うつ病の方の転職|進め方5ステップと面接対策・再発防止のポイント

更新日:2026/05/30

「いまの職場ではうつ病が悪化しそう」「転職したい気持ちはあるけれど、続けられるか不安」――そんな気持ちを抱えてこのページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。

うつ病のある方の転職は、ご本人の体調と環境のミスマッチを整え直す手段である一方、準備不足のまま動くと、再発や短期離職につながりやすい局面でもあります。

この記事では、うつ病と転職の関係、転職前に整理したい4点、進め方の5ステップ、面接対策、転職後の再発防止、クローズとオープン就労の判断軸、相談先までを、現場で関わってきた視点で整理しました。

結論:うつ病の方の転職は「治してから」よりも「症状と相談しながら、無理のない環境を選び直す」プロセス

第一に、うつ病のある方の転職で最も重要なのは、「症状が完全に消えてから動く」ことではなく、「いまの体調で続けられる働き方を、医師・支援者と相談しながら選び直す」ことです。

第二に、転職前に整理したいのは、現職離職の理由・体調の現在地・希望する働き方の条件・経済面の見通しの4点で、これらが曖昧なまま動くと「同じ理由でまた辞める」サイクルに陥りやすくなります。

第三に、転職活動そのものは情報収集・自己分析・応募準備・選考・内定後の調整の5ステップで進み、各段階で「焦らない仕組み」を組み込むことが、長く働ける転職先と出会う鍵になります。

ここから整理できるのは、うつ病の方の転職は「短期で決着をつける一発勝負」ではなく、「医療・福祉・キャリア支援を組み合わせながら、自分に合う環境を時間をかけて見つけていくプロセス」だということです。

そのうえで、すでに退職している方は焦らずに体調を整え直す時期、在職中の方は休職・転職・継続のどれが現実的かを主治医と話し合う時期として、本記事の整理を使っていただけます。

うつ病と転職の関係|「治ってから」より「波と付き合いながら」が現実的

「うつ病が完治してから転職しよう」と考えている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、うつ病は風邪のように「完全に治った/治っていない」と線引きしにくい疾患で、症状の波と付き合いながら働き続けている方が大半です。

うつ病は再発しやすい疾患である

うつ病は、一度発症した方の約60%が再発を経験するとされる疾患です。

再発を経験した方のうち、二度目の再発を経験する割合はさらに高く、三度目になるとほぼ確実に再発するとも報告されています。

これは「ご本人の意志が弱い」からではなく、うつ病という疾患の特性そのものに由来するものです。

転職を考える際にも、「再発はあり得る前提」で環境を選ぶことが、長期的に働き続けるうえで大切な視点になります。

現職継続・休職・転職の比較軸

「いまの職場が原因でうつ病になった、または悪化した」と感じている方は、転職以外の選択肢も含めて検討する余地があります。

具体的には、現職継続(部署異動・業務調整を含む)、休職(傷病手当金を活用しながら治療に専念)、転職(環境そのものを変える)の3つです。

それぞれにメリット・デメリットがあり、ご自身の状況によって最適解は変わります。

現職継続は、慣れた環境と人間関係が維持される一方、ストレス要因が変わらないリスクがあります。

休職は、収入の保障(傷病手当金)を受けながら治療に専念できる反面、復職時の業務調整が課題となります。

転職は、新しい環境で再スタートが切れる一方、人間関係・業務をゼロから構築する負担と再発リスクがあります。

「在職中に転職活動を進める」「いったん休職してから判断する」「退職してから動く」など、進め方そのものも複数あるため、主治医と相談しながら順序を決めることが大切です。

主治医の意見を聞いておく

転職を本格的に検討する前に、主治医と「いまのタイミングで転職することについてどう思うか」を話し合っておくことをおすすめします。

主治医が把握している症状の経過・薬の調整状況・通院ペースなどを踏まえ、「もう少し体調が安定してから動いたほうがよい」「いまの環境のままでは悪化しやすいので、転職を視野に入れたほうがよい」など、専門的な助言を受けられます。

