適応障害の休職とは?休職までの流れや会社への伝え方・休職期間中の過ごし方などを紹介

公開日:2024/03/29

「不安な気持ちが消えない」「仕事をしてもずっと憂うつ」など、適応障害の症状が辛くて休職を考えている方もいると思います。適応障害を治していくためには会社を休んで治療に専念した方がいい場合もあり、休職も選択肢の一つと言えるでしょう。
しかし、「適応障害で休職できるの?」「休職の流れがわからない」「休職中のお金が心配」などの理由で迷うこともあります。
この記事では、適応障害で休職する際の流れや、会社への伝え方、休職期間のお金の保障などについて紹介します。

適応障害で休職するには?

適応障害とは周囲の環境などとうまく合わずにストレスがたまり、心身に症状が現れている状態のことです。適応障害で休職するためにはいくつかステップがあり、休職したいと思ってもすぐに出来るわけではないため、あらかじめ把握してくといいでしょう。一般的な休職の流れとしては、まず会社に休職制度があることを確認したうえで、医療機関から診断書を取得し、会社と細かい条件の話し合いをして休職に入ります。また、復職してからも安定して働くために休職期間中に主治医とともに適応障害の治療や生活リズムの安定を進めていくようにしましょう。

適応障害の休職の流れ

ここでは適応障害で休職する際の流れを紹介します。

 

主なものとして、

  • 医療機関を受診する
  • 会社の休職制度を確認する
  • 診断書を取得する
  • 休職手続きをする

と4つのステップがあります。それぞれ具体的に紹介していきます。

医療機関を受診する

適応障害で休職するには基本的に医師による診断書が必要になります。

そのため、休職を検討しており 医療機関を受診していない方は、まずは医療機関を受診するようにしましょう。すでに適応障害の診断を受けていて通院中の方は、主治医に休職を考えていることを相談してみるといいでしょう。

会社の休職制度を確認する

休職制度は法律によって決められたものではなく、会社によっては休職制度自体がない場合もあります。まずは就業規則などを見て制度自体の有無を知っておきましょう。

 

また、休職制度があったとしても具体的な内容は会社ごとに異なります。特に、「休職できる期間」「休職中の給与や手当」「社会保険料の支払方法」「休職中の連絡方法」「復職へのサポート」を確認してみましょう。

休職できる期間

休職できる期間は会社ごとに違っています。半年から1年程度の会社が多いと言われていますが、勤続年数などによって休職期間の長さが変わる場合もありますので、確認しておくようにしましょう。

休職中の給与や手当

休職している間は、会社に給与の支払い義務はありません。そのため、ほとんどの場合は無給となります。しかし、一部の会社では休職中に手当が出る場合もあるようです。給与や手当についてもあらかじめ確認しておくといいでしょう。

会社から給与や手当が出ない場合にも、傷病手当金など休職中の保障制度がありますので、後ほど紹介します。

社会保険料の支払方法

休職期間にも社会保険料(健康保険料と厚生年金保険料)を支払う必要があります。基本的に普段は給与から天引きされていますが、休職中で給与が出ない場合は他の方法で支払うことになります。別途振り込む必要があるなど支払方法は会社によって違いますので、あらかじめ確認しておくといいでしょう。

休職中の連絡方法

休職中も適応障害による心身の状態や社会保険料の支払い、復職についてなど会社と連絡を取り合うことになります。適応障害の方の中には連絡の頻度や方法がストレスとなる方もいると思います。休職中の過ごし方にも影響するため、会社と連絡手段(電話やメールなど)や頻度についてすり合わせておくといいでしょう。

復職へのサポート

会社が復職へのサポートを行っているかも確認しておきたいポイントの一つです。職場環境のストレスによって適応障害を発症した場合は、いきなり元の職場に戻ると適応障害が再発することも考えられます。慣らし業務や配置転換など会社によってスムーズに復職できるようなサポートをしている場合もありますので、確認しておくといいでしょう。

また、支援機関で復職に向けてサポートを提供している場合があります

 

診断書を取得する

休職制度を確認した後は、医療機関に依頼して適応障害の診断書を取得します。診断書の取得には依頼から2週間程度かかることもありますので、早めに依頼するといいでしょう。また、診断書代として一般的に数千円程度の料金がかかります。

