発達障害の診断方法とは?セルフチェック?病院?診断基準や診断方法、受けるべきか悩んだときの相談先などを紹介します。
公開日:2023/08/09
生活や仕事をする中で、「遅刻や忘れ物が多い」「人間関係がうまくいかない」「何度も同じミスをする」といったことが続き、悩んでいる方もいると思います。
そういった悩みの背景に発達障害の影響があるかもしれません。ただ、発達障害という言葉を聞くけど、自分に当てはまっているのかわからない。また、診断をどこで受けたらいいのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
この記事では、発達障害の診断方法やセルフチェック方法、診断基準や受診する病院などを紹介します。
発達障害の診断方法とは?
発達障害かもしれないと感じていても、診断方法や受診する病院が分からないという方も多いと思います。
まず、発達障害の診断は専門の医師がいる病院で受けることができます。
そして発達障害の診断方法としては、
- 問診
- 行動観察
- 心理検査
などが行われることが多くあります。
また、場合によってはもMRI検査なども行われる場合もあります。
問診
発達障害の診断では問診が行われます。子供の場合は保護者が、大人の場合は本人に対して行われることが多いです。
問診で聞かれる内容としては、
- 受診のきっかけ
- 現在の困りごと
- 成長の様子
- 学校や園で指摘された項目 など
があり、大人と子供では若干内容も異なってきます。
基本的には事前に問診表が渡されて記載したうえで問診を行っていきます。
行動観察
子供の発達障害の診断の場合は、行動観察が行われることもあります。
行動観察とは、医師などが子供の様子を観察して、発達障害の特性が表れているか確認することです。
行動観察には別室で過ごしている様子を観察する方法や、診察中の様子を観察する方法などがあります。
心理検査
発達障害の診断には心理検査と呼ばれる検査が行われます。
心理検査には、発達の傾向を見る「発達検査」と知能指数を計る「知能検査」があります。
発達障害の診断に使用する心理検査では、子供向けの「新版K式発達検査」、子供から大人まで使用できる「WISC-IV(ウィスク・フォー)」、大人向けの「WMS-R(ダブリューエムエス・アール)」「WAIS-IV(ウェイス・フォー)」などの検査があります。
心理検査は他にも種類があり、年齢や状況などによってさまざまな検査が行われて、その結果をもとに医師が診断について判断します。
事前に準備しておくと良いもの
発達障害の診断では幼少期の様子が分かる資料が求められることが多くあります。
母子手帳や学校の通知表などを事前に準備しておくようにしましょう。
発達障害の診断で準備しておきたいもの
- 母子手帳
- 小学校・中学校の通知表
- 園や学校での連絡帳
- 以前受けた心理検査の結果
- お薬手帳
- 困っていることをまとめたメモ など
この中で、準備できるものはあらかじめ揃えておくといいでしょう。
発達障害のセルフチェック(診断テスト)とは?
発達障害の診断は専門医で行いますが、インターネット上にはセルフチェックができるサイトがあります。
こういったセルフチェックは、自身の傾向を把握することに役立ちます。「この困りごとは発達障害の影響なのか?」「受診する必要はあるのかな?」といった場合に、まずは自身でチェックしてみるのもいいでしょう。
では、いくつかセルフチェックができるサイトを紹介します。
まず、大人の発達障害の場合は以下のサイトにチェックシートが掲載されています。
参考:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「発達障害の特性チェックシート」
次に、子供の発達障害の場合は以下のサイトにチェックリストが掲載されています。
参考:長野県「チェックリスト」
また、民間にも発達障害のセルフチェックができるサイトがいくつかあります。以下のサイトでは、質問に回答していくことで自身の傾向を測ることが可能です。
他にも、「発達障害 セルフチェック」と検索することで多くのサイトが見つかるはずです。
ただし、こういったセルフチェックは発達障害の診断ができるものではありません。当てはまるものが多くても発達障害ではなく別の原因も考えられます。セルフチェックの結果が気になる場合は、専門機関への相談や受診をご検討ください。
発達障害の診断基準
