仕事におけるうつ病の症状とは?対処方法や休職の手順、過ごし方を解説
公開日:2024/11/21
うつ病は気分障害の一つで、さまざまな身体症状や精神症状が見られます。仕事をしている方の場合、うつ病の症状が原因で安定的に出社することが難しかったり、仕事のパフォーマンスが落ちたりすることがあります。今回は、うつ病の症状として仕事の場面ではどんな症状が具体的に見られるのか、どんな対処方法があるのか詳しく紹介します。休職期間の過ごし方や相談窓口、うつ病と仕事に関するQ&Aについても解説しますので、うつ病に悩んでいる方はぜひ参考にしてみてください。
よくあるうつ病の症状
うつ病とは気分障害の一つで、精神的ストレスや身体的ストレスなどを背景として、脳内の神経伝達物質「セロトニン」「ノルアドレナリン」が減ってしまい、脳がうまく働かなくなっている状態を指します。
気分障害とは、大きく「うつ病性障害」と「双極性障害(躁うつ病)」に分けられ、一般的に「うつ病」としてイメージされるのは、うつ病性障害の中の「大うつ病性障害」のことです。
厚生労働省の調査によると、日本におけるうつ病の生涯有病率は7.5%、うつ病の12ヶ月有病率は2.2%となっています。これは、これまでにうつ病を経験した人は約15人に一人、過去12ヶ月間にうつ病を経験した人は約50人に一人という計算になり、決して珍しい病気ではありません。
よくあるうつ病の症状を、身体症状と精神症状に分けて紹介します。うつ病の場合、これらの症状が慢性的に見られます。
【身体症状】
・頭痛
・動悸
・睡眠障害(眠れない、あるいは寝すぎる)
・耳鳴り
・めまい
・食欲が減る、あるいは増す
・味覚障害
・腰痛
・下痢、便秘
・腹痛、胃の不快感
・肩こり
・生理不順
【精神症状】
・気分が落ち込む
・意欲がなくなる
・無関心になる
・ぼんやりすることが増える
・悲観的に考える
・口数が少なくなる
・外見や服装を気にしなくなる
・不安や焦り、イライラ感が増える
・喜んだり楽しんだりできない
・悲しく憂鬱な気分が一日以上続く
・疲れやすく、何もやる気になれない
・これまで好きだったことに興味がわかない、何をしても楽しくない
単なる疲労が原因であれば、しばらく休むことで改善することがありますが、これらの症状が2週間以上継続する場合、うつ病と診断されることがあります。
精神症状の前に身体症状が見られることが多いため、まずは内科で他の病気が原因の可能性はないか、検査をしてもらうのも良いでしょう。それでも改善が見られない場合は、精神科や心療内科、メンタルクリニックなどの病院やクリニックで早めに診察を受けてみましょう。
仕事で見られやすいうつ病の症状
一般的によく見られるうつ病の初期症状は前章でご紹介した通りですが、特に仕事の場面においてはどのような症状が見られやすいのでしょうか。4つの症状を見てみましょう。
ケアレスミスが増える
うつ病になると、これまで問題なくできていた仕事においても、物忘れやケアレスミスなどが増え、仕事上のパフォーマンスが以前より明らかに落ちてきやすくなります。
これは、精神症状として仕事への意欲が落ちていることや、身体症状として眠れない日々が続くことで集中力が落ちていることなどが原因として考えられます。
注意力が散漫になることで、書類上の誤字脱字が増える、計算ミス、提出期日の間違いや忘れ、ミーティングの予定を忘れる、仕事で踏むべきプロセスが抜けるなどのケアレスミスが増えやすくなります。
遅刻や欠勤が増えている
遅刻や欠勤が増えることも、うつ病の分かりやすいサインの一つです。特に今まで遅刻や欠勤がなかった、もしくは少なかった人が、急に遅刻や欠勤が増えているようであれば要注意です。
これは、精神症状としてぼんやりすることが増えたり、さまざまな身体症状が現れたりすることで、職場に行く準備ができない、どうしても朝身体が動かないといったことが原因として考えられます。特にうつ病の症状は朝が一番現れやすく、午後から夕方にかけて改善してくることがよくあります。
人との交流を避けたくなる
うつ病の場合、人と会うことや会話をする気力がなくなったり、注意力・集中力が低下することでうまく受け答えをすることが難しかったりします。そのため、職場でのコミュニケーションを避けるようになり、会議で発言をしない、食事や飲み会の誘いを断る、職場の人が電話をかけても出ない、メールや社内SNSの返信が極端に遅いなどの症状が見られる場合があります。
