休職期間はいつまでとれる? 上限の目安や期間の決め方、休職中の過ごし方を解説

公開日:2024/08/09

休職は法律で決められた制度ではありません。休職制度を設けるかどうか、また休職期間の上限をいつまでと定めるかどうかなどは、各会社の就業規則などによって定められています。休職期間は平均でどれくらい取得できるのでしょうか。また、休職期間はどのように決定されるのでしょうか。今回は「休職期間」に関する情報について解説します。

休職期間とは?

休職とは、会社と労働者が雇用契約を維持したまま、主に病気など労働者側の個人的な事情によって、会社から労働の義務を長期間免除することを指します。休職をするときの流れや受け取れるお金など、休職の詳しい概要については関連記事を参照してください。

 

関連ページ:休職とは?種類や手当の受け取り方、申請の流れ、デメリットについて解説

 

休職期間とは、病気や怪我など何らかの理由で業務に従事できない社員に対し、会社側が年次有給休暇とは別に休みを与えたり、命じたりする期間を指します。

 

また、休職と似ている言葉に、欠勤と休業があります。

 

休職と欠勤の違いは、「労働義務の免除」が有るか無いかです。休職の場合、医師の診断書などを基に会社が判断して労働の義務を免除しますが、欠勤は労働者が自己都合により、労働の義務がある日に仕事を休むことを指します。例えば、「勤務日だったが、朝起きたら熱が出ていたので会社を休んだ」という場合は欠勤になります。

 

休職と休業の違いは、基本的に「会社都合での労働義務の免除」が有るか無いかという点です。休職の場合、病気など労働者側の都合が考慮されます。一方で休業は、年末年始の一斉休業や業績悪化に伴う一時休業のように、会社の制度あるいは会社の都合で決定します。中には「育児・介護休業」など、法律に基づいた制度による休みもあります。これは法律に基づいた制度による休みのため、「休職」ではなく「休業」の扱いとなります。

 

休職と比較して休業の方が期間は短くなることが多い傾向にあります。

休職期間の上限と平均となる目安

休職に関して定めている法律はなく、各会社ごとに制度の詳細が就業規則などで定められています。そのため、休職期間の上限は各会社で異なります。

休職期間の上限とは?

休職期間の上限は、各会社の就業規則などで定められています。独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査によると、休職期間の上限を「6ヵ月超から1年まで」と定めている会社が最も多く、全体の22.3%でした。「3ヵ月まで」から「2年6ヵ月超から3年まで」を含めた休職期間の上限が3年までの会社は全体の約87%にのぼり、「3年超」は1.4%、「上限なし」は4.5%であることから、多くの会社は休職期間の上限を3ヵ月~3年までと定めていることが分かります。

参考:メンタルヘルス、私傷病などの治療と 職業生活の両立支援に関する調査P.44

参考:メンタルヘルス、私傷病などの治療と 職業生活の両立支援に関する調査P.44

 

正社員規模別に見てみると、正社員の人数が49人以下・50人~99人・100人~299人の場合は、「6ヵ月超から1年まで」としている会社が最も多く、正社員の人数が300人~999人の場合は、「1年超から1年6ヵ月まで」が全体の20.7%で最も多くなっています。さらに正社員の人数が1,000人以上の場合は「1年6ヵ月超から2年まで」の会社が全体の28.9%となっており、正社員規模が大きくなるにつれて休職期間の上限は長くなりやすい傾向が見られます。

 

一方で、休職期間の上限を「上限なし」としている会社の割合は、正社員規模が小さくなるほど高いという結果になっており、「休職期間の期限を設けず柔軟に対応している」というケースも多いようです。

参考:メンタルヘルス、私傷病などの治療と 職業生活の両立支援に関する調査P.44

参考:メンタルヘルス、私傷病などの治療と 職業生活の両立支援に関する調査P.44

【種類別】休職期間の平均となる目安

傷病休職

傷病休職は、勤続年数に応じて休職期間の上限を定めているケースが多くなっています。例えば、勤続1年以上3年未満は休職期間の上限を3ヵ月、勤続3年以上5年未満は休職期間の上限を6ヵ月、勤続5年以上10年未満は休職期間の上限を1年、勤続10年以上は休職期間の上限を1年6ヵ月とするなど、勤続年数が長いほど休職期間の上限も長くなる傾向にあります。

 

なお、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査によると、傷病休職において一般疾病(病気やケガなど)とメンタルヘルス(うつ病など)を同じ扱いとしている会社は全体の88.9%、メンタルヘルス独自の休職期間の基準がある会社は2.2%となっています。

