うつ病と仕事|場面別サインと休職・復職・転職までの選択肢
更新日:2026/05/31
朝、布団から出るのが極端につらい。会議で頭が回らずミスが増えた。帰宅後に何もできずに横になってしまう――こうしたサインが2週間以上続いている場合、うつ病が背景にある可能性があります。
うつ病は本人の努力不足で起きる病気ではなく、医療と職場・福祉のサポートで働き方を整え直す段階を踏む疾患です。上司・産業医・主治医にはそれぞれ役割があり、相談順序を整えることで休職や復職の道筋が見えやすくなります。
本記事では、仕事で出るうつ病のサイン・相談先の使い分け・休職の手続き・復職や転職・自立訓練という次の選択肢について紹介します。
うつ病とは|気分障害の一種とは?
最初に、うつ病という診断がどのように位置づけられているかを整理します。
厚生労働省・国立精神・神経医療研究センターによる定義
うつ病は、気分障害の一種として整理される精神疾患で、強い抑うつ気分・意欲の低下・思考力の低下・身体症状などが2週間以上持続する状態を指します。
厚生労働省「みんなのメンタルヘルス総合サイト」では、「気分が落ち込む」「何をしても楽しめない」といった精神症状に加えて、「眠れない」「食欲がない」「疲れやすい」といった身体症状が複合的に現れる疾患と説明されています。
「気分の問題」と捉えられがちですが、医学的には脳内の神経伝達の働きが関係する身体的な疾患であり、本人の性格や努力不足とは別の問題として扱われます。
患者数と社会的な広がり
厚生労働省「患者調査」によると、気分障害(うつ病・双極性障害などを含む)の総患者数は、近年100万人を超える水準で推移しており、精神疾患の中でも代表的な存在のひとつです。
働く世代を中心に、就労中に発症するケース・職場のストレスを背景に発症するケースが多く報告されており、社会全体で「働きながら向き合う精神疾患」として認識されてきました。
「治る」「治らない」という二者択一ではない
うつ病は再発しやすい疾患とされており、症状が一度落ち着いても、ストレス環境が変わらないままだと再発するケースが少なくありません。
そのため「完治した」「治っていない」という二者択一ではなく、「症状の波と上手に付き合いながら、生活と仕事を整え直していく」という長期的な視点で関わる疾患として捉えられています。
治療の中心は、休養・薬物療法・精神療法(認知行動療法など)・環境調整の組み合わせで、医師の診断と治療方針を軸に進めていくものです。
自己判断で薬を中断したり、独自の判断で復職時期を早めたりすることは避け、必ず主治医と相談しながら進めてください。
仕事で現れるうつ病のサイン|場面別の整理
「自分はうつ病かもしれない」と感じる方の多くが、最初に違和感を抱くのは仕事の場面です。
サインを「朝」「対人」「ミス」「夜帰宅後」の4つの場面で整理します。
セルフチェック表ではなく、医療機関を受診するかどうかを判断する材料としてお使いください。
朝の場面|起床・出勤前に現れるサイン
朝の時間帯は、うつ病の症状が最も強く現れやすい時間帯のひとつとされています。
具体的に見られる変化として、以下のようなものがあります。
- 目覚ましをかけても起き上がれない、布団から出るのに30分〜1時間以上かかる
- 起き上がっても身体が重く、シャワーや着替えに普段の倍以上時間がかかる
- 朝食を食べる気力がない、または食べても胃が受けつけない
- 出勤前に動悸・吐き気・頭痛が出る
- 通勤途中で「このまま会社に行きたくない」と強い気持ちが湧く
- 駅のホームや車内で涙が出てくる
「朝が極端につらい」「夕方になると少し動けるようになる」という日内変動は、うつ病に典型的な特徴とされています。
「夜になると元気が出てきて、なんとか働けている」という方も、朝のつらさが2週間以上続いているなら、医療機関への相談を検討してください。
対人の場面|会議・雑談・チャットで現れるサイン
職場での対人接触は、エネルギーを大きく消費する場面です。
うつ病の進行に伴って、以下のような変化が現れます。
- 会議中に発言を求められても言葉が出てこない
- 同僚との雑談がつらく、休憩時間に席を離れてしまう
- チャットやメールの返信が後回しになり、未読が溜まる
- 電話の音や着信通知に強い緊張を感じる
- 「何か言わなければ」と思うほど頭が真っ白になる
- 表情が乏しくなったと家族や同僚に指摘される