身なりを整えることが億劫になる
うつ病の場合、意欲の低下により服装や髪型に気を配れなくなることがよくあります。これは情報能力の低下により普段は普通にできていたことも難しくなったり、気力の低下により「お風呂に入る」「髪を整える」といったことができなくなったりすることが原因です。また、自己肯定感の低下により、身だしなみを整えることを後回しにしてしまうケースもあります。
周囲から見て分かりやすく、今まで服装に気を遣っていた人がヨレヨレのシャツを着ていたり、ボサボサの髪のままだったりする場合は、うつ病の可能性もあるかもしれません。短期間であれば寝坊などの原因が考えられますが、長期間にわたりそのような状態が見られ、遅刻や欠勤などの他の症状も併せて見られる場合は要注意です。
仕事でうつ病の症状に気づいたときに取るべき行動
前章で挙げたような症状によって仕事に支障が出ていて、「自分はうつ病かもしれない」と感じた時に取るべき行動についてご紹介します。
無理をしない
まずは自分のペースを守り、無理をしすぎないことが大切です。身体症状・精神症状が出ている状態で無理に仕事を続けると、症状が長引いたり、悪化するリスクも高くなります。
仕事上でのミスや遅刻・欠勤などが増えると、「自分はダメな人間だ」と感じることがあるかもしれません。自分を責めたり自己肯定感が低くなったりするのは、うつ病の症状の一つでもあります。自分が悪いと考えて、無理やり仕事を頑張ろうと思っても思うようにいかず、負のループにはまってしまうかもしれません。自分が元気な時とは違う状態であること、気力やエネルギーが低下した状態であることを認め、無理のない範囲でできることが何かを考えてみましょう。
治療を受ける
「うつ病かも」と感じたら、早めに精神科や心療内科などの医療機関を受診して、治療を開始することがおすすめです。「大したことはない」「仕事が忙しくて病院に行くことができない」と後回しにしていると、その間に症状が重症化する可能性も考えられます。
うつ病を含めた精神疾患の場合、重症化する前の初期の段階から治療を開始することによって、早期改善が期待できます。また、自分自身ではまだ大丈夫と思っていても、専門家からするとすぐに治療・療養が必要な場合もあります。自己判断せず、専門家の意見を仰ぐようにしましょう。
産業医や上司に相談する
うつ病が原因で仕事上の困りごとがある時、前提となる職場環境や仕事内容を理解している勤務先の上司に相談すると、状況の理解がスムーズに進む可能性があります。うつ病の原因は、過度なストレスと考えられています。業務内容や量、職場の人間関係などに問題がある場合、上司に相談をして環境調整を図ってもらうことで、先に挙げたように“無理のない範囲”で仕事に取り組みやすくなるかもしれません。
また、労働者が利用できる制度として、「産業医面談」があります。
産業医とは、労働者の健康管理に関して専門的な立場から助言や指導を行う医師のことで、労働安全衛生法により常時50人以上の労働者がいる事業所では1人以上、3,000人以上の労働者がいる事業所では2人以上の配置が義務付けられています。産業医は中立的な立場から診断を行い、診断内容を企業に報告するかどうかは原則労働者本人の許可が必要となります。加えて、基本的に診断に料金などは発生しません。受診方法については各企業によって異なるため、必ず事前に確認してみてください。
心の悩み相談窓口に相談する
職場に相談しづらいという方は、外部の相談窓口の利用を検討してみましょう。基本的には電話やSNSなどを通して、医師による診断の前段階のメンタルケアを目的としたサポートを受けることができます。
例えば厚生労働省が設置している働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト「こころの耳」では、職場のメンタルヘルスに関する情報を提供するとともに、産業カウンセラーなどがメール・電話・SNSにより健康相談を受け付けています。
外部サイトへ:相談窓口案内|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト
他にも、社会的包摂サポートセンターが行っている「よりそいホットライン」では、どんな人の、どんな悩みにも寄り添って、一緒に解決できる方法を探すことを目指しており、24時間無料で電話相談を受け付けています。
電話番号:0120-279-338
うつ病の症状は仕事をしながらでも克服できる?
