ると、転職活動が不利である可能性は少なからずあります。

 

もし、うつ病の治療と転職活動が両立ができないような状態であれば、まだ転職活動に取り組むべきではなく、治療に専念するべきかもしれません。

 

自分の状態を自分だけで判断するのではなく、かかりつけ医にも相談しながら、自分のペースで転職活動を進めてみましょう。

治療などを通して自分自身を見つめることで、より働きやすい環境や仕事内容を考える機会にできるかもしれません。

 

うつ病の方の就職率と定着率

実際にうつ病の方が転職した際、就職率や定着率はどの程度なのでしょうか。うつ病の方だけでなく障害のある方全般の就職率や定着率をご紹介します。

 

厚生労働省が行った調査によると、障害のある方(身体障害・知的障害・精神障害を含む)の就職件数と新規求職申込件数はコロナ禍で一時減少したものの、徐々に回復傾向にあり、令和4(2022)年の就職率は37.7%でした。

新規求職申込件数及び就職件数の推移

参考:令和4年度障害者の職業紹介状況等|厚生労働省 P.2

 

雇用形態別に見ると、無期契約の正社員が25.0%、有期契約の正社員が0.5%、無期契約の正社員以外が46.2%、有期契約の正社員以外が28.2%で、およそ4人に1人が正社員となっています。

 

所定労働時間別の月間総実労働時間の平均を見ると、通常(30時間以上)以外が半数を超えており、労働時間を調整するサポートを受けているケースが多いことが考えられます。

 

平成 30 年度障害者雇用実態調査結果

参考:平成 30 年度障害者雇用実態調査結果|厚生労働省P.19

 

 

一方で就職した後の定着率で見てみると、うつ病を含む精神障害精神障害の方の定着率は49.3%となっており、身体障害のある方が60.8%、知的障害のある方が68.0%であることと比較すると、定着率は低めであることが分かります。

 

参考:障害者の就業状況等に関する調査研究|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センターP.10

参考:障害者の就業状況等に関する調査研究|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センターP.10

 

うつ病の方が転職することのメリットとデメリット

人によって状況は異なりますが、うつ病の症状がある方が転職活動を行うことは大変だと感じることも多いのではないでしょうか。ここでは、うつ病の方が転職することにどんなメリット・デメリットがあるのかを紹介します。

 

メリット

うつ病がある場合に転職をするメリットとして、環境や条件が合えばうつ病の悪化や再発などのリスクを下げられることがあります。

 

特に以前働いていた職場環境がうつ病の要因の一つとなっている場合、環境を変えることがプラスに働く可能性は高いです。

 

うつ病があることを伝えることを前提に転職活動を行えば、合理的配慮の得やすい職場と出会うことも可能かもしれません。

デメリット

うつ病がある場合に転職するデメリットとしては、当初想定していた環境と違っていたり、そもそも環境が大きく変わったりすることで、ストレスを感じやすいことが挙げられます。

 

転職活動期間中に自分に合った職場や仕事をしっかり吟味できていないと、転職後にうつ病が悪化・再発するリスクもあります。

 

また、短期間での休職・転職を繰り返していると、一般的には企業から「早期離職リスクあり」と見なされ、採用に不利に働く場合もあるため注意が必要です。

うつ病の方が転職を考えるときに大事にしたいポイント

うつ病の方が転職活動を行う場合、どんなポイントに気を付けていればストレスが少なく、自分に合った環境を見つけることができるのでしょうか。ここでは、押さえておきたいポイントを4つご紹介します。

 

ひとりで判断しない

まず、「ひとりで判断しないこと」が大切です。

 

うつ病がある時は、判断力や体力が低下しがちで、悲観的な考えになりやすかったり、視野が狭くなったりしてしまう傾向があります。

 

転職は今後の生活も関係する重要な出来事なので、冷静な判断ができるよう、主治医や家族、友人など信頼できる人に相談してみましょう。

 

相談できる人が身近にいない場合は、うつ病の方が利用できる支援機関もあります。

本記事後半でも解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

 

焦らない

「早く働きたい」「働いていない期間が長くなることが不安」と感じ、転職を急ぐ方もいらっしゃるかもしれません。

 

しかし転職する際は、早く決めることが目標ではなく、自分が安心して働くことができる環境を見つけることが大切です。

特にうつ病がある場合は、特性によって冷静な判断が難しくなかなか決断できなかったり、普段しないような極端な判断をしてしまったりすることがあります。

 

焦らずに一度立ち止まって、大切な決断をする時は納得できるまで時間をかけるようにしましょう。

 

しっかり休養期間を設ける

働きながら転職活動を進めることも可能ですが、無理をしすぎずしっかり休養期間を取ることも大切です。

うつ病の方は、退職して休養期間を取るだけでなく、企業の制度を使って休職することも可能です。

 

