発達障害の二次障害とは|種類・原因・予防のためにできること
更新日:2026/07/13
体調不良や気分の落ち込みが続くなかで、「自身の生きづらさや不調は、発達特性に関係しているのだろうか」と悩む大人の方は少なくありません。また、職場の環境に馴染めず、休職や退職を考えるほどに追い詰められているケースも見られます。
こうした心や体の二次的な不調は、発達障害にともなう「二次障害」と呼ばれることがあります。二次障害とは、生まれ持った特性そのものではなく、周囲の理解不足や環境とのミスマッチ(環境のズレ)によるストレスや失敗体験が積み重なることで、あとから現れてくる精神症状や行動面の課題のことです。
ただし、二次障害は発達障害のある方に必ず生じるものではありません。自身の特性に早めに気づき、適切な医療や支援につながることで、環境を調整したり症状の軽減を図ったりすることが可能です。
本記事では、大人の発達障害における二次障害の定義や具体的な種類、発生の原因を整理したうえで、日常生活や職場で現れやすいサインと、予防・回復のためにできる具体的なアプローチについて解説します。
発達障害の二次障害とは?一次障害との違い
二次障害という言葉の定義や、一次障害との違いについて正確に把握することは、適切な対処や環境調整を行うための第一歩となります。
発達障害そのもの、すなわち自閉スペクトラム症(ASD)や注意欠如・多動症(ADHD)、限局性学習症(SLD)といった生まれ持った脳の機能特性を「一次障害」と呼びます。一方で、その特性と周囲の環境とのあいだにミスマッチが生じ、社会的ストレスや失敗体験が積み重なることで、後天的に生じてくる心身の不調や行動面の課題を「二次障害」と呼びます。
たとえば、ADHDの特性によって業務上のミスや物忘れが続き、職場で過度な叱責を受け続けるうちに、「自分は能力が欠如している」といった強い自己否定感に陥るケースがあります。この状態が長期化し、気分の落ち込みや強い不安、不眠などの精神症状が現れてくるプロセスが、大人の二次障害における代表的な一例です。
二次障害は、特定の医学的診断名そのものを指すのではなく、発達障害の特性を背景として二次的に派生した状態の総称として用いられます。具体的には、うつ病や適応障害、不安症、睡眠障害といった精神疾患のほか、ひきこもりや社会的な孤立、過度な身体症状(自律神経の乱れなど)まで、幅広い状態が含まれます。
一次障害(ASD・ADHD・SLDの特性)とは
一次障害は、本人の努力不足や周囲の育て方によって生じるものではなく、先天的な脳の機能発達のアンバランスさによるものと考えられています。物事への強いこだわりや対人関係における不器用さ、不注意や多動性・衝動性、特定の学習における困難など、その現れ方や程度には個人差があります。
大人の場合、幼少期に特性が目立たず社会に出てから初めて困難に直面することも少なくありません。自身の特性や、いわゆる「発達障害グレーゾーン」と呼ばれる状態について詳しく知りたい方は、専門機関での相談やセルフチェックの考え方を参考にすることをおすすめします。
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二次障害は「必ず起きる」ものではない
発達障害の特性があるからといって、二次障害が必ず発症するわけではありません。
自身の特性を正しく理解し、周囲の適切なサポートや環境調整(業務内容の見直し、指示の明確化など)がなされている場合、深刻な二次障害に至らずに社会生活を営んでいる方も多く存在します。二次障害は特性そのものが原因ではなく、特性と周囲の環境や要求水準とのミスマッチ(環境のズレ)から生じる社会的ストレスが主な要因であると考えられています。
そのため、自身の特性に早く気づき、適切な環境を選択・調整することには大きな意義があります。すでに不調が現れている場合であっても、医療機関や専門の支援機関と連携して環境を見直すことで、症状の軽減や回復を図ることが可能です。
発達障害の二次障害の種類(内在化と外在化)
二次障害の現れ方は個人によって多種多様ですが、医学や福祉の分野では、症状が「自分の内側に向かうタイプ(内在化)」と「外に向かって表れるタイプ(外在化)」に分類して整理されることがあります。