うつ病の症状が見られる場合、十分な休養を取って心と身体をしっかり休ませることが必要です。また、職場で受けるストレスを減らし、無理をしなくても良いように環境調整も併せて必要です。
「休養」と言うと、仕事を休職・退職する必要があるように感じられるかもしれません。もちろん症状や環境、タイミング次第では、休職・退職・転職などが必要になるケースはありますが、仕事とうつ病の治療を両立させることも可能です。仕事を軽減する・残業をしないというレベルでも、十分休養になる可能性はあります。
ただし、自己判断せず、必ず専門の医療機関を受診し、主治医の指示に従うようにしましょう。うつ病の治療には薬物治療も有効と考えられています。「抗うつ薬」や「抗不安薬」、「睡眠導入薬」「気分安定薬」などを服用することで、規則正しい睡眠や食事が摂れ、健康な心と身体を取り戻すための休養がしっかり取れるようになります。薬を飲んですぐに効果が現れるとは限らず、服薬をやめてしまうと症状が改善しないまま慢性化してしまう可能性もあるため、定期的な診療が欠かせません。
このように、仕事とうつ病の治療を両立させるためには、休養がしっかり取れること、ストレスがかかる環境を調整することが可能であること、仕事をしながら医療機関の受診が可能であることが必要です。
休職も視野に入れる
うつ病の治療と仕事を両立させることは、決して簡単なことではありません。基本となる休養がしっかり取れない場合や症状によっては、休職することも選択肢の一つです。
休職制度は法律で一律に定められておらず、各企業の就業規則などにより定められています。そのため、休職の取得を考えている場合は、事前に取得方法や期間、給料や手当などの定めについて確認しておきましょう。うつ病で休職する場合、会社から十分な報酬が得られない場合には、「傷病手当金」が支給される場合があります。傷病手当金が支給されるのは、業務外の病気や怪我による休業で働くことができない場合などの条件があります。また、うつ病の原因が業務内の事由である場合は、「労災保険」の対象となる場合があります。
休職について詳しくは関連記事でご紹介しています。休職を考えている場合は、ぜひ参考にしてみてください。
うつ病の人が休職するときに意識したいこと
うつ病で休職した際、うつ病から回復するためにはどのように過ごせば良いのでしょうか。人によって症状の程度や置かれている状況が異なるため一概には言えませんが、ここでは休職期間中に気をつけたいポイントを5つご紹介します。
回復に専念する
うつ病で休職している時は、まずは治療に専念してうつ病の状態を良くしていくことが大切です。
うつ病は、診断を受けてから回復するまでに時間がかかるのが一般的で、その過程は「急性期(診断〜3カ月程度)」「回復期(4〜6カ月以上)」「再発予防期(薬物治療:1〜2年)」の3つの段階に分けられます。それぞれの期間の長さは人によって異なり、休職期間がどの段階にあたるかというのも場合によって異なります。休職期間を活用して、じっくりと治療と向き合うことが大切です。
それまで仕事を頑張ってきたからこそ、休職期間中は何をすれば良いのかわからない、上司や周囲の人に迷惑をかけて申し訳ないという気持ちになるかもしれません。しかし、勝手に仕事を休んでいるわけではなく、医師や会社の判断のもと休職が認められている状態のため、「自分はいま休養が必要な状態なんだ」と受け入れることから始めてみましょう。