まずは休養期間をしっかりとって、自分の心と身体を大切にしましょう。

休職の取り方や休職期間中の過ごし方については、関連記事を参考にしてみてください。

 

関連ページ:うつ病で休職をするにはどうすれば良い?休職の流れや手続き方法・休職期間の過ごし方を紹介

 

通院し治療することも視野に入れる

休養期間を設けても、うつ病の症状に改善が見られない場合は、主治医と相談の上、「薬物療法」や「精神療法・カウンセリング」を取り入れて治療を行うという方法もあります。

 

うつ病には休養が何よりも重要と言われていますが、眠ることができない・不安感が強いといった苦痛な症状により、充分な休養が取れない場合があります。

 

そのため、症状を改善するために薬を活用する場合もあります。

自分の状態を主治医と話し合いながら、治療方針を決めていきましょう。

 

うつ病の方の転職の進め方

うつ病の方が転職活動をうまく進めるためのポイントを4つご紹介します。

 

自分の得手不得手を知る

転職活動を良い方向に進めるためには、まず得手・不得手を含め自分自身のことを知ることが大切です。

 

自分はどのような環境・業務であれば安定して働くことができ、逆にどのような環境・業務にストレスを感じやすいのか、ストレスを感じた場合にどのようなサインが表れる傾向にあるのかといったことを確認しておきましょう。

 

理想の働き方を考える

自分自身のことを捉えたら、次は就きたい仕事や働きたい条件などを決めましょう。

「働きやすさ」は人それぞれで、自分自身の特性に合わせた環境を選ぶことが重要です。

 

もちろん全ての条件がそろった理想的な環境で働くことができるとは限らないため、「譲れない条件」と「譲れる条件」をあらかじめ決めておくことをおすすめします。

 

求人を探し応募する

次に自分の条件に合った求人があるかどうか探してみましょう。

 

ひとりで転職活動を進めるのではなく、ハローワークなどの専門知識を持った相談支援機関を利用することや、障害のある方を対象とした人材紹介会社・求人サイトなどを利用することもおすすめです。

 

プロの力を借りることで、自分に合った環境を見つけやすくなるはずです。

 

必要に応じて支援機関を活用する

求人を探す時だけでなく、自己分析を行う時や理想の働き方を考える時も、専門の支援機関を活用することがおすすめです。

 

特にうつ病の症状が強いときは、冷静な判断をすることが難しいケースが多いため、第三者の客観的な視点を取り入れながら転職活動を進めるといいでしょう。

 

うつ病により休職中の方が職場復帰を目的として「リワーク」という復職支援プログラムを活用することがありますが、「リワーク」の中で自己分析やストレスへの対処方法などを学ぶことが転職活動に活きる場合もあります。

 

そのため、職場復帰か転職か迷っている場合は、「リワーク」を活用するのも良いでしょう。「リワーク」については関連記事で詳しく解説しています。

 

関連ページ:リワークとは?リワークに通う意味や特徴、メリット・デメリット、費用・選び方などを紹介します。 

 

うつ病の方が転職するときに検討したい「一般雇用」と「障害者雇用」

うつ病の方が転職活動を行う場合、「一般雇用」と「障害者雇用」のどちらで就職するかという選択肢があります。

 

一般雇用とは、文字通り企業の採用条件を満たせば誰でも応募できる求人のことを指し、障害者手帳の取得有無などは問われません。

一般雇用の場合、選べる職種や求人、企業数が多く、転職活動をする時点では多くの選択肢があるというメリットがあります。

 

障害者雇用とは、障害のある方が自分の特性に合わせた働き方ができるように設けられた制度で、障害者手帳を持っている方が対象です。

基本的に障害があることを企業に開示して働くことになるため、障害の状態や特性を含め、周囲に理解してもらえる環境がつくりやすく、合理的配慮を受けやすくなるというメリットがあります。

 

また、障害者雇用の場合、一般雇用で就職した方よりも職場定着率が高いという調査結果もあります。

 

障害者雇用で就職した方の1年後の定着率は64.2%と、半数以上は同じ職場で働き続けています。

一方で、一般雇用で障害を開示した場合の定着率は45.1%、一般雇用で障害を開示しなかった場合の定着率は27.7%しかなく、多くの人が離職する可能性が高いことが分かります。

 

必ずしも障害についてオープンにする義務はないものの、データから見ると障害について理解を得られた状態で働く方が、長く働きやすい傾向にあると言えるでしょう。

 

一般雇用と障害者雇用のメリット・デメリットを踏まえて、自分に合った働き方を考えてみてください。

 

障害者の就業状況等に関する調査研究|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センター

参考:障害者の就業状況等に関する調査研究|独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者職業総合センターP.64