これらは明確に二分されるものではなく、双方の症状が混在して現れる場合もあります。ここでは、内在化障害、外在化障害、および成人の発達障害において併存しやすい具体的な状態について解説します。
内在化タイプ(うつ・不安・自己肯定感の低下など)
内在化タイプは、精神的な負荷やストレスが自身の内側に向かう状態を指します。気分の落ち込み、過度な不安、対人接触の回避、強い自責の念などが代表例です。
具体的には、「朝、体が重くて出勤できない」「他者と関わることに強い恐怖を覚える」「自分には価値がないと思い詰める」といった症状として表れます。発達障害のある方は、環境とのミスマッチから職場や日常生活で失敗体験を重ねやすく、自尊心や自己肯定感が著しく低下した結果、抑うつや不安症へと移行するケースが少なくありません。
また、心理的な負担が本人も気づかないうちに身体症状として現れることもあります。主な症状としては、頭痛、腹痛、吐き気、めまい、慢性的な不眠などが挙げられます。
内在化タイプとして現れやすい主な精神疾患は以下の通りです。
うつ病・抑うつ状態
持続的な気分の落ち込みや意欲の低下、睡眠障害、食欲不振などが続く状態であり、二次障害として非常に多く見られます。
不安症(社交不安症や全般不安症など
他者との交流や先の見通せない状況に対して過度な不安や恐怖を抱き、社会生活に支障をきたす状態です。
適応障害
特定の環境(職場や家庭など)における明確なストレス因子をきっかけに、情緒面や行動面に著しい不調が現れる状態です。
これらはいずれも専門医による適切な診断と治療(精神療法や薬物療法など)の対象となります。自己判断で放置せず、心身のつらさが続く場合は早期に医療機関へ相談することが推奨されます。
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外在化タイプ(反抗・暴言・他罰的な傾向など)
外在化タイプは、内的ストレスがコントロールを失い、外部への行動として表れる状態を指します。激しい憤りや暴言、他者への攻撃的な態度、物への不当な当たり(破壊行動)などとして現れることがあります。
大人の場合、職場の人間関係や業務上のトラブルが重なった際に、「周囲がすべて悪い」という極端な他罰的思考に陥ったり、衝動的な退職や対人トラブルを繰り返したりする形で表面化することがあります。
表面的な行動の激しさだけを問題視して叱責や更生を迫ると、本人が抱える本来の困難(一次障害に起因する生きづらさ)が見落とされ、さらに孤立を深めてしまうリスクがあります。行動の背景にある環境要因や、本人が感じているストレスに目を向ける視点が不可欠です。
併存しやすい精神面・身体面の状態
発達障害のある方においては、二次障害として生じる疾患のほか、いくつかの精神疾患や身体症状を高い割合で併せ持つ(併存する)傾向があることが国内の調査でも示されています。
厚生労働科学研究費補助金(障害者対策総合研究事業)の分担研究「成人の発達障害に合併する精神及び身体症状・疾患に関する研究」(令和元年度)によると、注意欠如・多動症(ADHD)のある成人202名のうち49.0%、自閉スペクトラム症(ASD)のある成人339名のうち41.0%が「これまでにうつ病の診断を受けたことがある」と回答したと報告されています。また、不眠を理由に医療機関を受診した経験を持つ割合は、ASDで34.8%、ADHDで36.1%にのぼっています(出典:厚生労働科学研究成果データベース/取得日2026-06-12)。
これらの統計データは、発達障害の当事者にとって心身の不調や二次的な疾患がいかに身近に起こり得るかを示しています。同時に、早期に適切な専門機関や医療機関の支援につながることの重要性を裏付けるデータであると言えます。
※上記は令和元年度(2019年度)の特定の研究に基づくデータです。あくまで調査対象となった集団における傾向であり、すべての人に一律に当てはまるものではありません。臨床における実際の診断や気になる症状については、必ず医療機関を受診し専門医の判断を仰いでください。
なぜ二次障害は起きるのか(原因とメカニズム)