休職に入ったばかりのタイミングでは、特に「このままで仕事に戻れるのだろうか」「早く復帰しなくちゃ」と復職を意識するかもしれません。しかし、うつ病を改善するためには焦りは禁物です。うつ病は改善・再発防止に向けた治療に長い時間がかかるものです。しっかりと心身を休ませること、好きなことをして気力を回復させ、まずは疲れた心と身体を回復することに専念しましょう。
生活リズムを整える
休職期間中は、昼夜が逆転するなど生活リズムが乱れがちです。出社などの決まった生活サイクルがなくなることや、うつ病の症状によって睡眠障害が見られることなどが原因として考えられます。
しかし、生活リズムが乱れたままだと、ストレス耐性も低くなり、うつ病の症状も改善しにくくなります。下記のような生活リズムを整える習慣を意識してみましょう。
・毎朝同じ時間に起きる
・カーテンを開けて太陽の光を浴びる
・朝食をしっかり摂る
・日中軽く運動をする(ジョギング、散歩、ヨガなど)
・20〜30分の軽い昼寝をする
・ぬるめのお湯にゆっくりつかる
・寝る前は読書やストレッチなどでリラックスする
・眠くなってからベッドに入る
休職期間に入った初期の段階では、生活リズムを整えることが難しい場合もあるでしょう。そのような場合は無理をせず、まずは心と身体を休めることを優先してください。
ストレス解消方法を身につける
うつ病は、一度改善すれば二度と繰り返さない、というものではありません。治っていく経過も、良くなったり悪くなったりという小さな波を繰り返しながら、階段をゆっくりと一段ずつ上るように改善していきます。
そのため、自分なりのストレス解消方法を身につけ、休職期間中や復職後も、上手にストレスと付き合っていくことができるように工夫する必要があります。簡単にできるストレス解消方法をいくつか紹介します。
・仕事に関係ない趣味に没頭する
・ハーブティーなど心が安らぐ飲み物を飲む
・チョコレートなど心が安らぐ食べ物を食べる
・自分の好きな香りをかぐ
・自分の好きな音楽を聴く
・ぬるめのお湯にゆっくりつかる
・ストレッチやジョギングなど軽い運動をする
・自然に親しむ機会をつくる
ストレス解消方法は一人ひとり異なります。何をしている時に自分がリラックスできるのかを考え、気軽にできることから試してみましょう。
うつ病のサインを把握する
復職後、うつ病を再発させないためにも、自分のうつ病のサインを把握しておきましょう。自分のサインを把握しておくことで、休養やストレス解消方法をどんなタイミングで取ればいいのかわかりやすくなります。
・気分が落ち込む
・好きなことにも興味を持てなくなる
・イライラしたり心が落ち着かなくなる
・頭が回らなくなる、集中力が保てない
・決断ができなくなる
・体重の増減が大きい、食欲が極端に増えるまたは減る
・睡眠の質や量に変化がある
・頭痛やめまいなどの身体症状が出る
・何もしていないのにぐったりと疲れている
同じうつ病でも、人によって現れやすい症状は異なります。自分自身が休職する原因となった主な症状は何か、ストレスを感じた時にどのような変化が現れやすいのか、休職期間中にしっかり把握しておきましょう。
支援機関を活用する
ここまで紹介してきた過ごし方や対策を一人で進めるのは難しいと感じた方は、うつ病の方が利用できる支援機関の活用も検討してみてください。支援機関にはうつ病についての知識やスキルがあるスタッフがいて、休職中の取り組みも一緒に考えてくれるというメリットがあります。支援機関や相談先については、次の章で詳しく紹介しています。
