大人の学習障害(LD)とは?特徴や仕事での対処法、治療方法や就職率を解説

公開日:2024/11/07

学習障害とは、主に「読む」「書く」「計算する」など学習の基礎的な能力が極端に苦手だったり、そもそも習得が難しかったりする発達障害の一種です。大人の場合も、学習障害により仕事や日常生活の中で困りごとを感じることがあります。今回は、学習障害のある大人の方の症状や特徴、診断基準や検査方法、仕事上でよく直面する困りごととその対処方法などについて解説します。学習障害のある方が利用できる支援機関についても解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。

大人の学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)とは?

学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)とは、知的発達に遅れはないものの、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった学習に必要な基礎的な能力のうち、一つまたは複数の特定の能力について習得が難しかったり、うまく発揮することができなかったりする障害のことです。特性によって、学習上さまざまな困難に直面することがあります。

 

「学習」と聞くと、「学齢期が対象で大人になれば困りごとを感じる機会は減るのでは」と感じるかもしれません。しかし、大人になってからも学習障害が理由で、仕事や日常生活に困りごとを感じる可能性はあります。有病率の観点から見てみましょう。

有病率

一言で学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)といっても、「読む」「書く」「計算する」などそれぞれ困りごとが異なること、特に成人してからは、学齢期と比較すると困りごとに直面する機会が減少することなどから、はっきりとした大人の学習障害の有病率を示すことは難しくなっています。

 

参考として、2010年に行われた調査では、読字障害・書字障害を伴う学習障害の有病率は0.7~2.2%、算数障害を伴う学習障害の有病率は3.0~6.0%とされています。また、2012年に文部科学省が全国の小中学校教師を対象として行った全国調査によると、学習面に著しい困難を示す児童生徒は4.5%存在するということも示されています。

これらの情報を踏まえて、一般的には大人の学習障害の有病率は約4%と言われています。

 

学習障害は生まれつきの発達障害の一種であり、大人になってから発症することや、大人になれば治るということはありません。基本的に、「小学校入学後、学習についていけない」という困りごとが発生し、学習障害と診断されることが多くなっています。

人によっては、子どもの頃は「学習」が単純に苦手分野だと思われ、学習障害の診断がついていないケースもあり、大人になってから、仕事などで困りごとを感じたために病院を受診し、学習障害と診断される場合もあります。

大人の学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の症状・特徴

大人の学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の症状・特徴は大きく分けて三つのタイプがあります。

読字障害(ディスレクシア)

読字障害(ディスレクシア)は、「文字を読むこと」に困難を感じます。学習障害と診断された場合、最も多くみられる症状です。読字障害は、「文字の読み方がわからない」タイプと、「文字の形がわからない」タイプの二つに分けられます。

 

「文字の読み方がわからない」タイプは「音韻処理不全」とも考えられ、下記のような特徴を持ちます。

 

・文字と音が紐づかない

「あ」を「a」という音で発音することが難しい、「ゃ」「ゅ」「ょ」「っ」などの小さい音の発音がわからない、「ー」という伸ばす音が認識できない

 

・単語が理解できない

一文字ずつを理解して発音することができても、一つのかたまりの単語として読むことができない

 

・音を記憶できない

一文字ずつ区切って読むため、スムーズに会話することができない

 

「文字の形がわからない」タイプは「資格情報処理不全」とも考えられ、下記のような特徴を持ちます。

 

・文字がにじんだり、ぼんやりしたりして見える

ノートを水に濡らしたように文字がにじんだり、眼鏡をかけていない時のように二重に見えたりする

 

・文字が歪む

文字がグニャグニャになったり、飛び出して見えたりする

 

・鏡文字に見える

文字が反転して見える

 

・点描画のように見える

文字が途切れ途切れで、点で書いているように見える

 

読字障害(ディスレクシア)は、まったく文字が読めないわけではないものの、正確に読んだり、スムーズに読んだりすることが難しく、コミュニケーションに困難を感じるケースが多くなっています。仕事においては、「マニュアルや資料を読むことに困難を感じる」「自分の考えをまとめて会議などで発言することが苦手」などの困りごとが生じる可能性が考えられます。

書字表出障害(ディスグラフィア)

書字表出障害(ディスグラフィア)は、「文字を書くこと」に困難を感じるタイプです。読字障害(ディスレクシア)と書字表出障害(ディスグラフィア)は併発する場合が多く、その場合は「発達性読み書き障害」という呼ばれ方をすることもあります。

 

書字表出障害には、下記のような特徴があります。

 