二次障害が引き起こされる背景には、単一の要因だけでなく、本人の特性と周囲の環境、そこから派生する社会的ストレスなどが連鎖して積み重なっていくメカニズムがあると考えられています。
ここでは、大人の発達障害において二次障害につながりやすい3つの主な要因について解説します。
失敗体験と過度な叱責の積み重ね
発達障害の特性があると、本人が真摯に業務や日常生活に取り組んでいても、スケジュール管理の難しさやケアレスミス、対人関係のすれ違いなどが生じやすい傾向があります。
そうした際に、周囲から「やる気がない」「怠けている」とみなされ、度重なる注意や過度な叱責を受け続けると、「また失敗してしまうのではないか」「自分は能力が足りない」といった強い不安や自己否定感が蓄積していきます。日常的な小さなストレスや挫折であっても、それが長期にわたって反復されることで自尊心が著しく摩耗し、やがてうつ病や不安症などの精神的な不調に発展していくケースが少なくありません。
周囲の理解不足と合理的配慮の欠如
自身の持つ特性が職場や身近な環境に理解されず、適切なサポートや合理的配慮(業務手順の視覚化、指示の明確化、配置転換など)が受けられない環境では、本人の心理的・身体的負担は過度に大きくなります。
本人が持てる力を尽くして対応しているにもかかわらず、結果のみで評価され、叱責や孤立を余儀なくされる状況が続くと、社会生活に対する無力感が強まります。特に大人になってからの対人関係の破綻や就労環境の悪化は、生活基盤を脅かす重大なストレス因子となり、適応障害などを誘発する大きな要因となります。
自己理解が不十分なまま社会生活を送るリスク
幼少期や学生時代には特性が目立たず、あるいは周囲のサポートによって問題が表面化しないまま大人になり、就職や結婚などのライフイベントを機に初めて大きな困難に直面する方も少なくありません。
「周囲と同じように業務をこなせない原因が分からない」まま、自身の特性に気づかず個人の努力や根性だけで解決しようと無理を重ねた結果、ある日突然、心身の限界を迎えて休職や体調不良に至るというケースです。このように、適切な自己理解や自身の特性に応じた対処法(対処スキル)を獲得できないまま社会的な要求に応えようとし続けたプロセスが、大人の二次障害の深刻な背景となっている場合があります。
大人の発達障害と二次障害(仕事・休職・ひきこもり)
大人の発達障害において、二次障害は特に就労環境や社会生活、職場の人間関係といった具体的な場面で表面化しやすい傾向があります。自身の不調や生きづらさが発達特性とどのように結びついているのか、その関連性を正しく理解することが重要です。
職場での不適応からうつ病・休職にいたるケース
マルチタスク(複数の業務を並行して進めること)に対応できない、業務の優先順位を適切に判断できない、指示の意図を誤解して同じミスを繰り返してしまうなど、社会に出て働き始めてから初めて大きな壁に直面するケースは少なくありません。
本人の責任感や努力だけではカバーしきれない困難が長期化すると、慢性的な疲労感や重度の抑うつ状態が蓄積し、結果として出勤が困難となり休職を余儀なくされる事例が見られます。就労におけるミスマッチを解消するためには、個人の努力を求めるだけでなく、業務プロセスの可視化や配置転換といった環境側の調整が必要となる場合があります。
ひきこもり・退職と二次障害
職場での不適応や過度なストレス状態が継続した結果、退職や離職を余儀なくされ、その後の社会生活から離脱してひきこもり状態へとつながるケースもあります。「次の職場でも同様の失敗を繰り返すのではないか」という強い予期不安から、求職活動や他者との関わりに対して過度に消極的になってしまうことがあります。
こうした状態は、本人の怠慢や意志の弱さに起因するものではなく、過度な挫折体験や社会的ストレスから心身を守ろうとする一種の防衛反応として生じている側面があります。そのため、根性論による解決を促すのではなく、心理的な安全性を確保しながら段階的な復職・社会参加を支援していく視点が不可欠です。
大人になってから気づく二次障害のサイン
大人の二次障害は、日常の忙しさや義務感に隠れ、本人や周囲が初期段階で気づきにくいという特徴があります。以下のような状態が継続している場合、背景に発達特性とそれに伴う二次的な不調(精神疾患など)が関わっている可能性が考えられます。