これらは「コミュニケーション能力の問題」ではなく、脳のエネルギーが対人接触に振り向けられなくなっている状態と説明されることが多い症状です。
「人と話すのが面倒になった」「以前は気にならなかった会話がつらい」と感じる頻度が増えていたら、見過ごさないでください。
ミスの場面|業務遂行で現れるサイン
うつ病が進行すると、思考力・集中力・記憶力が低下し、業務遂行に影響が出てきます。
- 簡単な計算や数字の確認でミスが続く
- メールの宛先・添付ファイルの間違いが増える
- 会議で言われたことを覚えていない、議事録を取れない
- 締切を忘れる、複数のタスクの順序がつけられない
- パソコンの画面を見ても、何をしようとしたか思い出せない
- 普段の半分のスピードでも仕事が終わらない
「以前はできていたことができなくなった」という感覚は、本人にとって強い自己否定につながりやすい状態です。
「自分が怠けているからだ」「能力が落ちたからだ」と捉えて自分を責めるパターンが続くと、症状はさらに悪化しやすくなります。
業務上のミスが続いているときこそ、自己判断で抱え込まず、医療機関や産業医に相談してください。
夜・帰宅後の場面|オフタイムで現れるサイン
仕事中はなんとか取り繕えていても、帰宅後にエネルギーが切れる方は少なくありません。
- 帰宅したらそのまま玄関で動けなくなる
- 着替えや食事をする気力がない、横になったまま過ごす
- 趣味だったことに興味が湧かない、テレビや動画を見ても頭に入らない
- 入浴が億劫で2〜3日入れない日が続く
- 夜になると不安・後悔・希死念慮が強くなる
- 寝つけない、夜中に何度も目が覚める、早朝に目が覚めて眠れない
「平日は仕事に行けているから大丈夫」と判断されがちですが、帰宅後のオフタイムが崩れている状態は、すでに体力・気力が枯渇している段階です。
特に「死にたい」「消えてしまいたい」という気持ちが浮かぶ場合は、ためらわずに精神科・心療内科を受診するか、各自治体の精神保健福祉センターやよりそいホットライン等の相談窓口に連絡してください。
サインを見つけたら|セルフチェックで終わらせない
ここで挙げたサインに複数当てはまる方は、「自分はうつ病かもしれない」と感じることがあるかもしれません。
ただし、診断ができるのは医師だけです。
セルフチェックの結果だけで「自分はうつ病だ/違う」と判断することは避けて、まずは精神科・心療内科を受診して、医師の問診と検査を受けてください。
医療機関の探し方は、大人の発達障害の相談先や相談方法・支援機関でも整理しています。
うつ病以外の疾患(甲状腺機能の問題・睡眠時無呼吸症候群・適応障害・双極性障害など)と症状が重なる場合もあり、自己判断は避けてください。
相談先と相談順序|上司・産業医・主治医の役割分担
「上司に話すべきか」「人事に伝えるべきか」「医師に行くべきか」と迷う方は多いはずです。
相談先には、それぞれの役割と踏むべき順序があります。
役割の整理|誰が何を判断するか
相談先ごとの役割を整理すると、以下のようになります。
主治医(精神科・心療内科の医師):診断・治療方針の決定・休職の必要性の医学的判断・診断書の作成。すべての公式手続きの起点となる存在です。
産業医:会社と本人の間に立ち、医学的な観点から就業上の配慮について意見を出す立場。50人以上の事業場には法律で配置義務があります。会社側に主治医の意見書を伝える橋渡しの役割を持ちます。
直属の上司:日々の業務量・業務内容・出退勤時間の調整を相談する一次窓口。診断書を提出すれば、業務調整の判断材料になります。
人事担当者・労務担当者:休職制度・傷病手当金・有給休暇・雇用保険・退職金など、制度面の手続きを担当する窓口。
家族・パートナー:日常生活の支援・受診への同行・休職中の生活支援を担う身近な存在。
外部相談機関:地域の精神保健福祉センター、障害者就業・生活支援センター、相談支援事業所など。
推奨される相談順序
うつ病の症状で仕事に支障が出ている場合、推奨される相談順序は次の通りです。
ステップ1|主治医に相談する
最初の起点は、医療機関への受診です。
「自分の症状が医学的にどう位置づけられるのか」「治療が必要なのか」「休職が必要な状態なのか」を判断できるのは医師だけです。
精神科・心療内科を受診し、診断と治療方針を受け取ったうえで、必要に応じて「休職診断書」を作成してもらいます。
ステップ2|家族・パートナーに状況を共有する