主治医の意見は、転職活動中の自己分析や面接でも役立つ材料になります。

「焦り」が最大のリスク

うつ病のある方の転職で、最も避けたいのは「焦って決める」ことです。

「早く次を決めなければ」「収入が途切れる前に」と焦ると、職場の実態を十分に確認しないまま入社を決めてしまい、結果として早期離職や再発につながりやすくなります。

転職活動には3〜6か月、場合によっては1年程度かかることを想定し、その期間の経済面・生活面の見通しを立てておくことが、焦らない仕組みづくりの第一歩です。

うつ病と仕事の両立|配慮の伝え方と支援制度もあわせて、現在の職場で工夫できる余地がないかを整理してみてください。

転職前に整理したい4点|離職理由・体調・希望条件・経済面

転職活動を始める前に、次の4点を紙やメモアプリに書き出して整理しておくと、応募先選びや面接で迷う場面が減ります。

整理点1|現職離職の理由(または前職離職の理由)

最初に整理したいのは、「なぜ現職を辞めたいのか」「前職をなぜ辞めたのか」です。

うつ病の発症・悪化のきっかけになった具体的な状況を、できるだけ具体的に書き出します。

たとえば、「長時間労働で睡眠時間が削られた」「上司の叱責が日常的だった」「業務量と人員のバランスが崩れていた」「異動先の業務に適性が合わなかった」「在宅勤務がなく通勤負担が大きかった」など、状況によってさまざまです。

ここで重要なのは、「自分が悪かった」と自責で書き留めるのではなく、「環境のどの要素が自分の体調に影響したか」を客観的に整理することです。

この整理が、次の応募先で「同じ条件を避ける」「逆の条件を探す」基準になります。

整理点2|体調の現在地

次に整理したいのは、「いまの体調がどの段階にあるか」です。

具体的には、睡眠(入眠・中途覚醒・早朝覚醒・過眠の有無)、食欲(増減・体重変化)、意欲・集中力(仕事や家事への取り組み方)、感情(落ち込み・不安・焦燥感の頻度)、通院・服薬の状況(通院ペース・服薬種類)などを書き出します。

主治医に「いまの状態で転職活動を始めて大丈夫か」と相談する際にも、この整理が役立ちます。

「日中はおおむね活動できるが、夕方以降の集中力が落ちる」「週4日は外出できるが、週末は休息が必要」など、自分の体調パターンを言語化しておくと、希望する勤務条件(時短勤務・在宅勤務など)も明確になります。

整理点3|希望する働き方の条件

3つ目に整理したいのは、「次の職場でどう働きたいか」の条件です。

具体的な項目としては、雇用形態(正社員・契約社員・パート・派遣)、勤務時間(フルタイム・時短)、勤務地(通勤時間・在宅勤務の有無)、業務内容(職種・業務量)、人間関係(チーム規模・コミュニケーション頻度)、配慮の必要性(うつ病があることを伝えるかどうか)などが挙げられます。

「絶対に譲れない条件」と「できれば希望したい条件」を分けて整理しておくと、応募先を選ぶ際に判断しやすくなります。

すべての条件を満たす職場は限られているため、優先順位をつけておくことが、現実的な転職活動につながります。

整理点4|経済面の見通し

4つ目に整理したいのは、「転職活動期間中、そして転職後の生活費の見通し」です。

退職してから転職活動を行う場合、無収入の期間が3〜6か月発生する可能性があります。

雇用保険の失業給付(基本手当)、傷病手当金(在職中に休職してからの退職の場合は受給継続の可能性あり)、障害年金(うつ病で障害認定を受けている場合)、家族からの支援、貯蓄など、活用できる経済資源を整理しておきます。