休職の手続きをする

最後に会社に休職の手続きを行います。人事部などの担当者へ診断書を提出し、休職期間、連絡方法、復職の流れなどを話し合い、必要な書類を記載したら休職に入ります。休職後は適応障害の治療や休養などをして、心身の回復に努めていくといいでしょう。適応障害で休職した際の過ごし方は後ほど紹介します。

会社や上司への伝え方

適応障害で休職を考えていても上司や会社に言いづらいという方もいるのではないでしょうか?ここでは、適応障害で休職する際の会社への伝え方の一例を紹介します。

上司に直接伝える

まず一つ目は上司に口頭で伝える方法です。上司との関係性が良く、適応障害と診断を受けたことや休職したいことなどを抵抗なく話せる場合はこの方法を取るといいでしょう。

人事部や産業医に伝える

上司に直接伝えるのが難しい場合は休職を担当している人事部や産業医に伝えるという方法もあります。上司に伝えるよりは抵抗感なく話せるでしょう。なお、産業医は会社によってはいない場合もありますので、先に確認しておくようにしましょう。

電話メールなどで連絡する

相手に関わらず直接伝えるのが難しいと感じる方は、電話やメールなど間接的な方法で伝える方法もあります。対面して伝えることに比べて心理的に伝えやすくなるかもしれません。また、社内にメンタルヘルス窓口などメールや社内チャットなどで相談できる窓口が設置されている場合は、そちらを活用する方法もあります。

 

労働相談窓口に連絡する

会社の人には伝えづらいという場合は、一度社外の相談窓口に連絡を取ってみることも方法としてあります。インターネットで調べると、労働に関する悩みの相談を受け付けている窓口がいくつも見つかると思います。その中で「こころの耳」というサイトでは、電話、メール、SNSで「適応障害で休職したい」「どう会社に伝えていいかわからない」などの悩みを相談することができます。他にも、民間の会社や自治体などさまざまな機関が相談窓口を設置しているので、活用してみるといいでしょう。

 

参考ページ:厚生労働省 こころの耳「相談窓口案内」

適応障害の休職期間はどのくらい?

適応障害で休職した場合の期間は一人ひとりの状況によって違いますが、一般的には3か月程度が多いと言われています。実際に適応障害などメンタルの不調での休職期間は平均約3.5ヶ月というデータも出ています。

 

ただ、あくまで平均的な期間なので自身の状況に合わせて期間の長さは変わります。焦って復職すると適応障害が再発することもあり得ます。適応障害の症状の回復度合いや復職への準備が整っているかも考慮に入れ、主治医や会社の担当者とも話し合いながら復職のタイミングを図っていくようにしましょう。

休職期間中にお金がないと心配する方

適応障害で休職するとき、お金について気になる方も多いと思います。休職期間は給与が支払われないことがほとんどですが、適応障害の方が活用できる生活費の保障や医療費を軽減できる制度がありますので紹介します。

傷病手当金

傷病手当金は健康保険加入者を対象として、適応障害などで仕事ができない期間の生活を保障する制度です。傷病手当金を受給するには条件があり、もらえる場合は最大1年6ヶ月、給与の約3分の2が支払われます。条件などをそれぞれ紹介します。

傷病手当金の条件

適応障害で休職中に傷病手当金を受給するためには4つの条件があります。

 

条件とはそれぞれ、

・適応障害が業務外の事由で生じたこと

・現在働けない状態なこと

・連続する3日を含む4日以上働けないこと

・休業した期間で給与の支払いがないこと

です。

 

ただし、休職中に給与が支払われていても、給与の金額が傷病手当金の金額より低い場合はその差額が支払われます。

 

ポイントは適応障害の原因が業務外で生じたことです。業務によるストレスで適応障害が発症した場合は次に紹介する労災補償を受給できる可能性があります。

傷病手当金の金額

傷病手当金の受給金額は給料のおおよそ3分の2で、具体的な計算式は以下のようになっています。

 

支給開始日以前の継続した12か月の各月の標準報酬月額を平均した額÷30日×3分の2

 

