SSTとは?大人の具体例10選と効果・受けられる場所【保存版】

更新日:2026/06/09

「上司への報告で言葉が出てこない」「同僚との雑談がどうしても続かない」「断れずに仕事を抱え込んでしまう」――職場でコミュニケーションに悩み、このページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

SST(ソーシャルスキル・トレーニング)は、対人関係や社会で生きるためのスキルを練習する仕組みです。生まれつきの性格ではなく、繰り返し練習することで身につけられるとされています。

この記事では、SSTの具体例10選、プログラム内容と効果、受けられる場所、職場ですぐ活かせる練習法までを整理してお伝えします。

結論:SSTは「対人関係や社会で生きるためのスキルを練習する仕組み」

SSTを一言で説明するなら、「人付き合いの困りごとを場面ごとに分解し、安全な場で練習を重ねて、自分に合うやり方を見つけていく方法」です。

性格を変えたり、過去の自分を否定したりするものではありません。

「断り方が苦手」「報連相のタイミングがつかめない」といった具体的な場面ごとに、自分に合う言い方や進め方を試行錯誤で見つけていく――そんな練習の積み重ねが、SSTの本質だと考えられています。

以下に、本記事で整理する全体像を先にまとめます。

  • SSTは1970年代にアメリカの精神科医リバーマン氏らによって体系化され、日本でも1994年に精神科医療の診療報酬対象になりました
  • 大人がSSTを受けられる場所は、医療機関(精神科デイケア等)・障害福祉サービス(自立訓練・就労移行支援等)・民間プログラム/自助グループの3系統に大別されます
  • 障害福祉サービスでSSTを受ける場合、所得に応じて9割以上の方が利用料負担なしで利用しているケースもあるとされています
  • 「対人スキル=後天的に練習で身につけられる行動の集合」と捉える、認知行動療法をベースにした構造化された方法です

ここから順に、SSTの基本/身につくスキル/具体例/進め方/受け方/始める前に整理しておきたいことまでを解説していきます。

SST(ソーシャルスキル・トレーニング)とは

SST(Social Skills Training/ソーシャルスキル・トレーニング)は、対人関係や社会生活で必要となるスキルを、ロールプレイや繰り返しの練習で身につけていくトレーニング方法とされています。

日本語では「社会生活技能訓練」や「ソーシャルスキル・トレーニング」と訳されます。

もともとは1970年代にアメリカの精神科医ロバート・ポール・リバーマン氏らによって体系化され、日本でも1994年に「入院生活技能訓練療法」として精神科医療の診療報酬対象に組み込まれました。

SSTの土台にある考え方

SSTの根底には、「対人スキルは本人の性格ではなく、後天的に練習で身につけられる行動の集合だ」という捉え方があります。

「人見知りな性格だから雑談が苦手」と原因を性格に求めると、解決の糸口が見えにくくなります。

一方、「雑談を始めるときの一言目のレパートリーが少ない」「相手の反応を見て話題を変えるタイミングがつかめていない」とスキルの問題として捉え直すと、練習の対象が具体的になってきます。

この発想の転換が、SSTを受けるうえでの最初のポイントだと考えられています。

SSTで扱う「ソーシャルスキル」の3つの層

ソーシャルスキルは大きく3つの層で整理されることが多いとされています。

内容例
言語的スキル あいさつ、依頼、断り、謝罪、雑談、報連相
非言語的スキル 視線、表情、声のトーン、姿勢、相手との距離感
認知的スキル 相手の意図の解釈、自分の感情の整理、状況判断

SSTのプログラムは、この3層を「場面」と「行動」に分解し、ひとつずつ練習する設計になっています。

「あれもこれもできるようにならなきゃ」と全体を一気に変えようとせず、今いちばん困っている場面ひとつから始められる点が、SSTの取り組みやすさにつながっているとされています。