発達障害といっても分類がいくつかあり、診断基準も変わってきます。ここでは、発達障害の中でも自閉スペクトラム症(ASD)、注意欠如・多動症(ADHD)、学習障害(LD)の診断基準の概要を紹介します。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症(ASD)とは、以前は自閉症、アスペルガー症候群、広汎性発達障害と呼ばれていたものが統一された診断名です。
特定の物事や順番へのこだわり、興味関心の偏り、対人関係の困難などの特徴があるといわれています。
自閉スペクトラム症の診断基準としては以下のような項目があります。
- 家庭と学校、職場など複数の場所で対人関係やコミュニケーションの困難が続いていること
- 会話やこだわりなど2つ以上の場面で限定された反復的な様子が見られること
- 子供のころから上記が存在していること
などです。
なお、子供のころから存在はしていても本人や周りも認識しておらず、大人になってから困りごとが表面化して気づくという場合もあります。
注意欠如・多動症(ADHD)
注意欠如・多動症(ADHD)は、不注意と多動・衝動性という特性がある発達障害です。
不注意では、集中が難しく気が散りやすいといった傾向があり、多動・衝動性ではじっとしていられなくて待つことが苦手といった傾向があります。
注意欠如・多動症の診断基準として以下のような項目があります。
- 不注意や多動・衝動性が年齢に比べて頻繁に見られること
- 症状のいくつかが12歳以前から見られること
- 家庭と学校、職場など2つ以上の場所で症状が見られること
- 対人関係や学業・仕事などで困難が生じていること
などです。
注意欠如・多動症も12歳以前から生じていたが当時は気づかれず、大人になってから診断を受けるという場合もあります。
学習障害(LD)
学習障害(LD)は、読み書き計算などの特定の分野の勉強に著しい苦手を感じる発達障害のことです。限局性学習症(SLD)と表記することもあります。
文字を読み飛ばすなど読むことが苦手な識字障害、複雑な漢字など文字を書くことが苦手な書字障害、複雑な計算や数学的な概念の理解が苦手な算数障害といった種類があります。
学習障害の診断基準として識字障害の項目を紹介します。
- 知的障害に当てはまらないこと
- 文字を流暢に読めるかの確認
- しりとりなどによる音韻認識機能の確認
- 図形の模写などのよる視覚認識機能の確認
などです。学習障害も大人になってから仕事を始めるなどで気づくことがあります。
発達障害の診断はどんな病院で診断できる?
発達障害の診断はどの病院でも受けることができるわけではなく、専門医のいる病院を受診する必要があります。
そして、子供と大人の発達障害どちらも受け付けている病院もあれば、子供のみ、大人のみとなってる病院もあります。
ここでは、子供と大人にわけて発達障害の診断ができる病院を紹介します。
高校生や大学生など、「どちらの病院を受診したらいいのだろう」と迷う場合は、かかりつけ医や発達障害者支援センター、自治体の障害福祉窓口などに相談するようにしましょう。
子どもの発達障害の診断ができる病院
子どもの発達障害の診断は、小児科や児童精神科、児童神経科、発達障害外来のある総合病院などで受けることができます。
すべての小児科などで診断が行えるわけではないので、かかりつけの病院がある場合は窓口や主治医に聞いてみるか、ホームページなどで確認するといいでしょう。
また、心当たりがない場合などは「子どもの心相談医」に相談することもできます。
子どもの心相談医とは発達障害などの相談ができる医師として登録されている方々で、全国にいてサイトから検索できるので、お住いの地域の相談医に相談することも方法の一つです。
大人の発達障害の診断ができる病院
大人の発達障害の診断は精神科や心療内科・発達専門外来のある総合病院などで受けることが可能です。病院によっては入院して検査が行える場合もあるようです。
大人の発達障害の診断を受け付けているかは病院によって異なります。大人の発達障害の診断をできる病院は子どもの発達障害と比べて少なく、予約待ちになることも多いようです。また、診断結果が出るまでは数週間かかることもあります。
診断を受けることで、自身の傾向が客観的にわかり、対策を立てることにもつながってきます。診断を受けるか検討している方は予約や診断結果が出るまでの時間も考慮するようにしましょう。
都道府県のサイトで調べることもできる