「いつまでに次を決めなければならないか」のタイムリミットが明確になることで、焦らない範囲で活動できるようになります。

経済面の不安が大きい方は、ハローワークや市区町村の生活困窮者自立支援窓口、社会福祉協議会などにも事前に相談しておくと安心です。

うつ病の方の転職の進め方5ステップ

転職活動そのものは、次の5ステップで進めます。

各ステップで「焦らない仕組み」を組み込むことが、長く働ける転職先と出会う鍵になります。

ステップ1|情報収集

最初のステップは、転職市場の情報収集です。

ご自身の経験・スキルがどの業界・職種で活かせるか、どの程度の年収帯が現実的かを把握します。

情報源としては、ハローワーク、転職サイト、転職エージェント、障害者専門の就労支援機関、知人・元同僚からの紹介などが挙げられます。

うつ病があることを開示して働きたい方は、障害者雇用枠の求人情報も並行して集めておきます。

この段階では「気になる求人を集める」だけにとどめ、すぐに応募しないことが、後の自己分析と応募準備の質を高めます。

ステップ2|自己分析と書類準備

2つ目のステップは、自己分析と応募書類の準備です。

これまでの職歴・スキル・実績を整理した職務経歴書、志望動機を含む履歴書を作成します。

うつ病の発症・休職・退職といった経歴の空白期間(ブランク)がある場合は、その期間に「療養」「資格取得」「職業訓練」「家族のサポート」など、何をしていたかを簡潔に書き添えます。

書類は1社ごとに志望動機を書き分けるのが基本で、テンプレートのまま使い回すと選考通過率が下がる傾向があります。

主治医や支援機関のスタッフに書類を確認してもらうと、客観的な視点でのフィードバックを受けられます。

ステップ3|応募と面接の調整

3つ目のステップは、応募と面接の調整です。

応募の際は、複数社に同時に応募するのではなく、まず1〜2社から始めて、自分の体力的なペースを確認することをおすすめします。

「面接が1日2件入って疲弊した」「立て続けに不採用通知が届いて落ち込んだ」というのは、うつ病のある方が転職活動で陥りやすいパターンです。

面接日程を組む際は、午前中の時間帯を希望する、面接の翌日は休息日にする、週に2件以上の面接を入れないなど、自分の体調に合わせた工夫を取り入れます。

転職エージェントや支援機関を利用している場合は、応募ペースや面接日程の調整を相談できます。

ステップ4|選考過程での体調管理

4つ目のステップは、選考が進む中での体調管理です。

書類選考や面接の結果は数日〜数週間かかることが多く、その「待ち時間」に不安が大きくなる方が少なくありません。

結果を待っている間に過度にチェックを繰り返さない、不採用通知が届いても「自分が否定された」と捉えず「縁がなかった」と整理する、結果待ちの期間も生活リズムを保つ――こうした工夫が、選考期間中の体調安定につながります。

支援機関や信頼できる人に「いまどの段階か」を共有しておくと、孤独感が和らぎます。

ステップ5|内定後の条件確認と入社準備

5つ目のステップは、内定を受けた後の条件確認と入社準備です。

内定通知を受け取ったらすぐに承諾するのではなく、雇用条件通知書(または労働条件通知書)を必ず書面で確認し、勤務時間・残業の有無・休日・賃金・試用期間などの条件をチェックします。

うつ病の配慮が必要な方は、内定後に再度「業務量・残業・通院日の確保」について確認しておくと、入社後のミスマッチが減ります。

入社日までの期間は、生活リズムを少しずつ勤務時間に合わせる、必要な手続き(前職の離職票・年金・健康保険の切り替え)を進める、主治医に「入社が決まった旨」と「今後の通院ペース」を相談する、といった準備にあてます。

面接対策|ブランク・退職理由・体調説明の伝え方

面接で必ず聞かれるテーマとして、職歴のブランク・退職理由・体調の現在地の3つがあります。

それぞれの伝え方を、事前に整理しておくことが大切です。

ブランクの伝え方

うつ病で休職・退職した期間がブランクとなっている場合、面接でその期間に何をしていたかを聞かれます。

「療養に専念していました」と簡潔に伝えるのが基本ですが、「療養期間中に資格取得の勉強をしていました」「医師の助言のもと、段階的に外出・運動を再開してきました」「自立訓練(生活訓練)に通い、体調管理と自己理解を深めてきました」など、ブランクを「次に向けた準備期間」として位置づけて伝えることもできます。

嘘をつく必要はありませんが、ご自身が前向きに整理してきたプロセスを、自分の言葉で語れるようにしておくことが大切です。

退職理由の伝え方

退職理由は、前職への不満や批判を中心に語ると、面接官に「次の職場でも同じ理由で辞めるのでは」と懸念を持たれやすくなります。

「業務量が自分の体調管理と両立しにくい状態が続いたため、環境を整え直したいと考え退職しました」「在宅勤務など働き方の柔軟性を含めて再検討したいと考えました」など、「前職の何が課題で、次の職場で何を求めているか」をセットで伝えるのが基本です。