SSTと認知行動療法(CBT)の関係

SSTは、認知行動療法(CBT)の一部として位置づけられることがあります。

CBTが「思考・感情・行動」全体を扱う枠組みなのに対し、SSTはその中で特に「対人場面での行動の練習」に焦点を絞った手法と整理されることが多いようです。

医療機関では、CBTとSSTを組み合わせて実施するケース、症状や本人の状態に合わせて重みづけを変えるケースなど、進め方はさまざまです。

SSTで身につく9つのスキル

SSTで取り組むスキルは多岐にわたりますが、ここでは大人の利用者に役立ちやすいスキルを9つに整理してご紹介します。

スキル1|あいさつ・基本的な会話

「おはようございます」「お疲れさまです」のあいさつをはじめ、自己紹介や会話の開始・終了など、当たり前に見えて言語化されにくい場面を扱います。

職場の朝礼で何と返せばよいか分からない、来客対応の最初の一言が出てこない、といった困りごとに対応します。

スキル2|傾聴・受け答え

相手の話を聞きながら、相づち・確認・質問を返すスキルです。

「聞いているつもりでも『話を聞いていない』と言われる」「相手の意図を取り違えてしまう」――そんな困りごとに直結します。

スキル3|アサーション(自他尊重型の自己主張)

自分の意見や気持ちを、相手を尊重しながら適切に伝えるスキルです。

代表的な手法として、状況・感情・提案・選択を順番に伝える「DESC法」や、「私」を主語にして話す「アイメッセージ法」があります。

詳しくはアサーションとは|意味・3つのタイプ・トレーニング方法もあわせてご覧ください。

スキル4|依頼・断り

人に頼みごとをする、誘いを断る、業務を引き受ける/お返しする、といった場面別のスキルです。

「断れずに仕事を抱え込む」「頼み方が分からず一人で抱え込んでしまう」――こうした困りごとに直結する場面でもあります。

スキル5|謝罪・お礼

ミスをしたときの謝り方、助けてもらったときの感謝の伝え方を練習します。

タイミング・表情・言葉選びの3点で整理されることが多いとされています。

スキル6|報連相(報告・連絡・相談)

「いつ・誰に・何を・どう伝えるか」を整理する練習です。

タイミングの取り方、要点のまとめ方、相談していい範囲の見極め方など、職場で頻発する場面を扱います。

スキル7|問題解決・意思決定

困りごとを整理し、選択肢を出し、優先順位をつけて行動を決めるスキルです。

職場では「優先順位がつけられない」「相談のタイミングが分からない」といった課題、生活では「複数の用事をどうこなすか」といった課題に対応します。

スキル8|感情調整(アンガーマネジメント・ストレス対処)

怒り・不安・自己批判など、感情の波との付き合い方を扱うプログラムです。

①感情のきっかけを特定する、②リラクゼーション技法を学ぶ、③ロールプレイで実践する、という3段階で進められることが多いとされています。

感情の波で生活や仕事が安定しにくい方は、感情をコントロールできない。大人の発達障害の可能性とは?もあわせて参考にしてみてください。

スキル9|セルフモニタリング(振り返り)

「今日は何がうまくいって、何がうまくいかなかったか」を整理する力です。

これがあると、職場で同じ失敗を繰り返さず、自分の取り扱い説明書を更新し続けられるようになります。

「振り返り」というと反省や自責のイメージを持つ方もいらっしゃるかもしれませんが、SSTの文脈では「次の練習に活かす材料を集める」というニュートラルな作業として位置づけられています。

SSTのプログラム内容|大人向け具体例10選

ここまでで紹介したスキルを、より実生活に近い具体例として10種類に整理しました。

「自分が困っている場面はどれに近いか」を見ながら読んでみてください。

具体例1|上司に体調不良を伝えて早退する

休職・離職を経験した方に多い悩みのひとつが、「体調が悪くても言い出せず、限界まで我慢してしまう」というケースです。

SSTでは、

  • どのタイミングで切り出すか
  • 「いま少し体調が悪いので」と短く伝える型を準備しておく
  • 「30分だけ早退してもよいでしょうか」と具体的な依頼に落とし込む

