発達障害のグレーゾーンの方が仕事でよくある困りごとはどんなこと?対策や頼れる支援機関を紹介します。

公開日:2023/12/01

発達障害という言葉は日常でも見聞きすることが多くなってきたと思います。また、仕事における発達障害のある方への支援なども進んできています。

しかし、発達障害の特性がありながら確定診断にはいたらない「発達障害のグレーゾーン」と呼ばれる方がいます。

発達障害のグレーゾーンの方は、発達障害の診断がある方と同じく日常生活や仕事でつまずきがありながら、なかなか支援を受けられないなどの困りごとがあります。

この記事では、発達障害のグレーゾーンの説明と、仕事でよくある困りごとや対策、グレーゾーンの方が活用できる支援機関を紹介します。

発達障害のグレーゾーンとは?

発達障害のグレーゾーンとは、対人関係や仕事で困りごとがあり、その原因の一つとして発達障害の傾向がありながら、診断基準のすべてを満たさないために確定診断が降りない状態のことを指して使われている言葉です。

 

発達障害のグレーゾーンという診断名があるわけではなく、あくまで一般的な呼び方として白黒どちらにも分類できない「グレーゾーン」という言葉が使われています。

 

発達障害のグレーゾーンは診断が下りないからといって困りごとが少ないというわけではなく、仕事や生活の中で本人はつらい思いを抱えていることも多くあります。

 

また、グレーゾーンの方は診断がないことから受けることができる支援制度が少なくなるという課題もあり、困りごとが続くことでうつ病やパニック障害などの二次障害につながる場合もあります。

 

そのため、発達障害のグレーゾーンの方は、自身の困りごとの傾向を知って対策を立てていくとともに、グレーゾーンの方も活用できる支援機関も頼りながら仕事の困難を減らしていくことが大切といわれています。

 

発達障害のグレーゾーンの詳細は以下の記事からご確認ください。

発達障害のグレーゾーンの方が仕事でよくある困りごと

発達障害のグレーゾーンの方は診断名がつかないだけで、発達障害のある方と同じように日常生活や仕事などさまざまな場面で困りごとを抱えることがあります。

 

ここでは発達障害のグレーゾーンの方が仕事で困りがちなことを紹介します。

たくさん仕事があるとパニックになり、頭が真っ白になる

発達障害のグレーゾーンの方は、一度に複数の仕事を処理するのが苦手な方がいます。

一度に多くの仕事を振られると、「何から手を付けていいのかわからない」とパニック状態になったり、いわゆる頭が真っ白の状態になってしまうことがあります。

スケジュール管理ができず納期に遅れることがある

発達障害のグレーゾーンの方の中には、仕事のスケジュール管理が苦手な方も多くいます。

発達障害の特性から見通しをつけることが難しかったり、衝動的に目の前の仕事に没頭しがちな傾向があり、結果として納期に間に合わないという事態が生じてしまいます。

気をつけていても遅刻や失くし物・忘れ物が多くなってしまう

発達障害のグレーゾーンの方は、仕事場に遅刻することが多かったり、仕事に必要な書類などを失くしたり忘れてきたりといった困りごともあります。

 

発達障害の特性として不注意や衝動性などがあります。そういった特性が強い方は、うっかり仕事に向かう時間を忘れてしまったり、仕事で使う書類も目についた場所に置きっぱなしにするなどの理由で遅刻や失くし物などが多くなってしまいます。

同僚や上司との雑談やコミュニケーションがうまくいかない

発達障害の特性の中で、相手の立場に立って考えることや比喩や暗黙の了解の理解が苦手というものがあります。

 

そのような特性があるグレーゾーンの方は、仕事の同僚や上司と雑談している中でも、つい相手が気にしていることを指摘したり、冗談が通じなかったりしてうまくコミュニケーションが取れないということがあります。

口頭での指示理解が難しい

発達障害のグレーゾーンの方は、仕事において口頭での指示理解が難しいという困りごともよくあります。

 

これは、発達障害の特性の中の、あいまいな言葉の理解の困難が関係している場合が多く、仕事で「ちょっと」「いい感じに」などの指示を受けても、どう動いていいのかわからず混乱してしまうことがあるといわれています。

特性の分野の仕事がうまくできない

発達障害のグレーゾーンの方の中には、文字の読み書きや計算など特定の分野の勉強のみ苦手という方もいます。

 