うつ病の発症・悪化が退職の引き金になった場合も、「環境のミスマッチがあった」「働き方の見直しが必要だった」など、客観的な表現に整えて伝えます。

体調の現在地の伝え方(オープン就労の場合)

うつ病があることを開示して応募する場合(オープン就労)、面接で「現在の体調」と「業務にどう影響するか」を聞かれます。

「現在は通院・服薬を継続しながら、日常生活と週5日の活動が安定しています」「夕方以降の集中力が落ちる傾向があるため、午前中に集中業務を行う形が向いています」「定期通院のため、月1回半休をいただける環境を希望しています」など、具体的に伝えます。

「絶対に再発しません」と断言する必要はなく(断言できないことを面接官も理解しています)、「再発リスクは認識しており、早期に気づける仕組みを整えています」「主治医と相談しながら、無理のない働き方を維持していきます」と伝えるほうが、信頼につながりやすいとされています。

クローズ就労の場合の対応

うつ病があることを開示せずに応募する場合(クローズ就労)、ブランク期間や退職理由の説明には別の準備が必要です。

虚偽の説明をするのではなく、「家庭の事情で療養していた」「キャリアの整理と再設計のために時間を取った」など、嘘ではない範囲で簡潔に伝える方法があります。

ただし、入社後に通院や服薬を続ける必要がある場合、配慮を得にくいことや、診断が分かった際の信頼関係への影響など、リスクも理解しておく必要があります。

クローズとオープンの判断軸については、後ほど詳しく整理します。

面接で「逆質問」を準備しておく

面接の最後に「何か質問はありますか」と聞かれる場面(逆質問)では、ご自身が長く働けるかを判断する材料を集める時間として活用します。

「1日の業務の流れを教えてください」「繁忙期の残業時間はどの程度ですか」「在宅勤務はどの程度活用されていますか」「メンタル不調で休職した方の復職事例はありますか」など、自分が気になる条件を確認します。

「給与」や「休暇」だけを尋ねる印象を避けるために、業務内容や働き方への関心を中心に質問するのが基本です。

転職後の再発防止|入社後3〜6か月の過ごし方

転職活動が終わって入社しても、そこからが「長く働き続ける」ための本番です。

うつ病のある方が転職後に再発しやすいのは、入社後3〜6か月の時期だとされています。

新しい環境への適応、人間関係の構築、業務量の調整――これらが重なる時期に、無理を重ねると再発リスクが高まります。

入社後1か月|慣らし期間として過ごす

入社後の1か月は、業務に習熟することよりも、生活リズムを新しい環境に合わせることを優先します。

通勤時間・始業終業時刻・昼休みの過ごし方・退勤後の過ごし方を、無理のないペースで定着させます。

「初日から張り切って残業した」「歓迎会で深酒した」「週末も仕事のことを考えていた」――こうした入り方は、後の体調悪化につながりやすいパターンです。

定時で帰る、休日は休む、睡眠を優先する、という基本を最初の1か月で固めます。

入社後2〜3か月|業務量の調整を申し出る

業務に少しずつ慣れてきた2〜3か月目に、業務量が「自分のキャパシティに合っているか」を見直します。

「想定よりも残業が多い」「業務範囲が広がってきた」「精神的な負担が増している」と感じた場合、上司や人事に率直に伝え、業務量や役割の調整を申し出ます。

オープン就労の場合は、入社時の配慮事項に基づいて調整を依頼できます。

クローズ就労の場合でも、「想定以上の業務量で対応が難しい」と業務量の観点から伝えることは可能です。

「我慢して続ければ慣れる」と無理を続けると、3〜6か月目に再発・休職のパターンに陥りやすくなります。

入社後3〜6か月|通院・服薬を継続する

入社後3〜6か月は、業務に慣れて「もう通院しなくても大丈夫」と感じやすい時期ですが、自己判断で通院・服薬をやめないことが大切です。

主治医と相談しながら、通院間隔・服薬量を段階的に調整していきます。

「症状がないから通院をやめたら、3か月後に再発した」というのは、うつ病で起こりやすいパターンとして知られています。

転職前に主治医に「入社が決まった」と伝えていれば、入社後の通院ペース・薬の調整を一緒に計画してもらえます。

早期に「気づく」仕組みを整える

うつ病の再発は、本人が気づく前に周囲から「最近顔色が悪い」「ミスが増えている」と指摘されて発覚することがあります。

ご自身で早期に気づける仕組みとして、毎日の睡眠・食欲・気分を記録する、週1回振り返る時間を持つ、月1回主治医に状況を共有する、家族や信頼できる人に「最近どう見える?」と尋ねる、などの方法があります。

