大人の発達障害の相談先や相談方法・支援機関を紹介します。
公開日:2024/03/29
発達障害がある大人の方で、生活や仕事で困りごとがあるにも関わらず、「どこに相談したらいいのかわからない」とひとりで悩まれている方もいらっしゃるのではないでしょうか。
誰にも相談せず、一人で悩みを抱え続けていると「うつ病などの精神疾患の症状」が出て二次障害を発症してしまう可能性もありえます。
今回は大人の発達障害の相談先や、相談方法、具体的な支援機関などを紹介します。
大人の発達障害とは?
大人の発達障害とは、大人になってから初めて発達障害があると判明することを言います。
発達障害は生まれつきの脳機能の偏りによるものと言われており、大人になってから発症することはありませんが、子どものころは発達障害の困りごとが表面化されず、本人も周りも気づかないということも珍しくありません。
しかし、大人になるにつれてコミュニケーションが複雑化したり、仕事を始めたりすることがきっかけとなり、対人関係や業務の進め方で困ることが増えた結果、発達障害と診断されることがあります。そのような方を一般的に「大人の発達障害」と呼んでいます。
発達障害には大きく分けて、ASD、ADHD、LD/SLDという種別があります。種別ごとに特性や困ることの傾向が異なり、相談内容も変わってきます。
ASD(自閉スペクトラム症)
ASD(自閉スペクトラム症)は、「対人関係の困難」や「特定の物事への強いこだわり」という特性がある発達障害のひとつです。
ASDは以前はアスペルガー症候群、自閉症、広汎性発達障害と呼ばれていた障害が、統合されてできた診断名です。
ASDのよくある困りごととして、対人関係では「あいまいな表現や冗談の理解が難しい」「突然の変化があると混乱してしまう」「一方的に話してしまう」「感覚過敏があり、特定の刺激がある場所では集中しづらい」などが挙げられます。
ADHD(注意欠如・多動症)
ADHD(注意欠如・多動症)は、「不注意」「多動・衝動性」という特性がある発達障害のことです。
ADHDの困りごと例としては、不注意により「ケアレスミスが多い」「遅刻や忘れ物が多い」などがあります。また、多動・衝動性では「静かな会議でもじっとしていることができない」「人の話をさえぎって話してしまう」などがあります。
人によって不注意の困りごとが現れやすい「不注意優勢型」多動・衝動性の困りごとが現れやすい「多動・衝動優勢型」どちらも現れる「混合型」があります。
LD(学習障害)/SLD(限局性学習症)
LD(学習障害)とは、「読み」「書き」「計算」など特定の分野の学習に著しい苦手さがある発達障害の一つです。全体的な知的能力の困難さはなくても、特定の学習への困難さが目立つという特徴があります。
学習障害の「読み」の困難さとしては、「似た文字を読み違える(「あ」と「め」など)」「文字を飛ばしながら読んでしまう」などがあります。「書き」の困難さとしては、「似た文字を書き間違える(「ぬ」と「め」など)」、「用意されたマスに文字を収めることができない」などがあります。「計算」の分野では、「四捨五入などの概念の理解が難しい」「九九が覚えられない」などが挙げられます。
大人の発達障害の症状や診断についての相談
大人になってから仕事や対人関係で困ることが多くなり、「発達障害なのでは」と感じていて、受診を検討している方もいると思います。しかし、発達障害の相談や診断ができる病院は限られているため、どうやって探したらいいのかわからないという声も聞かれます。
まず、発達障害の診断は発達障害の専門医のいる精神科や心療内科、発達障害外来のある総合病院などで受けることができます。
発達障害の診断ができる病院を探す方法はいくつかあります。インターネットで「大人 発達障害 病院 お住いの地域」などで検索すると出てくると思います。ただ、それだと一つずつ探すことになるため、公的機関が公開しているリストを活用する方法もあります。
多くの都道府県では発達障害の診断ができる病院のリストを公開しています。以下にいくつかの都道府県の例を記載しますので、ご参考にしてみてください。リストによっては情報が古いこともありますので、気になる病院を見つけたら直接問い合わせてみてください。
参考)
大人の発達障害の診断を受けるときの注意点
大人の発達障害で病院を受診する際に、事前に注意しておきたいポイントを紹介します。
- 大人の発達障害を受け付けている病院を探す
- 余裕をもって予約をする
- 子どもの頃の様子がわかるものを用意する
まず、発達障害の診断を受け付けている病院でも、「子ども専用」という場合があります。必ず大人の発達障害の診断ができるか確認しておきましょう。
次に、発達障害の診断は現在混みあっていることが多く、即日診断できることはほとんどありません。診察までに数週間~数か月待ちになることもあります。悩んでいる場合には、時間がかかることを把握したうえで、余裕をもって予約をするようにしましょう。
最後に、発達障害の診断では問診で現在困っていることとともに、子どもの頃の様子を聞かれることも多くあります。発達障害は生まれつき脳機能に偏りがあると言われており、当時は気づかなくても子どものころから特性が現れていることが多いためです。通知表や学校との連絡帳、母子手帳など子どもの頃の様子がわかるものを受診前に用意しておくといいでしょう。
参考ページ:発達障害情報・支援センター 「医療・相談機関へ行くときには」
大人の発達障害 地域や身近な相談先
発達障害かもしれないと思っても、いきなり病院に行くことに抵抗を覚える方もいるでしょう。そういった時は、身近な相談窓口に相談してみるのもいいかもしれません。また、自身ではなく、友人や同僚など周りの方が発達障害かもしれないと感じるときにも、相談してみるといいでしょう。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターは、発達障害のある方や家族などその周りの方からの相談を広く受け付けている支援機関です。