仕事においては、メールを読むことや書くことに非常に時間がかかったり、簡単な計算などの暗算ができないといった困りごとがあるといわれています。

人の動きや音など刺激の多い場所だと集中が難しいことがある

発達障害のグレーゾーンの方の中に、目や耳などに入る刺激に非常に敏感な「感覚過敏」がある方がいます。

 

感覚過敏のある方は、仕事場で人の動きが多い、音が絶えず鳴っているなどの刺激が多い状況では集中が難しかったり、ひどく消耗したりといった困りごとが生じていることがあります。

明確な診断がないので周囲に理解をしてもらえない

発達障害のグレーゾーンは診断名ではないため、今紹介したような困りごともなかなか人に伝えるのが難しく、「みんな同じだよ」「気にし過ぎでは?」といった形で捉えられてしまう場合があります。

 

このように、仕事で困ることがあっても周囲の理解を得るのが難しいことも、発達障害のグレーゾーンの方の悩みとしてよく聞かれます。

二次障害の可能性

発達障害のグレーゾーンの方は、仕事の困りごととともに周囲からの理解を得ることが難しいため、大きな負担感やストレスを感じている場合があります。

 

そういったことが積み重なって、うつ病などの精神疾患や不眠などの身体的な不調が表れることがあり、これを「二次障害」と呼んでいます。

 

うつ病かと思って病院を受診したところ、背景に発達障害のグレーゾーンがあったと判明するケースもあります。

 

なお、二次障害もグレーゾーンと同様に診断名ではなく、困っている状態を指して使われる言葉の一つです。

発達障害のグレーゾーンの方が仕事でできる工夫

発達障害のグレーゾーンの方は、仕事において今紹介したような困りごとを抱えがちといわれています。

 

仕事における困難を軽減させるためには、自身を理解して対策を立てていくことが効果的とされています。ここでは、その方法を紹介します。

自分の特性(困りごと)を理解する

発達障害のグレーゾーンの方が仕事をしやすくするためには、まずは自分がどのような特性があるか理解することが大切です。

 

やり方として、実際にこれまで仕事で困ったことを書きだしていく方法があります。まだ仕事をしたことがない方は学校において困ったことでも大丈夫です。書きだしたあとは、項目に共通点がないかを探っていくことで、自身の困りごとの傾向がつかめてくるでしょう。

 

また、ツールを使う方法もあります。インターネットや書籍で発達障害のある方のよくある特性をチェックできるシートなどがありますので、活用してみるといいでしょう。

 

他にも、障害についての知識がある方とのカウンセリングなど、第三者と話しながらまとめていく方法もあります。

 

色々とあるので、自分に合っていそうな方法を試してみるといいでしょう。

 

参考リンク:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「発達障害の特性チェックシート」

対策を考える

次は対策を考えていきます。基本的には発達障害のグレーゾーンの方の仕事での困りごとがなぜ起こり、どうすれば解消するかという観点で考えていくといいでしょう。

 

といっても、すぐに浮かばないと思いますので、発達障害のグレーゾーンの方が仕事の中でしている工夫をいくつか紹介します。対策を考える参考にしてみてください。

TODOリストを活用する

TODOリストとは、仕事でするべきことを書きだして、終わったらチェックを入れるツールのことです。

視覚的にやることと終わったことが分かるため、仕事で抜け漏れが多い方や、複数の仕事を頼まれたときに混乱してしまうという方は活用してみるといいでしょう。

 

TODOリストは紙に書く形式の他に、パソコンやスマートフォンのアプリでもあります。

リマインダーやアラームを使う

発達障害のグレーゾーンの方で仕事で遅刻や忘れ物が多いという方は、スマートフォンのリマインダー機能を使う対策があります。

 

家を出る時間にアラームが鳴るようにリマインダーをセットしておくことや、その日に持っていくものをリマインダーに登録しておくといった使い方があります。

 

ほかにも、一つの仕事に集中しすぎる方は、定期的にアラームを鳴らすようにして仕事の切り替えができるようにする方法もあります。

苦手を補えるツールを使う

TODOリストやリマインダーの他にも、発達障害のグレーゾーンの方はツールを使って苦手を解消させていくという対策もあります。

 

計算が苦手なら電卓、文字を読むことに時間がかかる場合は音声読み上げソフトを使うなど、その人の苦手なことを代わってくれるツールがないか探してみるといいでしょう。

 