といった流れを、ロールプレイで何度か練習しておきます。

実際の場面で使うときに「言うこと自体は決めてある」状態を作っておけると、迷いが減りやすいとされています。

具体例2|同僚からの誘いを断る

「飲み会に誘われたが、体調的に行きたくない」「業務時間外の頼まれごとを引き受けてしまう」――こうした場面では、断りの型を持っておくと過剰適応を防ぎやすくなります。

SSTでは、

  • 一度受け止める(「お声がけありがとうございます」)
  • 状況を伝える(「今日は早めに休む予定で」)
  • 代案を出す(「次回は参加させてください」)

の3ステップで練習することが多いとされています。

具体例3|雑談の入り方・続け方

「何を話せばよいか分からない」「会話が続かない」――発達障害のある方に多く聞かれる悩みです。

SSTでは、

  • あいさつ+天気/曜日/時事ニュースで入る
  • 相手の話を1つ広げる質問を返す
  • 「自分も似た経験がある」とエピソードを乗せる
  • 切り上げるときは「またゆっくり話しましょう」と区切る

といった型を準備しておく練習をします。

完璧な雑談を目指すのではなく、「自分に無理のない関わり方」を見つけることが目的です。

場面設定

場面設定ではスタッフがそのテーマを取り上げた理由、ロールプレイの目的、具体的な人や状況を参加者に伝えます。実際に演じることになるため、ここで場面設定をしっかりイメージできるように参加者に伝えます。テーマは参加者から事前に聞いておくことが多いですが、その場で話してもらうこともあります。

1回目のロールプレイ

参加者が役割に分かれて1回目のロールプレイを行います。テーマが「上司からの仕事依頼を断れない」だとした場合は、実際に上司役の人に仕事の依頼をしてもらい、本人役の人が「今○○の仕事を抱えているのですぐには受けれません」など断る練習をします。

本人役の感想

ロールプレイが終わったらまずは本人から感想を話します。「言い出すのにすごく緊張した」「もっと違う言い方が良かったかもしれない」など、演じてみて気づいたことを話します。

相手役のフィードバック

次に相手役からのフィードバックとして、断りの言葉を言われたときにどう感じたかを話します。「忙しいことに気づけた」「ちょっと言い方がきついと思った」など、こちらも演じてみて気づいたことを伝えます。工夫した方がいい点などもあったら一緒に伝えます。

周りからのフィードバック

その後に周りで見ていた人からのフィードバックがあります。こちらは客観的に良かった点や改善点などを挙げていきます。本人役の人はフィードバックを受けて、気になったことを質問するなどして2回目のロールプレイに向けて改善点を明確にしていきます。

2回目のロールプレイ

1回目のロールプレイで明確になった改善点を踏まえて、2回目のロールプレイを行います。その後はまた本人、相手、周囲で感想やフィードバックを言い合って良かった点や改善点を挙げていきます。場合によってはさらにロールプレイを行うこともあります。

全体を通しての感想

最後に全体を通しての感想を一人ずつ話して終了となります。今回学んだことを次回まで職場で実践できるか試してみるといった宿題が出る場合もあります。

 

SSTのプログラム内容や効果について紹介しました。今回挙げた以外にも方法はたくさんあります。また、細かい部分は場所によって異なっていますので、詳しいことは実施場所にお問い合わせください。

具体例4|報連相(上司への進捗報告)

「報連相をしなさい」と言われても、いつ・何を・どう伝えるかが分からない方は少なくありません。

SSTでは、

  • 報告:完了した事実を結論から伝える
  • 連絡:相手が知っておくべき情報を共有する
  • 相談:自分では判断しきれないことを相手の判断に委ねる

の3つを区別する練習を行います。

「結論→経緯→今後の予定」の順で1分以内にまとめる、といった型のレパートリーを増やしていくのが一般的です。

具体例5|ミスをしたときの謝罪と再発防止の伝え方

「謝るタイミングを逃してしまう」「謝ったあとどうフォローすればよいか分からない」――そんな場面の練習です。

SSTでは、

  • すぐに事実を共有する(「●●の件でミスがありました」)
  • 原因の見立てを伝える(「●●が原因だったと考えています」)
  • 再発防止策を伝える(「次からは●●で対応します」)
  • 必要であれば対応を相談する

