発達障害のグレーゾーンの方は障害者手帳をもらえる?もらえない?

公開日:2023/12/27

発達障害の傾向があっても確定診断がつかない状態の方を、一般的に「発達障害のグレーゾーン」と呼んでいます。

発達障害の診断がある方は「障害者手帳」を取得することができ、さまざまな支援を受けることが可能です。しかし、発達障害のグレーゾーンの方は診断がないため「障害者手帳を取得できるの?」と気になっている方も多いと思います。

この記事では発達障害のグレーゾーンの説明と、グレーゾーンの方が障害者手帳をもらえるか、またグレーゾーンの方も利用できる支援などを紹介します。

発達障害のグレーゾーンとは?

発達障害のグレーゾーンとは、発達障害の確定診断はないけど、傾向が表れている方に対して使われる言葉です。グレーゾーンの方は発達障害のある方と同様の困りごとがあっても、診断がないため「周りからの理解が得られにくい」「受けることができる支援が限られている」といったことから、発達障害の診断がある方とはまた別の困難が生じるといわれています。

 

なお、発達障害のグレーゾーンとは、そのような診断名があるわけではなく、あくまで一般的に白と黒で分けられない「グレーゾーン」ということから使用されている名称です。

発達障害のグレーゾーンの方の困りごと

発達障害のグレーゾーンの方は、発達障害の診断がある方と同じように生活や仕事の中で困ることがあるといわれています。

 

発達障害のグレーゾーンの方の主な困りごとは以下のようなものがあります。

  • 遅刻や忘れもの・失くしものが多い
  • 人の話をさえぎって自分の話をしてしまう
  • 仕事でケアレスミスが多い
  • あいまいな指示を受けると混乱してしまう
  • 急な予定変更があるとパニックになってしまう
  • 一度に複数の業務をこなすのが苦手
  • 聴覚や視覚などに感覚過敏があって集中できない 

もちろん、発達障害のグレーゾーンの方はここに挙げたすべての困りごとが表れるわけではありません。また人によって傾向は分かれています。

 

発達障害のグレーゾーンの方は、診断がないため「症状が軽いのでは?」と思われることもあります。しかし、グレーゾーンの方は決められた基準を満たさないだけで、今紹介したような困りごとがあり辛い思いをしている方も多くいます。

 

発達障害のグレーゾーンについて詳しく知りたい方は、以下の記事もご参照ください。

発達障害のグレーゾーンの方は障害者手帳を取得できる?

発達障害のグレーゾーンの方も障害者手帳を取得できるのか気になる方も多いと思います。

 

障害者手帳を取得するには診断が必要なので、基本的に発達障害のグレーゾーンの方は取得することができません。ただ、発達障害のグレーゾーンの方も、発達障害以外の障害により取得できるパターンもあります。

 

その一つとして「二次障害」があります。二次障害は発達障害のグレーゾーンの困りごとによりうつ病や適応障害など別の疾患を発症することですが、このうつ病などで障害者手帳を取得できる可能性があります。

 

もう一つ、発達障害のグレーゾーンとは別の障害が併存している場合も取得できることがあります。併存とは、発達障害のグレーゾーンとは関係なく障害が発症していることです。発達障害のグレーゾーンの方は知的障害などが併存していることがあり、その場合は発達障害のグレーゾーンの方も別の障害の診断をもとに障害者手帳が取得可能です。

 

というように、発達障害のグレーゾーンだけでは障害者手帳を取得できませんが、他の障害がある場合には取得できる可能性があります。

発達障害の方が取得できる障害者手帳とは?

ここでは障害者手帳や、発達障害の方が取得できる障害者手帳について紹介します。

障害者手帳ってなに?

障害者手帳とは、一定の障害の状況にあることを証明する公的な手帳のことです。障害の種別によってわかれており、身体障害者手帳、精神障害者保健福祉手帳、療育手帳の3つの種類があります。

 

このうち、発達障害のある方が取得できる可能性があるのは、精神障害者保健福祉手帳と療育手帳です。

 

障害者手帳を取得することで、住民税や所得税の障害者控除を受けることができる他、電車やバスなどの公共交通機関の割引、公共施設の使用料の割引などを受けることができます。

 

また、障害のある方専用の障害者雇用求人に応募することができ、働き方の選択肢も広がるなど多くのメリットがあります。

精神障害者保健福祉手帳

精神障害者保健福祉手帳は、うつ病などの精神疾患がある方が申請できる障害者手帳です。また、発達障害も対象となっています。

 

精神障害者保健福祉手帳は1級から3級まで等級が分かれており、等級によって割引率などが変わってきます。

療育手帳

療育手帳は知的障害のある方が対象となる障害者手帳です。自治体が独自に運営しているため、一部で名称などが異なる場合があります。例えば東京都では「愛の手帳」と呼ばれています。

 

発達障害のグレーゾーンの方も、知的障害を伴う場合は療育手帳を取得できる可能性があります。

 

療育手帳の等級は基本的には「重度」と「それ以外」に分かれていますが、こちらも自治体によっては細分化されていることもあり、それぞれ受けることができるサービスも異なります。

 

療育手帳の詳細はお住いの自治体のホームページや障害福祉課などでご確認ください。

発達障害の方が障害者手帳を取得するときはどうすれば良い?

