カサンドラ症候群とは?どんな症状?原因・診断テスト・なりやすい人を紹介します。

公開日:2024/03/29

パートナーや家族など普段よく接する人に自閉スペクトラム症があり、「コミュニケーションがうまくいかない」「周りに話してもわかってもらえない」と悩んで心身に不調が出ている人もいるのではないでしょうか?それはカサンドラ症候群と呼ばれる状態かもしれません。

カサンドラ症候群では、抑うつやパニックなどの精神的な症状や、不眠や頭痛などの身体的な症状が現れることがあります。対策としては、パートナーなどとコミュニケーションを円滑にするためのルール設定や、症状に対する治療などがあります。

今回はカサンドラ症候群の症状や原因、なりやすい人、診断テスト、治療法と対処法などを紹介します。

カサンドラ症候群とは?

カサンドラ症候群とは、自閉スペクトラム症のあるパートナーや家族と接することがストレスとなって、精神や身体の不調が現れている状態のことです。カサンドラ症候群自体は医学的な診断名ではなく、パートナーなどと良好な関係を築けずに心身に影響が出ている状態を示して一般的に使われている言葉です。

自閉スペクトラム症とアスペルガー症候群の関係

カサンドラ症候群を調べていると、「アスペルガー症候群のあるパートナー」といった言葉を見たことがあるかもしれません。

 

アスペルガー症候群は以前にあった診断名で、現在は自閉スペクトラム症の中の一つに位置付けられています。

 

元々カサンドラ症候群はアスペルガー症候群のある方との関係性について言及された言葉ですが、今回の記事では現在の診断名である「自閉スペクトラム症」として記載していきます。

 

関連ページ: 大人のアスペルガー症候群の特徴とは?具体的な症状や特徴・診断・チェック方法・頼れるサービスを紹介します

カサンドラ症候群はどんな症状

カサンドラ症候群では、抑うつなどの精神的な症状とともに、頭痛や不眠などの身体的な症状も現れます。どういった症状が現れるかは個人差がありますが、代表的なものを以下に紹介します。

カサンドラ症候群の精神症状

カサンドラ症候群で精神に現れる不調は、

  • パニック発作
  • 抑うつ気分
  • 無気力状態
  • 疲労感
  • 倦怠感
  • 自己評価の低下

上記のようなものがあります。

カサンドラ症候群の身体症状

次に、カサンドラ症候群で身体に現れる不調は、

  • 頭痛
  • 肩こり
  • めまい
  • 不眠
  • 体重の減少、または増加

上記のようなものです。

 

ここで紹介したのはカサンドラ症候群の代表的な症状なので、他にも心身に様々な不調が現れる場合があります。

カサンドラ症候群の原因

カサンドラ症候群の原因は大きく分けて2つあると言われています。

 

一つ目は自閉スペクトラム症のあるパートナーとの間でうまくコミュニケーションが取れないことで、ストレスをためてしまうことです。

 

自閉スペクトラム症のある方はコミュニケーションに特徴があると言われています。例えば、「人の気持ちに共感するのが苦手」「あいまいな言葉の理解が難しい」「自分で決めたルールを厳格に守る」「特定のことにこだわりが非常に強い」などがあります。

 

家庭で起きるコミュニケーションのずれとしては、パートナーに「お風呂を見てきて」と頼んだときに、文字通りお風呂を見てきただけでお湯が溢れていても止めることをしない、などがあります。他にも、パートナーが決めた手順での準備にこだわって予定に遅れてしまうなども困りごととして考えられます。

 

このようなコミュニケーションのずれは、自閉スペクトラム症の特性が関係していると知っていれば気にならないかもしれませんが、知識がない状態でそのようなやりとりが続くことでストレスをためてしまうことがあります。

 

もう一つは、そういったコミュニケーションのずれを周りに相談してもなかなか理解が得られずに「気のせいでは?」「気にし過ぎだよ」などと言われてしまい、孤立感を募らせてしまうということが挙げられます。今挙げたコミュニケーションのずれの例も、他の人に話しても些細なことと片づけられててしまうということも考えられます。

 

このようにパートナーとの関係で辛い思いをしているのに、共感を得られずさらにストレスをためていった結果、あるときカサンドラ症候群の症状となって現れてくる場合があります。

カサンドラ症候群の名前の由来

カサンドラ症候群という名称はあまりなじみがないかもしれませんが、ギリシア神話に出てくるカサンドラ(あるいはカッサンドラ)というトロイの王女の名前が由来になっています。

 

カサンドラ王女は未来を予言する能力を持っているのですが、ある時アポロン神から呪いをかけられ、その予言を誰からも信じてもらえなくなってしまいます。

 

この神話のエピソード中でカサンドラ王女が他の人に予言を信じてもらえない様子と、パートナーに自分の気持ちを理解してもらえない、周囲の人々にパートナーとのコミュニケーションの困難を相談しても取り合ってもらえない様子に共通点があることから「カサンドラ症候群」と名づけられました。

カサンドラ症候群になりやすい人はどんな人?