事故欠勤休職

事故欠勤休職を傷病休職と分けていないケースも多くあります。その場合、休職期間の上限についても傷病休職に準ずる形となります。

 

一方で、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査で事故欠勤休職に限って休職期間の上限を見てみると「2週間未満」が4.1%、「2週間~1か月未満」が13.0%、「1か月~2か月未満」が13.8%と、傷病休職と比較すると短い期間を事故欠勤休職の上限としている会社も少なくありません。

参考:第4章 休職制度についてP.8

起訴休職

起訴休職は、労働者がなんらかの犯罪の嫌疑を受けて起訴された場合に適用されるという制度の特性上、休職期間の上限を定めることが難しいです。そのため就業規則上は、「会社が必要と認めた期間」や「原則、判決確定までとする」など、「〇ヵ月」と明示しない形で定められることが多くなっています。

出向休職

出向休職とは、他の会社に出向する際に、元々所属している会社で休職扱いとなることを指します。そのため、出向休職の休職期間は出向期間と同じになります。就業規則上は「出向期間中は休職とする」といった形で出向休職の期間について定められており、「出向は原則として上限3年までとする」といった記述が就業規則にあれば、出向休職期間の上限も同じく3年までとなります。

組合専従休職

組合専従休職とは、労働組合業務のために取得する休職のことを指します。そのため、出向休職と同じく、労働組合の「組合専従者」として勤務時間内に組合関連業務を行う期間は、組合専従休職の対象期間となります。

その他

その他、留学休職や自己都合休職、公職就職休職など、さまざまな休職制度が用意されているケースがありますが、休職期間の上限は「会社が必要と認めた期間」など、就業規則上で期間の年数を明記しないことが多いようです。

休職期間が満了した場合

休職期間が満了すると、大きく分けて「復職する」か「退職する」の2つの対応が考えられます。その時点で病気やケガなど、休職した理由や自分自身の現在の状態によって、休職期間満了後の対応を会社と相談しましょう。

復職する

休職した理由である病気やケガの改善が見られ、元の会社で働き続ける意思がある場合は、休職期間満了後に復帰することが可能です。

 

ただし、復職の際は主治医が「復職可能」と判断した診断書が必要になるケースがあります。他にも復職の際に資料の提出や会社との面談が必要な場合があるため、休職期間満了に向けて余裕を持って準備しましょう。また、休職からの復帰後はリハビリ期間として短時間勤務(慣らし勤務)が可能だったり、業務内容や部署異動などの調整が行われたりすることがあります。復帰後の働き方については、事前に会社としっかり相談しておくことがおすすめです。

退職する

休職期間が満了しても病気やケガが治らず、職場に復帰することが難しい場合は、退職もしくは解雇となる可能性が高くなります。なぜなら、就業規則の中で「休職期間満了後、復職できない場合は、休職期間満了日をもって自動的に退職とする」といった形で、退職もしくは解雇の対応を定めている会社が少なくないからです。この際「退職扱い」になるか「解雇扱い」になるかは、就業規則の定めに則ります。

 

また、休職期間満了を「通算」で考える会社も多く、今回は短期間の休職でも今までに休職を取得したことがあれば、「休職期間満了」の対象となるケースがあります。休職期間満了までに復帰が難しい、もしくは復帰せず退職・転職すると判断した場合は、会社にその旨を伝え退職に向けた手続きを進めましょう。

休職期間の延長は可能?

休職を取得する際に予定していた休職期間を超えて病気やケガの療養が必要な場合、原則就業規則で定められた休職期間の上限までは延長することが可能です。また、休職期間の上限を超えても、就業規則の中で「会社が必要と判断した場合は延長が可能」と定められている場合は、延長が認められることもあります。

 

ただし、休職を延長する際は会社への申し出が必要で、会社側が休職期間の延長を認めるかどうか判断します。判断基準として、「休職期間の上限を大幅に超えない範囲で、病気やケガの状態が改善すること」「復帰可能な時期が明確に見立てられていること」などが挙げられます。

 

例えば、「あと1月で復帰可能」という医師の診断書があれば、休職期間の延長は認められやすいでしょう。一方で、うつ病などが理由で休職しており、「現状回復の見込みが判断できない」など、医師から職場復帰時期があいまいな判断がなされている状態では、休職期間の延長は認められにくくなっています。

 

休職期間の延長は会社側が判断する事柄のため、労働者側が休職期間の延長を行いたいと感じていても認められないケースもあります。休職期間を延長する必要がある場合は、早めに会社に相談しましょう。

