就労移行支援と就労継続支援(A型・B型)の違いとは?

公開日:2024/04/27

「障害があり就職に悩んでいる」という方の中には、「就労移行支援」と「就労継続支援」という支援機関を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか?

就労移行支援も就労継続支援もどちらも障害のある方の就職をサポートする支援制度です。ただ、名称が似ていることからも「どちらを選べばいいかわからない」という声もよく聞きます。

今回は、就労移行支援と就労継続支援にはどんな違いがあるのか、就労継続支援のA型とB型の違い、選ぶためのポイントなどを紹介します。

就労移行支援・就労継続支援の違い

就労移行支援と就労継続支援の大きな違いとして、事業所で働きながら支援を受けるかどうかという点があります。就労移行支援は、一般企業へ就職するために必要な就労スキルを身につける訓練や就職活動などを行う場所です。一方の就労継続支援は、事業所内で生産活動など就労を行い工賃や給料などの報酬を受け取りながら、就労スキルを身につける訓練を行う場所です。

就労継続支援には2種類ある

就労継続支援は働きながら訓練を行う場所と説明しましたが、雇用契約の有無によってA型とB型の2種類に分かれています。

 

就労継続支援A型は利用者と事業所が雇用契約を結んだうえで利用します。比較的労働時間が長く、月収も高い傾向があります。

就労継続支援B型は利用者と事業所は雇用契約を結ばずに利用します。A型と比べると労働時間は短く、自分のペースで通いやすいという傾向があります。

 

一部に工賃の発生する就労移行支援や、労働契約を結ばずに利用する就労継続支援A型などの例外もありますが、大きく分けると訓練や就職活動に集中するのが「就労移行支援」で、働きながら利用するのが「就労継続支援」という違いがあると言えます。

サービスの共通点

就労移行支援と就労継続支援はいずれも「障害福祉サービス」の中の一つです。

 

障害福祉サービスとは、障害のある方に対して生活や介護、就労などの面でさまざまな支援を行っているサービスのことです。その中で就労移行支援や就労継続支援などは「就労系サービス」に位置づけられています。

 

障害福祉サービスは、社会福祉法人、NPO法人や株式会社などの民間企業などが運営する事業所があり、利用したい事業所を選んだうえでお住いの自治体に申請することで利用することができます。詳しい手続き内容は、利用したい就労移行支援などの事業所や、自治体の障害福祉窓口などにご相談ください。

就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型の違い

就労移行支援、就労継続支援A型、就労継続支援B型の大まかな違いや共通点を紹介してきましたが、ここではより具体的に違いを紹介します。

 

ここでは厚生労働省の「障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス」という資料を基に紹介していきます。

就労移行支援 就労継続支援

参照:厚生労働省「障害者総合支援法における就労系障害福祉サービス」

※平均月収は令和3年度の金額

目的

まずは目的の違いについて紹介します。就労移行支援は一般企業への就職、就労継続支援は働く機会の提供が主な目的となっています。

就労移行支援

一般企業への就職に必要なスキル取得の訓練や就職活動のサポートを提供する。また、就職後も働き続けるための定着支援を提供している。

就労継続支援A型

利用者と雇用契約を結んだうえで、生産活動などの就労の提供と働くための知識やスキル取得のためのサポートを提供している。

就労継続支援B型

利用者と雇用契約を結ばずに、生産活動など就労の提供と働くための知識やスキル取得のためのサポートを提供している。

対象者

次に対象者です。就労移行支援と就労継続支援A型は年齢制限があります。また、実際に利用が認められるかは、自治体へ申請後に審査を受ける必要があります。

就労移行支援

一般企業への就職を希望している原則65歳未満の方。一定条件を満たせば65歳以上も利用可能。

就労継続支援A型

現時点で就労移行の利用や一般企業への就職が難しい、原則65歳未満の方。一定条件を満たせば65歳以上も利用可能。

就労継続支援B型

現時点で就労移行の利用や一般企業への就職が難しい方。年齢制限はなし。

利用料

利用料の考え方はいずれも一緒です。厚生労働省の定める基準に従って原則は1割負担で、世帯所得によって上限があり、負担0円で利用できる場合もあります。

就労移行支援

原則1割負担(世帯所得により上限あり)