・文字の大きさに均一性がなく、ノートの罫線やマス目に沿って書くことができない

・文字を書く際に、余分な線や点を書いてしまう

・誤った助詞を使用する

・鏡文字になる

・句読点などを忘れる

・文字を書く体勢がおかしい(手首が変に曲がっている、紙の向きがおかしいなど)

 

文字を正しく、素早く書くことが苦手な書字表出障害(ディスグラフィア)は、仕事において「話を聞きながらメモや議事録を取ることが苦手」「長い文章を作成することが苦手」「資料の作成に時間がかかる」などの困りごとが生じる可能性が考えられます。

算数障害(ディスカリキュリア)

算数障害(ディスカリキュリア)は、「算数・計算」に困難を感じるタイプです。数字そのものの概念や数の大小、図形や立体問題の理解が難しく、計算や推論が極端に苦手です。

 

算数障害には、下記のような特徴があります。

 

・数字を覚えるのが苦手

・一桁の足し算や引き算の暗算ができない

・図形やグラフが理解できない

・掛け算の九九が覚えられない

・時計が読めない、時間がわからない

・お釣りや割り勘の計算ができない

 

数字に関わること全般が苦手な算数障害は、仕事において「お釣りの計算やお金の管理ができない」「予算や概算を考えることが難しく、見積書の作成が苦手」「仕事にかかる時間の見積もりができず、スケジュール管理が難しい」などの困りごとが生じる可能性が考えられます。

大人の学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の原因

学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の原因は完全には解明されていません。一説によると、見た情報を理解したり、字を音に変換したりする脳の中枢機能の一部に何かしらの障害があるのではないかと考えられています。

遺伝や環境などの複合的な要因が関係する可能性も考えられていますが、本人の努力不足や保護者の育て方、勉強の教え方に問題があるといった理由ではありません。

 

多くの場合、学校での勉強が始まる学齢期初期に学習障害の診断がおりますが、知的発達がないなどの理由から問題にならず、大人になってから学習障害だったことが判明する場合もあります。

大人の学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)はどうやってわかる?

大人の学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の診断基準や診断方法について見てみましょう。

診断基準

学習障害の診断は、DSM-5(精神疾患の診断・統計マニュアル第5版)に基づいて行われます。これは世界共通で使用されている診断基準で、ADHD(注意欠如・多動性障害)やASD(自閉スペクトラム症)など他の発達障害の診断にも使用されています。

 

大人か子どもかは基本的には関係なく、同じ診断基準が用いられます。診断基準は主に下記の通りです。

 

①次の症状のうち少なくともひとつが存在し、6カ月以上継続している

(ア)読むことが不的確または遅い

(イ)文章を読めても意味を理解するのが難しい

(ウ)字のつづりを間違える

(エ)文法や句読点の間違い、段落をうまくまとめられない

(オ)数値や計算を習得するのが難しい

(カ)数学的な推論ができない

②学術的な技能が年齢相応ではなく、学業や職遂行に差しさわりがある

③学習困難が、知的能力障害や視力・聴力、他の精神疾患などでは説明できない

検査方法

まず診断の前に、問診による聞き取りが行われます。ここでは、子どもの頃から困りごとや特性があったのか、今困っていることはないかなどを調査します。

 

その上で、認知特性や知的発達の偏り・遅れを調べる心理検査を行い、DSM-5の基準に当てはまるかどうか調べます。加えて、書字・読字・計算などの能力を調べる認知能力検査、CTやMRIによる画像検査、視力や聴力を調べる身体機能検査などを行う場合もあります。

 

学習障害の診断は、精神科や心療内科、メンタルクリニックなどで受けられます。ただし大人の学習障害を診断できる医療機関は限られているため、受診前に診療科目の確認が必要です。

大人の学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の治療方法

大人に限らず、学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)を根本的に解決する治療法は現在のところ確立されていません。しかし、学習障害の症状はカウンセリングや環境調整などを通して対処することが可能です。

 

学習障害は単独で見られることもありますが、ADHD(注意欠如・多動性障害)やASD(自閉スペクトラム症)など他の発達障害と併発している可能性もあるため、それぞれどのような対処を行うべきか検討が必要です。

 

特に、大人になってから困りごとが目立つようになった場合は、ストレスなどで抑うつ症状や不安症状など二次的な症状が現れることもあります。ストレスが強く眠れないといった症状が見られる時は、抗不安剤や睡眠導入剤などの薬を用いた治療が行われるケースもあります。

大人の学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の人の就職率

学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の方の就職率は、対象を絞った調査結果がないためはっきりした数字は分かりません。

 