ツールは感覚過敏のある方にも有効です。聴覚過敏がある方は、聞こえる音を減らすイヤーマフやノイズキャンセリングイヤホン、視覚過敏のある方は薄いサングラスなどを使うことで刺激を減らして仕事に集中しやすくすることができます。

しまう場所を色分けする

発達障害のグレーゾーンの方で大事な書類などをなくしてしまうという方は、しまう場所を色などで分けて視覚的にわかりやすくする方法があります。

 

デスクの上やロッカーをいくつかの色で仕切り、色としまう物を対応させておくことで、パッと見てしまう場所が分かるので物を失くしにくくなります。色ではなく、しまう物の名称を大きく書いておくといったやり方もあります。

職場や周囲に理解者を増やす

発達障害のグレーゾーンの方は職場の方に苦手なことと対策を伝えて、協力してもらうことも大事なポイントです。

 

発達障害のグレーゾーンは診断名ではないため、障害者雇用などの制度を使うことはできませんが、仕事場の方に説明すればある程度の協力が得られる場合があります。

 

ポイントは、苦手なことと対処法を伝えることです。「これが苦手です」だけだと、仕事場の方もどう対応していいのかわからないことがあるため、「こうすると仕事がしやすくなる」という対策まで伝えることで、協力してもらいやすくなります。

 

先ほど紹介したツールを使いたいときにも、会社によっては使用許可が必要な場合があります。そういったときも、「こういう苦手があるが、このツールを使うことで仕事がしやすくなる」といった観点で伝えることが大切です。

 

また、自分で伝えるのが難しいという方は、社内のメンタルヘルス窓口などに相談する方法もあります。

発達障害のグレーゾーンの方が仕事で困ったときに頼れる支援機関

ここでは、発達障害のグレーゾーンの方が利用できる支援機関を紹介します。いずれも診断がなくても相談や利用ができる場合があります。

ハローワーク

求人の紹介などを行っているハローワークには、障害のある方の相談窓口が設けられていて、障害に詳しいスタッフが担当制でサポートをしています。

診断がなくても相談自体は可能なことが多いため、一度訪れてみてもいいでしょう。

 

また、場所によってはわかものハローワーク(自治体により名称が異なります)が併設されていることもあります。

 

わかものハローワークは、一定の年齢(東京都は34歳以下)で正社員経験の少ない方に対して就職活動の支援の他、心理カウンセリングなども行っています。

 

利用するのに診断などは問われないため、発達障害のグレーゾーンの方も利用が可能です。場所によって内容も変わってくるため、お住いの自治体のハローワークでも確認してみるといいでしょう。

地域若者サポートステーション(サポステ)

地域若者サポートステーションは、49歳までの現在仕事をしていない方に向けて就職相談や訓練などを行っている支援機関です。

 

訓練にはコミュニケーションや職業体験、ビジネスマナーや書類の書き方講座といった様々なものがあります。

 

発達障害の診断などは必要ないため、グレーゾーンの方も利用可能です。気になる方は問い合わせてみるといいでしょう。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害のある方やその家族からの相談に対して、様々な支援を提供している機関です。

 

発達障害の診断がなくても相談することは可能で、特性や状況に応じてアドバイスや他に利用できる支援機関の紹介などをしてくれることがあります。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は障害のある方が自立した生活を送れるように、相談対応や訓練の提供などのサポートをしている支援機関です。

 

発達障害のある方に、自己理解、コミュニケーションやスケジュール管理など困りごとに合わせたカリキュラムを提供しています。

 

また、生活だけでなく今後どういった仕事をしていきたいかを面談で整理したり、そのために必要なスキル取得のサポートも行っています。

 

利用するには自治体から発行される通所受給者証が必要で、発達障害のグレーゾーンの方も利用できる可能性があります。

 

エンラボ カレッジでは相談を無料で受け付けていますので、詳しいことはぜひお問い合わせください。

発達障害のグレーゾーンのまとめ

発達障害の傾向があっても診断が下りていない方を、発達障害のグレーゾーンと呼ぶことがあります。

 

発達障害のグレーゾーンの方は、診断がつかないからといって辛さが軽いわけではなく、日常生活や仕事で様々な困りごとを抱えている方も多くいます。

 

発達障害のグレーゾーンの方は診断がないため支援制度などを使えないこともありますが、自分自身を理解して対策を立てていくことで今の辛さを軽減することも可能です。

 

また、発達障害のグレーゾーンの方も相談や利用が可能な支援機関も複数ありますので、そういった機関も頼っていくことも大切です。

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