軽度知的障害の特徴とは?大人の軽度知的障害の特徴や原因・困りごと・仕事や生活に役立つ情報を解説します。

公開日:2023/07/14

仕事を始めてから「業務をすぐに覚えられない」「指示がうまく理解できない」と難しさを感じている、という方もいるのではないでしょうか?

それはもしかしたら、軽度知的障害の影響かもしれません。軽度知的障害とは、知的障害の中で程度が「軽度」とされる障害のことです。

軽度知的障害は、子供のころは気づかれずに大人になってから仕事などで困りごとを抱えることで判明する場合もあります。しかし、特徴と困りごとを把握して対応していくことで、困難を減らしていくこともできます。

この記事では、軽度知的障害のある方の特徴や困りごとの傾向から、働き方の工夫などを紹介します。

軽度知的障害とは

軽度知的障害とは、知的障害の中で「軽度」に分類される障害のことです。主にIQが51~70で生活や仕事で困る場面がある方が該当します。

 

軽度知的障害という名称のため「困ることが少ないのでは」と思う方もいるかもしれませんが、本人はうまくいかないことを抱えて苦しんでいることに変わりはありません。

 

そういった状況で、うまくいかないことや無理をすることが続いて心身の負担となることで、二次障害として精神的な不調につながることもあり得ます。

 

そのため、軽度知的障害のある方は自分の特徴や困りごとを把握し、適切な支援を受けることや、仕事の工夫をしていくことが大切です。

 

軽度知的障害についてもっと詳しく知りたい方は以下の記事も合わせて御覧ください。

知的障害とは何が違うの?

知的障害とは、おおむね18歳までの発達期に何らかの原因で知的機能の遅れが生じ、日常生活や学校、仕事などの場面で支援が必要となる障害のことです。

 

知的障害の中には、「軽度」「中程度」「重度」「最重度」と障害の程度によって分類があります。

 

分類はIQ(知能指数)と、生活する上での様々な能力である適応能力によって判断されます。

 

その中で軽度知的障害はIQが51~70で、生活の多くのことは自身でできる方が該当します。

 

知的障害については以下の記事でも詳しく解説しております。もっと詳しく知りたい方は以下の記事も御覧ください。

 

関連ページ:知的障害とは?原因や発達障害との違い、種類・診断基準などを解説します。

軽度知的障害の特徴

ここでは、軽度知的障害のある方の特徴を、「未成年のころ」と「大人になってから」に分けてそれぞれの特徴を紹介します。

未成年のころの特徴

軽度知的障害のある方は、小学校に入学してからは、読み、書き、計算などの苦手が表れてきて、学校の勉強についていけなくなることが多いという特徴があります。

 

また、複雑な表現の理解が難しかったり、学校での集団生活のルールがわからないなどで、人間関係がうまくいかないという場合もあります。

 

日常生活でも、おつりの計算が苦手で買い物がしづらかったり、複雑な乗り換えの理解が難しく移動に困難があるといった特徴もあります。

 

こういった特徴は中学、高校と進むにつれて勉強や人間関係も複雑化していくため、より強く表れてくることがあります。

 

そういう状況が続くことで、非行や不登校、うつ病などの二次障害につながることも少なくありません。

大人になってからの特徴

軽度知的障害のある方は大人になってから、生活では携帯電話などの契約や役所などへの届け出などの手続きや、仕事を始めると業務や人間関係で困難が生じることがあるといわれています。

 

また、軽度知的障害のある方は子供のころは一つの教科が苦手でも他でカバーできることや、学校の手続きなども保護者や先生が協力してくれたこともあり、障害だと気づかなかったという方もいます。

 

それが、大人になってから自分で手続きをするようになったり、仕事をするようになったりとライフステージが変わることで困りごとが顕在化してきて、軽度知的障害と判明することがあります。

大人の軽度知的障害の困りごと

大人の軽度知的障害のある方は、主に仕事でどういった困りごとを抱えることが多いのか紹介していきます。

仕事を覚えることが苦手

軽度知的障害のある方は、物事を覚えるのに時間がかかるという特徴や、覚えたことを忘れてしまうという特徴があります。

 

また、一度に複数のことを教えられると、何から覚えたらいいのかわからなくなってしまうという方も少なくありません。

 

