学習障害(LD)のある方に向いている・向いていない仕事って?特性に合わせて長く働き続けるための工夫も紹介します!
公開日:2025/02/14

学習障害(LD)や限局性学習症(SLD)は、特定の学習や作業分野に困難を抱える発達障害の一つです。知的発達に遅れはなくても、読む、書く、計算するなどの基本スキルに課題を抱えることがあります。この障害が日常生活や仕事でどのような影響を与えるのか、またどのような工夫やサポートが役立つのかを理解することは、障害のある方が自分らしく働くために役立ちます。本記事では、学習障害の症状や特性に合わせた向いている仕事・向いていない仕事や働きやすい環境づくりの方法について詳しく解説します。
学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)とは
学習障害(LD)は、特定の学習分野に困難を抱える発達障害の一つです。知的発達に問題はないものの、読む・書く・計算するといった特定のスキルが習得しづらいという特徴があります。これにより、日常生活や仕事で困難を感じることが少なくありません。
日本では、学習障害は「限局性学習症(SLD)」とも呼ばれ、教育や職場環境の理解が重要視されています。特に大人になると、学校の授業など症状に気づく機会が減るために、理解を得にくいケースもありますが、適切なサポートを受けたり、働き方を工夫したりすることで自分の力を活かすことが可能です。
学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)の症状
学習障害は主に次の3つの症状に分類されます。
- 読字障害(ディスレクシア):文字を読むのが苦手で、文字の認識や音読に困難を感じます。
- 書字表出障害(ディスグラフィア):文字を書くことが苦手で、誤字や整った文字を書くことに難しさがあります。
- 算数障害(ディスカリキュリア):数字や計算の概念を理解することが難しく、計算間違いが頻発します。
学習障害の特徴や仕事での対処法については、以下の関連記事をご参照ください。
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学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)のある方が仕事で感じやすい困りごと
学習障害(LD)や限局性学習症(SLD)は、知的な発達に遅れはないものの、特定の分野で学習や作業の困難を感じる特性です。これらの特性は、仕事の場面においても多くの困りごとを引き起こすことがあります。ここでは、具体的な困りごとを3つのカテゴリーに分けて解説します。
①読字障害(ディスレクシア)による困りごと
読字障害(ディスレクシア)は、文字を読むことに困難を感じる特性です。この特性がある方は、仕事で以下のような問題を感じやすいです。
- マニュアルや資料を読むのが難しい:業務の手順書や説明書を理解するのに通常より多くの時間がかかる場合があります。
- 業務内容の指示を読み飛ばしてしまう:文中の重要な部分を見落としてしまうことで、作業の進行に影響を与えることがあります。
- 情報を読み解くのに時間がかかる:大量のテキストを処理する必要がある業務では、ストレスを感じやすい傾向にあります。
②書字表出障害(ディスグラフィア)による困りごと
書字表出障害(ディスグラフィア)は、書くことに困難を感じる特性です。この特性がある方が職場で直面しやすい課題には以下のようなものがあります。
- 会議内容のメモが難しい:上司や取引先の話をスムーズに記録できないため、後で内容を思い出せないことがあります。
- プレゼンテーションや文書資料の作成に時間がかかる:PCの機能などを使って、ある程度の誤字脱字は防いだり簡単に修正できたりするものの、そもそも文章を思いついて書くところに時間がかかったり、表現力が制限されて自分のアイデアや意図を効果的に伝えにくかったりする可能性があります。
- タイムマネジメントが苦手:書く作業が他の人より時間がかかるため、締切に間に合わなかったり、他の業務が滞ったりすることがあります。
③算数障害(ディスカリキュリア)による困りごと
算数障害(ディスカリキュリア)は、数や計算に関連する作業が苦手な特性です。この特性のある方が仕事上で困りやすい例は次の通りです。
- お金の計算が難しい:販売や会計業務など、金銭を扱う作業でミスをするリスクが高くなります。
- 時計を読むのが苦手:時間管理が難しく、スケジュール通りにタスクを進めることが困難になることがあります。