就労継続支援A型

原則1割負担(世帯所得により上限あり)

就労継続支援B型

原則1割負担(世帯所得により上限あり)

 

具体的な仕組みや世帯所得の数値などは以下の厚生労働省のサイトに詳しく掲載されていますので、参考にしてみてください。

参考:厚生労働省「障害者の利用者負担」

利用期間

利用期間は就労移行支援のみ原則2年間と決まっています。就労継続支援は特に定められていません。なお、就労移行支援と就労継続支援A型は対象が65歳未満となっておりますが、65歳未満からサービスを利用していた方で一定の要件を満たせば、引き続き利用することが可能です。

就労移行支援

原則2年間(状況によって最大1年間の延長あり)

就労継続支援A型

定めなし

就労継続支援B型

定めなし

賃金・平均月収

就労継続支援では働く機会として制作物の販売やクリーニングなどの活動を行い、それらの労働に対する報酬を毎月受け取ります。一方の就労移行支援は就職するためのスキル取得や就職活動を目的とした場所であり、ほとんどの場合報酬を受け取る活動は行っておりません。

就労移行支援

原則無し(一部の事業所で工賃などが生じる活動をする場合もあり)

就労継続支援A型

81,645円※

就労継続支援B型

16,507円※

 

※平均月収は令和3年度の金額

就労移行支援とは

就労移行支援とは障害のある方を対象として、一般企業へ就職するための知識やスキルを取得するためのトレーニングや各種就職活動のサポートなどを提供している事業所です。

 

就労移行支援では働くことがゴールではなく、就職後も定着支援として働く中で困ったことの相談対応や、状況によっては利用者と企業の間に入って調整なども行っています。

 

就労移行支援の事業所は令和3年度時点で全国に3,353か所あり、それぞれにサポート内容やプログラムなどに違いがありますので、気になる事業所があれば見学などをして自分に合っているか確かめてみるといいでしょう。

 

就労移行支援についての詳細は以下の記事をご覧ください。

 

関連ページ:就労移行支援(就労支援)ってどんなところ?対象・利用料・内容・就職率に関して解説します。

就労継続支援とは

就労継続支援とは、現時点で一般企業への就職が難しい方を対象として、生産活動などの就労の機会や働くための知識・スキル取得のためのサポートをしている事業所です。

 

雇用契約を結んで利用する就労継続支援A型と、雇用契約を結ばずに利用する就労継続支援B型の2種類があり、両方合わせて令和3年時点で約18,000か所の事業所があります。

 

就労継続支援についての詳細は以下の記事をご覧ください。

 

関連ページ:就労継続支援とは?A型・B型・就労移行との違いを詳しく解説します。

就労継続支援A型とは

就労継続支援A型とは、一般企業への就職が現時点では難しい方を対象として、利用者と事業所が雇用契約を結んだうえで、就労の機会と働くための知識・スキル取得のサポートをしている事業所のことです。

 

就労継続支援A型は令和3年度時点で全国4,130か所あり、事業所によって業務内容は異なります。

主な業務内容としては、

  • データ入力などパソコンを使った業務
  • Webサイトやチラシ作成
  • パンなどの製造やカフェ運営
  • 清掃業務
  • 農作物の収穫・販売
  • クリーニングなど

などがあります。

 

就労継続支援A型についての詳細は以下の記事をご覧ください。

 

関連ページ:就労継続支援A型とは?どんな人に向いている?仕事内容・給料・利用料など紹介します。

就労継続支援B型とは

就労継続支援B型とは、一般企業への就職が現時点では難しい方を対象として、利用者と雇用契約を結ばずに、就労の機会と働くための知識・スキル取得のサポートをしている事業所のことです。

 

