療育手帳(愛の手帳)とは?等級・判定基準・申請方法を解説

更新日:2026/06/11

知的障害のあるお子さんや、ご自身の特性について調べていくなかで、療育手帳という言葉にたどり着く方は多いものです。一方で、お住まいの地域によっては名前が違っていたり、判定の基準が分かりにくかったりして、戸惑う方も少なくありません。

療育手帳とは、児童相談所または知的障害者更生相談所において、知的障害があると判定された方に交付される障害者手帳の一種です。国の通知をもとに各自治体が独自の基準で運営しているため、名称や区分が自治体によって異なるのが大きな特徴です。取得すると、公共料金の割引や福祉サービス、障害者雇用枠での就労支援など、生活をサポートする様々な援助を受けられる場合があります。

この記事では、療育手帳の対象となる基準や、A・B判定の一般的な考え方、自治体ごとの名称の違い、具体的な申請の流れまでを整理します。お子さんのために情報を集めているご家族の不安を少しでも解消できるよう、実務面にふれながら詳しく解説していきます。

療育手帳とは

まず、療育手帳がどのような手帳なのか、その基本的な仕組みから整理していきましょう。

知的障害があると判定された方に交付される手帳

療育手帳とは、児童相談所(18歳未満の場合)または知的障害者更生相談所(18歳以上の場合)において、知的障害があると判定された方に交付される障害者手帳です。国が定めている3種類の障害者手帳(身体障害者手帳・精神障害者保健福祉手帳・療育手帳)のうち、知的障害に対応するのがこの手帳にあたります。

療育手帳を取得すると、所得税や住民税などの税制上の優遇措置、公共交通機関や公共施設の利用料割引、障害者雇用枠での就労支援など、生活や自立を助ける様々なサポートを受けられる場合があります。また、お子さんの場合は、特別児童扶養手当などの別の支援制度と併せて利用できる場合もあり、ご家族の経済的・心理的な負担を軽減するための一助となります。

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国の通知にもとづき各自治体が運営

療育手帳は、法律に基づいて全国一律の基準で発行される身体障害者手帳や精神障害者保健福祉手帳とは、少し異なる性質を持っています。 療育手帳には根拠となる単独の法律がなく、昭和48年に当時の厚生省が出した「療育手帳制度について」という通知をもとに、それぞれの自治体が独自のルール(要綱)を作って運営しています。

そのため、手帳の呼び名や障害の重さを表す区分、判定の細かな基準などが、お住まいの地域によって異なるのが一般的です。「調べてみても情報がバラバラで分かりにくい」と感じてしまうのは、こうした制度の仕組みに理由があります。

A・B判定(等級)の考え方

療育手帳を申請すると、どのような基準で障害の程度(等級)が決まるのか、その基本的な考え方を見ていきましょう。

知能指数と日常生活の様子を総合的に判定

療育手帳の等級は、知能指数(IQ)の数値だけで機械的に決まるわけではありません。知能指数に加えて、言葉によるコミュニケーション、食事や着替え、排泄といった身の回りのこと、金銭管理など、日常生活における自立度や介助の必要性を専門家が総合的に評価して判定します。お子さんの場合は、日頃の様子をよく知る保護者の方への聞き取りも丁寧に行われるのが一般的です。

国が定める基準と自治体独自の細区分

国のガイドライン(厚生労働省の通知)では、障害の程度を重度である「A」と、それ以外(中高・軽度など)の「B」の2つに大きく区分しています。 しかし、実際の運用や福祉サービスの割り当てをより細やかに行うため、多くの自治体ではさらに細かく区分を設けています。例えば、「A1・A2・B1・B2」と4段階に分けている地域もあれば、最重度を「マルA」として「マルA・A・B」と分けている地域、あるいは「1度〜4度」のように数字で表記する地域もあります。

そのため、「A判定だからこのサービスが受けられる」「B判定だから対象外になる」といった具体的な内容は、お住まいの自治体が定めているパンフレットやウェブサイトの基準をあらかじめ確認しておくことが大切です。

自治体によって名称が違う

「療育手帳」という言葉は国の通知で用いられている標準的な名称ですが、実は自治体によっては、親しみやすさや独自の運用の歴史から、まったく別の呼び方をしている場合があります。

主な自治体での名称の例

  • 愛の手帳:東京都、横浜市 など

  • 愛護手帳:愛知県、名古屋市 など

  • みどりの手帳:埼玉県 など

初めて障害福祉の窓口を訪れたり、インターネットで情報を集めたりしているときに、これらの違う名前が出てくると「私の地域には療育手帳がないのだろうか」「別の手続きが必要なのだろうか」と戸惑ってしまうかもしれません。

しかし、たとえ呼び名は違っても、児童相談所や更生相談所で知的障害があると判定された方に交付される手帳であるという、基本的な役割や性質は全国どこでも共通しています。ご自身やお子さんがお住まいの地域ではどのような名称で呼ばれているのかを事前に知っておくだけでも、役所の窓口での相談や、地域の福祉情報の収集がぐっとスムーズになります。