- データ分析や統計を行うことが難しい:データを視覚的に解釈することが難しく、統計やグラフを効果的に用いたレポート作成が困難な場合があります。
学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)のある方に向いている仕事の特徴
学習障害(LD)や限局性学習症(SLD)がある方でも、自分の特性や強みを活かすことで適した仕事を見つけることができます。ここでは、それぞれの特性に合った仕事の特徴を解説します。
ただし、特性は人それぞれ異なり、向いている仕事や業務内容も異なります。向いている仕事が全員に当てはまるわけではないので、あくまでも参考としてください。
①読字障害(ディスレクシア)に向いている仕事
読字障害のある方は、文字情報の処理に時間がかかる一方で、視覚や聴覚など他の感覚を活かせる場面で能力を発揮しやすい可能性があります。
- 実務的・作業型の仕事:工事現場の作業員や調理師など、文字よりも手や体を使う作業が中心の職業。
- コミュニケーションが重要な仕事:カスタマーサポートや接客業など、会話を通じて行う業務。
- クリエイティブな仕事:デザイン、音楽、アートなど、想像力や独創性が活きる職業。
これらの仕事では、文字情報に頼らずに自身の得意な能力を活かすことができる可能性が高いです。
②書字表出障害(ディスグラフィア)に向いている仕事
書字表出障害のある方は、書く作業を最小限に抑えつつ、他の能力を活用できる職業が向いている場合があります。
- 対面でのコミュニケーションが主な仕事:営業職やカウンセラーなど、話すことが中心の業務。
- 実践的なスキルが求められる仕事:メカニックや職人など、手を動かして成果を出す業務。
- チームワークを重視する仕事:他のメンバーが補完してくれる環境での業務。
こうした仕事では、文章を書くことが少なくても貢献できる場面が多いため、自信を持って取り組むことができるでしょう。
③算数障害(ディスカリキュリア)に向いている仕事
算数障害のある方には、数値処理や計算の負担が少ない仕事が適しているケースが多いでしょう。
- クリエイティブ分野の仕事:イラストレーターやライターなど、計算を必要としない職業。
- マニュアル化された仕事:工場のライン作業や配送業務など、決まった手順で進められる業務。
- サポートが充実している職場:タスク管理や計算について、必要なツールが活用できたり、他者のサポートを受けやすかったりする職場。
これらの職業では、算数的な負担が少ないため、自分の特性を活かしやすいでしょう。
学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)のある方に向いていない仕事の特徴
学習障害(LD)や限局性学習症(SLD)のある方が苦手とする仕事には、読み書きや計算、正確性が求められる仕事など、脳の特定の機能に負担がかかるものが含まれます。これらの特徴を持つ仕事に取り組むと、苦手分野が原因でストレスが増大し、結果的にパフォーマンスが低下する可能性があります。
そのため、自身の特性を理解し、適切な仕事を選ぶことが重要です。以下では、主な学習障害(LD)のタイプ別に向かない仕事の特徴を解説します。
向いていない仕事についても、学習障害(LD)のある方全員に当てはまるわけではありません。あくまでも仕事選びの参考までに考えてみてくださいね。
①読字障害(ディスレクシア)に向いていない仕事
読字障害のある方は、文章の読み取りに時間がかかる、または正確に理解することが難しい場合があります。そのため、文書や報告書を頻繁に読んで内容を把握することが求められる仕事は避けた方が良いでしょう。例えば、正確な文法や語句を使った文章が重視される職種(ライターや編集者)や、書類を作成するスピードや正確性が重要な職種(秘書、事務職)、説明書や技術文書を迅速かつ正確に読む必要がある職種(技術サポート、エンジニア)などは、過度の負担を伴う可能性があります。
②書字表出障害(ディスグラフィア)に向いていない仕事
書字表出障害のある方は、文字や文章を正確に書き表すことが困難な場合があります。そのため、速やかな記録や正確な文書作成が必要とされる仕事は不向きです。具体的には、手書きの記録や記入が多い業務(医療現場での記録や教師の板書など)、手書きで情報を素早くまとめる能力が必要な仕事(ジャーナリストや通訳者などのメモ)などが挙げられます。
③算数障害(ディスカリキュリア)に向いていない仕事
