ADHDのある方が頭の中ごちゃごちゃするのはなぜ?ごちゃごちゃする場面やその対処法を解説します。

公開日:2024/03/18

ADHDのある方の中で、「仕事中よく頭がごちゃごちゃになる」という方もいると思います。

頭がごちゃごちゃになると、何をしていいのかわからなくなったり、伝えたいことをうまく話せなくなるなど困ることも多く、何とかしたいと考えている人も多いでしょう。

ADHDのある方が頭の中がごちゃごちゃになるには、様々な原因があります。その原因を知って自分に合った対策を取ることで、頭の中がごちゃごちゃする機会を減らしていくこともできます。

ここでは、ADHDの特徴や頭の中がごちゃごちゃする具体例や原因、そして対処法も紹介していきます。

ADHDの方が頭の中ごちゃごちゃする理由

ADHDは注意を持続することや、じっとしていることが苦手という特徴のある、発達障害の一種です。この特徴の影響で、生活や仕事をする中で浮かんでくる考えをうまく整理することができず、「頭の中がごちゃごちゃする」という感覚を覚える方も多くいます。頭の中がごちゃごちゃすると、仕事がスムーズにいかないなど困ることもあり、どうにかしたいと悩んでいる方もいると思います。

ADHDの方が頭の中がごちゃごちゃするのはどんなとき?

ここでは、ADHDのある方が頭の中がごちゃごちゃするとよく感じるシーンを紹介します。そもそも、「頭の中がごちゃごちゃする」というのは、頭の中に様々な考えが浮かんでいるがどう整理していいかわからずにいる状態を表している言葉です。

 

頭の中がごちゃごちゃしていると、「何をしていいかわからない」「ケアレスミスをしてしまう」「ストレスがたまるなど」のマイナス面があり困っている方もいると思います。

 

また、ADHDのある方の頭の中がごちゃごちゃするのは、一つの状況だけではなくいくつかの場面が考えられます。ここでは、ADHDのある方に見られる頭の中がごちゃごちゃするシーンの例をいくつか紹介していきます。

タスク管理の場面

ADHDのある方は仕事などでタスク管理をしなくてはいけないシーンで、頭の中がごちゃごちゃすることがあります。

 

例えば3つの仕事を同時に頼まれたときに、「何から手を付けたらいいのだろう」「どの順番で進めたらいい?」「とりあえずやってみるか」など様々なことが頭に浮かび、それをうまく整理できないということがあります。

時間管理の場面

ADHDのある方は時間管理でも頭の中がごちゃごちゃすることがあります。

 

10時に駅で待ち合わせの約束をしていたとして、電車がつく時間から逆算して見通しを持つことが苦手で、「いつ家を出たらいいのだろう」「準備は何時までに必要?」「乗り換えの時間は?」などの考えをまとめることが難しいということがあります。

集中しなくてはいけない場面

ADHDのある方は、仕事などで集中しなくてはいけない場面でも頭の中がごちゃごちゃすることがあります。

 

ある業務に打ち込む必要がある時に、集中しなくてはいけないとわかっていてもうまくいかず、「あれどうなったかな」「工事の音がうるさいな」「先輩に確認することがあったんだ」など目の前のこととは関係のないことを考えるのが止まらずに、頭の中がごちゃごちゃになっていることがあります。

話す内容をまとめる場面

ADHDのある方は話す内容をまとめる際にも、頭の中がごちゃごちゃすることがあります。

 

仕事で上司に報告をするときにも、頭に次々と話す内容は浮かびますが、「どの順番で話したらいいのだろう」「最初に話すことって?」「何か漏れていないか」ということを整理することが難しくてうまく話せないことがあります。

整理整頓をする場面

ADHDのある方は自宅や職場などで、物を整理整頓する場面でも頭の中がごちゃごちゃすることがあります。

 

まず、整理整頓しようとしても何から手を付けたらいいかわからずに、頭の中がごちゃごちゃになるということが挙げられます。

 

さらに、例えば職場のデスクが整理されておらず、重要な書類などをどこに置いたかわからなくなってしまい、「いつ失くしたんだろう」「あの時に持っていたのは覚えているけど」「謝らなくては」など様々な考えで頭が埋め尽くされてしまうことがあります。

 

ここではADHDのある方の頭の中がごちゃごちゃする場面を紹介してきました。ただ、今回挙げたのは比較的よくある例なので、ADHDのある方すべてに当てはまるわけではありません。

ADHDの方が頭の中ごちゃごちゃする原因

ADHDのある方の頭の中がごちゃごちゃするのには、特性が関係しています。ここでは、ADHDの特性の説明と、その特性により頭の中がごちゃごちゃする原因を紹介します

ADHDの特性

まず、ADHDは不注意特性と多動・衝動性特性という特性があり、その特性と置かれた状況の兼ね合いから頭の中がごちゃごちゃになるなど困りごとが生じるといわれていますで。

