特別支援学校の卒業|進路や就職先の探し方について解説

公開日:2024/03/29

障害のある子どもが特別支援学校高等部に通っている保護者の方は、「卒業後の進路はどうしたらいいのだろう?」「どんな選択肢があるの?」など心配な気持ちを抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか?

特別支援学校を卒業した後の進路については、就職、福祉施設の利用、進学などがあります。それぞれの特徴を知って、子どもに合った道を探していくといいでしょう。

今回は特別支援学校を卒業した後の主な進路先、実際のデータ、特別支援学校卒業後に活用できる社会資源などを紹介します。

なお、今回は特別支援学校の「高等部」を卒業した後について解説していきます。この記事では「特別支援学校高等部」のことを、「特別支援学校」と記載いたしますのでご了承ください。

特別支援学校卒業後はどんな進路先がある?

特別支援学校卒業後の進路には多くの選択肢があります。主な進路として、就職、進学、教育訓練機関、福祉施設があり、それぞれさらに細かく分かれています。選択肢を知っておくことは特別支援学校卒業後について検討するうえでも役に立つでしょう。まずは、特別支援学校卒業後の主な進路を具体的に紹介していきます。

就職

特別支援学校卒業後の進路として就職があります。雇用形態は様々で、正社員として無期雇用で働く場合もあれば、アルバイトなどの有期雇用で働く場合もあります。また、その中でも通常の求人に応募する一般雇用とは別に、「障害者雇用」という選択肢があります。

障害者雇用

障害者雇用とは、障害者手帳を所持している方が応募できる雇用形態のことで、障害について職場に伝えたうえで働くため、業務や職場環境の調整などの配慮が受けやすいという特徴があります。

 

障害者雇用で働くには障害者手帳の取得が必要で、知的障害のある方は「療育手帳」、身体障害のある方は「身体障害者手帳」、精神障害と発達障害のある方は「精神障害者保健福祉手帳」がそれぞれ対象となります。

 

特別支援学校卒業後の進路に障害者雇用を視野に入れている方で、まだ取得していない方は主治医や自治体の障害福祉窓口に相談してみるといいでしょう。

進学

特別支援学校卒業後に進学するという方もいます。進学先としては大学、短期大学、高等学校専攻科などがあります。高等学校専攻科という言葉は聞きなれないかもしれませんが、高校卒業者がさらに専門的なことを学ぶための学科で、一部の高等学校内に設定されています。

教育訓練機関

特別支援学校卒業後の進路として、教育訓練機関に進む道もあります。ここでいう教育訓練機関とは、専修学校や公共職業能力開発施設などのことです。専修学校とは、仕事などにつながる専門的な知識や技能を身につけることを目的とした学校で、入学資格によって「専門課程」「高等課程」「一般課程」に分かれています。

 

この専修学校の専門課程が、いわゆる「専門学校」と呼ばれていて、入学するには特別支援学校を含めた高等学校卒業の資格が必要となります。

 

公共職業能力開発施設は就職に向けて技術の取得や知識の学習などを行う場所のことです。求職者向けなどいくつかコースがあり、特別支援学校卒業者に向けては「職業能力開発大学校」「職業能力開発短期大学校」があります。

福祉施設

特別支援学校卒業後に福祉施設を利用するという進路もあります。福祉施設には色々なものがありますが、ここでは生活や就職に関する施設を中心に紹介します。いずれの施設も見学や体験ができますので、進路指導の先生とも相談しながら特別支援学校在学中に訪れてみるのもいいでしょう。

就労継続支援

就労継続支援とは、障害のある方が支援を受けながら働くことができる場所のことです。福祉的就労と呼ばれることもあります。

 

就労継続支援にはさらに「A型」と「B型」の二種類があります。A型は事業所と利用者が雇用契約を結んだうえで利用し、最低賃金が保障された賃金を受け取ることができます。対してB型は事業所と利用者は雇用契約を結ばずに利用し、行った生産活動の対価として工賃を受け取ることができます。

 

A型の方が毎月もらえるお金は多い傾向がありますが、B型は雇用契約を結ばないため比較的体調などに合わせた通い方がしやすいという傾向があります。

 

関連ページ:就労継続支援A型とは?どんな人に向いている?仕事内容・給料・利用料など紹介します。

関連ページ:就労継続支援B型とは?どんな人が利用できるの?仕事内容・給料(工賃)・利用料などを詳しく解説します。

就労移行支援

就労移行支援とは、障害のある方を対象に一般企業に就職することを目指して、様々な訓練や就職活動のサポートを提供している施設です。就労継続支援とは異なり基本的に生産活動や報酬の支払いはありません。

 

その分、一般企業に就職するための取り組みが多くなっており、利用者は業務スキルの取得や障害理解などのプログラム、企業実習、面接の練習などに取り組んでいきます。

 

関連ページ:就労移行支援(就労支援)ってどんなところ?対象・利用料・内容・就職率に関して解説します。

自立訓練

特別支援学校卒業後の進路として、自立訓練もあります。自立訓練とは、障害のある方が自立した生活を営めるように様々なサポートをしている施設です。

 