「気づいたら動けなくなっていた」を避けるためにも、早期サインに気づける仕組みを意識的に組み込むことが、長く働き続けるうえで大切です。

うつ病の再発予防|日常生活で取り入れたい工夫もあわせて参考にしてください。

クローズ就労とオープン就労|どちらが自分に合うか

うつ病のある方の転職では、「うつ病があることを企業に開示するか/開示しないか」の判断(クローズ就労/オープン就労)が、応募先選びと働き方を大きく左右します。

クローズ就労のメリット・デメリット

クローズ就労は、うつ病があることを企業に開示せずに、一般雇用枠で応募・就労する形です。

メリットとしては、求人選択肢が広い、給与水準が障害者雇用枠より高めの傾向にある、配慮を求めにくいぶん自由度がある、といった点が挙げられます。

デメリットとしては、通院・服薬の配慮を得にくい、再発・体調悪化時に休みにくい、診断が判明した際の信頼関係への影響がある、といった点が挙げられます。

「体調がほぼ安定しており、配慮なしでも働き続けられる見込みがある」「通院は月1回未満で済んでいる」「服薬の影響がほぼない」といった状況の方には、クローズ就労が選択肢として浮上してきます。

オープン就労のメリット・デメリット

オープン就労は、うつ病があることを企業に開示して、障害者雇用枠または一般雇用枠で配慮を受けながら就労する形です。

メリットとしては、通院・服薬の配慮を得やすい、業務量・残業の調整が前提となる、再発時に休みやすい・復職しやすい、産業医や障害者職業生活相談員のサポートを受けやすい、といった点が挙げられます。

デメリットとしては、求人選択肢がクローズより限定的、給与水準が一般雇用枠よりやや低めの傾向にある(職種・企業による)、「特別扱い」と感じる場面がある、といった点が挙げられます。

「通院ペースを確保したい」「業務量・残業の上限を明確にしたい」「再発リスクを前提に長く働きたい」といった希望が強い方には、オープン就労が現実的な選択肢になります。

障害者雇用枠の活用には精神障害者保健福祉手帳が必要

オープン就労のうち「障害者雇用枠」で応募する場合、原則として精神障害者保健福祉手帳の取得が必要です。

精神障害者保健福祉手帳は、初診から6か月以上経過した時点で申請可能で、市区町村の窓口で手続きを行います。

手帳の等級(1級・2級・3級)は症状や日常生活への支障の程度で判定されます。

手帳取得には主治医の診断書が必要なため、主治医と「就労に向けた手帳取得を検討している」と相談しておくと、診断書作成がスムーズになります。

判断のための整理軸

クローズかオープンかを判断する整理軸として、次の質問が役立ちます。

  • 通院・服薬は今後どの程度継続する見込みか
  • 配慮なしでフルタイム・残業ありの環境で働き続けられる体力があるか
  • 再発時に「休みにくい職場」で勤務するリスクをどう考えるか
  • 周囲に開示することへの心理的な抵抗はどの程度か
  • 給与水準と働きやすさのバランスをどう設計したいか

主治医・支援機関のスタッフ・家族と一緒に整理しておくと、選択に納得感が生まれます。

障害者雇用と一般雇用の違い|給与・配慮・働き方もあわせて参考にしてください。

うつ病の方の転職で活用できる支援サービス

転職活動を一人で進めるのが不安な方は、複数の支援サービスを並行して活用できます。

ハローワーク(公共職業安定所)

ハローワークは、すべての方が無料で利用できる公的な職業紹介機関です。

うつ病など障害のある方向けには、「障害者専門の相談窓口」が設置されており、専門の相談員(職業相談員)が応募書類の添削・面接対策・障害者雇用枠の求人紹介などを行います。

精神障害者保健福祉手帳がない方でも、主治医の意見書があれば障害者雇用枠の求人を紹介してもらえるケースがあります。

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)