算数障害のある方は、数値や計算の処理が苦手であることが特徴です。そのため、複雑な計算や数値分析が重要な役割を担う仕事には向かないと考えられます。例えば、数値を頻繁に扱う仕事(会計や経理、販売業務など)や、正確に数値を扱う必要が頻繁に発生する業務(金融・銀行業務やデイトレーダー、データサイエンティスト)、高度な数学スキルを要求される職種(エンジニア、プログラマー、研究職)などでは、困難が生じる可能性があります。
それぞれの障害に応じて仕事を選ぶ際には、無理に苦手な分野に取り組むのではなく、強みを活かせる環境を整えることが成功の鍵となります。
学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)のある方が働きやすくするためにできる工夫
学習障害(LD)や限局性学習症(SLD)は、情報の理解や処理に困難を伴う特性があります。しかし、適切な工夫やサポートを取り入れることで、職場での働きやすさを向上させることができるでしょう。以下では、具体的な工夫をご紹介します。
①自分自身の特性(得意・不得意)を理解する
まずは、自分がどのような作業に強みがあり、どのような作業に困難を感じるのかを明確にすることが大切です。自己分析を行うことで、効率的に取り組む方法を見つける手助けになります。また、得意分野を活かした業務を選ぶことで、モチベーションを保ちながら働きやすくなります。
②苦手な作業は、電子機器などのツールを活用して補う
テクノロジーの力を借りることで、苦手な作業を効率的に進めることが可能です。例えば、文章作成が苦手な場合は音声入力ツールや校正アプリを活用することができます。また、タスク管理アプリやリマインダー機能を利用することで、スケジュールや業務の整理がスムーズになります。
③文書やメモ、図や表を活用する
情報を視覚的に整理することは、理解を深める上で非常に効果的です。文章だけでなく、図や表を活用してメモを取ることで、内容を分かりやすくまとめることができます。特に複雑なタスクの場合、視覚的に情報を整理すると、全体の流れが把握しやすくなります。
④カメラやボイスレコーダーなどで記録に残す
会議や打ち合わせの内容を記録するために、カメラやボイスレコーダーを活用するのもおすすめです。特に、書字表出障害のために、話を聴きながらメモを取ることが難しい場合は、後で繰り返し確認することで、内容をより確実に理解できます。ただし、事前に職場で許可を取ることを忘れないようにしましょう。
⑤あらかじめ職場の人にコミュニケーション方法について依頼しておく
職場の同僚や上司に、自分に合ったコミュニケーション方法を伝えておくと、円滑なやり取りが可能になります。例えば、指示について書面でもらっても理解に時間がかかるため、口頭で指示をもらい、その場で直接指示内容について確認した方が、安心して業務を進められる場合、その旨を事前に伝えることで、業務の進行がスムーズになります。
⑥作業手順はマニュアル化し、サポートを活用する
作業を進める際には、手順をマニュアル化することをおすすめします。明確な手順書があれば、迷うことなく業務を進めることができます。マニュアルの作成や更新は、チーム内で得意な別のメンバーに依頼し、自身はマニュアルに沿って正確に作業に集中するなど、役割分担を行うと良いでしょう。また、音声読み上げソフトを使用し、マニュアルの内容の理解を深めることも有効な場合があります。
⑦自分にとって難しいと感じることはサポートを依頼する
一人で抱え込まず、適切なタイミングで周囲にサポートを依頼することも重要です。職場の上司や同僚、場合によっては専門家に相談することで、問題を解決するための新たなアイデアやアプローチを得ることができます。
これらの工夫を取り入れることで、学習障害(LD)や限局性学習症(SLD)のある方でも、自信を持って働ける環境を整えることができます。自分に合った方法を見つけ、職場での活躍の場を広げていきましょう。
学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)のある方が仕事を長く続けるためのポイント
学習障害(LD)や限局性学習症(SLD)のある方が仕事を長く続けるためには、自身の特性に合った環境を選び、適切なサポートを活用することが重要です。以下では、具体的なポイントを解説します。
①自分の特性を他者に説明できるようにする