医師の診断を受けたら、可能であれば家族やパートナーに現状を共有してください。
休職や治療には、生活面の支援が欠かせません。
「自分一人で抱え込まずに伝える」ことが、療養を続けるうえでの土台になります。
ステップ3|産業医(または会社の保健スタッフ)に相談する
50人以上の事業場には産業医が配置されています。
主治医の診断書をもとに、産業医面談で「就業上どのような配慮が必要か」「休職が必要か」を医学的な観点から会社側に伝えてもらいます。
上司に直接話す前に産業医に相談すると、医学的な根拠を持って業務調整に入れるため、伝達がスムーズになる場合があります。
ステップ4|直属の上司に伝える
産業医の意見書や主治医の診断書を踏まえて、上司に状況を伝えます。
業務量の軽減・残業の制限・テレワークへの切替・部署異動など、具体的に必要な配慮を整理して伝えると、上司も対応を検討しやすくなります。
「うつ病」という病名を必ず伝えなければならないわけではなく、「医師から就業制限の指示を受けている」という伝え方でも、配慮を受けることは可能です。
ステップ5|人事担当者と制度上の手続きを進める
休職に入る場合は、人事・労務担当者と就業規則を確認しながら、休職届・診断書の提出・傷病手当金の申請などの手続きを進めます。
社内制度がよく分からない場合は、健康保険組合や全国健康保険協会(協会けんぽ)にも問い合わせることができます。
順序が逆になりがちな失敗パターン
相談順序を間違えると、状況が複雑になることがあります。
避けたい代表的なパターンは以下の通りです。
「先に上司に弱音を漏らしてしまい、診断書がない状態で『甘え』『気の持ちよう』と片づけられた」
「人事に話したら、医学的根拠がないまま部署異動になり、新しい部署でさらに体調が悪化した」
「家族に相談する前に退職届を出してしまい、生活設計が立たないまま無職になった」
これらの状況は、相談順序を整えることで防げる可能性があります。
「迷ったら、まず医療機関」が原則です。
産業医がいない・上司が信頼できない場合
50人未満の事業場には産業医の配置義務がなく、相談先に困るケースもあります。
その場合は以下の窓口を活用できます。
- 地域産業保健センター:労働者50人未満の事業場の方が無料で利用できる、産業保健サービスの提供窓口
- 精神保健福祉センター:各都道府県・政令指定都市に設置されている、精神保健に関する公的相談機関
- 障害者就業・生活支援センター:障害のある方の就業と生活の両面を支援する地域の窓口
- 相談支援事業所:障害福祉サービスの利用相談・サービス等利用計画の作成を担う事業所
「上司や同僚に信頼できる人がいない」「会社の制度がよく分からない」という方も、外部の公的窓口を経由することで、客観的な助言を受けられます。
詳しい相談先は、精神科デイケアとは|目的・対象・プログラムでも整理しています。
休職の手続きと過ごし方|診断書から復職判定まで
主治医から「休職が必要」と判断されたら、休職に入る手続きと、休職中の過ごし方を整理しておきます。
休職に入るまでの流れ
休職に入るまでの一般的な流れは、5ステップで整理できます。
ステップ1|主治医に診断書を依頼する
主治医に「就労が困難な状態であり、◯ヶ月程度の休職を要する」という内容の診断書を作成してもらいます。
休職期間は最初から長期で取られるわけではなく、まずは1〜3ヶ月単位で発行されることが多く、必要に応じて延長されます。
ステップ2|会社に休職を申し出る
診断書を持って、直属の上司または人事担当者に休職の申し出を行います。
可能であれば、産業医面談を経たうえで申し出ると、社内の判断がスムーズに進むことが多いです。
ステップ3|会社から休職辞令を受ける
会社の就業規則に基づき、休職期間・休職中の処遇・連絡方法などが定められた休職辞令が発行されます。
休職期間の上限は会社ごとに異なり、半年〜3年程度と幅があります。
ステップ4|傷病手当金の申請を行う
健康保険に加入している方は、業務外の傷病で連続して4日以上仕事を休んだ場合、傷病手当金の申請が可能です。
支給期間は、支給開始日から通算して1年6ヶ月で、標準報酬月額の3分の2程度が支給されます。
申請には、医師の意見書と会社の証明書が必要となります。
ステップ5|療養に入る
正式に休職に入ったら、まずは「何もしない時間」を持つことが大切です。