ここでは、発達障害の方が取得できる障害者手帳の、申請から取得までの流れを見ていきましょう。

精神障害者保健福祉手帳の流れ

発達障害のある方も対象となる精神障害者保健福祉手帳を取得する流れを紹介します。

 

主な流れとしては、

  • 障害福祉課や保健センターなどの窓口で申請書を取得する
  • 主治医から診断書を取得する
  • 他にも必要な書類をそろえて窓口で申請をする

となります。

 

他に必要な書類はマイナンバーカードや証明写真などです。申請した後に審査を通過すれば、2か月程度で発行されます。

自治体により一部異なる場合もありますので、申請書を取得する際に確認しておくといいでしょう。

療育手帳の流れ

知的障害のある方が申請できる療育手帳の流れは、精神障害者保健福祉手帳とは一部異なります。

 

  • 書類をそろえて障害福祉課や保健センターなどの窓口へ申請する
  • 知的障害の判定を受ける(18歳未満の方は児童相談所、18歳以上の方は知的障害者更生相談所)

という流れです。

 

療育手帳も2か月程度で発行されます。こちらも、自治体により流れが異なる場合があるため、最初に確認しておくといいでしょう。

発達障害のグレーゾーンの方が手帳を取得できなかったとき、活用できるサービスとは?

前述の通り、発達障害のグレーゾーンの方は、どうしても障害者手帳を取得できないこともあります。そのような場合でも、障害者手帳がないグレーゾーンの方も利用できる支援機関がいくつかあります。ここでは、グレーゾーンの方も利用できる仕事や生活の助けとなる支援機関を紹介します。

ハローワーク

ハローワークには発達障害のグレーゾーンの方も相談できる、障害のある方専門の窓口が設置されています。

 

窓口では障害について詳しい職員による就職相談や求人紹介、就職活動のサポートなどを実施しています。

一部のサポートには障害者手帳が必要な場合もありますが、発達障害のグレーゾーンの方も相談することで他の支援機関の紹介を受けることができるため、一度訪れてみるといいでしょう。

地域若者サポートステーション

地域若者サポートステーションとは、49歳までの現在働いていない方が利用できる支援機関です。障害のあるなしは問われないため、発達障害のグレーゾーンの方も利用可能です。

 

キャリアコンサルタントなどの専門家と面談を通して支援内容を決め、コミュニケーションやビジネスマナー、就活セミナーなどさまざまなことに取り組んでいきます。

ジョブカフェ

ジョブカフェも働くためのサポートを提供している支援機関です。障害のあるなしは関係ないため、発達障害のグレーゾーンの方も利用可能です。

 

自治体によって内容は大きく異なり、例えば東京都では「ヤング・ミドル・シニア」と年齢別に3種類にわかれています。支援内容としては、キャリアコンサルタントとの面談や働くためのノウハウが得られる各種セミナー、イベントなどの開催などがあります。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは、発達障害やグレーゾーンの方を対象とした支援機関です。

 

相談受付やアドバイス、支援機関や医療機関の紹介などを行っていて、発達障害のグレーゾーンの方も相談可能なので、生活や仕事の悩みを相談してみるといいでしょう。

保健センター

地域にある保健センターでも、障害による困りごとについての相談対応をしています。発達障害のグレーゾーンの方も相談することが可能です。

 

専門家により困っていることへの相談に対してアドバイスや他の支援機関、医療機関の紹介などを行っているため、相談を検討してみるといいでしょう。

自立訓練

自立訓練とは発達障害など障害のある方を対象に、自立した生活を実現するための相談対応や各種訓練などのサポートを行っている支援機関です。

 

エンラボカレッジでは自立訓練の事業所を運営しており、発達障害や発達障害のグレーゾーンの方も多く利用しています。

 

支援内容は一人ひとり異なっていて、コミュニケーションに課題がある方には対人関係を中心としたプログラムの提供や、時間管理やスケジュール管理に課題がある方に講座と事業所内での実践を通じてノウハウを身につける取り組みの提供などを行っています。

 

自立訓練の利用に障害者手帳は必須ではないため、発達障害のグレーゾーンの方も利用できる可能性があります。気になる方は、自治体の障害福祉課や自立訓練の事業所に問い合わせてみるといいでしょう。

発達障害のグレーゾーンと手帳のまとめ

発達障害の傾向があっても診断には至らなかった方を、一般的に「発達障害のグレーゾーン」と呼んでいます。

 

発達障害のグレーゾーンと聞くと症状が軽いと思われがちですが、グレーゾーンの方は診断基準を満たさないだけで困りごとは発達障害のある方と同様多くあります。

 

また、診断がないことで理解が得られにくかったり、支援が制限されることもグレーゾーンの方の特徴といえます。そのため、困りごとが続いてうつ病などの二次障害にいたる可能性もあります。

 

支援の中で障害者手帳の取得を考えている方もいると思います。発達障害のグレーゾーンの方は基本的には取得できませんが、二次障害や知的障害が併存している場合には取得ができることもあります。

 

障害者手帳を取得できなくても、発達障害のグレーゾーンの方が利用できる支援機関は多くあります。発達障害のグレーゾーン自身が利用できる支援を知って、困りごとを解消させていくことが大切です。

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