自分の得意なことや苦手なことを明確にし、周囲に分かりやすく伝えられることが大切です。例えば、文書での指示が苦手な場合は、口頭での指示を希望することを事前に伝えましょう。また、自分の特性を理解してもらうことで、職場でのサポートを得やすくなり、ストレスを減らすことができます。
②障害者雇用枠やオープン就労での就職も検討する
障害者雇用枠やオープン就労では、障害をオープンにした上で、自分に合ったサポートを受けながら働ける環境を選ぶことができます。特に、合理的配慮を受けやすくなるため、自分のペースで働きやすくなります。詳しくは関連記事を参照してください。
【関連ページ】
障害者雇用で働くメリットとは?デメリットや企業側の採用メリットも解説
③支援機関の活用を検討する
就職や転職の際には、支援機関を活用することも有効です。ハローワークの障害者専門窓口や地域の就労支援センターでは、求人情報の提供やキャリア相談を受けることができます。また、職場でのトラブルが発生した場合でも、支援機関を通じて解決策を模索することが可能です。
これらのポイントを意識して取り組むことで、学習障害(LD)や限局性学習症(SLD)のある方でも、自分らしく働ける環境を整えることができます。適切な準備とサポートを活用し、長く安心して働ける職場を見つけましょう。
学習障害(LD)/限局性学習症(SLD)のある方が転職に悩んだ時に利用できる支援機関
学習障害(LD)や限局性学習症(SLD)のある方が転職や仕事の悩みに直面した際、専門的な支援を受けられる機関があります。これらの支援機関を活用することで、自分に合った仕事や職場環境を見つける助けになります。以下に、主な支援先をご紹介します。
①ハローワーク
ハローワークでは、障害者専門の窓口が設置されており、学習障害(LD)に対応した求人情報を提供しています。また、キャリア相談や面接対策、職業訓練の案内も行っています。
②障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは、就業面と生活面の両方で相談に乗ってくれる機関です。職場でのトラブルや日常生活での困りごとについても対応してくれるため、安心して利用できます。地域ごとに設置されています。
③地域障害者職業センター
地域障害者職業センターは、職業リハビリテーションの専門機関です。個別の特性に応じた職業評価や就職活動の支援、職場定着のためのアドバイスを受けることができます。長期的に働ける環境を整えるための支援が特徴です。
④就労移行支援事業所
就労移行支援事業所では、働くためのスキルを身につける訓練や、就職活動のサポートを受けられます。特に、一般就労を目指している方に向けたプログラムが充実しており、実践的な訓練を通じて職場での適応力を高めることができます。
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⑤自立訓練
自立訓練(生活訓練)は、日常生活のスキルを身につけることを目的とした支援サービスです。職場で必要となる基礎的なコミュニケーションスキルや時間管理能力を向上させることができます。生活全般の自立を目指した支援を受けることが可能です。
これらの支援機関を活用することで、学習障害(LD)や限局性学習症(SLD)のある方でも、自分に適した職場を見つけることができます。転職や仕事の悩みを抱えている方は、ぜひ専門機関に相談してみてください。
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自立訓練(生活訓練)とは?就労移行支援との違いやカリキュラム・対象などについて解説します。
まとめ
学習障害(LD)や限局性学習症(SLD)は、特定のスキルに困難を伴う特性ですが、それぞれの得意分野や特性を活かせる仕事を見つけることで、自分らしい働き方を実現することが可能です。
本記事では、特性に応じた向いている仕事・向いていない仕事の特徴や働きやすくするためにできる工夫について解説しました。適切なサポートツールを活用したり、職場での理解を深めるために周囲に自分の障害について事前に説明したり、特性に合わせた働き方への協力を依頼することが、働きやすい環境づくりの鍵となります。また、自分の得意なことや苦手なことを把握し、それを職場や同僚と共有することで、業務を円滑に進めることができます。
学習障害(LD)があり、仕事で悩んでいるなら、障害者雇用枠での働き方や支援機関の活用すること、自身の特性理解を深めていくことも、有効な選択肢の一つです。
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