知的障害と障害年金|対象・等級・申請の考え方を解説します

更新日:2026/07/02

知的障害のあるお子さんやご家族の将来を考えるなかで、「生活の安定のために障害年金を受け取れるのだろうか」と情報を集め始める方は少なくありません。

障害年金は、知的障害のある方も対象となり得る公的年金です。知的障害は原則として生まれつきのものとして扱われるため、ほかの病気やけがとは申請の考え方や要件が少し異なります。

一方で、「軽度の場合は対象になるのか」「IQの数値だけで決まるのか」「一度受給できても更新の際に対象外になることはないのか」など、個別の状況に応じた疑問や不安を抱くことも多いかと思います。

この記事では、知的障害のある方が障害年金の対象となる基準や等級の判断、申請の手続きについて、公的な情報をもとに整理します。制度を初めて調べるご家族が、今後の方向性を検討する際の参考となるよう分かりやすく解説します。

知的障害は「20歳前の障害基礎年金」として扱われる

知的障害のある方の障害年金には、ほかの傷病による障害年金とは異なるいくつかの特徴があります。

保険料の納付要件は問われない

障害年金を受給するためには、通常、初診日の前日における保険料の納付状況(納付要件)が問われます。

しかし、知的障害は、原則として生まれつき(先天的)のものとして扱われるため、本人がまだ年金制度に加入していない20歳前に原因(初診日)があるとみなされます。

このため、知的障害のある方は「20歳前の傷病による障害基礎年金」の対象となり、保険料の納付要件は問われません。過去に保険料の未納期間がある場合でも、この要件が原因で不支給となることはありません。

請求できるのは原則20歳から

20歳前に障害の状態にある場合、障害認定日は原則として「20歳に達した日(20歳の誕生日の前日)」と定められています。

そのため、障害年金の請求手続きは原則として20歳になってから行うことになります。手続きをスムーズに進めるために、20歳になる数ヶ月前から書類の準備を始め、誕生日を迎えてから速やかに申請を行うケースも一般的です。

なお、20歳前の障害基礎年金には、本人の前年の所得による支給制限が設けられている点に留意が必要です。

国の拠出金(税金)を財源としている側面があるため、本人の所得が一定額を超える年は、年金の一部または全額が支給停止となる場合があります。

この所得制限は毎年見直され、扶養親族の有無などによっても基準が変わることがあります。

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等級と認定の考え方

知的障害のある方が請求できるのは、障害基礎年金の1級または2級です。

等級の決定にあたっては、日常生活にどの程度の制限や支障があるかをもとに総合的に判断されます。

IQの数値だけで決まるわけではない

知的障害の障害年金というと、IQ(知能指数)の数値だけで機械的に等級が決まると思われがちです。

しかし、実際の認定では、知能指数だけに着目するのではなく、日常生活のさまざまな場面でどの程度の援助や配慮を必要としているかを含めて、総合的に判断が行われます。

これは、精神障害や知的障害の認定に地域差が生じないよう国が定めた「精神の障害に係る等級判定ガイドライン」にもとづく考え方です。

医師が作成する診断書に記載される「日常生活能力の判定(適切な食事、身のまわりの清潔保持、金銭管理と買い物など7項目)」と「日常生活能力の程度(5段階)」のかけ合わせをもとに、等級の目安が示されます。

なお、療育手帳の判定が中度以上(おおむねIQ50以下)の場合、日常生活の多くの場面で援助が必要となるケースが多いため、1級または2級に該当する可能性が高くなる傾向はありますが、最終的な受給の可否はあくまで障害年金の基準に基づいて個別に審査されます。

軽度の場合の考え方

軽度の知的障害(一般的にIQが51〜70程度とされる場合など)であっても、障害年金の対象外と一概に決まっているわけではありません。

日常生活が一定程度自立して送れていると判断された場合は等級に該当しないこともありますが、数値だけで一律に不支給となるものではありません。

例えば、言葉の理解やコミュニケーション、対人関係の構築、金銭管理、不測の事態への対応などにおいて、実際には周囲の強いサポートや福祉的な援助を必要としている場合があります。

こうした日常生活や就労における実際の困難さが、医師の診断書やご家族が作成する申立書を通じて客観的に伝わることが非常に大切になります。

該当するかどうかの判断に迷う場合や、具体的な状況を踏まえた目安を知りたい場合は、年金事務所や社会保険労務士などの専門窓口に早めに相談しておくと安心です。

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申請の進め方

知的障害での障害年金の申請は、他の傷病とは異なり、「出生時からの成長や生活の状況」を詳しく伝える必要がある点に大きな特徴があります。

申請の手続きにあたっては、主に次の書類を準備します。

  • 精神の障害用の診断書(医師が作成します)
  • 病歴・就労状況等申立書(出生時から現在までの生活や成長の様子を記載します)
  • 受診状況等証明書(必要に応じて提出します)

一般的な傷病では、初診日を証明するために「受診状況等証明書」が必須となります。

しかし、知的障害は原則として生まれつきのものと扱われるため、出生時が初診日とみなされます。

そのため、療育手帳を取得した際の医療機関や、幼少期にかかりつけ医がない場合などは、受診状況等証明書の提出が不要となるケースがあります。

ただし、中途で他の精神疾患を併発した場合や個別の状況によっては提出を求められることもあるため、確認が必要です。

なかでも「病歴・就労状況等申立書」は、請求者本人やご家族が作成する重要な書類です。乳幼児期の発達の様子、小・中・高校などの学校生活、現在の日常生活や就労の状況などを時系列で記載します。