休職した直後に焦って復職計画を立てるのではなく、医師の指示に従って心身の休養を優先してください。
休職全体の流れは、うつ病で休職をするには?休職の流れや手続き方法で詳しく整理しています。
休職中の過ごし方|段階別の目安
休職中の過ごし方は、症状の回復段階に応じて変化していきます。
急性期(休職直後〜数週間):心身の休養を最優先する時期。生活リズムを整えるよりも、まず眠ること・食べること・横になることを許容する段階です。スマホやテレビも疲労感が強ければ離れる選択をしてください。
回復期(数週間〜数ヶ月):少しずつ生活リズムが戻ってくる時期。決まった時間に起きる・食事を取る・短時間の散歩をするなど、生活の土台を整えていきます。読書・趣味・軽い家事など、エネルギーを使わない活動から再開します。
復職準備期(休職後半):通勤や業務をシミュレーションする時期。図書館や近所のカフェに通う・パソコンで簡単な作業をする・人混みに出る練習をするなど、実際の職場復帰を想定した行動を増やしていきます。
「いつから何をすべきか」は個人差が大きく、医師と相談しながらペースを決めることが鉄則です。
「早く復職しなければ」と焦って急性期に活動を増やしてしまうと、再発リスクが高まることが報告されています。
傷病手当金・健康保険・税金の整理
休職中の経済面についても、最低限の整理をしておきます。
- 傷病手当金:標準報酬月額の3分の2程度を、最長1年6ヶ月(通算)受給可能
- 健康保険料:休職中も支払いが発生。多くの会社では給与天引きができないため、会社から請求書が送られてきます
- 住民税:前年所得に基づくため、休職中も支払いが発生
- 厚生年金保険料:在職中であれば原則として継続して支払い
休職中の家計シミュレーションは、申請前に人事担当者と相談しておくと安心です。
休職手当の詳細は、休職とは?種類や手当の受け取り方、申請の流れで整理しています。
復職判定の流れ
休職期間中、症状が安定してきたら、復職に向けた判定が始まります。
一般的な流れは、以下のようになります。
- 主治医による「復職可能」の診断書の作成
- 会社の産業医面談(または産業医相当者との面談)
- 試し出勤・リハビリ出勤などの段階的な復帰プログラムの実施
- 復職判定会議(人事・産業医・上司・本人)
- 正式な復職決定と業務再開
「主治医がOKを出した=即復職」ではなく、会社側の判定プロセスがあることを理解しておくと、復職の時期と道筋を主治医や産業医と早めにすり合わせやすくなります。
自立訓練・リワーク・就労移行支援|休職と復職をつなぐ選択肢
「自宅療養だけで復職できる自信がない」「もう一度仕事に戻る感覚を取り戻したい」――そう感じる方が活用できる仕組みとして、医療機関のデイケアや障害福祉サービスがあります。
選択肢1|医療機関のリワークプログラム
医療機関(精神科・心療内科のリワーク外来)で実施される復職支援プログラムです。
主治医の指示のもと、生活リズムの再構築・認知行動療法・グループワーク・職場想定プログラムなどを組み合わせて、復職を医学的にサポートします。
健康保険が適用されるため、自己負担は比較的少なめです(自立支援医療制度を併用すると、さらに負担を抑えられる場合があります)。
医療機関のリワークについては、リワークとは?通う意味や特徴、メリット・デメリットで詳しく解説しています。
選択肢2|就労移行支援事業所のリワーク的活用
就労移行支援は、原則2年以内に一般就労を目指す障害福祉サービスですが、復職を目指して通うリワーク的な活用も可能です。
履歴書添削や面接練習だけでなく、ビジネスマナー・PC訓練・コミュニケーション・自己理解・職場想定プログラムなど、復職後の業務を見据えた幅広いトレーニングを受けられます。
事業所によっては、復職支援に特化したプログラムを提供しているところもあります。
選択肢3|自立訓練(生活訓練)で生活と気持ちの土台を整える
「いきなり仕事のことを考えるのは重い」「まずは生活そのものを整えたい」と感じる方には、自立訓練(生活訓練)が選択肢に入ります。
自立訓練(生活訓練)は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのひとつで、生活リズム・対人スキル・自己理解・体調コントロールなど、「働くうえで/生きていくうえで土台になる部分」に時間を使えるサービスです。