例えば標準報酬月額の平均が「45万円」だった場合は、45÷30で「1.5万円」になり、そこに3分の2をかけて「1万円」となり、働けない1日につき「1万円」が支給されるという計算です。

 

なお、健康保険の加入期間が12カ月未満だった場合は、

  • 直近の継続した各月の標準報酬月額の平均
  • 標準報酬月額の平均値(30万)

のどちらか低い金額が支給されます。

傷病手当金の期間

傷病手当金の受給期間は通算1年6ヶ月です。通算というのは、傷病手当金をもらった後で一度仕事に戻ってから再度同じ理由で働けなくなった場合に、仕事に戻っていた期間は除いて1年6ヶ月分受給できるという意味です。

 

また、次の条件を満たした方は退職した後も引き続き傷病手当金を受給することができます。

・退職日の前日までに健康保険の加入期間が12カ月以上ある

・退職日の前日までに傷病手当金を受給している、またはできる状態にある

 

傷病手当金について詳しいことは、全国健康保険協会のサイトを参考にするか、ご加入の健康保険協会にお問い合わせください。

 

参考ページ:全国健康保険協会「病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)」

労災補償

適応障害で休職した際の保障として、労災補償もあります。労災補償にはいくつか種類があり、休職している場合には「休業(補償)等給付」が対象となります。

 

休業(補償)等給付にも条件などがありますので、それぞれ紹介していきます。

休業(補償)等給付の条件

休業(補償)等給付は傷病手当金と違い、業務内で適応障害などの働けない理由が生じたことが条件となります。

 

条件は3つあり、

・適応障害が業務上の事由によるものであること

・現在労働することができないこと

・給与が支払われないこと

となっています。

 

これらの条件を満たしたうえで、休職して4日目から休業(補償)等給付が支払われます。傷病手当金と違って期間の定めはありません。

休業(補償)等給付の金額

休業(補償)等給付は給与のおおよそ80%が支払われるとされています。具体的には、原因となった出来事の直近3ヶ月分の給与を日割りした「給付基礎日額」の80%となります。

 

例として、月30万円の給与を受け取っていた方が、10月に発生した出来事がきっかけで適応障害を発症した場合の計算を紹介します。

 

この場合の給付基礎日額は「30万円」×3か月で「90万円」となり、そこから7月、8月、9月の合計に数92で割ると、「9千782円」となります。そこから80%をかけて「7千826円」が実際に支払われる金額となる計算です。

 

休業(補償)等給付は自身で請求書を記載し、労働基準監督署に提出します。詳しいことは厚生労働省のサイトなどでご確認ください。

 

参考ページ:厚生労働省「労災補償」

自立支援医療(精神通院医療)

自立支援医療とは、適応障害で通院する際の医療費を助成してくれる制度です。自立支援医療にはいくつか種類があり、適応障害など精神疾患のある方は精神通院医療が対象となります。

 

自立支援医療を活用することで、診察や薬の処方、精神科デイケアにかかる医療費を原則として3割から1割に軽減させることができます。対象となるのは適応障害などの治療のうち、通院にかかる医療費で、入院の際には適用されません。

 

自立支援医療の申請は自治体の障害福祉窓口などで行うことができます。適応障害での治療費が気になる方は検討してみるといいでしょう。

適応障害の休職期間の過ごし方

適応障害で休職していても「どう過ごしていいのかわからない」「焦って心が休まらない」「適応障害の再発が心配」という方もいると思います。

 

休職中の過ごし方は3つに分けられていて、「休養期(治療期)」「活動期」「復職期」と呼ばれています。それぞれの時期の過ごし方を紹介しますので、参考にしてみてください。もちろんこの通りに過ごす必要はなく、主治医や会社の担当者とも相談しながら適応障害の状態も踏まえて自分に合った過ごし方を探してみてください。

休養期(治療期)

休職を開始したばかりの時期を「休養期(治療期)」と呼んでいます。この時期の過ごし方は適応障害など休職の原因となった心身の不調を癒していくことがポイントです。

 

適応障害の主な治療法として、セルフケア、精神療法、薬物療法があります。

適応障害はストレスが原因で発症すると言われているため、セルフケアによってストレスを軽減させて心の健康を回復していくといいでしょう。そのためにも、適応障害の原因となっているストレスからなるべく離れることが大切と言われています。そして、食事、睡眠、運動などの生活リズムを整えていくようにして、アルコールなどは控えるようにしていくことも効果的と言われています。