うつ病の方が仕事で困ったときの相談先
うつ病の方が仕事について悩んでいる場合、以下の連絡先などで相談することができます。
・こころの健康相談統一ダイヤル
心の健康についての相談を受けたり、医療機関や福祉サービスなどの情報を提供する電話相談窓口です。厚生労働省の管轄で全都道府県と政令指定都市に共通の電話番号が設置されており、相談に対応する曜日・時間は都道府県や政令指定都市によって異なります。
電話番号:0570-064-556
外部サイトへ:こころの健康相談統一ダイヤル|自殺対策|厚生労働省
・働く人の悩みホットライン
一般社団法人日本産業カウンセラー協会が行っている電話相談で、職場や日常生活についての悩みを一人1日1回30分以内で受け付けています。開設時間は月曜日〜土曜日の15:00〜20:00です。
電話番号:03-5772-2183
外部サイトへ:働く人の悩みホットライン
・働く人の「こころの耳相談」
厚生労働省が運営する、労働者やその家族、企業の人事労務担当者などから、心の不調などについての相談を受け付ける窓口です。電話・SNS・メールで相談が可能で、電話・SNSの場合は月曜日・火曜日の17:00〜22:00、土曜日・日曜日の10:00〜16:00に受け付けています。メールは24時間受け付けており、受理されたメールは1週間以内を目安に返信が届きます。
電話番号:0120-565-455
外部サイトへ:働く人の「こころの耳電話相談」
他にも、ハローワークや障害者就業・生活支援センター、地域障害者職業センターなどで相談窓口が設置されています。
またうつ病など障害のある方が利用できる障害福祉サービスに「自立訓練(生活訓練)」があります。自立訓練(生活訓練)とは自立した生活を営めるように、利用者に様々な訓練の提供や相談対応をしているサービスです。
自立訓練(生活訓練)事業所のエンラボカレッジでは、自分のうつ病の症状の現れ方やサインの捉え方、そして対策や対処法をプログラムや事業所内外での実践を通してスタッフと一緒に考えていくことができます。また、毎日同じ時間に事業所に通うことで生活リズムの構築にもつながっていきます。
エンラボカレッジでは随時無料の相談を受け付け中です。「うつ病で休職している」「復職後にうつ病が再発しないか心配」「自分の体調がわからない」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
うつ病と仕事に関するQ&A
うつ病の方が仕事で悩みやすいポイントについてまとめました。
うつ病の症状がしんどいので仕事をやめたいです。問題ないでしょうか?
うつ病の症状が深刻な場合、退職や転職も選択肢の一つでしょう。ただし、うつ病の症状が見られる時は、判断力や体力が低下しがちで、悲観的な考えになりやすかったり、視野が狭くなったりしてしまう傾向があります。退職後に後悔しないためにも、まずはしっかりと治療を進めていき、うつ病の症状がある程度落ち着いてから慎重に判断することが大切です。一人で判断しようとせず、主治医や家族、可能であれば会社の上司や人事担当者、産業医とも相談しながら進めていく方が良いでしょう。
うつ病で仕事をやめた場合、受けられる経済的支援はありますか?