雇用契約の有無がA型との大きな違いです。また、それによりある程度体調などに合わせて自分のペースで通いやすいという傾向があります。また、年齢制限がないことも他の就労系サービスと比べて特徴的と言えるでしょう。

 

就労継続支援B型は令和3年時点で全国14,407か所あり、こちらも事業所ごとに仕事の内容などが異なっています。

 

主な仕事の内容としては、

  • パンやお菓子の製造・販売
  • 農作業
  • 清掃作業
  • 組み立てや梱包
  • Webサイト作成などIT系

などがあります。

 

就労継続支援B型についての詳細は以下の記事をご覧ください。

 

関連ページ:就労継続支援B型とは?どんな人が利用できるの?仕事内容・給料(工賃)・利用料などを詳しく解説します。

就労移行支援・就労継続支援に向いている人

ここまでそれぞれのサービスについて紹介してきましたが、「自分には何があっているのだろう」「向いているサービスはどれ?」と迷っている方もいると思います。ここでは、サービスの特徴をもとに、どのような人に向いているかを紹介します。一つの参考としてみてください。

就労移行支援に向いている人

就労移行支援の特徴としては、就職に向けたスキル獲得や就職活動に集中できる点が挙げられます。また、2年間という期間の区切りがあるのも特徴です。

 

そのため、就労移行支援はある程度体調が整っており、決められた期間の中で就職までの活動ができそうな方に向いていると言えるでしょう。

就労継続支援に向いている人

就労継続支援の特徴としては、働きながら利用ができ、毎月報酬を受け取ることができる点が挙げられます。また、就労移行支援と違い、利用期間に定めがないことも特徴です。

 

そのため、体調やスキルなどに不安がありすぐに就職するのは難しいと感じているものの、働く経験を積んでいきたいという方や、報酬を受け取りながら訓練を行っていきたいという方に向いていると言えるでしょう。

 

その中でも、A型の場合は雇用契約を結ぶために契約に沿った活動をする必要があり、B型の場合はA型と比較して年齢制限がないことや自分のペースで通いやすいという特徴があります。自身の現在の体調やスキルなども考慮して選んでいけるといいでしょう。

自立訓練という選択肢も

就労移行支援と就労継続支援について見てきて、働くにはまだ不安があるという方もいるでしょう。そういった方には「自立訓練」が向いているかもしれません。

 

自立訓練も障害福祉サービスの中の一つで、障害のある方が自立した生活を営めるように訓練や困ったことの相談対応などのサポートをしている支援機関です。

 

自立訓練(生活訓練)では体調安定や、日常生活での家事や金銭管理、対人関係などの困りごとに対して、解消するためのさまざまな訓練などを行っていきます。

 

自立訓練(生活訓練)事業所のエンラボカレッジでは、利用者一人ひとりの障害特性や困りごと、希望する生活などをうかがい状況を整理し、計画を作成してご本人に合った支援を提供しています。

また、今後就職を考えている方には、どのような就職を望むのか、どのような制度を使っていくのかなども一緒に整理し取り組んでいきます。

 

エンラボカレッジでは、無料の相談も随時受付中です。「就職よりまずは体調を安定させたい」「自分の障害を理解してから就職したい」など今すぐに働くことや就職活動は早いと感じている方は、ぜひ一度自立訓練にご相談ください。

就労移行支援・就労継続支援の違い まとめ

就労移行支援と就労継続支援は同じ障害福祉サービスの就労系サービスですが、目的や支援内容、報酬などの面で違いがあります。

 

就職のための訓練や就職活動がしたい方は就労移行支援、支援を受けながら働いてスキルなどを獲得していきたい方は就労継続支援など、自分の状態も考慮したうえでマッチしたサービスを選んでいくといいでしょう。

 

また、働くことや就職活動はまだ早く、今は生活や体調を安定させたいという方には、自立訓練という選択肢もあります。それぞれ相談や見学もできますので、迷ったときは気になる事業所に問い合わせてみるといいでしょう。

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