利用期間は原則2年(特例で3年)、世帯収入により利用料が変動しますが、9割以上の方が自己負担0円で利用しています。
自立訓練の概要は、自立訓練(生活訓練)とは|対象者・利用期間でまとめています。
3つの選択肢の比較
3つの選択肢を比較すると、以下のようになります。
| 項目 | 医療機関のリワーク | 就労移行支援 | 自立訓練(生活訓練) |
|---|---|---|---|
| 主な目的 | 復職に向けた医学的支援 | 就職・復職に向けた職業訓練 | 生活・対人・自己理解の土台作り |
| 提供主体 | 医療機関 | 障害福祉サービス事業所 | 障害福祉サービス事業所 |
| 自己負担 | 健康保険適用(一部負担) | 世帯収入に応じる(多くは0円) | 世帯収入に応じる(多くは0円) |
| 利用期間 | 数ヶ月〜1年程度 | 原則2年以内 | 原則2年(特例3年) |
| 通所頻度 | 週2〜5日 | 週4〜5日が多い | 週3〜5日(柔軟) |
| 向く方 | 復職時期が明確で医学的支援を受けたい方 | 復職または転職で就労を目指す方 | まず生活・気持ちの土台から整え直したい方 |
「いまの自分にどれが合うか」は、主治医・産業医・相談支援専門員と一緒に整理することをおすすめします。
並行利用・段階利用という考え方
「自立訓練を半年経たあとに就労移行支援に進む」「医療機関のリワークと自立訓練を時期を変えて使う」など、段階的に組み合わせる方も少なくありません。
復職や転職を急がず、必要なステップを順番に踏むことで、再発のリスクを下げて長く働ける状態に近づきやすいとされています。
サービスの併用ルールや切替えの仕方は、相談支援事業所の相談支援専門員と一緒に整理していきます。
復職・転職・就労継続支援|戻る先の選択肢
休職と療養を経て、「次にどこに戻るか」を考える段階がやってきます。
選択肢は「元の職場への復職」だけではありません。
選択肢1|元の職場への復職
最も身近な選択肢は、いまの会社に復職することです。
メリットは、業務内容・人間関係・通勤経路など既知の環境に戻れる点、退職・転職のリスクを取らずに済む点です。
一方で、「ストレス要因となった環境にそのまま戻ることになる」場合は、再発リスクが高まる可能性もあります。
復職前に、業務量・残業時間・上司との関係・部署環境などについて、産業医と会社側に具体的な配慮事項を伝えておくことが大切です。
選択肢2|同じ会社の異動・部署変更
「会社は辞めたくないが、いまの部署には戻りたくない」という方には、社内異動・部署変更が選択肢になります。
人事担当者と相談しながら、配置転換の可能性を探ります。
会社の規模や人事制度によっては難しい場合もありますが、まずは産業医・人事担当者に希望を伝えてみることをおすすめします。
選択肢3|障害者雇用枠での転職
「もう元の会社には戻れない」「次の職場は配慮を受けながら働きたい」と考える方には、障害者雇用枠での転職が選択肢に入ります。
精神障害者保健福祉手帳を取得することで、障害者雇用枠の求人に応募できるようになります。
法定雇用率の引き上げ(2024年4月から2.5%、2026年7月から2.7%)の影響もあり、精神障害のある方の障害者雇用は年々増加傾向にあります。
障害者雇用については、障害者雇用で働くメリットとは?デメリットや企業側の採用メリットで整理しています。
選択肢4|一般雇用枠(オープン/クローズ)での転職
「障害者雇用枠ではなく、一般雇用枠で次の仕事を探したい」という選択肢もあります。
その場合、病気のことを会社に伝える「オープン就労」と、伝えない「クローズ就労」のどちらを選ぶかを検討します。
オープン就労は配慮を受けやすい一方、求人が限定される傾向があり、クローズ就労は求人の幅は広いものの、配慮を受けにくく再発リスクが上がりやすい側面があります。
詳細は、クローズ就労・オープン就労とは?メリット・デメリットで整理しています。
うつ病からの転職全般については、うつ病の方が転職するには?進め方や大事なポイント、受けられる支援もあわせて参考にしてください。
選択肢5|就労継続支援A型・B型
「雇用契約のある働き方はまだ重い」「自分のペースで生産活動に関わりたい」という方には、就労継続支援A型・B型が選択肢に入ります。
A型は雇用契約を結び最低賃金以上の賃金が支払われる形、B型は雇用契約を結ばずに工賃を受け取る形で、いずれも障害福祉サービスとして提供されています。