という流れで型をつくっていきます。

「怒られたらどうしよう」という不安を、「言うことは決めてある」という安心に置き換える効果があるとされています。

具体例6|会議での発言・意見の伝え方

「会議で発言しようと思っても、声を出すタイミングが分からない」「意見はあるのに、まとまる前に話が進んでしまう」――そんな場面の練習です。

SSTでは、

  • 「ひとつ確認してもよいでしょうか」と切り出しのフレーズを準備
  • 結論を先に出し、補足は後ろに置く
  • 反対意見を出すときは「●●の観点だと、別の考え方もありそうです」と置き換える

といった型を練習します。

具体例7|電話応対と取次ぎ

電話に苦手意識を持つ方は多く、「相手の名前が聞き取れない」「保留と転送の操作で慌てる」といった悩みがよく聞かれます。

SSTでは、

  • 名乗り→相手確認→用件確認の順に手順化
  • 聞き取れなかったら「恐れ入りますが、もう一度お名前を伺ってもよろしいでしょうか」とお願いする型を持つ
  • 取次ぎが必要な場合の保留・声かけまでをロールプレイで練習

といった形で進めます。

具体例8|面接・自己PRの準備

復職や転職の場面では、面接で自分の状況や強みを伝える練習も大切です。

SSTでは、

  • 自分の特性を客観的な言葉に置き換える
  • 必要な配慮を「お願い」ではなく「事実」として伝える
  • 過去の経験を強み・学びとして再構成する

といったテーマを扱います。

「うまく見せる」のではなく「正確に伝える」ことを目指す点が、面接対策のSSTの特徴です。

具体例9|家族・パートナーとのコミュニケーション

職場だけでなく、家族との関わりに悩みを抱えている方もいらっしゃいます。

「相手の言葉に過剰に反応してしまう」「自分の不調を家族に説明できない」――そんな場面の練習も、SSTの対象に含まれます。

エンラボカレッジでは、家族との関係を整える文脈でSST的なやり取りを扱うこともあります。

具体例10|服薬管理・通院の継続

精神疾患の治療を続けている方を対象に、服薬のタイミング・副作用への対応・通院の継続を扱うプログラムです。

医療機関や、医療と連携した障害福祉サービスで実施されることが多くなっています。

「主治医に副作用を伝える」「次回の通院予定を家族と共有する」――こうした地味だが重要な場面も、SSTの練習対象になり得ます。

SSTのプログラム進行|5ステップで整理

SSTは、場面と行動を分解し、段階を踏んで進めていく構造になっています。

代表的な進め方は次の5ステップです。

ステップ1|教示(インストラクション)

これから練習する場面と、身につけたい行動を、参加者と一緒に整理します。

「なぜこのスキルが必要か」「うまくいくとどう変わるか」をことばにすることで、練習の目的を共有します。

ここで「自分が困っている場面」を具体的に切り出せると、その後の練習がスムーズになります。

ステップ2|モデリング

支援者や、ロールモデルとなる人が、その行動を実際にやってみせます。

言語的スキル(言葉)・非言語的スキル(表情・声のトーン)・認知的スキル(相手の意図の読み取り)を、目で見て確認できる形で示します。

「文字で読むより、実際にやっているのを見ると分かる」という方は多く、ここがSSTの強みのひとつです。

ステップ3|ロールプレイ

参加者が、設定した場面で実際にその行動を演じます。

「上司に体調不良を伝えて早退を申し出る」「同僚からの誘いを断る」「面接で自己紹介をする」など、現実に近い設定で練習することがポイントとされています。

最初は緊張で言葉が詰まる方も多いのですが、回を重ねるうちに少しずつ言葉が出るようになっていく方が多いと感じています。

ステップ4|フィードバック

ロールプレイを見ていた支援者や他の参加者が、よかった点を中心にフィードバックを返します。

「指摘」よりも「正のフィードバック」を重視するのがSSTの特徴です。

改善点は、次の練習に活かす形で短く整理します。

「ダメ出しの場ではない」と分かることが、安心して練習を続けるための前提条件になります。

ステップ5|宿題(汎化)