そのため、軽度知的障害のある方は大人になってから、仕事がなかなか覚えられずに困ってしまうという方が多いといわれています。

コミュニケーションが苦手

軽度知的障害のある方は、コミュニケーションの面でも困ることがあるといいます。

 

複雑な表現があると相手の言っていることを理解するのに時間がかかる方や、自分の意思をうまく言葉で表現するのが苦手という方も少なくありません。

 

また、軽度知的障害のある方の中には相手の立場や場の雰囲気を考えて話すことが苦手な方もいて、職場で同僚や上司と人間関係を築いていくことに難しさを感じることがあります。

計算が苦手

軽度知的障害のある方は、複雑な計算が苦手という傾向もあります。

 

単純な計算自体はできることが多いですが、スピードを求められたり、暗算でおつりを計算しなくてはいけないといった場面では苦手を感じる方もいます。

 

また、納期や締め切りから逆算して計画を組み立てていくといった複雑な計算が苦手という軽度知的障害のある方もいます。

文章を読むのが苦手

軽度知的障害のある方には、難しい文章を読むことが苦手という方もいます。

 

フリガナのない漢字を読むのに時間がかかることや、例え話や比喩を使った抽象的な言葉の理解が難しい、「しないわけにはいかない」などの二重否定を使った文章の意味をつかむのが難しいといった困りごとが考えられます。

 

そのため、軽度知的障害のある方の中には仕事ではメールや会議の資料の文章の読み書きが負担と感じる方もいます。

複雑な指示の理解が苦手

軽度知的障害のある方は、業務指示の理解で困りごとを感じることもあります。

 

これまで紹介したように、抽象的な言葉の指示や、難しい表現の使われたマニュアルを元に指示を理解することが難しいということが考えられます。

 

他にも、複数の人から一度に指示を受けると理解が追い付かなくなる、優先順位が分からなくなる、という困りごとを感じる軽度知的障害のある方もいます。

大人の軽度知的障害の原因

軽度知的障害の原因ですが、まず、知的障害自体はおおむね18歳未満に知的機能の遅れが生じる障害のため、大人になってから生じるわけではありません。

 

そのため、大人になった後にケガや病気などで知的機能に影響があった場合は、知的障害とはみなされない場合が多いです。

 

また、軽度知的障害とその他の程度で原因が異なるということもないため、ここでは知的障害自体の原因として考えられていることを紹介します。

先天的要因

知的障害の原因の先天的要因とは、出生前に何らかの要因が生じることをいいます。

 

先天的要因には、脳発生異常、先天性代謝異、染色体異常、胎児期の感染症、妊娠中のアルコールや薬物接種などが考えられています。

 

また、遺伝的な要因も上げられることがありますが、両親に遺伝的要因があったとして必ず子供も知的障害が生じるわけではありません。

周産期要因

周産期要因とは、出産前後の分娩期や新生児期に要因が生じることです。

 

出産間近に母親が感染症にかかることや、薬物やアルコールを摂取した影響、出産に際して何らかの問題が起こった影響、新生児期の疾患などが考えられています。

後天的要因

後天的要因とは、出産後に知的障害の要因が生じることをいいます。

 

要因となりうることとして、事故などによる頭部のケガ、日本脳炎などの感染症、その他の疾患、栄養失調などが考えられています。

 

ただ、ここで挙げた以外にも原因が特定できないことや、複数の要因が関係していることもあるとされています。

大人になってから軽度知的障害と診断されることはある?

軽度知的障害を含む知的障害は、基本的に18歳未満に知的機能の遅れが生じていると説明してきました。

 

しかし、軽度知的障害のある方の中には大人になりライフステージが変わることで、生活や仕事の中で困ることが多くなり、そこで検査などを受けて軽度知的障害が判明することもあります。

 

この場合は軽度知的障害自体は子供のころからあっても本人や周囲も気づかず、大人になってからわかったということで、大人になってから軽度知的障害が生じたわけではありません。

 

大人の知的障害の判定は、知的障害者更生相談所で受けることができます。大人になってから仕事などで軽度知的障害の特徴が表れてきたと感じた際は相談してみるといいでしょう。

 

また、判定の際には軽度知的障害が子供のころからあったことが分かる書類などの提出が求められることがあります。学校の通知表、テストの結果などを用意しておくといいでしょう。

知的障害の雇用状況

ここでは、知的障害のある方の就職状況を厚生労働省のデータをもとに紹介します。

 