障害者就業・生活支援センター(通称「なかぽつ」「就ポツ」)は、障害のある方の「就業面」と「生活面」を一体的にサポートする機関で、全国に設置されています。

転職活動の相談、応募準備のサポート、就職後の職場定着支援、家庭・経済面の相談などを、長期的に並走しながら受けられます。

利用は無料で、お住まいの地域のセンターに直接問い合わせて利用を始められます。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、障害のある方を対象に、最長2年間の就労準備訓練を提供する障害福祉サービスです。

PCスキル・ビジネスマナー・面接対策・職場体験などを通して、就職に向けた力を段階的に身につけます。

うつ病で退職してから時間が経っている方、「いきなり転職活動を始めるのは不安」と感じる方、自分の特性や働き方をじっくり整理したい方に向いています。

利用には市区町村が交付する「障害福祉サービス受給者証」が必要です。

就労移行支援(就労支援)ってどんなところ?で詳しく整理しています。

自立訓練(生活訓練)

自立訓練(生活訓練)は、地域生活を送るうえでの「生活面の自立」を支援する障害福祉サービスで、生活リズム・対人スキル・自己理解・体調管理の土台作りを中心に行います。

「いきなり就労移行や転職活動に進むのは不安」「働く前に生活と気持ちを整え直したい」「自分の特性をもう少し理解してから次を考えたい」と感じる方が利用しています。

うつ病からの復帰途上にある方が、就労移行や転職活動の前段階として利用するケースもあります。

自立訓練(生活訓練)とは|対象者・利用期間で詳しく整理しています。

転職エージェント(一般/障害者専門)

民間の転職エージェントは、求人紹介・書類添削・面接対策・条件交渉などを無料で受けられる転職支援サービスです。

障害者専門の転職エージェントもあり、うつ病など精神疾患のある方の転職実績が豊富な担当者が在籍しています。

利用にあたっては、複数のエージェントに登録して比較する、担当者との相性を確認する、急かされて応募を決めない、といった注意点があります。

リワーク(復職支援)プログラム

すでに退職を決めず、現職への復職を視野に入れている方は、医療機関・地域障害者職業センター・就労移行支援事業所などが提供する「リワーク(復職支援)プログラム」も選択肢になります。

リワークは、休職中の方が職場復帰に向けて段階的にウォーミングアップを行う場で、生活リズム・対人スキル・業務遂行能力の回復を目指します。

「復職か転職か」を迷っている段階で、リワークを利用しながら判断していくケースもあります。

エンラボカレッジでの「転職前に土台を整える」アプローチ

エンラボカレッジは、神奈川県・東京都・大阪府・宮崎県で自立訓練(生活訓練)と就労移行支援を運営している事業者です。

うつ病からの復帰過程にあり、「転職を視野に入れているが、まずは生活と気持ちを整えたい」「働き方そのものを見直してから次を考えたい」というご相談を多く受けてきました。

その経験から、「転職前に土台を整える」観点で、エンラボがどのように関わっているかをお伝えします。

「すぐ転職」より「自分の取扱説明書を作ってから」のアプローチ

うつ病で退職した方の中には、「次こそは長く働ける職場を選びたい」「同じ失敗を繰り返したくない」と感じている方が少なくありません。

その思いに応えるためにエンラボカレッジが大切にしているのは、「すぐに転職活動を始める」よりも、「自分のうつ病の傾向・苦手な状況・必要な配慮を整理してから動く」アプローチです。

具体的には、My Lab.プログラムの中で『自分/支え方マニュアル』という独自の成果物を作成します。

このマニュアルには、自分の特性・苦手な場面・体調が崩れるサイン・必要な配慮・周囲への伝え方が言語化されており、卒業後の転職活動や入社後の職場で活用できるツールになります。

4ステージ・8プログラムで段階的に整える

エンラボカレッジの自立訓練は、ステージ1〜4の4段階で構成されています。

ステージ1(1〜6か月)で「自分を知る・学ぶ」、ステージ2(7〜12か月)で「学んだことができる」、ステージ3(13〜18か月)で「学びを応用できる」、ステージ4(16〜24か月)で「自信を持ち、次に進める」というカリキュラムです。

