合理的配慮とは?2024年義務化と職場での例をわかりやすく解説

更新日:2026/07/13

「職場にこれをしてほしい、と頼んでいいのだろうか」——そう迷うご本人や、隣で見守るご家族は少なくありません。

合理的配慮という言葉は耳にする機会が増えました。けれど、いざ自分や家族のこととなると、何を、誰に、どう伝えればいいのかは見えにくいものです。

この記事では、合理的配慮の基本的な意味、2024年4月から始まった民間事業者への義務化といった社会の動きを踏まえつつ、職場における具体的な配慮の例や、企業と話し合いを進めるときの基本的な流れを整理していきます。

合理的配慮とは?意味と基本の考え方

合理的配慮とは、障害のある方から「社会の中にある障壁を取り除いてほしい」という意思の表明があったときに、企業や組織が負担になりすぎない範囲(過重な負担にならない範囲)で、その方に合わせた調整や工夫を行うことをいいます。なお、本人が一人で意思を伝えることが難しい場合は、ご家族やサポートする周囲の方が本人を補佐して意思を伝えることも認められています。

むずかしく聞こえるかもしれませんが、伝えたいことはシンプルです。困っている状況をそのままにせず、お互いに無理のない形でその人が動きやすくなるよう整える——その積み重ねが合理的配慮です。配慮を求める側にとっては、「努力や我慢で乗り切る」のではなく、必要な調整を相談していいという土台ができることを意味します。

社会的障壁とは

合理的配慮を理解するうえで欠かせないのが「社会的障壁」という言葉です。これは、障害のある方にとって日常生活や社会生活を送るうえで妨げとなる、社会の側のさまざまなものを指します。

たとえば、段差や狭い通路といった物理的なもの、わかりにくい案内表示や複雑な手続きといった情報・制度上のもの、「障害があるから難しいだろう」という周囲の思い込みや慣習なども、社会的障壁に含まれる場合があります。障壁は本人の中ではなく、社会の側にあるという見方が出発点になります。

「社会モデル」という考え方

この見方の背景にあるのが「社会モデル」という考え方です。困難の原因を本人の能力や身体の状態だけに求めるのではなく、社会の側にある障壁が困難を生み出している、と捉える視点です。

たとえば、車いすを使う方が建物に入れないのは「歩けないから」ではなく「段差があるから」と考える。すると、解決の糸口は本人を変えることではなく、段差を解消することに向かいます。合理的配慮は、この社会モデルの考え方を具体的な調整として形にするものといえます。

2024年4月の義務化で何が変わった?(障害者差別解消法)

合理的配慮をめぐっては、2024年4月1日に大きな変化がありました。改正された障害者差別解消法が施行され、これまで民間事業者にとって「努力義務」だった合理的配慮の提供が、「法的義務」へと変わったのです。

行政機関などはこれ以前から法的義務とされていましたが、今回の改正によって、お店や会社、病院、学校といった民間の事業者にも同じ義務が及ぶことになりました。

努力義務と法的義務はどう違う?

「努力義務」は、できる範囲で対応するよう努める状態を指します。これに対して「法的義務」は、正当な理由(過重な負担など)がない限り、対応が義務づけられる状態です。今回の義務化によって、配慮を求める側から見れば、相談を切り出しやすくなったといえます。

ただし、義務化されたからといって、求めればどんな配慮でも必ず受けられるわけではありません。事業者側の体制や負担の大きさも考慮されるため、具体的な配慮の内容は、一人ひとりの状況に応じてお互いに話し合いながら決まっていくものとなります。

雇用の場面は障害者雇用促進法でも義務

働く場面での合理的配慮には、もう一つの法律が関わります。障害者雇用促進法では、募集・採用や採用後の場面で、事業主が障害のある方に合理的配慮を提供することが義務づけられています。

障害者差別解消法が社会生活全般を広くカバーするのに対し、雇用の場面は障害者雇用促進法が受け持つ、という役割分担になっています。働くことに関する配慮を相談したいときは、この法律が後ろ盾になります。なお、障害者雇用という働き方そのものについては、障害者雇用とは?一般雇用との違いや働くときのメリット・デメリットもあわせてご覧ください。

合理的配慮の3つのキーワード(意思の表明・過重な負担・建設的対話)

合理的配慮を理解するうえで、覚えておきたい3つの言葉があります。それぞれを読者の立場でかみ砕いていきます。

配慮は「意思の表明」から始まる

合理的配慮は、障害のある方ご本人や、その家族・支援者などからの「意思の表明」があって初めて検討が始まるのが基本とされています。

つまり、困っていることや、してほしい工夫を相手に伝えることが出発点になります。「言わなくても察してほしい」という気持ちが生まれるのは自然なことですが、相手が状況を知らなければ調整のしようがない、という面もあります。意思の表明は、口頭だけでなく、書面やメール、面談に家族が同席して伝える方法など、ご自身が伝えやすい手段を選んで行うことができます。まずは伝えること自体が、配慮の第一歩になります。