パートナーに自閉スペクトラム症があっても、必ずしもカサンドラ症候群の症状が現れるわけではなく、カサンドラ症候群にはなりやすい傾向があると言われています。

 

例えば、

  • まじめで几帳面
  • いい加減なことが苦手
  • 完璧主義
  • 我慢することが多い
  • 面倒見が良い

といった性格の人が比較的ストレスをためてしまい、症状が出やすいとされています。

 

といってもあくまで傾向なので、上記以外の性格の人でもカサンドラ症候群の症状が現れることはあります。

カサンドラ症候群の診断テスト

心身に辛い症状が出ていて、「もしかしたらカサンドラ症候群かも」と感じていても、なかなか判断が難しいと思います。ここでは簡単な診断テストを紹介します。

 

  • パートナーに自閉スペクトラム症によるコミュニケーションの特性がある
  • 日常的にパートナーとのコミュニケーションに困難がある
  • 日常的にパートナーの言動がストレスになっている
  • 周りに悩みを話すことができない/話しても分かってもらえないと感じる
  • そのような状況で気分の落ち込みが続いている
  • そのような状況でパニックになることがある
  • そのような状況で頭痛や不眠などの不調が続いている
  • そのような状況で自分に価値がないと感じることがある

 

こういった要素に当てはまっていると感じた場合は、専門機関などへの相談を検討してみるといいでしょう。

カサンドラ症候群の治療・対処法

カサンドラ症候群は症状が現れている場合には、まずは症状に対する治療を行います。それだけでなく、パートナーとの関係を円滑にするためのルール設定などの対処法も同時に行っていくことで、カサンドラ症候群の原因になっている状況の改善を目指していきます。ここでは、治療法と対処法それぞれについて紹介します。

治療法

カサンドラ症候群で心身に症状が現れている際には、まずはそちらの症状に対しての治療を行っていきます。

 

治療方法は現れている症状によって異なり、例えば抑うつ状態になっている場合は抗うつ薬やカウンセリングなどを行いながら症状を改善していきます。

 

また、身体症状が現れている場合にも、不眠には睡眠導入剤などそれぞれの症状に対応した薬物療法などを行っていきます。

対処法

心身の症状の治療とともに、カサンドラ症候群の原因となっているパートナーなど身近な方との関係性を改善するための対処法も作っていきます。

 

対処法として今回は、

  • パートナーに診断を強要しない
  • 自閉スペクトラム症について知る
  • お互いにルールを決める
  • リフレッシュする時間を作る

を紹介します。

 

パートナーに受診を強要しない

自閉スペクトラム症のある方は、自身では把握しておらず、職場では特に困っていないという方も少なくありません。そのため、カサンドラ症候群で悩んでいるからといってパートナーに無理に受診を勧めると関係性が悪化する可能性もあります。

 

受診が難しそうなときは診断にこだわるのではなく、「困っていることがあるから一緒に解決しよう」といった提案をするといいでしょう。

自閉スペクトラム症について知る

コミュニケーションのずれを改善するために、自閉スペクトラム症についての知識も得ていくといいでしょう。

 

自閉スペクトラム症に限らず発達障害にはさまざまな特性があり、その特性と環境がうまく合わないことでコミュニケーションの行き違いなどが生じてくると言われています。

 

現在では本やインターネットで自閉スペクトラム症についての特性やよくある困りごと、対処法の例などが見つかりますので参考になると思います。また、次の章で紹介する相談先の専門家に聞いてみる方法もありますので、ご参考になさってください。

 

関連ページ:大人のASD(自閉スペクトラム症)|症状・特徴・セルフチェックの方法などを解説します。

お互いにルールを決める

次に、特性などを踏まえてお互いが無理ないようなルールを作っていくようにしましょう。もちろん、自閉スペクトラム症といっても一人ひとり特性の現れ方、性格、得意や苦手なことは異なります。特性に当てはめるのではなく、パートナーを尊重したうえでルール設定をしていくようにしていきましょう。

 

具体的な例としては、「お互いの予定はホワイトボードに視覚的に書いておく」「ちょっとなどのあいまいな言葉を使わずに、具体的な時間を指定するようにする」などがあります。

抱え込まないようにする

ルールを作っても、長い間過ごしていくうちにはどうしてもうまくいかないことも出てくると思います。そのため、定期的にどこかでリフレッシュする時間を設けることも、パートナーと良い関係を続けていくための方法と言えるでしょう。お互いが一人になる時間を作ることを先ほどのルールの一つにしてもいいかもしれません。

 