うつ病で仕事を辞めた場合には、「失業保険(失業手当、雇用保険給付)」を受給できます。これは、うつ病に限らず、失職した人が就職するまでの一定期間、受給できる給付金を指します。原則的には、「退職までの一定期間、雇用保険に加入していたこと」と、「求職活動を行っていること」が給付の条件となります。ここで言う「求職活動」は、採用面接などを受けていない、ハローワークなどに窓口相談に行ったり、職業訓練所に通うことなども含まれるため、「うつ病で働くことができない」人でも条件を満たすことは可能です。
また、経済的な不安を軽減するという意味では、「自立支援医療制度」も活用できます。この制度は、通院による精神医療を継続的に要する人に対して、医療費控除を行います。窓口で申請を行うことで、原則として通院での精神医療日の9割が公費負担、1割が利用者負担となります。高額になる場合は、世帯単位の所得により負担額上限がつくため、安心して通院治療を続けることができます。
さらに、うつ病が原因で休業してから仕事をやめた場合は、傷病手当金が受け取れます。元々傷病手当金は、同一の傷病が原因で連続して休職した期間が3日以上ある場合、4日目以降の休みについては傷病手当金が支払われます。退職後も同じ傷病が理由で療養を続け、仕事につくことが難しい場合は、最長で1年6ヶ月の間、傷病手当を受け取ることができます。支給される額は、休業前までの1年間の平均月給額の2/3が目安です。
うつ病と診断され休職しました。仕事復帰の目安はどれくらいですか?
うつ病で休職する際、どれくらいの期間が回復に必要になるかは、一人ひとり異なります。一般的には、軽度のうつ病の場合は約1カ月、中等度のうつ病の場合は約3〜6カ月、重度のうつ病の場合は1年またはそれ以上の期間が目安と言われています。
厚生労働省が行った調査によると、メンタルヘルスの不調で休職を取得する場合、1回目の平均期間は107日(約3.5カ月)、2回目の平均期間は157日(約5カ月)で、2回目に取得する方が長くなる傾向が分かっています。また、全体の約47%が5年以内に再度休職を取得するというデータもあります。
うつ病で休職中ですが転職を考えています。おすすめの仕事内容は?
うつ病の症状や置かれている状況、その人自身の性格などにより、向いている仕事は一人ひとり異なります。一方で、うつ病の症状が悪化しやすい環境としては、下記のような要因が考えられます。
・業務内容が本人の適性と合っていない
・業務量が極端に多いハードワークである
・失敗できない、大きなプレッシャーがかかる
・職場の人間関係が複雑、相性の悪い人がいる
これらを踏まえて考えると、下記のような環境であれば、うつ病の方もストレスを軽減して働くことができる可能性があります。
・業務内容がシンプルで、マニュアルに沿った進行が可能である
・自分の得意なことを活かした業務内容になっている
・業務スケジュールを自分で立てやすい、ある程度コントロールできる
・ノルマが少ない、ノルマがない
・プレッシャーが少ない
・比較的一人で淡々と業務が進められる、人との関わりが少なく進められる
・職場の人間関係が良い
・休職制度などが整っており、急な体調の悪化などの場合も休みやすい
・失業の心配が少ない
実際に転職をする際は、職場の人間関係などは事前に見極めることが難しいかもしれません。人間関係に不安がある場合は、「在宅ワーク」という働き方の選択肢もあります。
まとめ
うつ病は決して珍しい病気ではなく、日本では約15人に1人が生涯で一度はうつ病になると言われています。うつ病の初期症状として、さまざまな身体症状や精神症状が見られますが、単なる疲労と異なる点としては、休んでも改善が見られないこと、2週間以上の長期にわたって症状が見られることが挙げられます。そのような自分の変化に気づいたら、まずは精神科や心療内科の専門医療機関を受診し、うつ病かどうか医師の判断を仰ぎましょう。初期症状のうちに適切な治療を行うことによって、早期回復が期待できます。
うつ病は本人が怠けているわけではなく、ストレスなどによって心身のバランスが崩れている状態です。「仕事に行けないなんて甘えなんじゃないか」「周囲に迷惑をかけないために自分がもっと頑張らないと」と自分を責める必要はありません。
うつ病の影響もあり、つい自分を責めてしまう、客観的に自分の症状や対策方法を一人で考えることが難しいという方は、リワークプログラムなどの支援機関の利用も検討してみてください。仕事とうつ病の治療を両立する方法や、休職なども含めた対処方法について一緒に考え、うつ病が再発するリスクを減らした上で働き続けることができるよう、サポートを受けることができます。