「過重な負担」になるときは別の形を探す

事業者にとって対応が「過重な負担」になる場合には、求められた配慮をそのままの形では提供できないこともあります。過重な負担にあたるかどうかは、事業への影響の程度、実現にかかる費用や人手、企業の規模や財政状況などを総合的に見て判断されます。

大切なのは、「過重な負担だから」とそこで話が終わるわけではないという点です。会社側には、なぜその配慮が難しいのかの理由を説明し、別の方法を一緒に考える姿勢が法的に求められています。

「建設的対話」で代替案を一緒に探す

このやり取りを支えるのが「建設的対話」です。配慮を求める側と提供する側が、お互いの事情を伝え合いながら、実現できる方法を一緒に探していくプロセスを指します。

希望した配慮がそのまま叶わなくても、対話を通じて「これならできる」という代替案にたどり着けることがあります。合理的配慮は、一方的な要求でも一方的な拒否でもなく、両者の対話で形づくられていくものです。また、この対話は一度きりで終わるものではなく、仕事の内容が変わったり、体調に変化があったりした際には、必要に応じて見直しや再調整を行っていく性質のものです。

職場での合理的配慮の例

ここからは、多くの方が知りたい「職場での合理的配慮」の具体例を見ていきます。どの配慮が合うかは一人ひとり異なるため、「こうした例があります」という形で参考にしていただければと思います。

精神障害・発達障害のある方の例

精神障害や発達障害のある方への配慮としては、厚生労働省の指針などでも次のような例が挙げられています。

  • 指示は口頭だけでなく、メモや文書など形に残る方法で伝える
  • 業務の手順をマニュアル化し、優先順位を一緒に確認する
  • 一度に多くの作業を渡さず、量やペースを調整する
  • 周囲の刺激を減らせるよう、静かな席や休憩できる場所を用意する
  • 通院や体調の波に配慮し、勤務時間や休憩の取り方を柔軟にする

これらはあくまで一例で、同じ診断名でも必要な配慮は変わります。ご本人が「何に困っているか」を起点に考えることが、的を射た配慮につながると考えられます。

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身体・知的・感覚に関する配慮の例

このほかにも、車いすを使う方の動線を確保するために通路や机の配置を調整する、知的障害のある方にわかりやすい言葉や図表を用いた資料で説明する、視覚や聴覚に障害のある方に音声読み上げソフトの導入や筆談・文字情報を組み合わせて伝える、といった例が挙げられます。

それぞれの職種や個人の状況に応じて、柔軟に組み合わせて考えていくことが一般的です。

学校・お店・公共サービスでの例

職場以外でも合理的配慮の義務化は広がっています。たとえば、店舗で商品やサービスの案内を口頭で読み上げたり筆談に応じたりする、窓口で順番を待つ間に座って待てるよう椅子を用意する、といった対応が挙げられます。

また、学校などの教育機関でも、個々の状況に応じた柔軟な試験時間の調整や、配布資料の文字サイズ変更といった配慮が行われる場合があります(※学校の種類や設置主体によって、これまでの対応や義務化の時期が異なる場合があります)。日常のあらゆる場面において、お互いの工夫が求められる時代になっているといえます。

合理的配慮を「お願いする」ときの進め方

ここまで制度を見てきましたが、多くの方が本当に知りたいのは「では、どう頼めばいいのか」という部分だと思います。配慮を求めることは、わがままでも特別扱いでもありません。ここでは伝え方の整理の仕方を紹介します。

何を・誰に・どう伝えるか

まず整理したいのは、「どんな場面で、何に困っていて、どうしてほしいのか」です。たとえば「電話対応のときに内容を聞き取りきれず混乱するので、要点をメモやメールで共有してほしい」というように、困りごとと、してほしい工夫をセットで具体的に伝えると、会社側も検討しやすくなります。

伝える相手は、職場であれば直属の上司や人事部、社内の産業医や産業保健スタッフなどが考えられます。なお、法的な枠組みにおいて、職場での合理的配慮の対象者は障害者手帳の有無のみで限定されるものではありません。手帳を所持していなくても、心身の機能の障害により長期にわたって職業生活に困難を抱えている場合は対象に含まれるとされています。ただし、企業側の制度の理解度や実際の運用の詳細については、事前に社内の相談窓口や人事担当者に確認・相談することが一般的です。

「自分の取扱説明書」を用意すると伝えやすい

口頭で一度に伝えるのが難しいときは、自分の特性や必要な配慮をまとめた「取扱説明書」のようなメモ(就労支援の現場ではナビゲーションブックや自己紹介シートなどと呼ばれます)を用意しておく方法もあります。得意なこと・苦手なこと、調子が崩れやすい場面、助かる工夫などを書き出しておくと、相手と情報を共有しやすくなります。

ただ、こうしたメモを一人で作成するには、まず自分自身の特性をある程度言葉にする必要があり、ハードルを高く感じる方も少なくありません。「自分は何に困っていて、何があれば動きやすいのか」がはっきりしないまま配慮を求めようとして、うまく言葉にできずに行き詰まってしまうケースも見られます。そうした場合は、一人で抱え込まずに、障害者就業・生活支援センターや地域障害者職業センターといった外部の専門支援機関に相談しながら整理していくのも一つの方法です。