申請の流れ

療育手帳の申請は、お住まいの市区町村の窓口を通じて行うのが一般的です。初めての手続きには不安が伴うかもしれませんが、おおまかな流れを知っておくと見通しが立ちやすくなります。

一般的な申請のステップ

窓口での相談・申請

お住まいの市区町村役所にある「障害福祉課」や「福祉課」などの担当窓口に行き、手帳を申請したい旨を伝えて必要書類を提出します。この際、次の「判定」を受けるための面接日を予約することが多いです。

 

専門機関での判定

指定された日時に、専門の機関(18歳未満の場合は児童相談所、18歳以上の場合は知的障害者更生相談所など)に足を運び、判定を受けます。判定の場では、専門の判定員や心理士によって、発達検査・知能検査や本人への面接、日常生活の様子についての聞き取りが行われます。これは本人の優劣を競うものではなく、どのような特性や困りごとがあるかを正しく把握するためのものです。

 

等級の決定と手帳の交付

判定結果をもとに自治体が障害の程度(等級)を決定し、後日、窓口を通じて手帳が交付されます。申請から交付までには、1カ月〜数カ月ほど時間がかかる場合があります。

定期的な「再判定」について

必要書類や判定の具体的な進め方は、自治体によって少しずつ異なります。また、多くの自治体では、子どもの成長や環境の変化に合わせて適切なサポートを継続できるよう、年齢の節目(就学前や18歳の前後など)に応じた定期的な「再判定(更新)」の時期が設けられている点も知っておくと安心です。

具体的な手続きや必要な持ち物については、まずはお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口に確認してみるのが最も確実です。なお、知的障害そのものの定義や、発達障害との違いなどについて詳しく知りたい方は、関連記事も参考にしてみてください。

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よくある質問

療育手帳について、制度の仕組みや手続きの際によく寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。

Q. 大人になってからでも取得できますか。

A. 取得できる場合があります。

療育手帳は18歳を過ぎてからでも申請することが可能です。18歳以上の場合は、市区町村の窓口を通じて「知的障害者更生相談所」という専門機関で判定を受けることになります。
ただし、療育手帳は「おおむね18歳に達するまでの発達期に現れた知的障害」を対象としているため、大人になってから初めて申請する場合、子どもの頃の様子が分かるもの(小学校・中学校の通知表、母子手帳、過去の診察録など)の提出を求められるケースが一般的です。まずは、お住まいの市区町村の窓口で「成人後の新規申請には何が必要か」を相談してみることをおすすめします。

Q. IQ(知能指数)の数値だけで決まるのですか。

A. 数値だけで一律に決まるものではありません。

知能検査によるIQの数値は大切な目安の一つですが、それだけで等級が確定するわけではありません。言葉によるコミュニケーションの円滑さ、食事や着替え、排泄といった身の回りの動作、社会生活での適応力など、日常生活でどのくらいのサポート(介助)を必要としているかを専門家が面接などを通じて総合的に評価し、最終的な判定が下されます。

Q. 手帳には有効期限がありますか。

A. 多くの自治体で、年齢などに応じた「再判定」の時期が設けられています。

療育手帳には一律の有効期限があるわけではありませんが、子どもの成長や環境の変化に合わせて適切な支援が受けられるよう、数年ごと、あるいは「小学校入学前」「18歳になるタイミング」などの節目で再判定(更新手続き)を求める自治体が多いです。なお、年齢や障害の状況によっては、それ以降の更新が不要となる「次回判定なし(永年)」と認められる場合もあります。お持ちの手帳に再判定の時期が記載されていることが多いので、交付時に確認しておくと安心です。

まとめ

今回は、知的障害のある方の生活や自立を支える「療育手帳」について、その仕組みや判定基準、申請の流れを解説してきました。

療育手帳の要点

  • 児童相談所や知的障害者更生相談所での判定をもとに交付される手帳です

  • 国のガイドラインでは重度「A」とそれ以外「B」ですが、自治体ごとにさらに細かく区分されています

  • 地域によって「愛の手帳」「みどりの手帳」など、独自の名称で呼ばれることがあります

療育手帳は、お住まいの地域によって名前や判定の細かな基準が異なるため、調べていくうちに迷ってしまうこともあるかもしれません。しかし、どのような名称であっても、ご本人やご家族がこれからの生活をより豊かに、安心して送るための大切な「お守り」のような役割を果たしてくれます。

「うちの子の場合はいつ申請するのがいいのだろう」「どのような書類が必要なのかな」と一歩を踏み出すことに迷ったときは、決して一人で抱え込まず、まずはお住まいの市区町村にある障害福祉の担当窓口に相談してみてください。手帳の取得によって、日々の困りごとを和らげる福祉サービスや、将来の働く準備に向けた支援など、新しい選択肢や心強い味方がきっと見つかるはずです。

監修

株式会社エンラボ 専門職チーム
精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士が在籍し、福祉・医療・心理の専門的な視点から記事内容を確認しています。

 

※本記事は一般的な情報提供を目的として作成されたものです。手帳の対象・等級・申請手続き・受けられる支援は自治体によって異なり、制度の見直しが行われることもあります。最新の情報については、主治医およびお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口にご確認ください。

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