 

ADHDの不注意特性とは、注意を一つのことに向け続けることが苦手という特性のことです。人の話を聞いていても、すぐ他のことに注意がそれてしまうといったことが多くあります。

 

次に、ADHDの多動・衝動性特性とは、じっとしていることが難しい、思いついたことをすぐ実行するという特性です。仕事中デスクの前でじっと座っていることができなかったり、状況を考えずに頭に浮かんだ言葉をそのまま投げかけるといったことがあります。

 

ADHDのある方にはタイプがあって、不注意特性がよく表れる不注意優勢型、多動・衝動性特性がよく表れる多動・衝動性優勢型があります。また、どちらの特性も表れる混合型と呼ばれるタイプもあります。

 

関連ページ:ADHD(注意欠如・多動症)の特徴・特性とは?大人・子どもの特徴や症状や困りごとについて解説します。

頭の中がごちゃごちゃする原因

ADHDの特性を紹介してきましたが、この特性が頭の中がごちゃごちゃすることの原因となります。

 

不注意特性がある方は、何かに手を付けていても注意がそれることが多い傾向があります。そのため、仕事をしていても周りの音や動きなどが気になって「うるさいな」「今日は人が多いな」などの考えが浮かぶことがあります。また、集中が途切れたときに「洗濯もの取り込んだっけ」「あ、あれ忘れてた」など今していることとは関係のないことが浮かんでくることもあります。このように集中力が続かないことで、頭の中がどんどんごちゃごちゃしていくことが考えられます。

 

多動・衝動性特性も同様に頭の中がごちゃごちゃする原因となり得ます。多動性のある方はじっとしていることが苦手で、会議など静かにじっとしている場面でも「動きたい」という気持ちがわきますが、「でも今動いてはいけない」「おとなしくしなきゃ」と葛藤することで頭がいっぱいになることがあります。

 

衝動性がある方は、頭に浮かんだことをそのまま実行する傾向がありますが、多動性と同じく頭に話したいことやしたい行動が浮かんでも、仕事中などで「今してはいけない」と葛藤を繰り返すことで頭の中がごちゃごちゃするしていくことがあります。

 

このように、ADHDのある方は不注意や多動・衝動性という特性と状況がかみ合わないことで、頭の整理ができずにごちゃごちゃしてしまうことにつながっていきます。

ADHDの方が頭の中ごちゃごちゃする対処法

頭の中がごちゃごちゃすることによって、仕事や生活に影響が出て困っているという方もいると思いますので、対処法について紹介していきます。

 

ここでは、主に仕事の場面を想定して対処法を紹介していきますが、日常生活や学校生活など、その他の場面でも応用ができると思いますので、仕事以外で悩んでいる方も参考にしてみてください。

タスク管理の場面

最初はタスク管理の場面で、頭の中がごちゃごちゃすることへの対処法から紹介します。

 

タスク管理においては仕事を複数頼まれたときに、優先順位や見通しが立たずに頭の中がごちゃごちゃすることが多いといわれています。その対処法としては、ツールを活用していく方法が挙げられます。

 

例えばTODOリストを使う方法があります。TODOリストとは、するべきタスクを書きだす枠がある用紙のことです。文房具店などで見かけたことがある他に、アプリなどでも見たことがある方も多いと思います。

 

具体的な使い方としては、上司などから仕事を任されたときはすぐに取り組むのではなく、一旦TODOリストに書いていきます。書く時には、タスクだけでなく横に優先順位や納期を書くようにすることがポイントです。

 

そして、優先順位が高いものから実行していき、終わったタスクはチェックをつけるなどして完了したことが分かるようにしておけば、「何から手を付けたらいいだろう」などを考えることが減って、結果的に頭の中のごちゃごちゃも軽減できるでしょう。

 

優先順位自体が分からない場合は、上司にタスクを任されたときや、TODOリストを作っているときに確認することが大事です。

時間管理の場面

時間管理の場面で頭の中がごちゃごちゃする場合の対処法も紹介します。

 

ADHDのある方は、不注意により約束の時間を忘れたり、計画を立てずに行動して結果時間に遅れそうになることで、焦りや交通手段、連絡先や方法など、色々な考えが頭に浮かぶことなどから頭の中がごちゃごちゃすることがあります。

 

対処法として、工夫とツールの使用が考えられます。工夫としては、ルートや出発の時間を調べることや持っておくものを用意していくなど、あらかじめ準備を整えておく方法があります。先に準備をしておくことで、多少当日忘れることがあってもリカバリーがしやすくする効果があります。

 