なお、自身の障害や特性を職場に開示して働くか、開示せずに働くかで悩む場合は、クローズ就労・オープン就労とは?メリットやデメリット、向いている人の特徴を解説も参考になります。

配慮を求める前に「自己理解」を整えるという選択肢

「してほしい配慮がうまく言葉にできない」「そもそも自分の特性がよく分からない」。そんなとき、無理に職場で答えを出そうとするのではなく、いったん自分を見つめ直す時間を持つという選択肢もあります。

自分の凸凹を言葉にする練習

自立訓練(生活訓練)は、日常生活を整えたり、自分の特性を理解したりすることに時間を使える障害福祉サービスの一つです。エンラボカレッジでは、その中で『自分/支え方マニュアル』という成果物づくりに取り組みます。自分はどんな場面でつまずきやすく、どんな関わりがあると助かるのかを、スタッフと一緒に少しずつ言葉にしていく取り組みです。

たとえば感情の動きを振り返るプログラムや、自分の特性を整理するプログラムを通じて、「自分にとっての必要な配慮」が輪郭を帯びてきます。

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焦らず土台を整える時間

自立訓練では、すぐに就職を目指すのではなく、生活リズムや自己理解といった土台を整えることに時間をかけられる設計になっています。「早く働かなければ」という焦りの中では、自分の特性とゆっくり向き合うのは難しいものです(※自立訓練(生活訓練)の利用期間は原則として2年以内と定められています)。

卒業後の進路も、一般企業への就職だけでなく、復職・復学、就労継続支援(A型・B型)への移行など、一人ひとりの状況に合わせてさまざまです。「相談してもいい」と思えるようになるまでの過程は、発達障害のある10代の私が、自立訓練で「相談してもいい」と思えるようになるまでの体験でも語られています。職場へ配慮を求める前段階として、まず自分を深く知る時間を持つ——それも安定して働き続けるための大切な一つの進め方だと考えられます。

エンラボカレッジでは、無料の見学・相談を受け付けています。「自分の特性をどう整理すればいいか分からない」という段階からのご相談も歓迎です。お気軽にお問い合わせください。

よくある質問(FAQ)

Q. 合理的配慮を受けるには障害者手帳が必要ですか?

A. 合理的配慮は、手帳の有無のみで決まるものではない場合があります。困りごとに応じた調整を相談できるもので、手帳は障害者雇用の枠で働く際の要件など別の制度に関わります。実際の取り扱いは、勤務先や相談窓口にご確認ください。

Q. 配慮をお願いしたのに応じてもらえない場合、罰則はありますか?

A. 配慮を提供しないこと自体に対する直接の罰則は定められていません。差別の解消に向けては、行政による報告徴収や助言・指導・勧告といった仕組みが設けられています。なお、報告をしなかったり虚偽の報告をしたりした場合には、20万円以下の過料が定められています(障害者差別解消法第26条)。

Q. どんな配慮でもお願いすれば受けられますか?

A. 受けられるとは限りません。事業者にとって過重な負担となる場合は、別の方法を一緒に探す「建設的対話」を通じて、実現できる形を検討していくことになります。

Q. 合理的配慮と「環境の整備」は違うものですか?

A. 環境の整備は、不特定多数の方に向けてあらかじめ設備や制度を整えておく取り組みを指す場合が多く、個別の意思の表明に応じて行う合理的配慮とは区別して考えられています。

Q. 配慮をお願いすると、評価が下がるのではと不安です。

A. 不安を感じる方は少なくありません。合理的配慮は本来、その方が力を発揮しやすくするための調整です。伝え方に迷うときは、支援機関や相談窓口に一緒に整理してもらう方法もあります。

Q. 家族が本人に代わって配慮をお願いすることはできますか?

A. 意思の表明は、ご本人だけでなく家族や支援者が補佐する形で行われる場合もあります。ご本人の意向を確認しながら進めていくとよいでしょう。

まとめ

2024年4月の義務化によって、民間の事業者にも合理的配慮の提供が法的に求められるようになり、社会全体で配慮を相談しやすい環境が整備されつつあります。職場における配慮は、雇用側と労働者側のお互いの対話を通じて形づくられるものであり、その鍵を握るのは「どのような場面で何に困っていて、どうしてほしいか」を周囲に伝える力です。

そして、その伝える力の土台になるのが、自分自身の特性を深く知ること(自己理解)です。もし現状で「うまく言葉にできない」と感じるときは、決して焦る必要はありません。福祉サービスなどを活用しながら、まずはじっくりと自己理解を整える時間を持つことも、安定した就労や生活に向けた大切な選択肢の一つとなります。あなたやご家族のペースに合わせて、できることから一歩ずつ始めてみてはいかがでしょうか。

更新日:2026/07/13 公開日:2026/06/18

この記事について

※監修:株式会社エンラボ 専門職チーム(精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士 在籍)

※運営:株式会社エンラボ(設立2015年4月/自立訓練(生活訓練)「エンラボカレッジ」を神奈川・東京・大阪・宮崎で運営)

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