自立訓練の中でも二種類あり、それぞれ「機能訓練」と「生活訓練」と呼ばれています。機能訓練では事業所や自宅において、リハビリテーションやその他生活に関するサポートを受けることができます。生活訓練では、事業所や自宅で家事やお金の計算、自己理解、体調管理、コミュニケーションなど自立した生活をするためのスキルの取得のプログラムや、その他生活に関するサポートを提供しています。

まずは自立した生活を目指すという方は、自立訓練から始めてみるのもいいでしょう。

その他

厚生労働省の調査で、特別支援学校卒業後の進路が「その他」となっている場合もあります。考えられることとしては、特別支援学校卒業後に就職などせず家事手伝いをしている方や、外国に留学した方、進路が決まらなかった方が含まれると考えられます。

特別支援学校の進路先の現状

ここでは、特別支援学校卒業後の進路について、他の方がどのような選択をしているのかデータを用いて紹介していきます。

 

下の表は平成30年3月に特別支援学校を卒業した方の進路先を調査したものです。特別支援学校には様々な障害のある方が通っており、障害の種別によって進路に違いも出るため、主に全体的な傾向について紹介します。

 

卒業後の進路

参照ページ:文部科学省「9.卒業者の進路」

 

 

特別支援学校卒業後の進路として、一番多いのは自立訓練などの福祉施設を利用する方で、60%以上の方が進路先として選んでいました。

次に多いのは就職で、特別支援学校卒業後にそのまま就職する方は約30%いました。特別支援学校卒業者の就職先は工場での組み立てなどの「生産工程」が一番多く、続いて倉庫などの荷物運搬やクリーニングなどの「運搬・清掃」、その後は「サービス職」「販売職」「事務」が続いてきました。


特別支援学校卒業後に進学をする方は全体の約2%とかなり少ないですが、視覚障害や聴覚障害のある方は30~40%程度の方が進学を選んでいるなど障害種別によって違いがみられました。

 

特別支援学校卒業後に教育訓練機関に通う方は全体だと1.6%と一番低い数値で、障害種別ごとの差もそれほどありませんでした。

 

ここで紹介したものは、特別支援学校卒業後の全体的な傾向です。進路を決めるには進路担当の先生と相談しながら長期的な目で見て、様々な職場で仕事を体験したり、就労アセスメントといって就労移行支援事業所などで実習をしたりといった活動を行っていきます。

 

特別支援学校卒業後のデータを参考にしながら、子どもに合った進路を探してみてください。

 

特別支援学校卒業後に活用できる社会資源

特別支援学校卒業後に自立に向けて活用できる支援機関を紹介します。

地域活動支援センター

地域活動支援センターは、障害のある方を対象として日中活動の場を提供している支援機関のことです。障害のある方が通いながら、調理、手芸、映画鑑賞などの創作活動や生産活動を行う他、イベントなどによる利用者同士の交流や社会参加なども行っています。

障害者就業・生活支援センター

障害者就業・生活支援センターは、仕事と生活に関して支援が必要な障害のある方に対して、相談対応や家庭訪問などによる支援を提供している支援機関です。

 

仕事に関しては相談だけでなく、訓練の提供や職場実習の斡旋、就職活動のサポートも行っています。

生活に関しても幅広い相談を受け付けていて、生活リズム構築などの健康管理や金銭管理のアドバイスといった日常生活における自己管理法を身に着けるサポートなどをしています。

障害福祉窓口や相談支援事業所

特別支援学校卒業後にどのようなサポートがあるのかわからないという場合には、自治体の障害福祉窓口や相談支援事業所に相談することも可能です。

 

どちらも福祉サービスなどの社会資源の情報提供や相談対応をしており、状況に応じて適した支援機関の紹介を受けることができる場合もあります。

自立訓練

自立訓練は自立した生活を営むためのスキルの取得や生活の相談対応をしている支援機関です。自立訓練には先ほど記載したように機能訓練と生活訓練という種類があり、機能訓練では身体的なリハビリテーションも提供しています。

 

自立訓練の中の生活訓練を提供しているエンラボカレッジでは、座学や実践を繰り返し、社会の中で生活していくための自己管理やお金の使い方、社会人としてのコミュニケーションスキルなどを身につけていきます。

 

一人ひとりの状況や目標に合わせて、どのように取り組んでいくか、面談を通して個別に計画を作成しサポートしていきます

 

エンラボカレッジでは無料の相談も受付中です。「特別支援学校を卒業した後が不安」「卒業後すぐに就職は考えていない」という方は一度ご相談ください。

特別支援学校 卒業のまとめ

特別支援学校を卒業した後は、就職や進学、福祉施設の利用など様々な選択肢があります。その中で最も多い進路先が福祉施設の利用です。ただ、福祉施設といっても、就労継続支援、就労移行支援、自立訓練など目的や取り組み内容によって種類がいくつもあります。

 

特別支援学校の卒業後の進路は進路担当の先生とも相談のうえ、職場実習や福祉施設の体験なども行いながら進めていきます。時間をかけて色々な選択肢を検討し、子どもに合った進路を考えていけるといいでしょう。

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