練習で身につけた行動を、日常生活や職場で実際に使ってみる課題を設定します。

「次の朝礼で1人にあいさつを返す」「週1回、上司に進捗を報告する」など、小さな行動から始めることが推奨されています。

結果は次回の練習で共有し、調整を繰り返していきます。

SSTは1回で身につくものではなく、「教示→モデリング→ロールプレイ→フィードバック→宿題」のサイクルを繰り返すなかで、少しずつ場面に応じた行動の幅を広げていく設計です。

大人がSSTを受ける3つのメリット

「子どもの療育のイメージが強くて、大人が受けてもよいのだろうか」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。

メリット1|「困りごとを場面ごとに分解できる」ようになる

「人付き合いが苦手」「コミュニケーションがうまくいかない」と抽象的に捉えていた悩みを、SSTでは場面 × スキルに分解します。

「電話を取るときに焦る」「雑談の入り方が分からない」「報連相のタイミングが分からない」といった具体課題に切り分けられると、対処の手がかりが見えてきます。

「全部苦手」から「この場面のこのスキルを練習中」に変わることで、自分に対する見方も少しずつ変わっていく方が多いとされています。

メリット2|「やってみる」前提なので、苦手意識を超えやすい

頭で理解していても、いざその場面になると行動できない――これは多くの方が経験することです。

SSTでは安全な場でロールプレイを繰り返すため、「実際にやってみる」段階を踏むことができます。

エンラボカレッジでも、初日の見学では緊張で言葉数が少なくなる方が多いのですが、プログラムを重ねるうちに、安心して話せる場面が増えていく方が多いと感じています。

メリット3|「自分の取り扱い説明書」として残せる

SSTで気づいた「自分が困りやすい場面」「自分に合った対応のパターン」は、書き出して可視化することで、卒業後も継続的に使える資産になります。

エンラボカレッジでは、My Lab.プログラムの中で『自分/支え方マニュアル』として整理し、復職時の上司・同僚への配慮依頼や、生活面のセルフケアにそのまま使えるかたちで残せる設計にしています。

「練習しっぱなしで終わらせない」――この成果物として残す発想が、大人のSSTを継続する上での大きな支えになるとされています。

SSTが受けられる場所と費用

大人がSSTを受けられる場所は、大きく3系統に分かれます。

1|医療機関(精神科・心療内科のデイケア等)

精神科病院・クリニックのデイケアやリワークプログラムの一部としてSSTが組み込まれていることがあります。

医師の指示のもとで実施され、健康保険の対象となる場合があります。

  • 対象:通院中の方が中心
  • 費用:自立支援医療制度の対象(1割負担・上限額あり)になる場合が多いとされています
  • 特徴:医師・看護師・作業療法士などの医療職が関わる
  • 向いている方:主治医がいて、医療連携を中心に進めたい方/診断・症状管理が優先される段階の方

精神科デイケアの詳しい仕組みは、精神科デイケアとは?目的や対象・プログラム内容・メリット・デメリットもあわせてご覧ください。

2|自立訓練(生活訓練)

障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのひとつで、生活面・対人面の土台を整える訓練を行います。

SSTは「コミュニケーション」や「対人スキル」「感情コントロール」のプログラムとして含まれている事業所が多くあります。

  • 対象:18〜65歳未満の精神・発達・知的障害のある方(診断未取得でも利用相談可の場合あり)
  • 費用:原則1割負担/所得により減免(9割以上の方が負担なしで利用とされています)
  • 特徴:「就職ありき」ではない進路設計が可能。復職・復学・就職など多様な進路に対応

自立訓練の対象や内容は、自立訓練(生活訓練)とは?対象・期間・卒業後の進路で整理しています。

3|就労移行支援

働くことを目標とした2年間の福祉サービスです。

職場でのコミュニケーションに特化したSSTが組み込まれている事業所が多いとされています。

  • 対象:就労を希望する障害のある方(原則18〜65歳未満)
  • 費用:自立訓練と同じ仕組み(所得により減免)
  • 特徴:就職をゴールにした実践重視。「すぐ働きたい」方に向く