発達障害のある方が自分らしく生活していくために、医療、福祉、就労などの関係機関とも連携しながら支援をしていきます。
特徴として診断がなくても相談できる点や、本人でなくても相談可能な点が挙げられます。「病院に行くか迷っている」「とりあえず相談だけしてみたい」といった方も相談してみるといいでしょう。センターによっては電話やメールなどでも相談を受け付けている場合もあります。
相談は対面が多いですが、最近では電話での相談受付をしている場所も増えてきています。ただ、相談は大抵予約制で相談時間にも限りがあるため、あらかじめ相談することをメモしておくといいでしょう。メモすることとしては、「現在困っていること」「子どものころ困っていたこと」「相談する分野(仕事、生活、対人関係、診断など)」があります。
精神保健福祉センター/市町村保健センター
地域にある精神保健福祉センター、市町村保健センターでも発達障害について相談をすることができます。どちらも身近な地域の保健衛生を担っている機関で、医師や精神保健福祉士など専門的なスタッフが発達障害など障害についても相談受付をしています。診断を受けるか悩んでいる場合には、医療機関を紹介してもらえることもあります。どちらもセンターによっては電話での相談を受け付けていることもあります。電話相談を希望の場合は、ホームページを確認しておくといいでしょう。
自治体の相談窓口
市役所などのホームページには、自治体ごとの発達障害の相談窓口が掲載されていることがあります。「発達障害 相談窓口 お住いの地域」と検索すると、相談先の一覧が出てくることがあります。どこに相談したらいいかわからない、という方は一度チェックしてみるといいでしょう。
また、場合によっては発達障害の相談会などを開催している自治体もあります。こちらもホームページに掲載されていることが多いですが、役所の障害福祉窓口に相談すると情報を教えてもらえることもあります。
大人の発達障害 仕事に関する相談先
ここでは、大人の発達障害のある方が仕事について相談できる窓口を紹介します。
こちらも相談するときは仕事について具体的に困っていること(ケアレスミスが多い、指示の行き違いがある、特定の環境で集中できない、特定の業務が著しく苦手)をメモしておくといいでしょう。
ハローワーク
ハローワークでは発達障害など障害のある方専門の相談窓口があります。相談することで、求人の紹介やビジネスコミュニケーションなどのセミナーの案内などを受けることが可能です。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは発達障害など障害のある方の、仕事と生活両面の相談に乗っている支援機関です。仕事の進め方や就職活動に関する悩みの相談や、生活でのお金の管理、対人関係の悩みの相談など幅広い相談を受け付けているのが特徴です。
自立訓練(生活訓練)
自立訓練(生活訓練)は障害のある方が自立した生活を送れるように、必要なスキルを身につけるための訓練を行う支援機関です。対人関係やスケジュール管理などその方に適したプログラムを提供し、自立した生活に向けた仕事の困りごとについての相談も受け付けている事業所もあります。
大人の発達障害 仕事に関する支援機関
ここでは、大人の発達障害のある方が仕事に関して訓練などサポートを受けることができる支援機関を紹介します。
ハローワーク
先ほども紹介したハローワークの障害のある方向けの窓口では、専門のスタッフが専属で付き、障害に関する自己分析から、書類添削・面接練習などの具体的な就職のサポートまで一貫した支援を受けることができます。
地域障害者職業センター
地域障害者職業センターでは、専門的な職業リハビリテーションの手法を使って、障害のある方の就職を支援しています。
具体的には職業相談・職業評価によって相談者の支援プランを作成し、職業準備支援としてコミュニケーションやストレス対処法、業務スキルを高めるプログラムを提供しています。また、就職した後も、職場に専門のジョブコーチを派遣して、働き続けるための支援も実施しています。
就労移行支援
就労移行支援は、障害のある方が就職して働き続けるためにさまざまな支援を提供している支援機関です。
事業所内でコミュニケーションや対人スキル、業務スキルなどのプログラムを受講することや、職場体験実習といって実際の職場で一定期間働く機会の提供などの支援を行っています。
自立訓練
自立訓練では、自立した生活を営むために困っていることに対して、相談対応だけでなく困りごとを解消するための訓練の提供なども行っています。
自立訓練(生活訓練)事業所を運営するエンラボ カレッジでは、障害名にとらわれずに相談者の話を伺い、現状を整理した上で一人ひとりの目的に合った計画を作成し支援にあたっています。
発達障害といっても、人によって特性や困りごとの表れ方はそれぞれ違います。プログラムや事業所内外で座学、実践を繰り返して自己分析を進め、相談者ご自身に合った訓練や、サポートを提供しています。
コミュニケーションの悩み、ケアレスミスが多いという悩みなど、困りごとの原因やきっかけ、ご自身の特徴をプログラムや面談を通してスタッフと一緒に整理し、ご自身に合った対策や対処法を見つけていくサポートなどをしていきます。
エンラボ カレッジでは、いつでも無料で相談を受け付け中です。「発達障害かもしれない」「どこに相談したらいいかわからない」などの悩みがある方は、ぜひ一度ご相談ください。
大人の発達障害 相談まとめ
発達障害は生まれつきのものですが、大人になってから仕事などで困ることがあり「発達障害かも」と悩む方も少なくありません。そういった場合を一般的に大人の発達障害と呼んでいます。
大人の発達障害の悩みがある場合は、発達障害者支援センターなど多くの場所に相談することができます。そのような相談窓口には発達障害や障害福祉に詳しいスタッフがいて、アドバイスや状況に応じて他の支援機関の紹介など、悩みに対して様々な支援を受けることができます。生活や仕事で困ったことがある方は、一人で抱え込まずに相談してみるといいでしょう。