これって聴覚過敏?症状・原因・チェック方法や対策を解説します。

公開日:2024/03/29

日常生活や職場において、「さまざまな音が気になって集中できない」「突然音がすると驚いてしまう」「音の多い場所で気分が悪くなる」などで困っている人もいるのではないでしょうか?それはもしかしたら「聴覚過敏」の影響かもしれません。

聴覚過敏は感覚過敏の一種で、音に対する感覚が過敏なため、他の人が気に留めないような音も不快なものとして受け止めてしまう状態のことをいいます。そのため、仕事や勉強に集中できなくなったり、日常的にストレスをためやすくなったりと心身に影響が出ることも考えられます。

聴覚過敏のある方は、原因に応じた治療や気になる音に対する対策を行っていくことが、生活や仕事での困りごとを減らしていくことにもつながります。

この記事では、聴覚過敏の概要やよくある症状、原因、対策などを紹介していきます。聴覚過敏があって悩んでいる方は参考にしてみてください。

聴覚過敏とは

聴覚過敏とは、多くの人が気にならないような音に過剰に反応し、不快感や不安などを感じる状態のことを指す言葉です。レジの操作音や電車のブレーキ音、周囲のざわざわとした会話などが苦手で、日常生活や仕事で困っているという方も多くいるとされています。苦手な音は人によって異なっていることや、目に見えない感覚のため周りの人に困っていることが伝わりづらいという特徴もあります。

感覚過敏とは

聴覚過敏は「感覚過敏」の一つといわれていて、聴覚過敏の他にも目から入る情報に過敏な視覚過敏、触れる感覚に敏感な触覚過敏などの種類があります。

 

聴覚過敏をはじめとして感覚過敏は特定の感覚に過敏な状態を表す言葉で、医学的な病名ではありません。また、感覚過敏と反対に感覚鈍麻(どんま)と呼ばれる状態もあります。感覚鈍麻では、例えば皮膚に傷がついても痛みをほとんど感じないといった方がいて、感覚過敏とはまた違った困りごとが見られるという研究結果もあります。

聴覚過敏の症状

聴覚過敏の症状としては、大抵の人が我慢できる程度の音にも過剰に反応し、音が頭の中で反響したり、耳が痛くなり、頭痛などの苦痛を感じるということが挙げられます。そして聴覚過敏があることで、日常生活や仕事をしていると通常遭遇するさまざまな音によって疲労やストレスが溜まってしまい、心身の不調やコミュニケーションに影響が出ることもあると言われています。

 

聴覚過敏といっても、具体的にどのような音が苦痛と感じるかは人によって変わってきます。「高い音が苦手」という方もいれば、「突然聞こえる音に過剰に反応してしまう」という方もいて、それぞれ程度も異なっています。特定の音が苦手という方もいれば、聞こえる音全部に過敏を示すという方もいると言われています。

 

聴覚過敏のある方が苦手と感じやすい音の例。

  • 工事現場の音
  • 救急車や消防車のサイレン
  • 大勢の人の話し声
  • 赤ちゃんの泣き声
  • 食器のぶつかる音
  • 電車のブレーキ音
  • スーパーのレジの操作音
  • 掃除機やドライヤーの音
  • 突然聞こえる音

 

さらに、状況によって苦痛と感じる音も変わるといわれていて、音が長く続くことや、複数の音が混ざっている、発生源がわからないといった状況だとより感じやすいという傾向があるようです。

 

また、体調によっても聴覚過敏の程度は変わってきて、体調不良の際にはより苦痛に感じるという方が多いという調査結果も出ています。

聴覚過敏の原因

聴覚過敏の原因は一つだけでなく、耳の機能的な問題や脳機能の影響、ストレスの影響などさまざまなことが考えられています。人によって何が原因となるかは異なりますが、ここでは聴覚過敏の原因として代表的なものをいくつか紹介します。