自立訓練との違いは、自立訓練と就労移行支援の違い、対象・支援内容もご参照ください。

4|就労継続支援A型・B型

すでに福祉的就労の場で働いている方を対象に、職場の対人課題に応じてSSTが組まれる場合があります。

A型は雇用契約を結びながら働くサービス、B型は雇用契約なしで自分のペースで働くサービスです。

5|民間プログラム・自助グループ・カウンセリング

民間の研修プログラムや、当事者会・自助グループでSST的なワークを行っている場合もあります。

  • 対象:当事者・経験者
  • 費用:無料〜実費/自費カウンセリングは1回数千〜数万円
  • 特徴:個別性が高い/公的給付対象外の場合あり

受けられる場所の比較表

観点 医療機関 障害福祉サービス 民間・自助
主目的 症状の管理・治療補助 生活・就労の土台づくり 仲間との学び合い
費用 健康保険対象が多い 原則1割負担(減免あり) 主催により異なる
利用条件 主治医の指示・通院中 受給者証 主催の条件次第
期間 数か月〜 自立訓練は原則2年間 不定
進路の柔軟性 復職中心 復職・復学・就職・継続支援など多様 多様

「症状がまだ不安定」「服薬調整中」など医療色が濃い段階では医療機関のSSTが、「生活リズムや自己理解から土台を作り直したい」段階では福祉サービスが、それぞれ向きやすいと考えられています。

公的サービスを利用するには、市区町村への申請や受給者証の取得が必要な場合があります。詳しくは受給者証の取得方法と利用までの流れもあわせてご覧ください。

エンラボカレッジのSocial Lab.プログラム|SSTをどう扱っているか

エンラボカレッジ(株式会社エンラボが運営する自立訓練/生活訓練/2015年4月設立・現在11拠点)では、SSTを単独のプログラムとして切り出すのではなく、8つのプログラムの中で生活と就労の両面から扱う設計にしています。

エンラボカレッジ8プログラムの中でのSSTの位置づけ

プログラム名 SSTとの関わり
感情学 喜怒哀楽の表現方法・考え方のクセ・身体反応を整理。アンガーマネジメントの土台になります
コミュニケーション 伝え方・聞き方・断り方・依頼の仕方など、対人スキルの基礎を扱います
My Lab. 自分の特性と必要なサポートをまとめた『自分/支え方マニュアル』を作成。SSTで練習した行動を、職場で伝えるツール化します
アクティビティ 他者との違いを通して感覚特性を知り、対人場面での適応力を育てます
Life Lab. 仕事・生活習慣・人間関係・休暇の4軸で、対人スキルを生活全体に位置づけます
ソマティック Lab. 心身の状態に気づき、対人ストレスへのセルフケアを整えます
Social Lab. イベントの企画・運営やゲーム・テーマトークを通し、対人スキルを実践の場で試します
スキルアップ 就職活動・職場定着に必要なスキルを整理します

8プログラムの全体像は、エンラボカレッジのプログラム紹介もあわせてご覧ください。

Social Lab.プログラムの中身

Social Lab.は、イベントの企画・運営やゲーム・テーマトークを通して、座学で学んだことを実践の場で試すプログラムです。

「コミュニケーションプログラムで学んだ伝え方を、実際のイベント企画で使ってみる」「感情学で学んだセルフモニタリングを、メンバーとの議論の中で試してみる」――こうした往復が、学びの定着につながると考えられています。

「すぐ就職」ではなく「自分を理解する時間」を確保する設計

就労移行支援が「就職」をゴールに設計されているのに対し、エンラボカレッジ(自立訓練)は、生活と自己理解の土台づくりを中心にしています。

そのため、SSTで身につけた対人スキルを「就職場面だけ」に閉じない設計です。

扱う場面は、家族との関係・同居人との生活・友人との関わりなど生活全体に広がります。

卒業後の進路も、就職だけに絞らず、復職・復学・就労継続支援A型/B型・継続支援など多様な選択肢を一緒に検討する姿勢を取っています。

『自分/支え方マニュアル』として成果物化する

SSTで練習した行動は、My Lab.プログラムの中で『自分/支え方マニュアル』としてまとめます。

「どんな場面で・どんな反応をしやすく・どんな配慮があると動きやすいか」を言語化することで、卒業後の職場・家庭・支援機関でも継続して使えるツールになります。

利用者さんの声(公式抜粋)