 

適応障害の精神療法では自身の物事の捉え方や行動を振り返って、適応障害の原因となっているストレスを軽減させたり、コントロールするスキルを身につけたりすることを目的として行われていきます。精神療法により、同じ出来事が起こってもストレスを感じにくくするなどの効果があり、復職した後に適応障害の再発防止にもつながると言われています。

 

また、適応障害の症状で、不眠や不安、抑うつ気分が強い場合には薬物療法が行われることがあります。薬物療法は効果が出るまで時間がかかることや副作用が現れることもあるため、心配なことがある方は主治医と相談しながら進めていくようにしましょう。

活動期

適応障害の治療や休養によって適応障害の症状が回復し、意欲も出てきたら活動期に移っていきます。この時期は自分が楽しいと思えることを行って、復職に向けて活動量を増やしていきます。

 

過ごし方としては、読書や映画鑑賞などの趣味を楽しむことや、ジョギングや軽いスポーツなどを行ってリフレッシュしつつ体力をつけていく方が多いと言われています。

 

ただ、適応障害はストレスによって体調が変化するため、無理に活動しようとするとまた症状が現れる可能性もあります。何か行う際には、最初は短時間から始めて徐々に時間を延ばしていく、複数のことをする場合も一つずつ様子を見ながら始めていくなどの工夫をするといいでしょう。

 

また、自身だけで進めていくのではなく、休職中に使える支援機関を活用する方法もあります。支援機関については後ほど紹介します。

復職期

活動量を増やしていき、働く意欲も高まってきたら復職期に移っていきます。復職期では具体的に職場復帰についての話し合いや活動をしていきます。

 

主治医や会社の担当者と相談しながら、復職の時期や部署、業務量、勤務時間など無理なく復職できるように詳細を決めていきます。「早く元の仕事に戻りたい」と焦る気持ちもあると思いますが、適応障害の症状も考慮して安定して働けるような復職プランを考えていくようにしましょう。

 

また、自身でできる準備として、「休職前と同じ時間に就寝・起床するようにする」「会社まで通勤練習をしておく」などをしている方もいます。

支援機関や制度を活用する

ここまで、適応障害で休職した際の過ごし方を紹介してきましたが、他にも復職をサポートする支援機関や制度を利用する方法もあります。

 

その一つにリワークと呼ばれる制度があります。リワークとは「職場復帰支援プログラム」とも呼ばれていて、適応障害などメンタルヘルスの不調で休職をした方がスムーズに復職できるように様々なプログラムを提供している制度です。

 

リワークは実施場所によって3つの種類があり、それぞれ医療機関で実施する「医療リワーク」、地域障害者職業センターで実施する「職リハリワーク」、会社内で実施する「職場リワーク」と呼ばれています。気になる方は通院している医療機関や働いている会社で行っていないか確認してみるといいでしょう。

 

リワーク以外にも支援機関を利用して復職の準備を行うことも可能です。

 

自立訓練(生活訓練)事業所を運営しているエンラボカレッジでは、休職中の適応障害の方への支援も行っています。自己分析によって適応障害の原因となったストレスの把握やコントロールする方法の取得など、復職してから長く働き続けるためのサポートを提供しています。

 

無料での相談も受け付けているので、「適応障害で休職を考えている」「再発しないか心配」「休職中の過ごし方がわからない」という方はご相談ください。

適応障害 休職のまとめ

適応障害の症状が辛く、会社を休職しようと考えている方も多くいると思います。適応障害で休職する場合には、会社に休職制度があるか確認し、医師から診断書を取得して手続きをしていくのが一般的な流れです。

 

休職中は給与が支払われないことがほとんどですが、生活を保障するために傷病手当金や労災補償などの制度が利用できることがあります。また、適応障害にかかる通院費を軽減させる自立支援医療制度もあります。

 

適応障害で休職中はまず治療を行い、徐々に活動を増やして復職に向けて準備をしていきましょう。復職後に適応障害の再発を防ぐためにもリワークや自立訓練事業所などを活用することも視野に入れておくといいでしょう。

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