発達障害のある方は雑談が苦手って本当?会話が続かない時に押さえておきたいポイント3つ
公開日:2024/12/13
発達障害のある方で、「雑談が苦手」「仕事を円滑にする上で、もっとうまく雑談ができるようになりたい」と、雑談に対して悩んでいる方は少なくありません。
雑談が苦手と感じやすい原因として、発達障害の特性が影響していることが考えられます。
今回は、発達障害のある方が雑談が苦手と感じやすい理由と、うまく雑談を行うために知っておきたいポイントについて解説します。
発達障害のある方が苦手な「雑談」とは
そもそも「雑談」とは、特定の目的や深いテーマなどを持たず、日常的な話題や感想をとりとめなく話す、コミュニケーション方法の一つです。
家族や友人・知人とだけでなく、仕事上の同僚や上司、取引先など、さまざまな関係性の中で雑談を行うことがあります。
「雑談」が仕事で重視される3つの理由
特に、仕事の場面において「雑談」が行われるのは、なぜなのでしょうか。
業務を円滑に進める上でも、雑談が重視される理由・メリットについて解説します。
①気軽な会話を通して人となりを知り、信頼関係が築きやすくなる
雑談は、相手との心理的距離を縮める役割があると考えられています。
共通の話題で意気投合したり、ちょっとした話題で笑いあったりすることで、相手との間に親近感を感じやすくなります。
また、雑談は深いテーマを議論することが目的ではありませんが、雑談をする中でもお互いの価値観や考え方について知ることができます。
業務を進めるだけではわからない「その人らしさ」を知ることで、信頼関係が築きやすくなるでしょう。
②業務の効率化やスムーズな報連相につながる
普段から上司や同僚と雑談を通して信頼関係が構築できていると、業務の「報連相(報告・連絡・相談)」がしやすくなります。
スムーズな報連相は、ミスから起こるトラブルを未然に防いだり、業務を進める上で迷っていることを早期に解決できたりと、業務を効率的に進めることにつながります。
③ストレス発散やリフレッシュになる
雑談をすることは、ストレス発散やリフレッシュになると考えられています。
仕事やプライベートの愚痴や、ちょっとした悩み事でも、言葉にして誰かに聞いてもらうことで、ストレスを軽減できる可能性があります。
また、悩みや近況を話し合うことで、「困っているのは自分だけじゃない」と安心感や仲間意識を感じる場合もあります。
加えて、毎日数時間の業務時間、ずっと集中し続けることは難しいでしょう。会議が始まるタイミングなどに雑談をすることで、ちょっとした気分転換になる場合もあります。
発達障害のある方が「雑談」を苦手に感じる5つの理由
さまざまなメリットがある「雑談」ですが、発達障害のある方は雑談に対して苦手意識を感じる場合があります。
ただし、発達障害のある方全員が雑談が苦手というわけではありません。
また、「決まったことを話す講演会やスピーチ、会議などは苦手ではないが、雑談だけは苦手」という方もいらっしゃいます。
発達障害と一言にいっても、その特性の現れ方や凸凹の大きさはさまざまです。
ここでは、発達障害の特性によって、雑談が苦手と感じやすい理由についていくつかご紹介します。発達障害のある方は、「なぜ自分は雑談が苦手だと感じるのか」を考えるヒントとしてみてください。
それぞれの発達障害の特性についてより詳しく知りたい方は、関連記事をご覧ください。
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・大人のASD(自閉スペクトラム症)|症状・特徴・セルフチェックの方法などを解説します。
①ASDの場合:社会的コミュニケーションの困難や対人関係の困難さがあるから
ASD(自閉スペクトラム症)の特性の一つとして、「対人関係やコミュニケーションの困難」が挙げられます。具体的には次の通りです。
- 相手の立場に立って考えることが苦手
- 相手の気持ちを考えず、自分の話したいことを話し続けてしまう
- あいまいな表現の理解が難しい
- 行間やその場の雰囲気を読み取ることが苦手
- 言葉の意味をそのまま受け取り、冗談や皮肉、本当に相手が言いたいことの意味が伝わらない
- 視線や動作など、非言語コミュニケーションが苦手
- 複数人がいる場面では、誰の誰に対しての発言なのかがわかりにくい
このような特性によって、円滑に雑談を行うことが難しい可能性があります。
例えば、雑談をする中で、相手が特定の話題を切り上げたいような素振りを見せていても気づきにくかったり、相手との距離感を考慮せずプライベートな話題に踏み込んでしまい、「この人とは話しづらい」と思われたりするケースがあります。
②ASDの場合:こだわりの強さがあるから
ASDのもう一つの特性として、「こだわりの強さ」が挙げられます。具体的には次の通りです。
- 興味の幅が非常に狭い
- 自分の興味があることだけを話し続けてしまう
- 物事や順番などにこだわりが非常に強い
- 臨機応変な対応が苦手
このような特性によって、雑談の中でも自分の興味があること以外は頭に入ってきにくかったり、さまざまなテーマが移り変わる雑談についていけなかったりする場合があります。
また、自分の興味があることについては、他人の反応を見ずに過度に喋りすぎてしまうことも考えられるため、周囲の人から「空気が読めない」「会話のキャッチボールが成立しない」と思われるケースがあります。
③ASDの場合:見通しの立たない状況が不安だから
ASDのある方は、「見通しの立たない状況が苦手」な場合があります。
会議での議論や発表・スピーチなどと違い、雑談には目的やゴールがありません。
何を話すかというルールも決まっていないため、突然雑談のテーマが変わったり、雑談が終了したりします。
このように雑談に対して見通しを立てることは非常に難しく、そのためにASDの特性がある方は雑談に対して苦手意識を感じやすいと考えられます。