日常生活のどのような場面で、家族や周囲からどのような援助を必要としているかが具体的に伝わるよう、これまでの記録や記憶をもとに内容を整理しておくことが大切です。

書類の準備や具体的な進め方に不安がある場合は、お住まいの市区町村の年金窓口や年金事務所、または社会保険労務士などの専門家に相談しながら進めることができます。

受け取ったあとの更新について

障害年金は、一度支給が決定されたあとも、定期的に障害の状態を確認する手続き(障害状態確認届の提出)が必要となる場合があります。

障害年金の認定には、定期的な更新手続きが必要な「有期認定」と、更新手続きが不要な「永久認定」の2種類があります。
知的障害は症状が大きく変動しにくい障害であるため、永久認定となるケースもありますが、必ずしも全員が該当するわけではありません。

初めて受給が決まった際や、就労による社会適応の状況などを確認する必要があると判断された場合などは有期認定となり、1年〜5年ごとに更新の手続きを行うことになります。

更新の際には、その時点での日常生活の状況や援助の必要性を記載した診断書を改めて提出し、再審査が行われます。

更新が必要な方には、提出期限(通常は本人の誕生月の末日)の数ヶ月前に日本年金機構から「障害状態確認届(診断書形式の書類)」が届きます。案内にしたがって指定の期間内に医師に診断書を記述してもらい、提出を完了させる必要があります。

更新の時期や必要な対応については、受給決定後に届く「年金証書」などに記載されている内容を確認しておくと見通しが立ちやすくなります。

年金を受け取りながら、自立に向けて準備する

障害年金は、知的障害のある方の生活の土台を支えるための、非常に大切な公的制度です。

一方で、ご家族のなかには「年金による経済的な支えだけでなく、本人が少しずつ自立に向けて力をつけていけるような環境も整えてあげたい」と考える方も少なくありません。

経済的な安心を確保した上で、社会生活へのステップアップを目指す選択肢の一つとして、障害福祉サービスである「自立訓練(生活訓練)」の活用が挙げられます。

自立訓練(生活訓練)は、障害者総合支援法にもとづくサービスであり、地域で自立した日常生活や社会生活を営むための力を高めることを目的としています。

具体的には、生活リズムの安定や体調管理、対人コミュニケーションの練習、自己理解の深化など、一人ひとりの課題やペースに合わせたプログラムが提供されます。

このサービスは、原則として2年の利用期間が設けられており、いわば「次のステップへと進むための準備期間」として位置づけられています。

障害年金によって生活の経済的な土台を支えながら、こうした福祉サービスを活用して経験や自信を積み重ねていくことは、ご本人とご家族がこれからの将来を計画的に考えていくうえで、有効な選択肢となります。

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よくある質問

Q. 療育手帳がないと障害年金は申請できませんか?

A. 療育手帳を持っていなくても、障害年金を申請することは可能です。

療育手帳(自治体の制度)と障害年金(国の制度)は全く別の制度であるため、手帳の有無が申請の必須要件にはなりません。医師による精神の障害用の診断書や、出生時からの状況を記載した申立書があれば手続きを進めることができます。

ただし、療育手帳をお持ちの場合は、その判定区分や取得時の検査結果が障害の状態を客観的に確認するための重要な参考資料として扱われることがあります。

Q. 親が代わりに申請の手続きを行うことはできますか?

A. はい、ご本人が書類の記入や窓口への相談を行うことが難しい場合、ご家族が代理人として手続きを進めることができます。

年金事務所等の窓口で親御様が代わりに手続きを行う際は、ご本人からの委任状や、ご家族関係を確認できる書類(住民票や戸籍謄本など)の提示を求められるのが一般的です。

なお、すでに成年後見制度を利用されている場合は、成年後見人が法定代理人として手続きを行います。

Q. 働き始めると年金の支給は止まってしまいますか?

A. 働いている(就労している)ということだけを理由に、ただちに年金の支給が止まるわけではありません。

障害年金を受給しながら就労されている方は多くいらっしゃいます。

ただし、更新の際などには、どのような環境で働いているかが障害の程度を判断する要素として確認されます。

例えば、就労継続支援などの福祉的な就労か、一般企業での就労かという点や、職場の上司や同僚からどのような配慮・援助を受けているか(勤務時間の短縮、業務内容の限定など)も含めて、日常生活能力が総合的に審査されます。

そのため、就労の事実だけでなく、その働き方の実態が重視されます。

まとめ

知的障害のある方は、20歳前の傷病による障害基礎年金の対象となるため、過去の保険料の納付状況(納付要件)は問われません。

手続きの請求は、原則として20歳になってから行います。

障害年金の等級は、IQ(知能指数)の数値だけで機械的に決まるものではなく、日常生活においてどの程度の援助や配慮が必要かを含めて、総合的に判断される仕組みです。

申請にあたっては、出生時から現在にいたるまでの様子を時系列で伝える「病歴・就労状況等申立書」が非常に大切な役割を果たします。

障害年金の制度や手続きは複雑に感じられる部分も多いですが、必要な要件をひとつずつ確認していけば、受給にむけた道筋は見えてきます。

手続きの進め方や書類の書き方に分からないことがあれば、決して一人で抱え込まず、年金事務所やお住まいの市区町村の窓口、または社会保険労務士などの専門家に相談してみてください。

障害年金は、ご本人とご家族がこれからの生活を見通し、安定した未来を築くための心強い支えになり得る制度です。

経済的な基盤を整えつつ、自立訓練(生活訓練)などの福祉サービスも視野に入れながら、ご家族のペースで次の一歩を検討していただければ幸いです。

更新日:2026/07/02 公開日:2026/07/02

この記事について

監修:株式会社エンラボ 専門職チーム

(精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士 在籍)

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。等級や受給の可否は個別の状況によって判断されます。詳しくは、お住まいの自治体・年金事務所・専門の窓口にご相談ください。診断や治療に関する判断については、医療機関にご相談ください。

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