ツールを使う方法としては、スマートフォンのリマインダーアプリを活用する方が多くいます。家を出る時間などポイントとなる時間にアプリから通知が来るように設定しておくことで、例え忘れていても気づくことができるでしょう。他にも、持ち物や電車のルートを画像として保存しておく方法などがあります。

 

このような工夫やツールを使用することで、焦ったりその場で考える必要を減らしていくことが、頭の中がごちゃごちゃしないことにもつながっていきます。

集中しなくてはいけない場面

ADHDのある方で集中しなくてはいけない時に、注意がそれて色々な考えが頭に浮かんでくる場合の対処法も紹介します。

 

ADHDの不注意特性によって、仕事に取り組んでいてもすぐに気が散ってしまう場合は、まずはその原因を減らしていくことが大切です。

 

仕事中に周りの人の動きが気になってしまうという方は、席を奥にすることやパーテーションを設置して視界を限定する方法があります。また、音が気になる場合はイヤーマフやノイズキャンセリングイヤホンを使って、周りの音が聞こえない状況を作ることも有効です。

 

それに加えて、先程紹介したTODOリストなどを使って、「タスクを3つこなしたら休憩する」などルールを決めてこまめに休憩を取る方法もあります。それによって、メリハリがついて集中力が切れるタイミングを減らしていきます。これは、リマインダーアプリで1時間ごとに休憩を取るなど応用することが可能です。

 

このような対処法を行うことで、集中が途切れて他のことを考えてしまうという可能性を減らしていくことができるでしょう。

話す内容をまとめる場面

話す内容をまとめようとしても、頭の中がごちゃごちゃになる時の対処法も見ていきましょう。

 

ADHDのある方は不注意や衝動性などのより、色々な考えが浮かんできて、筋道を立てて話をしていくことも苦手な傾向があります。そういった時は、頭の中だけでまとめようとせずに、紙などに書きだすなどの対処法があります。

 

話したいと思ったときは一度立ち止まって、紙などに「結論」「具体的な内容」「自分の考え」といったことを書きだし、その紙を見ながら話すことでその場で考える必要がなくなります。

 

何を書いたらいいのかその場で判断することが難しいという方は、あらかじめ「結論」などの枠を作った用紙を用意しておくとスムーズにまとめることができるでしょう。

 

また、仕事の報告を口頭ではなくメールなど文字で行わせてもらうという方法もあります。

 

このような対処法を講じることで、考えながら話す機会を減らすことができ、頭の中がごちゃごちゃする可能性も減らすことが可能です。

整理整頓をする場面

最後に、整理整頓ができずに頭の中がごちゃごちゃしてしまう場合の対処法を紹介します。

 

ADHDのある方は職場のデスクなどを整理しようとしても、「何をどこにしまっていいか分からない」「適当に置いて後でわからなくなる」という方が多くいます。

 

このような場合にできる工夫としては、しまう場所を色など視覚的にわかりやすく分けておく方法があります。

 

赤いファイルには「請求書」、青いファイルには「見積書」と入れるものを決めておき、その通りにしまっていくことで考えることなく整理をすることができるようになります。

 

色だけでなく、デスクの引き出しの中に仕切りを作り、それぞれにしまう物の名称のシールを貼っておくといった方法もあります。

 

このように、あらかじめ自分がぱっと見て分かりやすい方法で仕分けておくと、その場で考える必要がなくなり、頭の中がごちゃごちゃする機会も少なくなるでしょう。

障害者雇用で働く方法もある

今紹介した対処法は自身でできることも多いですが、職場の協力が必要なものもあります。

 

上司や人事などに相談しても協力を得ることが難しい場合は、障害者雇用で働くことも選択肢の一つです。

 

障害者雇用で働くことで、障害による働きづらさを解消する合理的配慮を受けやすくなるメリットがあります。

 

合理的配慮には、先ほど挙げたパーテーションやツールの使用許可や、上司や同僚のサポートなども含まれています。

 

障害者雇用で働くには障害者手帳を取得し、障害者求人に応募することが必要です。障害者手帳には種類があり、ADHDのある方は精神障害者保健福祉手帳が対象となります。

 

障害者手帳の取得を検討される方は、主治医などに相談してみるといいでしょう。

ADHDの診断や治療法

ここでは、ADHDのある方が診断を受ける流れや行う治療について紹介していきます。

ADHDの診断の流れ

ADHDは注意欠如・多動症ともいい、発達障害の一つに分類されています。そのため、診断を受ける際は発達障害の専門医がいる病院を受診する必要があります。

 

ADHDを含めて発達障害の診断が可能な病院は大人と子どもで分かれているため、大人の診断ができる病院を探すことがまず大切です。

 