④ADHDの場合:衝動性があるから
ADHD(注意欠如・多動症)の特性の一つに、「多動・衝動性」が挙げられます。
これにより、「人の話をさえぎって自分の話を始めてしまう」「相手が気にしていることでも、自分が思ったことをそのまま口にしてしまう」といったことが考えられます。
雑談は一方的なコミュニケーションではなく、双方向コミュニケーションであり、お互いに話題を出し合い、反応し合うことが大切です。
衝動性が強く出ている場合、お互いにとって心地よい雑談を行うことが難しい場合があります。
⑤LD/SLDの場合:特定の能力の習得に困難さがあるから
LD(学習障害)/SLD(限局性学習症)は、「読む」「書く」「聞く」「話す」「計算する」「推論する」といった能力のうち、特定の能力について習得が難しい状態を指します。
この中で特に「聞く」「話す」ことが、雑談をする上で障害になる場合があります。
例えば、「相手が話していることに集中できない」「聞き間違いが多い」「頭の中で考えていることを、うまく言葉にして伝えられない」といったことが考えられます。
発達障害のある方が「雑談」をうまく行うためのポイント
このように発達障害の特性が原因で、「雑談が苦手」と感じる場合があります。
しかし、仕事の場面などで雑談が重視されていれば、雑談を避け続けるということは難しいかもしれません。
ここでは、発達障害のある方が雑談をうまく行う上で、知っておきたいポイントについて解説します。
①まずは「相手の話を聞く」ことに集中する
複数のことに集中することが苦手だったり、自分から話題を提供することに自信がなかったりする場合は、まずは「相手の話を聞く」ことに集中してみましょう。
発達障害の特性として、「自分の話ばかりしてしまう」「相手の反応を読み取って、適切に対処することが難しい」といったことが考えられます。
しかし、雑談で重要なのは「聞き手力」であり、相手が話したいことに共感することが必要です。
具体的には、次のようなポイントを心がけてみましょう。
- 話を聞きながら相槌を打つ
- 「よかった」「大変でしたね」などの共感を示す言葉を返す
- 相手が言ったことをもう一度繰り返す
- 相手を自分に置き換えて、どんな反応がもらえると嬉しいかを考えてみる
②日常生活の中で話題を探しておく
雑談が苦手な場合、あらかじめ話題を用意しておくと安心感が増すでしょう。
雑談で話すことについては特にルールがなく、自分が最近見聞きしたことや経験したことを話すだけでも十分です。
例えば、次のようなテーマが考えられます。
・天気:
「最近寒くなってきましたね」「午後から雨が降るそうですよ」など
・直近の予定:
「今週末は何をする予定ですか?」「月末は、家族で旅行に行く予定です」など
・SNSやテレビなどで見たこと:
「SNSで〇〇が話題という情報を見たんですが、〇〇は知っていますか?」など
・趣味:
「〇〇さんは筋トレが趣味と仰っていましたが、最近はどこを鍛えているんですか?」「最近会社の近所でおいしいランチのお店を見つけたんですが…」など
事前に話すことを決めておいたり、日常での出来事をメモに書き出しておいたりすると、より安心感を持って雑談に対応しやすくなるかもしれません。
③NGワードや避けるべきテーマを知っておく
雑談には決まったテーマがありません。しかし、特定のテーマやNGワードを取り上げることで、相手を不快にさせたり、その場の雰囲気を悪くしたりするリスクもあります。
次のようなテーマは、雑談をする上で避けた方が良いかもしれません。
- 人や会社に対する過度な悪口
- 差別的な発言
- 健康やお金の悩み
- 外見や体型
- 家庭や恋人など、プライベートに関わること
- 宗教や政治、信条などに関わること
- 特定の専門知識が必要なこと
- 一方的な自分自身の自慢
④苦手な場面からは勇気を持って離れる
飲み会や会食など、複数人が集まって雑談をするような場面では、誰が誰に発言しているのかがわかりづらく、また複数の会話が混在して話される場合もあるので、特に発達障害のある方は「雑談がしにくい」と感じるかもしれません。そのような場合は、まずは隣の人との一対一の会話に集中してみましょう。
また、無理に集団に合わせて自分が疲れすぎてしまわないように、苦手な状況を回避することも大切です。
「疲れている時は、職場の飲み会は断る」「大人数の中での会話が苦手であることを、周囲の人には伝えておく」などの対策が考えられるでしょう。
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自立訓練(生活訓練)事業所のエンラボカレッジでは、自分の発達障害の特性の現れ方やコミュニケーションにおける苦手分野を整理し、その対策や対処法をプログラムや事業所内外での実践を通して、スタッフと一緒に考えていくことができます。
例えば「コミュニケーション」のプログラムでは、よくあるシチュエーションに合わせて人と円滑に心地よく付き合うためのコツを学びます。
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まとめ
雑談は、職場の人間関係の改善やスムーズな業務遂行のために行われる場合があります。
「相手の気持ちを考えず、自分の話したいことを話し続けてしまう」「場の雰囲気を察することが苦手」といった発達障害の特性によって、雑談に対して苦手意識を持つ方は少なくありません。
しかし「相手の話を聞く姿勢を見せる」「日常生活の中で話題を探しておく」などのポイントを押さえておけば、雑談にうまく対応することは可能です。
自分が雑談をリードしたり、相手を爆笑させたりするようなトーク力を磨く必要はありません。雑談は、相手と自分が「楽しい」と感じることが大切です。
もし「雑談がうまくできない」「雑談をする中で、相手を怒らせたりがっかりさせたりした経験がある」という方は、エンラボカレッジの無料相談を活用してみてください。