参考として、厚生労働省が行った令和5年度障害者雇用実態調査によると、従業員5人以上の事業所に雇用されている発達障害のある方の人数は91,000人でした。また、対象の企業が把握している疾病名として「学習障害」を挙げている労働者は、全体の2.4%となっています。

 

参考 令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書P.23 (7)障害の程度・疾病名

※参考 令和5年度障害者雇用実態調査結果報告書P.23 (7)障害の程度・疾病名

 

また日本学生支援機構の調査によると、発達障害がある学生の数は年々増加しており、令和4年度の調査では10,288人でした。それに伴い就職人数も年々増加傾向にはあるものの、就職率は67.5%となっており、全体の大学生の就職率が97.3%であることを考えると、比較的低い数値となっています。

大人の学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の人が就職するには

学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)のある方が仕事を探す際、利用できる支援機関や制度があります。就職・転職を考える際は活用を検討してみてください。

公的支援機関を活用する

ハローワークや障害者就業・生活支援センターなど、さまざまな公的支援機関が学習障害に限らず発達障害のある方の就職をサポートしています。例えばハローワークでは、窓口で自分自身の特性について伝え、仕事の内容や不安に感じるポイントなどを相談することができます。また、障害のある方を対象とする、就職合同説明会や障害者雇用制度の対象となっている求人などの情報も得ることができます。

 

他にも学習障害の特性を自分自身が理解した上で、職場で長く働くことができるように就労支援を行う公的支援機関もあります。それぞれの詳しい特徴や利用できる期間などの情報は、後続の「大人の学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の人の相談先や支援機関」で紹介します。

障害者雇用制度の利用を検討する

障害者雇用制度とは、障害のある方が自分の特性や能力に合わせた働き方ができるように設けられた制度です。取得するためには、都道府県から発行される「精神障害者保健福祉手帳」など障害者手帳の取得が必要です。

 

障害者雇用の場合、基本的には障害があることを企業に開示して働きます。企業側は障害のある方が自分自身の能力を発揮できるよう、一人ひとりの特性に合わせて施設を整備したり支援者を配置したりと、「合理的配慮」を行うことが求められます。

 

学習障害のある方が働く際には、このような合理的配慮を受けることで、困りごとを軽減できる可能性があります。

大人の学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の人が仕事で困ったときの対処方法

学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)は、個人差が大きい障害です。一つのことだけが突出して苦手な場合もあれば、読字・書字など複数のことが苦手というケースもあります。ここでは学習障害のある方が仕事で困ったと感じやすい例をいくつかご紹介します。それぞれ対策についても記載していますので、参考にしてみてください。

例1.指示を聞いても理解できず失敗を繰り返してしまう

「上司から指示を受ける」という場面は、どんな仕事においても発生します。学習障害のある方の場合、その指示の内容が理解できず、何度も同じ失敗を繰り返してしまい、上司から叱責を受けたり自己嫌悪に陥ったりするというケースがあるのです。

 

この場合、「なぜ指示を理解できないのか」の原因はさまざま考えられます。「話を覚えるのが苦手で、一度にいくつかの指示を出されても内容を理解することが難しい」といった場合もあれば、「話を聞きながら素早くメモを取ることが苦手で、内容を覚えられない」という場合もあるでしょう。

 

対策としては、事前に上司にも自分の特性について共有し、指示を出す際は口頭だけでなく文面でも共有するようお願いするなど、ルールを設けることが挙げられます。文面を読んで理解することが苦手な場合は、認識に齟齬がないか上司に確認してみましょう。可能であれば会議などを録音し、後から自分でも聞き返すという方法もあります。

例2.自分の考えをまとめられず会議に苦手意識がある

会議などで自分の考えを述べることを求められても、うまく話すことができないという困りごとを抱える方も多いようです。この場合は、「読字障害(ディスレクシア)によって、自分の考えていることをスムーズに発話することが苦手」という理由が考えられます。

 

事前に準備ができるようであれば、自分の考えを整理し文面に起こしておくことで、会議内でも原稿を確認しながら発言することが可能でしょう。会議の中で突発的に発言を求められ、十分な事前準備が難しい場合は、自分が理解できた範囲のことを確認しつつ、後ほど文面で自分の考えをまとめて送るなど、工夫して対応しましょう。

例3.メールや資料の読み込みに膨大な時間がかかる

仕事をする上で、メールや資料、マニュアルなどの文書を読む機会は多々あります。学習障害の方の場合、「文字をスムーズに読んで、内容を理解することが難しい」「文書を読んでいるとどこまで読んだか分からなくなる」といった困りごとがあり、資料の読み込みに膨大な時間がかかってしまうケースがあります。