休職期間の決め方

休職期間は、うつ病の症状の重さが軽度であれば1月、中等度であれば3月~6月、重度であれば1年以上が目安と言われています。しかしどれくらいの休職期間が必要になるかは、一人ひとりの状況によって異なります。休職期間はどのように決められるのでしょうか。

医師の診断書

まず、休職期間を決める上で重視されるのは「医師の診断書」です。就業規則の中で、休職を取得する場合は診断書の提出が必要と定められていることは少なくありません。

 

診断書には、休職が必要と判断された理由となっている病名や症状、休職が必要な期間などが記載されています。この診断書に記載された期間などを参考にしながら、休職期間が決定します。労働者が自分で取得した主治医の診断書だけでなく、産業医の診断書もあわせて必要になるケースもあります。休職期間の延長に際しても、医師の診断書が必要な場合があるため、事前に就業規則を確認しておきましょう。

従業員の勤続年数

先述した通り、勤続年数によって休職期間の上限が異なる場合があるため、勤続年数も考慮して休職期間は決定されます。中には勤続年数によらず、一律で休職期間を設定している会社もありますが、独立行政法人労働政策研究・研修機構が行った調査では、休職期間が勤続年数により区分されている会社は全体の49.1%であり、約半数の会社が勤続年数を考慮して休職期間を決定していることが分かります。

 

基本的に、勤続年数が長いほど休職期間の上限も長くなる傾向があります。特に休職期間満了後、復帰が難しい場合は退職もしくは解雇となる旨を就業規則で定めている会社においては、休職期間が解雇までの猶予期間と見なされます。そのため、勤続年数が長い人ほど解雇までの猶予期間を延長する目的で、休職期間を長めに設定することもあります。

 

傷病手当金が支給される期間

病気やケガなどを理由にやむを得ず休職し、十分な給与が受け取れない時に、加入している健康保険から「傷病手当」が支給されます。傷病手当の支給期間は通算して1年6月までと定められており、休職期間の上限もその範囲内と考えることが多くなっています。

 

基本的に、休職期間は会社からの賃金は支払われず、労働者の経済的不安は大きくなります。そのため、「休職期間は長ければ長いほど良い」というものではありません。病気やケガの療養ができる期間内、かつ傷病手当金の支給により経済的不安を軽減した状態で休職ができるよう、ある程度の休職期間を事前に定めておく必要があります。

休職期間の過ごし方

休職中は、しっかりと休息を取ることで、復職や転職などのネクストアクションがスムーズになります。ここでは、休職中の過ごし方のポイントを5つご紹介します。

休息に徹する

特に休職をしてすぐの初期期間は、心身をしっかり休ませることを最優先に過ごしましょう。休職したと言っても、すぐに症状が回復するわけではありません。また、「仕事を休んでしまった」「上司や同僚に迷惑をかけてしまっている」という後悔や罪悪感を抱いたり、「休職期間中に何かやらないと」と焦ったりしがちな時期でもあります。

 

しかし、自分勝手に休職しているのではなく、主治医や産業医・会社の判断に基づいて休職を取得しているため、まずは安心して自分を休めることに専念してください。しっかり睡眠をとること、なるべく仕事のことは考えないこと、一人で不安になる場合は主治医や家族、パートナー、友人などと会話する機会を多く持つことなどがポイントです。

 

生活リズムを安定させる

休職初期にしっかり休息をとると、症状が改善したり、自分自身の状況を客観的に捉えられるようになったりします。そして、徐々に復職・転職などに向けて前向きな活動に取り組めるようになります。

 

休職中期には、復職・転職後の生活を想定して生活リズムを安定させましょう。初期はなかなか眠れない中でも睡眠時間を確保するため、生活リズムが崩れがちです。休職からの復帰に向けては、ここで崩れた生活リズムの安定が必要になります。できれば午前中の活動が望ましいものの、自分自身がつらいと感じる場合は無理をせず、午後や夕方からの活動開始で問題ありません。

リラックスする方法を見つける

復帰後のストレスをコントロールするためにも、休職期間中に自分なりのリラックスする方法を見つけておくことがおすすめです。例えば、深呼吸やヨガ、瞑想、ぬるめのお湯で20分程度の入浴などは、心と体のリラックスに役立ちます。また、適度な運動や十分な睡眠も、ストレスを軽減する効果があります。自分がどんな方法でストレスを軽減することができるのか、休職期間中に試してみると良いでしょう。

 

体を動かしてみる

休職期間中、自宅でしっかり療養すると、知らないうちに体力が低下することがあります。始めは散歩など軽い運動から、慣れてきたら徐々に散歩の時間を長くしたり、水泳やジョギングなど負荷のかかる運動に取り組んだりしてみましょう。体を動かすことはストレスの軽減にもつながります。

