知的障害の方のコミュニケーション|障害特性・困りごと・活用できる支援機関を紹介します
公開日:2024/04/11
知的障害のある方で生活や仕事において、コミュニケーションがうまくいかず困っている方もいるのではないでしょうか?
例えば仕事では「上司の指示がよくわからない」「漢字が多くてマニュアルが読めない」「自分の気持ちを言葉に出来ない」などの困りごとをよく耳にします。
この記事では、知的障害のある方の特性やコミュニケーションで困ること、周り人の接し方の例、活用できる支援機関を紹介します。
知的障害とは
知的障害とは知的機能と生活への適応能力の障害が基本的に18歳未満から見られて、仕事や対人関係、日常生活などで困りごとが現れる障害のことです。知的障害は程度によって軽度・中程度・重度・最重度という4つの区分に分けられていて、言語能力や記憶力、判断力、自己管理などの場面で困りごとを抱えやすいと言われています。知的障害のある方は程度や周りの環境などにより子どものころは困りごとが表面化せずに、大人になって仕事でのコミュニケーションのつまづきなどで判明することもあります。
知的障害について詳しく知りたい方は以下の記事もご覧ください。
※)なお、「知的障害」は主に福祉や行政の場で使われる名称で、医学的には「精神遅滞」や「知的能力障害」などの名称が使われています。ただ、現在では「知的障害」の名称が一般的にも広く使われているため、この記事でも知的障害と表記しております。
知的障害とは?原因や発達障害との違い、種類・診断基準などを解説します。
知的障害の方の障害特性
知的障害の障害特性としては、言葉や文字の理解、記憶力、判断力、自己管理などへの苦手さが挙げられます。それぞれ詳しく紹介します。
言葉や文字の理解
知的障害のある方は仕事の指示などで難しい言い回しで伝えられると理解できないことがあります。また、早口で言われたり、易しい言葉でも情報量が多かったりするときも理解が追いつかない場合があります。
記憶力
知的障害のある方は物事を記憶しておくことが苦手な場合が多いと言われています。このことにより職場では、なかなか仕事を覚えることができなかったり、一度仕事のやり方を覚えても週末を挟むと忘れてしまう、3つの仕事の指示を受けていたのに1つだけをしてあとは忘れてしまうといった困りごとが考えられます。
判断力
知的障害のある方は突発的な出来事などに遭遇した時に、どう判断したらいいかわからないという場合があります。会社に出勤するときにいつも乗っている電車が遅延していると、他のルートで向かうことが難しく遅刻してしまうといったことが考えられます。
自己管理
知的障害のある方は自己管理が苦手な方もいると言われています。自己管理とは、体調管理、金銭管理、時間や予定の管理などが当てはまります。仕事においては勤務時間に遅刻することや、提出物の期限が守れないなどの困りごとが考えられます。
知的障害の方がコミュニケーション面でよくある困りごと
知的障害のある方は特性と環境がうまく合わないと、様々な困りごとが現れる場合があります。その中でもコミュニケーション方法で困っているという方も多いと言われています。
ここでは、知的障害のある方がコミュニケーション方法でよくある困りごとと対処法の事例を紹介します。
難しい表現の理解が苦手
知的障害のある方は仕事の指示などで、専門用語や難しい言い回しがあると理解が難しく、うまく仕事に取り組めないという困りごとがあります。
この場合は、写真やイラストなどを使って説明をお願いする方法や、言葉だけでなく実際に仕事をしている様子を見せてもらうなどの対処法があります。
漢字の読み書きがうまくいかない
知的障害のある方は漢字の読み書きが苦手という方も少なくありません。仕事でメールやチャットなど文字でのコミュニケーションを行う中でうまく内容を読み取れないなどといった困りごとがあります。対処法としては、音声読み上げ音声ソフトを使用することや漢字を使わずに平仮名を使ってもらう、口頭でも伝えてもらうなどの協力をお願いする方法があります。
「あれ」「これ」など指示語がわからな
知的障害のある方は指示語を使って指示を受けたときに、うまく意味を掴めない場合があると言われています。「昨日のアレどうなった?」「これと同じようにやっておいて」など指示語が多いコミュニケーション方法だと、指示語が指すものがわからずに困ってしまうということがあります。対処法として、具体的に指示してもらうようお願いすることや、分からないときに「アレとは何のことですか」と確認すると良いでしょう。
抽象的な指示の判断が難しい
知的障害のある方は抽象的な言葉の理解が苦手な方も多いと言われています。「もっとゆっくり」「もう少し早めに」などの言葉が多いコミュニケーション方法だと、具体的な程度をイメージすることができずに困るということもあります。こちらも、具体的な指示をお願いすることや、「何時何分までですか?」とこちらから確認するなどの対処方法があります。
相手の気持ちを考えることが難しい
知的障害のある方は相手の気持ちを考えたり、相手の立場になって考えることに苦手さがあると言われています。そのため、相手が気にしていることをつい口にしてしまって関係がぎくしゃくしてしまうということも考えられます。対処法として、「口に出す前に一度頭の中で言ってみる」ことや、あらかじめ「失礼なことを話した場合は教えてください」と伝えておく方法があります。
知的障害の方がコミュニケーション面でよくある困りごとや対処法を紹介しましたが、
このような対処法を一人で実行するのは難しいと感じる方もいるかもしれません。そういった場合は、支援機関などを利用し、スタッフと一緒に対策を考えていくことも選択肢として考えてみても良いでしょう。