耳の機能の問題

聴覚過敏の原因として耳の機能の問題が考えられます。人間の耳には外部から入ってきた音を調節する内耳という器官があります。普段は大きすぎる音が耳に入ったとしてもうまく調整しているのですが、メニエール病などにより内耳の働きに異常が出て、音の調節などがうまくいかないと、聴覚過敏が生じる可能性があります。

脳の機能の影響

脳機能の影響も聴覚過敏の原因の一つと言われています。生まれつきの脳機能の偏りで生じると言われる発達障害のある方の中には聴覚過敏などの感覚過敏がある方も多くいると言われています。ただ、なぜ脳機能に偏りが生じるかということはまだ判明していません。

 

また、同じ脳機能の影響として、てんかんがある方にも聴覚過敏が見られることがあると言われています。

ストレスの影響

さまざまなストレスも聴覚過敏の原因になると考えられています。大きなストレスを感じると神経が過敏になることがあり、普段は気にならない音でも不快感を伴って聞こえる聴覚過敏と同じような状態になることがあります。

また、もともと聴覚過敏がある方もストレスや体調不良が重なるとより不快な音として感じるということもよくあると言われています。

聴覚過敏のチェック方法はある?

聴覚過敏は見た目にはわかりづらいため、自身や周りの人も気づかないということもよくあると言われています。ここでは簡単なチェック方法を載せておきますので、自身が「聴覚過敏かもしれない」と感じている方はご参考にしてみてください。

 

当てはまる項目が多いと思ったら、この後紹介する支援機関や病院などに相談してみましょう。より詳しいことがつかめるほか、対処法も見つかるかもしれません。

 


聴覚過敏のチェック項目

  • 特定の音に不快感を感じる
  • 他の人は気にしていない音でも苦痛を感じる
  • 電車内や駅などの雑音が不快に感じる
  • 苦手な音があると仕事に集中できなくなる
  • 予期しない音が聞こえると不安が高まる
  • 冷蔵庫など家電の音も気になってしまう
  • ドライヤーや掃除機など大きな音を出す家電が苦手
  • 食器同士がカチカチ鳴る音が不快に感じる
  • スーパーのカートやエスカレーターの音が気になり買い物に集中できない
  • 人混みの中にいるとひどく疲れる
  • 子どものころ運動会のピストルの音が不快だった
  • 赤ちゃんの泣き声など高い音が苦痛に感じる

 

聴覚過敏は周りの人と比較することが難しいため、上に挙げた項目に当てはまり生活で困っているという方は早めに相談や受診も選択肢として考えてみるといいでしょう。

聴覚過敏と発達障害の関係は?

「聴覚過敏は発達障害のある方に多い」といったことを聞いたことがある方もいるかもしれません。ここでは聴覚過敏と発達障害の関係について紹介します。

 

発達障害の特性の中には、聴覚過敏のある方も多く見られます。発達障害の特性の中に感覚過敏があり、視覚や聴覚、触覚などの感覚に過剰に反応する場合があります。

 

また、発達障害の中でも自閉スペクトラム症(ASD)のある方に聴覚過敏などの感覚過敏が多く見られると言われています。

 

このように発達障害のある方で聴覚過敏もあるという方は多くいますが、聴覚過敏があるからといって発達障害があると言い切ることはできません。耳鼻科などを受診しても聴覚過敏の原因が分からなかった時に、発達障害のことも考えてみるといいでしょう。

 

発達障害もあるとわかった場合は、病院や支援機関と協力し聴覚過敏だけでなく自身の特性を把握して自分に合った対策を取っていくといいでしょう。

 

関連ページ:大人の発達障害?特徴や原因・診断・治療法・病院の探し方・相談先を紹介します。

聴覚過敏の治療方法

聴覚過敏の原因は複数のことが考えられるため、治療方法もそれぞれ異なっています。

耳の機能の問題

まずは聴覚過敏の原因が耳の機能の問題の場合は耳鼻科を受診するといいでしょう。

耳鼻科で検査を行ってメニエール病など特定の疾患によるものの場合は、その疾患の治療を行っていくことになります。治療自体はそれぞれの疾患に合わせて薬物療法や手術などが行われます。詳細は受診先で確認してみるといいでしょう。