 

このような場合、読んだ部分に蛍光ペンなどで色をつけていくと、今読んでいる箇所が分かりやすく、時間短縮が図れます。Wordなどオンラインの資料の場合も、「カラーバールーぺ」などの機能を使うことで、スムーズに読むことができるかもしれません。また、文字のフォントを「ユニバーサルデザイン書体(UD書体)」に変更してみるのも一つの手です。UD書体は、「文字の形が分かりやすいこと」「読み間違えにくいこと」などを目指したフォントで、読み書きが苦手な方でも比較的読みやすくなっています。

 

文字を読むことが特に苦手で耳から聞いた方が理解が早いという場合は、資料やマニュアルの内容を口頭で説明してもらったり、パソコンなどの「音声読み上げ機能」を活用したりしてみましょう。

例4.メモを取ることが苦手

仕事において、上司の指示内容やお客様からの要望など、話を聞きながらメモを取り後から見返すという機会は少なくありません。学習障害のある方の場合、うまくメモを取ることができず、内容を忘れてしまったり要件を別の担当者にうまく伝えられなかったりする場合があります。

 

このような場合は、相手の了承を得た上でスマホなどで録音し、後から聞き返すという手があります。会議などでホワイトボードを使った議論があった場合も、スマホのカメラで撮影しておくと、議論の流れを理解する際の手助けになります。

 

文字を書くこと自体に時間がかかるという場合は、図解や表を使うことで時間が短縮できる可能性があります。細かく文字にしなくても議論の流れを図で簡単に示すことで、困りごとが減るかもしれません。

例5.時計が読めず、時間管理が難しい

学習障害のある方の場合、数字や時間の概念を理解することが難しく、作業にかかる時間を見立てることが難しかったり、想定以上に作業に時間がかかってしまったりすることがあります。

 

そのような場合、まずはどれくらい作業に時間がかかるのか、見立てる部分は上司や同僚など作業内容を知っている人と相談してみましょう。そして、作業にかかる時間は、カレンダーで予定を押さえ、1日の業務スケジュールを決めます。カレンダーのリマインダー機能を活用することで、時計に頼らなくても予定の時間が近づいていることに気づくことができます。

 

実際に作業を行ってみて見立てと大きく異なる場合は、どこに時間がかかったのか、なぜ時間がかかったのかを考え、対策を立ててみましょう。

例6.数字や計算が苦手で、発注書や見積書などの作成が困難

学習障害の特性が原因で、数字を理解して計算することが苦手というケースもあります。Excelなどの表計算ソフトを使用する場合は、関数を活用することで自動計算を行うことができ、人的なミスを減らすことができます。また、ルールや既定に基づきミスなく計算ができるよう、自分なりに手順をまとめておくことも役立つでしょう。

 

しかし、どうしても自分自身で計算を行うことに不安がある場合は、業務変更などの調整を行うことも一つの方法です。正確さが求められる発注書や見積書作成などの業務は、ミスが起きた場合に影響範囲も大きく、結果的に学習障害のある方本人も、それをサポートする周りのメンバーの心理的負担も大きくなってしまいます。

 

「できないこと」「苦手なこと」に無理やり挑戦するのではなく、「できること」「得意なこと」で大きな価値を発揮していくという考え方も必要です。

大人の学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の人の相談先や支援機関

学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)のある方が働くことに困りごとを抱えている場合、相談できる支援機関が複数あります。今の会社での働き方に悩んでいたり、転職を検討していたりする場合は、ぜひ専門知識を持った支援機関に相談してみてください。

ハローワーク

ハローワーク(公共職業安定所)では、障害のある方の就職活動を支援するため、障害について専門的な知識を持つ職員・相談員を配置し、仕事に関する情報を提供したり、就職に関する相談に応じたりするなど、さまざまな支援を行っています。一般雇用・障害者雇用ともに求人情報を提供しており、適応障害の要因なども踏まえながら求人情報を探すことが可能です。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、障害のある方が自立して働き続けることができるように、雇用・保健・福祉・教育などの関係機関と連携しながら、障害のある方の身近な地域において就業面・生活面の両方から支援を行う機関です。令和6年4月1日現在は全国337カ所に設置されています。就労前に面談を行い、職業スキルの確認や履歴書作成・面接準備のサポートを行ったり、就労後には安定して働けるようスタッフによる職場訪問や、ジョブコーチを派遣して働きやすい環境づくりのサポートを行ったりします。