後ほど、知的障害の方が相談できる支援機関を紹介します。
知的障害の方とコミュニケーションで意識したいこと
ここでは、知的障害のある方が周りにいる方がコミュニケーション方法で意識したいポイントを紹介します。知的障害といっても全員に同じコミュニケーション方法が適しているわけではありませんが、一つの参考にしてみてください。
障害特性を知る
まずは知的障害の特性を知ることから始めると良いでしょう。知的障害のある方とコミュニケーションがうまくいかなかったときは、何か理由があります。知的障害の特性を知り、本人がコミュニケーションのどのポイントでつまづいているのかを把握することで対処法が浮かびやすくなることが考えられます。
分かりやすい言葉で一つずつ伝える
コミュニケーションの中でも難しい言葉が分からずに困っているという場合には、日常的に使う言葉を用いたコミュニケーション方法を考えていけると良いでしょう。また、伝えるときには一度に複数のことを言うのではなく一つひとつ区切って伝えるようにするとコミュニケーションが円滑になると考えられます。
漢字にフリガナを振る
コミュニケーションの中で漢字の読みでつまづいている方には、フリガナを振るという対応も有効だと言われています。社内文書やマニュアルにあらかじめフリガナを振っておく方法を取ることで本人も読みやすくなるでしょう。また、誰かが代わりに読み上げることや、音声読み上げソフトを使うなど音で伝えるというコミュニケーション方法もあります。
イラストや写真を使う
知的障害のある方の中には、言葉ではなく視覚的なものの方が理解しやすいという方もいます。そのため、イラストなどを使ったコミュニケーション方法も有効だと言われています。業務のマニュアルにイラストや写真などを加えることで本人も理解しやすくなるかもしれません。
落ち着いて話せる状況を作る
知的障害のある方は自分の気持ちを言葉にすることが苦手な方もいます。そのため、話を聞くときにはゆっくりと時間を取って、焦らせたりせずに知的障害のある方が落ち着いて話せるようにすると良いでしょう。個室を使って周りの人がいない状態で話すことも、落ち着いて話してもらう方法の一つです。
知的障害の方が活用できる支援機関
ここでは知的障害のある大人が生活や仕事で活用できる支援機関を紹介します。コミュニケーション方法についてのアドバイスを受けることができる場合もあるので、コミュニケーションがうまくいかないという方は相談してみるといいでしょう。
知的障害者相談員
知的障害者相談員とは自治体より委託を受けた民間の相談者のことです。主に知的障害のある方の保護者が担当しています。
知的障害のある方の生活やコミュニケーション方法、仕事の困りごとなどについて相談することができ、関係機関との連携などのサポートを行っています。知的障害者相談員への相談を希望する方は、自治体の障害福祉窓口へお問い合わせください。
知的障害者更生相談所
知的障害者更生相談所とは、18歳以上の知的障害について専門的な知識などが必要なことに対して相談を受け付けている支援機関です。
18歳以上の大人の知的障害の判定や療育手帳の取得や各種手当についての業務も行っています。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは知的障害など障害などのある方の生活や仕事について相談できる支援機関です。
相談に対してアドバイスを行っている他に、場所によっては訓練も行っていて、例えばコミュニケーション方法で悩んでいる方には、講座を通して自分に合ったコミュニケーション方法を身につけるサポートなどを提供しています。
自立訓練(生活訓練)
自立訓練(生活訓練)とは、知的障害などの障害のある方を対象とした支援機関で、自立した生活を目指して必要なスキルを訓練する場所です。
コミュニケーション方法や自己管理などのプログラムを行う事業所もあります。
自立訓練(生活訓練)事業所のエンラボカレッジでは、コミュニケーション方法をはじめとしてその方が困っていることや今後の希望、現状を聞き取り整理したうえで計画を作成し支援を提供しています。
コミュニケーション方法ひとつをとっても、一人ひとり得意なこと苦手なことは違っています。
自己分析やコミュニケーションプログラム、また、日々の実践を通してその方に合ったコミュニケーション方法を一緒に探していきます。
今後就職を目指している方には、職場でのコミュニケーション方法や自分に合った業務の進め方などを見つけていくサポートも行っています。
エンラボカレッジでは無料の相談を受付中です。「人とうまく関係が築けない」「コミュニケーション方法で悩んでいる」といった方はぜひ一度ご相談ください。
知的障害 コミュニケーション まとめ
知的障害は知的機能と生活能力に障害があり、生活や仕事などで困りごとが生じることのある障害のことです。知的障害は子どものころには気づかれず、大人になってから判明することも珍しくありません。
知的障害のある方は人とのコミュニケーション方法で悩むことが多いと言われています。
知的障害のある方が周りとうまくコミュニケーションを取るには特性を知って、「易しい言葉で一つずつ伝える」「イラストを使う」「フリガナを振る」などコミュニケーション方法を工夫していくのが効果的と言われています。
知的障害といっても全員同じコミュニケーション方法が合っているわけではないため、一人ひとりの得意や苦手に合わせてコミュニケーション方法を工夫していけると良いでしょう。
知的障害のある方がコミュニケーション方法について相談できる支援機関もありますので、コミュニケーション方法について悩みがある方は一度相談してみても良いでしょう。