うつ病の方が転職を進めるときに活用できる支援機関

うつ病の方が転職活動を進める時は、第三者の視点を取り入れることがおすすめです。さまざまな支援機関がサポートを行っていますので、一人で抱え込まずにぜひ相談してみてください。

 

ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)では、障害のある方の就職活動を支援するため、障害について専門的な知識を持つ職員・相談員を配置し、仕事に関する情報を提供したり、就職に関する相談に応じたりするなど、さまざまな支援を行っています。

 

一般雇用・障害者雇用ともに求人情報を提供しており、一人ひとりに合った求人の提出を企業側に依頼したり、採用面接に同行したりする場合もあります。

 

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方が自立して働き続けることができるように、雇用・保健・福祉・教育などの関係機関と連携しながら、障害のある方の身近な地域において就業面・生活面の両方から支援を行う機関です。

 

転職活動においては、職業スキルの確認や履歴書作成、面接準備のサポート、求人や職場探しのサポートを行います。

 

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、障害のある方に対して専門的な職業リハビリテーションを提供している施設です。

 

ハローワークや企業、医療・福祉機関などと連携して、就職を希望する障害のある方一人ひとりのニーズに合った専門性の高い職業リハビリテーション支援を提供していることが特徴です。

 

具体的には職業評価、職業準備支援、ジョブコーチ支援事業、リワーク支援、精神障害者総合雇用支援などが挙げられます。

 

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、障害のある方が就職に必要な知識やスキルを向上させるためのサポートを行う、通所型の福祉施設です。

 

障害者手帳を持っていなくても、市区町村の窓口で相談して、「障害福祉サービス受給者証」が発行されると利用が可能です。

 

うつ病の方一人ひとりに合った職場環境を知るための企業インターンや、就職に向けたスキルの向上などを目指したプログラムがあります。

 

関連ページ:就労移行支援(就労支援)ってどんなところ?対象・利用料・内容・就職率に関して解説します。

 

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)とは、障害のある方が自立した生活を送ることができるよう、訓練・支援を行う場です。自立訓練(生活訓練)のサービスを受けるためには、市区町村から「障害福祉サービス受給者証」の交付を受ける必要があります。

 

事業所によってプログラム内容は異なりますが、うつ病の方の転職活動においては、ストレスへの対処方法や生活リズムの整え方、就職に向けたビジネスマナー向上や面接練習などのサポートが行われます。

 

関連ページ自立訓練(生活訓練)とは?対象者・利用期間・プログラム内容などについて解説します。

 

うつ病の方の転職に関するQ&A

うつ病の方が転職活動を行うにあたって、不安に感じやすいポイント2点をまとめました。

Q. うつ病であることを隠して就職した場合、職場にバレますか?

一般雇用の場合、うつ病の既往歴を伝える義務は発生しません。入社後、前職の源泉徴収票を提出するなどして、極端に給与が少ないことが分かると、「休職期間があった」ことは分かるかもしれませんが、それが「うつ病が理由であった」ことまでは分かりません。

 

また、入社後にうつ病であったことが発覚した場合でも、そのことが理由で解雇されたり、損害賠償請求されたりする可能性は極めて低いと言われています。

 

Q. うつ病は治りましたが、転職後に再発しないか不安です。注意すべきことはありますか?

うつ病が寛解している場合でも、転職直後は大きな環境の変化から、ストレスを感じやすい期間です。特にうつ病の経験がある方は、過度なストレスがかからないよう注意し、ストレスを感じた場合の対処方法を準備しておくことが重要です。例えば、自分にとってストレスがかかる活動は避けたり、ストレスのサインを感じたらリフレッシュしたりするなどが挙げられます。

 

「眠れない」「頭痛や倦怠感が続く」といった、ストレスが続いた時に見られる自分の心と身体の症状に注意してみましょう。どうしても仕事のストレスを自分だけで解消することが難しい場合は、上司や同僚、主治医などに相談してみることをおすすめします。

 

まとめ

うつ病の方が転職や再就職を考える場合、「早く新しい仕事に就きたい」と焦ってしまう方も多いのではないでしょうか。

 

しかし、うつ病がある時は、悲観的になったり、視野が極端に狭くなったりして、冷静な判断を行うことが難しくなりがちです。

焦って転職活動を進めてしまうと、就職後の環境が自分に合わず、うつ病の症状が悪化してしまうリスクもあります。

 

まずはしっかりと休養期間を取った上で、自分の心と身体が安定することを優先しましょう。

 

転職活動を進める時は、自分自身の得手不得手を把握し、どんな環境・仕事が合っているのか整理することが重要です。

 

一人で悩まずに、主治医や支援機関などに相談しながら、時間をかけて自分に合った働き方を見つけてください。

 

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