脳の機能の影響

発達障害やてんかんなどが原因で聴覚過敏が生じている場合は、精神科や心療内科を受診するといいでしょう。

この場合も障害などに合わせて治療を行っていきます。ただ、発達障害は生まれつきの脳機能の偏りが原因と言われており、根本的な治療方法は現在のところありません。そのため、薬物療法の他にも聴覚過敏対策のための環境調整や自分に合った対策グッズの入手など、さまざまな方法を使って聴覚過敏の困りごとを減らしていく対策を講じていきます。

 

発達障害のある方は精神科などの他にも、発達障害外来のある総合病院などでも治療が行えることがあります。

ストレスの影響

ストレスの影響で聴覚過敏が表れている場合も、精神科や心療内科を受診するといいでしょう。

 

聴覚過敏以外にも不眠や不安感などの症状が表れている場合は、そういった症状に合わせた薬物療法を行っていくことがあります。また、カウンセリングや生活リズムを整えるなどストレスへの対処法を教えてもらえることもあります。

聴覚過敏の対策

ここでは具体的に聴覚過敏への対策をいくつか紹介します。自分でできる方法もあれば、周りに協力してもらう方法もありますので、聴覚過敏で悩んでいる方は一つのヒントとしてみてください。

イヤーマフなどの聴覚過敏対策ツールを使用する

自分でできる聴覚過敏の対策として、聴覚過敏対策ツール(グッズともいう)を使用する方法があります。

 

聴覚過敏対策ツールには代表的なものとして「イヤーマフ」があります。ヘッドホンのように耳にかけるツールで、周囲の音を軽減する効果があります。他にも、「ノイズキャンセリング」「耳栓」などもよく使われています。

 

また、直接音を減らすわけではありませんが、自分にとって心地よいと感じるもの(手触りの良いハンカチやクッション、アロマなど)を持っているという方もいます。何か不快な音があったときに、そういったものに触れることで少し気分が落ち着く効果があるとのことです。

 

こういったツールはインターネットで「聴覚過敏グッズ」などと検索するとたくさん出てきます。効果には個人差がありますので、いろいろと試してみるといいでしょう。

苦手な音を減らす工夫をする

次に苦手な音を減らす工夫について紹介します。

 

これは自分でコントロールできる範囲になりますが、例えばテレビや映画を見ているときも音を小さくするか消音にし、字幕を表示させるといった方法です。

 

他にも、家の中の電子製品の音を小さくしたり消したりすることや、家具の移動する音が気になる場合は、家具の足に布を巻いて音を軽減させる対策などがあります。

 

また、外に出かける際にもスーパーが混んでいない時間に買い物をするなど、多くの音を聞かないように工夫している方もいます

聴覚過敏用保護用シンボルマークをつける

聴覚過敏は周囲の人からは気づかれにくいため、聴覚過敏があることを知らせるマークをつけることも対策としてあります。

 

今回紹介するマークは民間のもので、他にもいくつかバリエーションがあります。いずれも聴覚過敏があることや、音から耳を守るためにグッズを身につけていることを知らせる役目があります。

 

音楽を聴くヘッドフォンとイヤーマフが間違えられないようになったり、後ろからいきなり声を掛けられることが少なくなるなどの効果があると言われています。

 

基本的にインターネットなどで無償で配布されていますので、入手してみてはいかがでしょうか?