発達障害の診断ができる病院を子供と大人に分けて紹介しましたが、「自分で探すにはどうしたらいいのだろう」「一つひとつの病院を見るのは大変そう」と感じる方もいると思います。
一部の都道府県では、発達障害の診断ができる病院の一覧がインターネット上にまとまっている場合があります。以下にいくつか掲載しますので、発達障害の診断ができる病院探しの参考にしてみるといいでしょう。
一覧がない地域でもインターネットで「都道府県名 発達障害 診断 病院」と検索すると診断のできる病院が出てくると思います。
ただ、発達障害の診断は予約が必要になる場合が多くあります。事前に病院のホームページなどを確認して、必要なら予約をするようにしましょう。
都道府県別の発達障害の診断ができる病院一覧(一部)
発達障害の診断を受けるべきか悩んだときの相談先
発達障害の特性に当てはまるが、診断を受けるのか悩んでいるという方も多いと思います。
発達障害の診断を受けるかは個人の意思ですので、自分や子供が納得して受けたいと思ったタイミングで受診をするといいでしょう。
また、診断を受ける前に支援機関に相談するという方法もあります。「発達障害の診断を受けるべきか迷っている」といった悩みも話すことができますので、ぜひ活用してみましょう。
発達障害者(児)支援センター
年齢に関わらず発達障害についての相談を受け付けているのが、発達障害者支援センターです。
医療や福祉、教育などさまざまな関係機関と連携していて、発達障害や傾向がある方、その家族からの相談に対してアドバイスや他の機関の紹介などを行っています。
各都道府県に設置されていますので、診断を受けるか迷っている時も相談してみるといいでしょう。
お住まいの自治体の障害福祉課や保健センター
自治体の障害福祉課や保健センターでも、発達障害の診断に関する相談をすることができます。専門的なスタッフが相談への対応や、他の機関の紹介などを行っています。
所在地は自治体のホームページに掲載されていることが多いため、確認してみるといいでしょう。
幼・保育園や学校の先生
子供の発達障害の診断については、幼稚園や保育園、学校などでも相談ができる場合があります。
主に子供を担当している保育士へ相談する方法があるほか、園によっては相談窓口が設置されている場合もあります。
学校では担任や学年主任、スクールカウンセラー、スクールソーシャルワーカーといった方に相談することが可能です。
通っている園や学校によっても相談先が異なりますので、まずは担当の保育士や担任の先生に尋ねてみるといいでしょう。
職場の産業医
現在働いている方は、職場の産業医に相談する方法もあります。
産業医とは50人以上の職場で選任が義務付けられている、社員の心身の健康に関してアドバイスなどを行う医師のことです。
職場での指示理解やケアレスミス、人間関係などで悩んでいて発達障害かもしれないと考えている場合は、一度相談してみるといいでしょう。
また、産業医がいない職場でも、メンタルヘルスの相談窓口が設置されている場合もあります。名称などは職場ごとに異なりますので、まずはそういった窓口がないか確認してみるといいでしょう。
親の会や当事者団体
民間の相談場所としては、発達障害親の会や、発達障害当事者会などもあります。
名称や活動内容は会によって大きく異なりますが、相談を受け付けている場合もあるようです。
そのほかにも、発達障害についての講演会や交流会といったイベントなども行っていることが多いため、興味がある方はお住いの地域にあるか調べてみてもいいでしょう。
発達障害の診断まとめ
日常生活や仕事などでうまくいかないことがあり、「発達障害なのかもしれない」と考えている方は診断を受けることを検討してもいいでしょう。
診断を受けることで自身の傾向が分かり、対策を立てることや支援を受けることにもつながります。
といっても、診断を受けるかは個人の意思なので、迷いがある方は発達障害について相談できる支援機関に問い合わせるといいでしょう。
発達障害のある方の自立を支援
自立訓練を運営するエンラボカレッジでは、発達障害のある方へ対人関係や日常生活、仕事などの悩みを解消するためのサポートを提供しています。
自立訓練とは障害のある方が自立した生活を営むために、さまざまなプログラムの提供や相談へのアドバイスなどを行っている支援機関です。
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