リワークプログラムの利用を検討する

休職により一定期間休息をとり、復職に向けて具体的に行動できるようになったら、リワークプログラムを利用することもおすすめです。リワークとは、うつ病などの精神的な不調や疾患により休職中の方を対象とした、元の職場へ復帰することを目的としたプログラムのことです。リワークプログラムの中では、健康的に働き続けることができるよう、体調管理や心理プログラム、SST(ソーシャルスキルトレーニング)などのコミュニケーションプログラムなどが行われます。

 

関連ページ:リワークとは?リワークに通う意味や特徴、メリット・デメリット、費用・選び方などを紹介します。

休職期間に関するよくある質問

休職期間を考えるにあたって、不安に感じやすいポイントを3点まとめました。

Q.うつ病の場合、どれくらい休職期間をもらえますか?

うつ病で休職する場合、うつ病の症状が軽度の場合は1ヵ月、中等度の場合は3ヵ月~6ヵ月、重度の場合は1年以上という期間が目安になります。厚生労働省が行った調査によると、メンタルヘルスの不調で休職を取得する場合、1回目の平均期間は107日(約3.5ヵ月)、2回目の平均期間は157日(約5ヵ月)で、2回目に取得する方が長くなる傾向が分かっています。また、全体の約47%が5年以内に再度休職を取得するというデータもあります。

 

うつ病が原因で休職をする場合、どれくらい休職期間を取得できるかは個人の状況や会社の判断によって異なりますが、しっかりと休養を取り、休職を繰り返さないよう慎重に復帰を進める必要があります。

Q.休職期間中も給料は発生しますか?

休職期間の給与については法律で定められておらず、各会社の就業規則などによって定められています。ただし、「ノーワーク・ノーペイの原則」という考え方があり、「労働者が会社に賃金を請求できるのは、労働提供をした後」と基本的には考えられるため、休職期間に会社に所属していても働いていない場合は、基本的に給与を支払わない方針としている会社が多いようです。

 

一方で、休職中の労働者の生活を支え、復職しやすくなるように「給与補償制度」として給与の何割かを支払う制度を設けている会社もあります。事前に就業規則などを確認しておきましょう。

 

Q.休職から復帰します。意識すべきことはありますか?

休職から復帰する際、大切にしたいのはしっかりと休養期間を取った上で、再発防止を行いながら徐々に職場に慣れていくことです。

 

厚生労働省の調査によると、メンタルヘルスの不調で1ヵ月以上休職した労働者がいた事業所の割合は、全体の10.6%であり、年々増加傾向にあります。特に事業所規模が1,000人以上の大企業の場合、90.8%の事業所が「連続1か月以上休業した労働者がいた」と答えており、メンタルヘルスを理由に休職を取得することは決して珍しくありません。

 

会社も休職から復帰する労働者のサポートを積極的に行っており、復帰の際は時短勤務(慣らし勤務)を行ったり、定期的に産業医との面談で相談しやすい環境を作ったりと、さまざまな工夫を行っています。働くことに不安を感じたり、心身の状態で変だなと感じたりしたら、症状がひどくなる前に積極的にサポートを求めることがポイントです。「自分は大丈夫」「休職から復帰して、これ以上職場に迷惑をかけられない」と気負いすぎることなく、自分の心身の状態と向き合いながら、無理をしすぎず仕事に取り組みましょう。

まとめ

休職は法律で決められた制度ではなく、休職制度を設けるかどうか、また休職期間の上限をいつまでと定めるかどうかなどは、各会社の就業規則などによって定められています。一般的には、休職期間の上限を3月~3年までと定めている会社が多く、中には「休職期間を満了しても復帰が難しい場合は、退職または解雇とする」というルールを設けている会社もあります。

 

休職期間をいつまでとするかは、労働者からの申請を受けて、医師の診断書や勤続年数、傷病手当金が支給される期間など、さまざまな条件を鑑みながら、会社側が決定します。病気やケガの治療が十分でないと医師が判断する場合は、休職期間の上限範囲内であれば、休職期間の延長が認められるケースもあります。

 

一方で、休職期間は長ければ長いほど良いというものでも、短ければ短いほど良いというものでもありません。適切な休職期間はどれくらいなのか、しっかり心身の休養を取るにはどれくらいの休職期間が必要なのかは、自分一人で判断せず、必ず医師に相談してみてください。

 

エンラボ カレッジは、休職期間中の方もご利用いただける場合があります。休職期間に活用できるサービスの一つとして、ぜひ一度相談してみてください。

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