復職や転職を急がずに、まず生活リズムと社会との接点を保つ場として、活用される方も少なくありません。
詳しくは、就労継続支援B型とは?仕事内容・給料・利用料で整理しています。
公的データから見るうつ病と仕事の関係
厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」では、現在の仕事や職業生活に関することで、強い不安、悩み、ストレスを感じている労働者の割合が継続的に高い水準で推移しているという方もいらっしゃいます。
その内容として「仕事の量」「仕事の失敗、責任の発生等」「対人関係(セクハラ・パワハラを含む)」が上位を占めており、これらは仕事におけるうつ病の発症背景とも重なる要素です。
また、厚生労働省「精神疾患を有する総患者数」の集計では、気分障害(うつ病・双極性障害等)の総患者数が100万人超で推移しており、社会全体での精神疾患への支援整備が継続的な課題とされています。
公的データの観点からも、「うつ病と仕事の問題は、本人個人の問題ではなく、社会全体で支援体制が整えられつつある領域」と位置づけられます。
出典:厚生労働省「労働安全衛生調査(実態調査)」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/r05-46-50.html)/厚生労働省「患者調査」(https://www.mhlw.go.jp/toukei/list/10-20.html)
家族・周囲ができるサポート
うつ病で悩む方の周囲にいる方も、どう関わってよいか戸惑うことが多いはずです。
家族・パートナー・友人ができる関わり方を、整理します。
NGになりやすい関わり
良かれと思って言った言葉が、本人を追い詰めてしまうケースは少なくありません。
避けたほうがよい代表的な関わりは以下の通りです。
- 「頑張れ」「気合いだ」と励ます
- 「考えすぎだよ」「気の持ちようだ」と否定する
- 「みんな大変なんだから」と比較する
- 「早く治して仕事に戻ったほうがいい」と急かす
- 「どうしてこうなったの?」と原因を問い詰める
これらの言葉は、本人にとって「理解されていない」「責められている」と感じやすい関わりです。
おすすめされる関わり方
代わりに、以下のような関わり方が推奨されています。
- 「つらかったね」「話してくれてありがとう」と受け止める
- 結論や解決策を急がず、まず話を聞く
- 「一緒に病院に行こうか」「家事は気にしないでいいよ」と具体的なサポートを申し出る
- 本人のペースを尊重し、休息する時間を肯定する
- 自分自身のケアも忘れない(家族も疲弊しすぎない)
家族自身が疲弊してしまっては、長期的なサポートが難しくなります。
家族向けの相談窓口(家族会・精神保健福祉センター・かかりつけ医など)を活用しながら、家族自身の支援も並行して受けてください。
職場の同僚・上司ができる関わり
職場の同僚や上司も、関わり方に迷うことが多い立場です。
「特別扱いになってしまわないか」「どこまで業務を任せてよいか」「何と声をかけるべきか」――こうした悩みは、産業医や人事担当者を経由して整理することができます。
本人に直接「無理しないでね」と声をかけることは大切ですが、業務上の調整は本人と二人だけで決めず、必ず会社の正規ルート(産業医・人事)を通すことが、双方にとっての安全策になります。
エンラボカレッジでの「うつ病と仕事の整理」のアプローチ
エンラボカレッジは、神奈川県・東京都・大阪府・宮崎県で自立訓練(生活訓練)と就労移行支援を運営する事業者です。
特定の事業者をおすすめする趣旨ではなく、自立訓練というサービスの活用パターンの一例として、ご参照ください。
「就職ありき」ではない設計だからこそ、休職中の方にも合いやすい
エンラボカレッジは「就職をゴールにすべて設計する」事業所ではなく、「自立の土台作り」を中心に置いています。
そのため、復職を目指している方、転職を視野に入れている方、まずは生活を整えたい方、進路を一緒に整理したい方など、多様な状態の方が利用されています。
「すぐに次の仕事を決めなければ」というプレッシャーをかけず、ご自身の体調と相談しながら、ペースを決めていけます。
4ステージのカリキュラムと8つのプログラム
エンラボカレッジでは、ステージ1〜4の4段階で「自分を知る・学ぶ→学んだことができる→学びを応用できる→自信を持ち、次に進める」というカリキュラムを組み立てています。