また、ルールを決める際など二人で話し合うのが難しい場合には、誰か信頼できる第三者に入ってもらうことを一つの方法です。「自分がどうにかしよう」という気持ちが強くなり過ぎるとそれがストレスになり、カサンドラ症候群の症状の悪化を招くことも考えられます。

 

真面目や完璧主義の方がカサンドラ症候群になりやすい傾向があると言われています。専門機関や当事者会など色々なものを頼りながら、改善を目指していくようにするといいでしょう。

カサンドラ症候群の相談先

カサンドラ症候群による悩みがある場合に相談できる場所がいくつもあります。相談することで心が軽くなったり、専門家によるアドバイスがもらえることもあります。

 

一人で抱えることで症状が悪化することも考えられるため、自身やパートナーのためにも相談しやすい場所に相談してみるといいでしょう。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターは発達障害のある方やその家族など周りの方からの相談に応じている支援機関です。カサンドラ症候群の悩みのきっかけとなっている、パートナーの言動や関わり方についても相談することができます。

 

発達障害の専門家が相談に乗ってくれるため、自閉スペクトラム症の特性を考慮したうえで家庭内でのルールの決め方など具体的な方法のアドバイスなどをしてもらうことができます。

市町村保健センター/精神保健福祉センター

カサンドラ症候群の悩みは地域の保健センターや精神保健福祉センターに相談することも可能です。

どちらも精神衛生について専門のスタッフが相談に乗ってくれ、その時の状況に合わせた必要なアドバイスなどを受けることができます。また、カサンドラ症候群の症状が心身に出ている場合には、精神科などの適した医療機関を紹介してもらえる場合もあります。

精神科/心療内科

カサンドラ症候群の症状が出ている場合には病院を受診する選択肢もあります。カサンドラ症候群の相談をする場合は主に精神科と心療内科が対象となります。

 

大まかに分けると精神科は抑うつやパニックなど精神症状が現れている場合に、心療内科は不眠や体重の増減などの身体症状が現れている場合に受診するといいでしょう。

カサンドラ症候群の当事者会

カサンドラ症候群の悩みを相談する場所として、当事者会があります。当事者会とはカサンドラ症候群のある方が集まって悩みを相談したり、お互いの対処法の共有などをする会のことです。NPO法人などが運営してることが多いようです。また、カサンドラ症候群についての講座などを開催している場合もあります。

 

カサンドラ症候群の原因の一つに「周りの人に相談してもわかってもらえない」ということがよく挙げられます。当事者会では、同じカサンドラ症候群のある方同士で共感しながら話ができるというメリットがあります。

 

興味のある方はお住まいの地域と「カサンドラ症候群 当事者会(あるいは自助グループ)」などと検索してみると見つけることができるかもしれません。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)とは障害のある方を対象に、自立した生活を送るために、必要なスキルを身につける訓練や助言などを行う支援機関です。

 

障害の特性やその方の性格や特徴に合わせて、スタッフと一緒にご自身に合ったコミュニケーションやスケジュール管理などを学んでいくことができます

 

パートナーご自身が、自閉スペクトラム症の特性、ご自身の特徴による困りごとを把握したり、対策や対処法、周りへの配慮などを考えていくことのサポートを行い、カサンドラ症候群でお悩みの方との生活の困りごとを軽減することにも協力できます。

カサンドラ症候群に悩んでいるご本人だけでの相談も受け付けています。まずはお気軽にお問い合わせください

カサンドラ症候群 まとめ

カサンドラ症候群とは、パートナーなど身近な人に自閉スペクトラム症があることでコミュニケーションがうまくいかずにストレスをためることと、そのことを相談しても周りに取り合ってもらえないことにより、心身に症状が出てくる状態のことです。

 

カサンドラ症候群は医学的な診断名ではなく、そのような状態を表して一般的に使われる用語です。

 

カサンドラ症候群の症状には精神症状と身体症状があり、それぞれ抑うつやパニック、不眠や頭痛などがあります。

 

カサンドラ症候群への対応として、まずは心身に現れている症状に対する薬物療法やカウンセリングなどの治療があります。それとともにお互いに無理のないルールを作るなど、関係性の改善を目指していきます。

 

カサンドラ症候群の症状が現れているときは、一人で抱え込まずに専門機関に相談しながら対応を勧めていくといいでしょう。

エンラボ カレッジにご相談ください

エンラボ カレッジは自立訓練(生活訓練)事業所で、自閉スペクトラム症など障害のある方へのサポートも行っています

 

エンラボ カレッジではコミュニケーションや自己理解など様々なプログラムを提供しています。障害の特性だけで判断せず、一人ひとりの困りごと、特徴、性格なども確認し、ご自身に合った方法を見つけていくためのサポートを行っています。

 

パートナーが自閉スペクトラム症でカサンドラ症候群に悩んでいる、という方もぜひ一度ご相談ください。

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