このプロセスに、8つのプログラム(感情学/コミュニケーション/My Lab./アクティビティ/Life Lab./ソマティック Lab./Social Lab./スキルアップ)を組み合わせています。

うつ病から復帰過程にある方には、感情学・ソマティック Lab.で体調の波と付き合う方法を学び、Life Lab.で「働き方を含めた人生設計」を考え直す、というプロセスを取り入れていただくケースが多い傾向です。

卒業後の進路は転職だけではない

エンラボカレッジの卒業後の進路は、就職・転職に限らず、復職(リワーク的活用)、就労移行支援への進学、就労継続支援A型・B型の利用、大学・専門学校への進学・復学など、多様です。

「転職ありき」ではなく、ご自身の体調・希望・状況に合わせて「次の一歩」を一緒に選ぶ姿勢が、エンラボカレッジの特徴のひとつです。

うつ病で休職中の方がエンラボカレッジを利用しながら、復職を選ぶケース、転職に切り替えるケース、就労移行に進むケースなど、進路は人それぞれです。

40代から自立訓練で働き方を見直していった方のプロセスは、40代からの再スタート体験もあわせてご覧ください。

当てはまりにくい場面

逆に「すぐに転職して働きたい」「いまの体調で配慮なしでも働ける見込みがある」という方は、ハローワークや転職エージェント、就労移行支援のほうが目的に合いやすい場合があります。

「いまはまず生活・体調を整え直したい」「自分の特性をじっくり理解してから動きたい」「働き方そのものを見直したい」という方は、エンラボカレッジの自立訓練が選択肢として浮上してきます。

エンラボカレッジは「自立の土台作り」が中心となるため、目的との相性をご確認のうえで、ご検討いただけますと幸いです。

よくある質問(FAQ)

うつ病が治っていないと転職活動はできませんか?

うつ病は症状の波と付き合いながら働き続けている方が大半で、「完治してから」と決めて待つ必要はありません。

主治医と相談しながら、いまの体調で「情報収集だけ始める」「書類準備を進める」「実際に応募する」のどの段階まで進めるかを一緒に判断していきます。

転職活動は3〜6か月、場合によっては1年程度かかることを想定し、焦らないペースで進めることが大切です。

在職中と退職後、どちらで転職活動を始めるべきですか?

それぞれにメリット・デメリットがあります。

在職中は、収入が継続する安心感がある一方、現職と転職活動の両立で体調を崩しやすい側面があります。

退職後は、活動に集中できる一方、無収入の期間が発生するリスクがあります。

現職での負担が大きい場合、いったん休職して傷病手当金を活用しながら判断する、という選択肢もあります。

ご自身の体調・経済面・主治医の意見を踏まえ、現実的な順序を選びます。

うつ病の経歴は履歴書・面接で隠してもよいですか?

法律上、うつ病など健康状態を企業に申告する義務はありません。

ただし、入社後の通院・服薬・配慮を必要とする場合、開示せずに入社すると、配慮を得にくく再発リスクが高まります。

「クローズ就労(非開示)」と「オープン就労(開示)」のどちらが自分の状況に合うかを、転職前に整理しておくことが大切です。

障害者雇用枠で働くと、給与は下がりますか?

職種・企業・業務内容によりますが、平均的には一般雇用枠より給与水準がやや低めの傾向があるとされています。

一方、配慮を前提とした働き方で、業務量・残業の上限が明確になることが多く、「給与は若干低くても、長く働ける環境」を選ぶという考え方もあります。

「給与」「働きやすさ」「再発リスク」のバランスをどう設計するかが、判断の軸になります。

うつ病で退職して、ブランクが長くなりました。転職できますか?

ブランクが長くても転職している方は多くいらっしゃいます。

ブランク期間に「療養に専念していた」「資格取得や職業訓練に取り組んだ」「自立訓練や就労移行支援を利用していた」など、何をしていたかを整理して伝えられるようにしておくことが大切です。

「ブランクがあるから採用されない」のではなく、「ブランクをどう説明できるか」「いまの体調で何ができるか」が、面接で見られています。

主治医に「転職したい」と伝えるのが怖いです。どうすればよいですか?