その中で、感情学/コミュニケーション/My Lab./アクティビティ/Life Lab./ソマティック Lab./Social Lab./スキルアップという8つのプログラムを組み合わせて、自己理解・対人スキル・体調管理・働き方の再設計を進めていきます。
なかでもMy Lab.は、利用される方が『自分/支え方マニュアル』という独自成果物を作る時間で、復職先・転職先でも継続して活用できるツールです。
卒業後の進路の多様性
エンラボカレッジ卒業後の進路は、就労移行支援事業所での次のステップ、就労支援センターを活用した就職、休職中の職場への復職、大学・専門学校への復学・進学、就労継続支援A型・B型の利用など、多様な選択肢があります。
「いまの状態でどの選択肢が現実的か」「次のステップに進むタイミングはいつか」を、支援者と一緒に整理しながら決めていけます。
40代から自立訓練で働き方を見直していった方のプロセスは、40代からの再スタート体験もあわせてご覧ください。
拠点情報
エンラボカレッジは、神奈川県(横浜・横浜関内・センター南・相模大野・藤沢・川崎)、東京都(蒲田・府中)、大阪府(なんば・大阪梅田)、宮崎県(宮崎)の全11拠点で運営しています。
ご見学・無料相談は、対面・オンラインどちらでも対応可能です。
うつ病から働き方を立て直した方の実例|自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジ利用者の事例
※以下は自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジを利用された方の支援事例です(医学的な症例研究ではありません)
「自分と似た状況の方がどう乗り越えたのか」を知ることは、選択肢を整理するうえで大きな材料になります。
事例1|休職をきっかけに感情コントロールから整え直した方
エンラボカレッジを利用された方の中に、職場でのストレスから休職に入り、そのまま「次にどう動けばよいか」が見えなくなっていた方がいらっしゃいました。
休職中に自立訓練を利用し、感情学・コミュニケーション・My Lab.などのプログラムを通じて、「自分の感情の波がどんな場面で出やすいか」「どう対処すれば落ち着けるか」を整理されました。
最終的には、自分の特性と必要な配慮を言語化した『自分/支え方マニュアル』を作成し、新たな職場で配慮を受けながら働くステップに進まれています。
→ 詳しくは エンラボストーリー をご覧ください。
事例2|うつとADHDのある40代が土台を整えて安定就労に至ったケース
40代でうつ病とADHDの診断を受けた方が、過去に何度か離転職を繰り返した経験を踏まえて、「次は土台から整え直したい」と自立訓練を利用されたケースもあります。
ステージ1〜4のカリキュラムに沿って、生活リズム・対人スキル・自己理解を整え、その後、就労移行支援を経て安定的に働く段階へと進まれました。
「焦らずに土台から整え直す道筋」が、長く働ける働き方につながった事例です。
→ 詳しくは エンラボストーリー をご覧ください。
よくある質問(FAQ)
うつ病で休職するのは「甘え」ですか?
うつ病は気分障害の一種で、医学的な疾患として位置づけられています。
「気合いで乗り越える」「根性で続ける」という性質の問題ではなく、医療的なケアと環境調整によって治療・回復を進めていく病気です。
主治医が「休職が必要」と診断した場合、それは医学的根拠に基づく判断であり、甘えではありません。
上司には病名を伝えなければなりませんか?
必ずしも病名(うつ病)を上司に伝えなければならないわけではありません。
「医師から就業制限の指示を受けている」「医療的な理由で業務調整が必要」という伝え方でも、配慮を受けることは可能です。
産業医に主治医の意見書を渡し、産業医経由で会社に必要な配慮事項を伝えてもらう方法を取れば、本人が直接病名を職場で開示しなくても済みます。
休職中、傷病手当金はいくらもらえますか?
健康保険に加入している方は、業務外の傷病で連続して4日以上仕事を休んだ場合、標準報酬月額のおおむね3分の2程度が、支給開始日から通算して1年6ヶ月の範囲で支給されます。
具体的な金額や申請方法は、加入している健康保険組合または全国健康保険協会(協会けんぽ)にお問い合わせください。
復職と転職、どちらを選ぶべきですか?