エンラボカレッジ公式サイトに掲載されている利用者さんの声から、SST的なプログラムに関連するものを抜粋します。

  • 21歳男性:「相手と自分は別であることに気づけた」
  • 22歳男性:「伝え方を変えることで、みんなが聞いてくれるようになった」
  • 24歳女性:「他人との会話を必要最低限にすることで、自分のしたいことがしやすくなった」
  • 31歳男性:「要点を簡潔に話せるようになり、メモも見やすくまとめられるようになった」

出典:エンラボカレッジ公式サイト(取得:2026-05-29)

体験談(エンラボストーリー)

SSTを受ける前に押さえておきたい3つのポイント

「受けてみよう」と思ったとき、いきなり申し込む前に整理しておくと選択肢が見えやすくなる3点をお伝えします。

ポイント1|いま自分はどの段階にいるかを見立てる

SSTは「どこで受けるか」によって、得られる時間の使い方が変わります。

  • 症状が不安定で、まずは医療的なケアが優先される段階 → 主治医に相談、医療機関のSSTを検討
  • 生活リズムが乱れていて、対人以前の土台から整え直したい段階 → 自立訓練を検討
  • 生活は整っていて、就労準備に進みたい段階 → 就労移行支援を検討

主治医や相談支援専門員と一緒に、自分の段階を見立てることから始めるのが安心です。

ポイント2|ゴールは「就職」だけか、「生活を整える」も含むか

「就職」が明確な単一ゴールなら就労移行支援が、「生活・自己理解・進路の選択肢」を広く整えたいなら自立訓練が、それぞれフィットしやすいと考えられています。

「就職以外の選択肢も視野に入れたい」「復職・復学・継続支援も含めて検討したい」――そんな段階の方は、進路の多様性を認めている事業所を選んでおくと、後から方向転換しやすくなります。

ポイント3|「直す」より「整える」発想で取り組む

SSTで身につくのは「正しいコミュニケーション」ではなく、「自分に合った関わり方の選択肢」です。

「人見知りを治す」ではなく、「人見知りな自分でも疲れにくい働き方を整える」という方向で考えると、続けやすいと感じる方が多いようです。

SSTは「正解探し」ではなく「自分に合うやり方を見つける場」だと位置づけて取り組むことを、エンラボカレッジでは大切にしています。

あわせて整理しておくと安心な3つの併用

SSTは練習の場であり、生活全体を変える支援ではありません。

  • 主治医・心理職への定期相談
  • 家族や信頼できる人との振り返り
  • 必要に応じた服薬・休養

など、複数の支えを組み合わせるとよいとされています。

「SSTさえ受ければ全部解決する」と考えず、「SSTは選択肢を増やすツールのひとつ」と位置づけておくことが、長期的な続けやすさにつながります。

よくある質問(FAQ)

Q1. SSTは何歳から受けられますか?

児童発達支援・放課後等デイサービスのSSTは未就学〜18歳が中心です。

成人向けは医療機関のデイケア・自立訓練・就労移行支援などで、18〜65歳未満を対象とする事業所が多いとされています。

Q2. 発達障害の診断がなくても受けられますか?

医療機関のSSTは原則として通院・診断が前提です。

一方、自立訓練などの障害福祉サービスは、診断がない場合でも市区町村への相談から始められる場合があります。

エンラボカレッジでも、発達障害の診断を受けていない方の利用相談に対応しています。詳しくは受給者証の取得方法もご覧ください。

Q3. SSTを受けるのに費用はどのくらいかかりますか?