聴覚過敏保護用シンボルマーク

参考ページ:「株式会社 石井マーク「聴覚過敏保護用シンボルマーク」 無償公開データ

 

音が聞こえづらい場所に変えてもらう

ここからは周りの人からも協力してもらう方法をいくつか紹介します。

まずは、会社や学校で人の動きが激しい場所など常に大きな音がなっている席にいる場合は、奥の方の比較的音が聞こえづらい席に変えてもらうという方法があります。

 

また、席の移動が難しい場合は、会議室など静かな場所が空いている場合は使わせてもらうといった方もいます。

 

先ほど紹介したイヤーマフなども職場などによっては許可が必要な場合がありますので、あらかじめ聴覚過敏があることを伝えて協力してもらうといいでしょう。

視覚的な方法で用件を伝えてもらう

急に声を掛けられると過敏に反応してしまう場合には、仕事の指示や用件はメールなど視覚的な方法で伝えてもらうように協力してもらうという方法もあります。

 

あるいは作業の手順が決まっている仕事であれば、自分用にマニュアルを作らせてもらうということも方法の一つです。

クールダウンのスペースを使わせてもらう

さまざまな対策や協力を得ても聴覚過敏によって体調が悪くなることもあると思います。そういった時のために、職場などで静かにクールダウンできるスペースを確保してもらうという方もいます。

 

もともとある医務室を使わせてもらうことや、空いている会議室を使わせてもらうなど状況によって方法は異なりますが、静かな空間で落ち着くまで休める状況があると安心できるでしょう。急に使うのは難しいこともあるので、あらかじめ聴覚過敏があることや静かな場所にいれば落ち着くことを上司や人事部などに伝えておくようにしましょう。

 

また、上司などに相談がしづらく、社内にメンタルヘルス窓口や産業医などの相談できる場所がある場合は、そちらに相談してみることも方法としてあります。

 

そういった窓口がない場合は外部にも相談窓口がありますので、活用してみてはいかがでしょうか。

 

参考ページ:厚生労働省 こころの耳「働く人の「こころの耳電話相談」

聴覚過敏 まとめ

聴覚過敏は多くの方は気にしないような音でも、不快に感じて集中力が低下したり心身に不調が出たりすることもある状態のことです。

 

聴覚過敏があることで、日常生活や職場では「些細な音が気になって仕事に集中できない」「急に声を掛けられると混乱してしまう」「客先などで人がたくさんいるとひどく疲れてしまう」などの困りごとが考えられます。

 

聴覚過敏の原因は耳や脳機能の影響や、ストレスなど多くのことが考えられます。また、原因によって受診先や治療方法も異なってきます。発達障害が関わっていることも考えられるため、耳鼻科を受診しても原因がわからない場合は精神科や心療内科の受診も視野に入れて見るといいでしょう。

 

日常的に聴覚過敏がある場合は治療を行うとともに、聴覚過敏の困りごとを減らしていくための対策を行うようにしましょう。聴覚過敏の対策としては、イヤーマフなどの音を減らすツールの使用や、席の変更など自分でできること、周りに協力してもらうことなどがあります。

 

対策が思いつかない、周りにどうお願いしていいかわからないという場合は、支援機関を頼ってみるのも一つの方法です。

エンラボ カレッジにご相談ください

エンラボ カレッジは、自立訓練(生活訓練)事業所で、発達障害、聴覚過敏がある方などが生活するうえでの困りごとを解消するためのサポートを行っています

 

聴覚過敏がある方には、アクティビティという感覚のプログラムや実践の場でご自身の苦手な音、場面や状況をスタッフと一緒に整理し、他の利用者の方の意見も参考に自分に合った対策や対処法などを見つけていきます。

 

席の移動や、聴覚過敏対策グッズ、伝え方を一緒に考えるなど、事業所内で色々な方法を試すことができ、これから働きたいという方も将来に備えた対策を考えることができます

 

また、聴覚過敏以外にも、対人関係が苦手、体調が安定しないなど、生活や仕事をする上での困りごとに対し、一人ひとりご自身の特徴に合わせた取り組みをサポートしていきます

 

エンラボ カレッジでは無料の相談も随時受け付けています。「聴覚過敏で困っている」「なんとか対策したい」など困りごとがある方は一度お問い合わせください。

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