「主治医が反対するのでは」「いまは無理だと言われるのでは」と心配される方もいらっしゃいます。

主治医は患者の症状を最も把握している専門家で、「いつなら動いてよいか」を一緒に整理してくれる立場です。

「いまの体調で転職を考え始めてもよいでしょうか」「タイミングはいつ頃が現実的でしょうか」と素直に相談すると、専門的な視点でのアドバイスを受けられます。

転職活動中の経済面が不安です。何か支援はありますか?

雇用保険の失業給付(基本手当)、傷病手当金(休職後の退職で条件を満たす場合)、障害年金(うつ病で障害認定を受けている場合)、自立支援医療(精神通院医療の自己負担軽減)、生活困窮者自立支援制度などが活用できます。

ハローワーク・市区町村の障害福祉課・社会福祉協議会・障害者就業・生活支援センターなどに、早めに相談しておくと安心です。

「短期離職を繰り返している」ことが転職活動の不安です。どうしたらよいですか?

短期離職を繰り返す背景には、職場のミスマッチ・配慮不足・体調管理の課題など、複数の要因が絡んでいることが多いです。

「自分の意志が弱いから続かない」と自責で整理するのではなく、「どんな環境では続けられて、どんな環境では続かなかったか」を客観的に整理し直すことが、次の職場選びの精度を高めます。

自立訓練や就労移行支援を活用して、自己理解を深めてから動くという選択肢もあります。

転職してすぐに体調を崩したら、また辞めるしかないのでしょうか?

転職後に体調が悪化した場合、すぐに退職を選ぶ前に、上司や人事に業務量の調整・休職を相談する、主治医と治療方針を見直す、産業医面談を申し出る、といった選択肢があります。

オープン就労の場合は、入社時の配慮事項に基づいて調整を依頼しやすくなります。

「短期離職を避けたい」気持ちがあっても、無理を続けることが再発悪化につながる場合は、休職や退職を含めて主治医と検討します。

まとめ

うつ病のある方の転職は、「症状が完治してから動く」のではなく、「症状の波と付き合いながら、無理のない環境を選び直す」プロセスです。

転職前には、現職離職の理由・体調の現在地・希望する働き方の条件・経済面の見通しの4点を整理し、主治医や支援機関と相談しながら順序を決めます。

転職活動は、情報収集→自己分析と書類準備→応募と面接の調整→選考過程での体調管理→内定後の条件確認の5ステップで進み、各段階で「焦らない仕組み」を組み込むことが、長く働ける転職先と出会う鍵になります。

面接では、ブランク・退職理由・体調の現在地を、自分の言葉で前向きに整理して伝えることが大切で、嘘をつくのではなく「客観的な事実と、いま整えてきたこと」を伝えていきます。

転職後の入社初期3〜6か月は再発リスクが高い時期で、慣らし期間として過ごす、業務量の調整を申し出る、通院・服薬を継続する、早期に気づく仕組みを整えるといった工夫が、長く働き続けるうえで支えになります。

クローズ就労・オープン就労のどちらを選ぶかは、通院ペース・配慮の必要性・給与水準・心理的な抵抗感などを踏まえて整理します。

ハローワーク・障害者就業・生活支援センター・就労移行支援・自立訓練・転職エージェント・リワークなど、活用できる支援は複数あり、組み合わせて利用することが現実的です。

エンラボカレッジは自立訓練(生活訓練)と就労移行支援を運営する事業者として、「転職前に生活と気持ちを整えたい」「自分の特性を理解してから次を考えたい」「働き方そのものを見直したい」というご相談を多く受けています。

エンラボカレッジ 横浜エンラボカレッジ 相模大野エンラボカレッジ 川崎など各事業所で、自立訓練・就労移行支援を提供しています。

「自分にどのサービスが合うのか相談したい」「家族と一緒に見学したい」――そんな方も、まずは一度お問い合わせください。

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更新日:2026/05/30 公開日:2024/06/12

この記事について【作成・監修】

本記事は、自立訓練(生活訓練)事業所「エンラボカレッジ」を運営する株式会社エンラボの専門職スタッフが作成・監修しています。

【在籍資格】
精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士

【現場での実践】
自立訓練(生活訓練)・就労移行支援などで、診断名・特性に合わせた個別支援を提供しています。

【運営会社】
株式会社エンラボ/設立2015年4月/神奈川県を中心に首都圏・関西・宮崎で11拠点運営

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