就労移行支援事業所

就労移行支援事業所は、障害のある方が就職に必要な知識やスキルを向上させるためのサポートを行う、通所型の福祉施設です。厚生労働省の調査によると、令和2年10月時点で全国3,301カ所に設置されています。対象は障害のある方、難病のある方のうち一般企業へ就職することを希望する方で、障害者手帳を持っている方も、「発達のグレーゾーン」と呼ばれる障害者手帳を持っていない方も利用することができます。一般企業就職に向けたトレーニングや、特性に合った職場探しのサポートなどを受けられます。

自立訓練(生活訓練)事業所

自立訓練(生活訓練)では、人とのコミュニケーション方法など障害のある方が自立した生活を送る上で必要なスキルを学び、トレーニングや相談、助言といった支援を提供します。令和2年の調査では全国1,172カ所の事業所があり、12,463人が利用しています。自立訓練では、まず就職よりも先に「自立」を目的としており、生活の基礎を作ることや自分の障害を理解することを行った後、就活や福祉就労、進学・復学、療養といった次のステップに進んでいきます。

 

関連ページ:自立訓練(生活訓練)とは?就労移行支援との違いやカリキュラム・対象などについて解説します。

大人の学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)でよくある質問

学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)のある方やその周囲の方が不安に感じやすいポイントをまとめました。

Q.学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)であることを職場の人に伝えたほうがいい?

学習障害と診断されたからと言って、必ず職場の人に伝えなければならないというものではありません。職場の人に伝えるかどうか、伝える場合は上司だけに伝えるのかなど、自分自身で決めることができます。

 

学習障害であることを職場に伝えるメリットとしては、合理的配慮を受けやすくなることが挙げられます。例えば口頭で理解することが苦手なので文面で指示してほしいという場合も、学習障害であること、その症状として具体的に耳で聞くより目で見て理解する方が得意であることが伝えられれば、周囲からの理解も得やすいかもしれません。

 

「学習障害」と一言で言っても、その症状や程度は一人ひとり異なります。まずは、自分の得意不得意を理解し、具体的にどんな対策があればスムーズに業務を行いやすいのか、自分自身で整理してみましょう。自分だけで考えをまとめることが難しい場合は、医師や支援機関に相談することもできます。

Q.職場に学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の人がいます。接し方を教えてください。

学習障害を含め、発達障害は見た目では分かりにくい障害です。発達障害について聞いたことはあっても、「学習障害」となると詳しく知らない、どんな障害なのか想像がつかないという方もいるでしょう。

 

まずは、職場で一緒に働くメンバーとして、一人ひとりの得意不得意を受け止めることが大切です。文字が読めない、うまく話せない、計算ができないといった学習障害の症状は、本人の努力不足ではありません。ツールを導入したり、伝え方を工夫したりするだけで解決することもあります。「なぜできないのか」を責めるのではなく、「どうすればうまくできるようになるか」を一緒に考えてみましょう。

 

得意不得意を理解し対策を立てることは、学習障害のある方本人だけでなく、周囲のメンバーにも適用できる考え方です。一人ひとりの強みを発揮し、チームで円滑に業務推進ができるよう、まずは「学習障害である」ことを伝えてくれたことを受け入れるところから始めてみてください。

まとめ

学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)は、「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算する」「推論する」といった学習に必要な基礎的な能力に、困りごとを感じる発達障害の一種です。特性の現れ方はそれぞれ異なり、一言で学習障害と言っても何に困りごとを感じるかは一人ひとり違います。仕事においても、資料やマニュアルを読むことに膨大な時間がかかる場合もあれば、上司からの指示が理解できず同じ失敗を繰り返したりする場合もあります。

 

一方で、パソコンの読み上げ機能を使ったり、口頭指示ではなく文面で指示したりと、環境調整を行うことで、仕事上の困りごとを軽減することが可能です。極端に苦手なことがある場合は、上司や職場の人に相談の上、環境を整えてみると良いでしょう。

 

苦手なことを克服することも大切ですが、特に学習障害の場合、本人の努力不足が原因ではなく、そもそも克服することが難しい場合があります。苦手なことに取り組まざるを得なかったり、それによってミスをしたりすることで、強いストレスを感じ、うつ病や不安障害、適応障害などの二次障害を引き起こす可能性もあります。時には業務調整を行い、「苦手なことに取り組む必要がない」環境を作ることも大切です。

 

合理的配慮が受けづらい職場環境の場合は、就労支援などの障害福祉サービスを利用したり、障害者雇用で転職するという選択肢もあります。自分一人で抱え込まず、医療機関や専門の支援機関などを活用してみてください。

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