大人のADHDを診断できる病院の種類としては、精神科や心療内科、発達外来のある病院などがあります。診断を受けるには基本的に予約が必要なので、受診を検討している方は先に問い合わせをしておくといいでしょう。

 

どの病院を受診したらいいかわからないという方は、発達障害者支援センターや自治体の障害福祉窓口などに相談することで、紹介してもらえる場合もあります。

 

ADHDの診断は主に問診と心理検査が行われます。問診ではADHDと考えたきっかけなどを聞かれますので、頭の中がごちゃごちゃする場面などを先に紙に書きだしておくといいでしょう。

 

さらに、ADHDは生まれつきの脳機能の障害のため、幼少期の様子が分かる書類を持参することが求められる場合があります。学校の通知表などの子どものころのことが分かるものをあらかじめ用意しておくことが大切です。

 

心理検査では知能や発達に関するテストなどを行っていきます。心理検査も大人と子どもで種類が異なり、大人の場合はWAIS-IV(ウェイス・フォー)やVineland-II(ヴァインランド・ツー)などの検査が実施されます。

 

問診と心理検査の結果と、必要なら脳波などの検査も実施した上で、医師がADHDの診断を行います。

ADHDの治療法

ADHDと診断を受けた後は、治療を行っていくことになります。ADHDの治療としては、薬物療法や環境調整などがあります。

 

ADHDの薬物療法ではADHDそのものを治療するというわけではなく、メチルフェニデートなどの薬を用いて不注意などの特性を緩和していくことを目的として行います。

 

環境調整とは、ADHDの特性による困りごとが起きないように環境に働きかけていく方法のことです。先ほどの整理整頓が苦手な方がデスクに仕切りを作ることや、人の動きが気になって集中できない方がパーテーションを活用することも環境調整といえます。

ADHDの方が頭がごちゃごちゃするときの相談先

ADHDのある方で、頭の中がごちゃごちゃするために仕事や生活に影響が出て悩んでいる場合に相談できる窓口を紹介します。相談だけではなく、頭の中がごちゃごちゃする場面を減らすための対処法を身につけるための訓練を行うことができる支援機関も合わせて紹介します。

発達障害者支援センター

発達障害者支援センターでは、ADHDなど発達障害のある方や周りの方からの相談を受け付けている支援機関です。

 

発達障害の専門家により、考えの整理方法や環境調整の方法、診断前の方は医療機関の紹介など様々なサポートを受けることができます。

ハローワーク

ハローワークでは障害のある方専門の相談窓口があり、ADHDのある方も相談可能です。

 

自身の特性に合った環境の整理を手伝ってくれ、障害者求人の紹介を受けることもできるなど、仕事に関してサポートを受けることができます。

就労移行支援

就労移行支援とは一般企業で働くために必要となるスキルの取得や、就職活動のサポートを受けることができる支援機関です。

 

利用者は事業所に通って、自己理解やコミュニケーションなどのスキル取得のプログラム受講や、求人の精査や面接の練習などの就職に関するサポートを受けることが可能です。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)はADHDなどの障害のある方が利用できる、自立した生活を送るための訓練や相談対応などを実施している支援機関です。

 

具体的な内容は障害の種別や困りごとなどによって変わってきて、ADHDのある方には自己理解やスケジュール管理方法の練習などのサポートがあります。

 

また、事業所によっては働くためのサポートも実施しており、業務タスクの管理方法や仕事への集中の仕方などを身につける取り組みも行っています。

 

自立訓練(生活訓練)事業所のエンラボ カレッジでは、ADHDのある方も数多くサポートしてきました。

 

頭の中がごちゃごちゃするという悩みでも、一人ひとり原因が異なっています。そのため、自己理解の進め方や自分に合った対処法を身につけるためのサポートなど、その人に合った支援を提供しています。

 

エンラボ カレッジでは無料の相談も実施中です。「頭の中がごちゃごちゃして仕事が進まない」「集中ができずに余計なことを考える」などの方は、ぜひ一度ご相談下さい。

ADHDの方が頭がごちゃごちゃするまとめ

ADHDのある方は、仕事中などで頭の中がごちゃごちゃするという方が多くいます。

 

頭の中がごちゃごちゃする場面としては、タスク管理やスケジュール管理、話をまとめようとした時など様々です。

 

対処法としては、TODOリストやリマインダーアプリなどのツールの活用や、職場の人に協力してもらう方法などがあります。頭の中がごちゃごちゃする原因はADHDの特性と状況によるもので、詳細は一人ひとり異なります。そのため、自分を理解したうえで対処法を考えていくことが大事となります。

 

自分で対処法を考えていくことが難しいという場合は、支援機関も頼りながら頭の中がごちゃごちゃする場面を減らしていくといいでしょう。

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