一概にどちらが良いとは言えず、個別の事情によります。
判断材料としては、「元の職場の業務量・人間関係・労働環境がストレス要因として続きそうか」「会社側がどこまで業務調整に応じてくれるか」「自分の体力・気力が、復職にどこまで対応できそうか」などがあります。
主治医・産業医・相談支援専門員と一緒に整理することをおすすめします。
復職後、どれくらいで再発リスクが下がりますか?
うつ病の再発リスクは個人差が大きく、一律の目安はありません。
医学的には、寛解(症状が落ち着いた状態)後、半年〜1年の経過観察期間が一つの目安とされる場合もありますが、医師の診断と治療方針に従ってください。
再発予防には、服薬の継続・通院の継続・ストレス要因の管理・生活リズムの維持などが大切です。
自立訓練(生活訓練)と就労移行支援は同時に使えますか?
原則として、自立訓練と就労移行支援を同時並行で利用することはできません。
「まず自立訓練で土台を整えてから就労移行支援に進む」「就労移行支援を一度経験してから自立訓練に戻る」など、段階的に組み合わせる使い方が一般的です。
サービスの切替えは、相談支援事業所の相談支援専門員と一緒にサービス等利用計画を見直すことで進められます。
障害者手帳がなくても自立訓練や就労移行支援は利用できますか?
障害者手帳がなくても、自立支援医療の受給者証や主治医の意見書をもとに、自治体の判断で「障害福祉サービス受給者証」が交付されるケースがあります。
うつ病の診断書をお持ちであれば、まずはお住まいの市区町村の障害福祉課に相談してみてください。
家族がうつ病になりました。どう接すればよいですか?
本人の話を急かさず受け止めること、結論や解決策を急がないこと、本人のペースを尊重すること、具体的なサポート(受診同行・家事の代行・経済面のサポートなど)を申し出ること――この4点が、家族向けの基本姿勢として推奨されています。
同時に、家族自身も疲弊しすぎないように、家族会や精神保健福祉センターなど外部のサポートを活用してください。
主治医にうまく症状を伝えられません。どうすればよいですか?
事前に「症状メモ」を書いて持参すると、限られた診察時間のなかでも伝えやすくなります。
「いつから」「どんな場面で」「どれくらいの頻度で」「どの程度の症状か」を、簡条書きで書き出すだけでも、医師にとっては大きな診断材料になります。
家族やパートナーに同行してもらい、客観的に見た本人の様子を補足してもらう方法も有効です。
適応障害との違いは何ですか?
適応障害は、特定のストレス要因(仕事・人間関係・環境の変化など)に反応して心身の症状が現れる疾患で、原因となるストレスから離れると症状が比較的速やかに改善する傾向があるとされています。
うつ病は、特定の原因がなくても症状が持続する点や、再発性が高い点などが特徴とされ、診断基準も異なります。
症状が似ているため、自己判断は避けて医師の診断を受けてください。
適応障害については、適応障害とは?仕事が怖いと感じたときの対処法、原因や症状で詳しく解説しています。
まとめ
仕事におけるうつ病のサインは、朝・対人・ミス・夜帰宅後の4場面で現れます。早めに気づいて医療機関の受診につなげることが、長く働き続けるうえでの最大の分岐点です。
次の行動として、主治医→家族→産業医→上司→人事の順で相談し、必要に応じて休職診断書を受けてください。復職時は自宅療養だけで急がず、リワーク・就労移行支援・自立訓練を組み合わせる道筋もあります。戻る先は元の職場だけでなく、社内異動・障害者雇用への転職など複数の選択肢があります。
エンラボカレッジでは、休職中の方の「次の道筋整理」のご相談をお受けしています。まずはお問い合わせください。
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「うつ病の休職中で、次のステップをどう考えればよいか分からない」「復職と転職のどちらが自分に合うか整理したい」「自分の特性を理解し、配慮を伝えられるようになりたい」――そうしたご相談を歓迎しています。
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この記事について【作成・監修】
本記事は、自立訓練(生活訓練)事業所「エンラボカレッジ」を運営する株式会社エンラボの専門職スタッフが作成・監修しています。
【在籍資格】
精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士
【現場での実践】
自立訓練(生活訓練)・就労移行支援などで、診断名・特性に合わせた個別支援を提供しています。
【運営会社】
株式会社エンラボ/設立2015年4月/神奈川県を中心に首都圏・関西・宮崎で11拠点運営