医療機関で受ける場合は健康保険が適用される場合があります。

障害福祉サービス(自立訓練・就労移行支援)で受ける場合は、所得に応じた利用者負担となる制度です。

事業所によっては、利用料負担なしで通われる方が多いケースもあります。詳細は各事業所・お住まいの市区町村にご確認ください。

Q4. SSTは1人でも受けられますか?

集団で行うのが標準的とされていますが、医療機関や事業所によっては個別での実施が可能な場合もあります。

書籍やワークシートで自分でできる部分もありますが、SSTの中心は「他者とのロールプレイ」とフィードバックです。

最初は集団に入るのが不安、という方は、見学時に「個別から始められるか」を確認してみてください。

Q5. オンラインでも受けられますか?

一部の医療機関・自費カウンセリングでオンラインSSTを提供している場合があります。

障害福祉サービスは通所が原則ですが、見学・相談はオンラインで対応している事業所もあります。エンラボカレッジでもオンライン見学に対応しています。

Q6. 何回くらい受ければ効果が出ますか?

個人差が大きく、一概には言えません。

研究上は週1回×3〜6か月で一定の効果が見られたとする報告もあるとされています。

「すぐに上達する」より「自分に合うやり方を見つける」スタンスで取り組む方が、結果的に続きやすいと感じています。

Q7. SSTと認知行動療法(CBT)の違いは何ですか?

SSTは認知行動療法をベースにしたプログラムのひとつとされています。

CBTが「思考・感情・行動」全体を扱うのに対し、SSTは「対人場面での行動の練習」に焦点を絞った手法と整理されることが多いようです。

Q8. 仕事を続けながらSSTを受けられますか?

医療機関のデイケアは、平日昼間の実施が多く、フルタイム就労との両立は難しいケースが多いとされています。

自立訓練・就労移行支援も通所が前提のため、フルタイム就労と並行は基本的に難しい場合が多くなっています。

休職中の方が利用する例は多くあり、リワーク(復職準備)としての活用も広がっています。

Q9. SSTで身につかないこと・できないことは何ですか?

期待値のズレを防ぐため、SSTだけで完結しにくい領域も整理しておきます。

  • 性格そのものの変化
  • 職場・家庭の人間関係そのものの解決
  • 医学的な治療(症状の根本的な軽減は医療の領域)
  • 「明日からまったく違う自分になる」というレベルの変化

SSTは「選択肢を増やすツール」と位置づけて、医療・福祉・職場・家族との連携の中で活用する視点が大切とされています。

まとめ

ここまで、SSTの基本/身につくスキル/大人向けの具体例10選/進め方5ステップ/受けられる場所と費用までを整理してきました。

最後に要点を振り返ります。

  • SSTは、対人関係や社会生活で必要なスキルを、ロールプレイや繰り返しの練習で身につけていくトレーニング方法です
  • 「対人スキルは性格ではなく、後天的に練習で身につけられる行動の集合」という発想が土台にあります
  • 大人がSSTを受けられる場所は、医療機関・障害福祉サービス(自立訓練・就労移行支援等)・民間プログラム/自助グループの3系統です
  • 進め方は教示→モデリング→ロールプレイ→フィードバック→宿題の5ステップで、1回ではなくサイクルを繰り返すことで定着していきます
  • SSTは「正解探し」ではなく「自分に合うやり方を見つける場」と位置づけると、続けやすくなります

「もう一度社会に戻りたい。けれど、同じ失敗を繰り返したくない」――そんな方にとって、SSTは「自分に合う関わり方の選択肢を増やす」ための1つの手段になります。

焦って決める必要はありません。情報を整理して、自分のペースで動き出しましょう。

更新日:2026/06/09 公開日:2024/05/04

この記事について【作成・監修】

本記事は、自立訓練(生活訓練)事業所「エンラボカレッジ」を運営する株式会社エンラボの専門職スタッフが作成・監修しています。

【在籍資格】
精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士

【現場での実践】
自立訓練(生活訓練)・就労移行支援などで、診断名・特性に合わせた個別支援を提供しています。

【運営会社】
株式会社エンラボ/設立2015年4月/神奈川県を中心に首都圏・関西・宮崎で11拠点運営

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