令和3年度は新規にハローワークに求職申込した数が34,651人で、そこから同じ年度で就職したのが19,957人でした。これは、新規求職者の57.6%が就職をしたことになります。

 

57.6%という数字を見ると「少ない」と感じる方もいるかもしれませんが、10年前の平成23年だと新規求職者が27,748人で、就職したのが14,327人でした。割合にすると51.6%となっており、すべての数字で令和3年の方が高くなっています。

 

このことから、軽度知的障害をはじめ知的障害のある方はここ10年で新しく仕事を探す人も増えていて、実際に仕事が決まる確率も同じく増えているといるということが分かります。

軽度知的障害の働き方や特徴とは

前の章では軽度知的障害を含め知的障害のある方は、毎年新たに2万人近く就職をしていると紹介しました。

 

ここでは、軽度知的障害のある方がどういった働き方をしているかを紹介します。

 

軽度知的障害をはじめ知的障害のある方の働き方として、

 

  • 一般就労(オープン、クローズ)
  • 障害者雇用
  • 福祉的就労

 

について説明していきます。

一般就労

一般就労とは、企業や自治体の役所などと雇用契約を結んで働くことをいいます。一般的にイメージする就職といえるでしょう。

 

一般就労の中でも軽度知的障害など障害のあることを職場に伝える「オープン就労」と、伝えない「クローズ就労」があります。

 

オープン就労では、他の人と同じ求人に応募しながら障害のあることも伝えるため、一定の障害理解や配慮を受けることができます。対してクローズ就労では、障害のことを伝えないため、他の人と全く同じ条件で働くことになります。

障害者雇用

障害者雇用とは、障害のある方専用の働き方のことで、一般企業などの障害者求人に応募して働くことです。

 

障害のあること前提の求人のため、障害者雇用の担当者がいて障害理解が進んでいることや、勤務時間や業務指示のやり方などの配慮を受けやすいといった特徴があります。

 

軽度知的障害のある方はどんな配慮を受けているかは、この後お伝えします。

福祉的就労

福祉的就労とは、企業などで働くことが難しい方が就労継続支援事業所などで支援を受けながら働くことです。

 

福祉的就労では、体調や障害の状態などを踏まえたうえで、支援員よりサポートを受けながら働いていくことができるという特徴があります。

軽度知的障害のある方の配慮例

障害のある方が職場などで受けることができる配慮は「合理的配慮」と呼ばれています。

 

軽度知的障害のある方の合理的配慮例としては、

 

  • 漢字にフリガナを振ってもらう
  • マニュアルはイラストや写真を使ってもらう
  • 指示を出す人を一人に固定してもらう
  • 一つのことを覚えてから次のことを教えてもらう
  • 質問のタイミングを設けてもらう
  • 新しい業務があるときは実際に手本を見せてもらう

 

といったことが挙げられます。

 

軽度知的障害のある方は、自分の苦手に対してどんな配慮があると助かるかを、職場の方と相談しながら合理的配慮を実施していきます。

 

障害者雇用で働く場合は、面接時など入社前に合理的配慮をすり合わせる他、働く中で困ったことがあった際も上司や担当者に相談して実施していくことができます。

大人の軽度知的障害の特徴まとめ

知的障害の中で、IQや生活能力によって程度が「軽度」と判定された方を、軽度知的障害と呼んでいます。

 

軽度知的障害のある方は、子供のころは気づかれず、大人になってから仕事を始めたことがきっかけで困りごとが表れたことをきっかけに、軽度知的障害が判明することもあります。

 

軽度知的障害のある方が仕事で困っている場合は、障害者雇用で働き配慮を受けるなど自分に合った働き方をすることが大事です。

 

ただ、軽度知的障害と一言でいっても人によって性格も得意不得意も異なっています。

すべての人に同じ配慮が適切なわけではありません。自分の特徴を把握して、苦手をカバーできるような配慮を求めていくといいでしょう。

 

一人で進めるのが難しいという方は、軽度知的障害のある方が利用できる支援機関に相談してみることも一つの方法です。

 

軽度知的障害のある方が利用できる支援として、自立訓練があります。自立訓練では、自立した生活が営めるように、苦手を解消するためのさまざまなプログラムに取り組む他、困ったことの相談をすることもできます。

 

自分の得意不得意を把握し、生活や仕事での困りごとを減らしていくことにもつながりますので、ぜひ一度ご相談ください。

 

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