明確な理由がないにもかかわらず気分の落ち込みが続く、夜間の入眠困難や中途覚醒があり朝に覚醒できない、対人接触を過度に負担に感じて社会的約束を回避する、これまで関心のあった事柄に対して興味や喜びを喪失している(アンヘドニア)。
これらのサインが長期間持続し、日常生活や社会生活に支障をきたしている場合は、個人の問題として抱え込まず、精神科や心療内科などの医療機関、あるいは発達障害者支援センターなどの専門の相談窓口に相談することが推奨されます。
子ども・思春期の二次障害(不登校・サイン)
発達障害にともなう二次障害は、成人期になってから初めて顕在化するケースだけでなく、子ども・思春期の段階から学校生活や家庭環境における変化として現れ始めているケースも少なくありません。
家族や周囲の支援者が、児童期・思春期における特有のサインや不適応の現れ方を正しく知ることは、早期の環境調整や深刻化の防止につながります。
見逃しやすい初期サイン(チェックの目安)
子どもや思春期における二次障害の初期症状は、単なるわがままや一過性の反抗期、思春期特有の気分の浮き沈みなどと区別がつきにくいという特徴があります。
以下のような変化が持続している場合は、本人が環境とのミスマッチによる心理的負荷を抱えているサイン(気づきの目安)である可能性が考えられます。
朝になると頭痛や腹痛を訴え、学校に行きたがらない 以前は楽しんでいた趣味や活動に興味を示さなくなった 寝つきが悪い、または朝起きられない日が増えた 些細な出来事に対して過度に怒ったり、泣いたりするようになった 自己否定的な発言や、自尊心の低下を感じさせる言葉が増えた 友だちとの関わりを避け、孤立するようになった
これらの状態に複数該当するからといって、直ちに二次障害であると断定できるわけではありません。しかし、日常生活に支障が出ている場合は、スクールカウンセラーや医療機関、専門の相談窓口などの専門家に相談するひとつの目安となります。
不登校・身体症状として現れる場合
子どもや思春期における二次障害の代表的な現れ方のひとつに、不登校(長期欠席)があります。集団行動や規律が求められる学校環境のなかで、特性に起因する困難(学習の遅れ、対人関係のすれ違い、感覚過敏など)が積み重なり、登校すること自体が本人の適応能力を超えるほどの過度な負担となっていくケースです。
また、小児期や思春期には、心のつらさやストレスを自覚して言語化することが困難な場合が多く、頭痛、腹痛、吐き気、動悸といった身体症状(起立性調節障害の類似症状や心身症など)として表出することがあります。周囲からは「怠けている」「学校をサボろうとしている」と誤解されやすいですが、本人の意志とは無関係に生じる客観的な不調である点に留意する必要があります。
家族や周囲ができる接し方の基本
周囲が本人の変化に気づいた際、まずは表面的な行動(不登校や反抗的な態度)を頭ごなしに叱責するのではなく、その行動の背景にある環境要因や心理的困窮に目を向けることが不可欠です。
医療・福祉の支援現場においては、本人の状態を「怠けている」のではなく「特性と環境のミスマッチによって困っている」状態であると捉え直す視点(リフレーミング)が重視されます。
家庭や身近な環境において「なぜ学校に行けないのか」と理由を問い詰めるのではなく、「体調や気分のしんどさ」をそのまま受け止める誠実な関わりが、本人の心理的安全性を確保する土台となります。安心できる環境が整うことで、専門機関による支援や治療の効果も現れやすくなると考えられています。
二次障害の予防・回復に有効なアプローチ
二次障害の予防やそこからの回復を図るうえで極めて重要なのは、本人の行動や性格を無理に変えようとするのではなく、周囲の環境を適切に調整し、本人が自身の特性を正しく理解して対処法を身につけられるよう多角的に支える視点です。
ここでは、医療・福祉の現場でも重視される4つの主要なアプローチについて解説します。
環境の調整と合理的配慮の提供
二次障害の主たる要因は、本人の持つ特性と周囲の環境や要求水準とのミスマッチにあります。そのため、本人の根気や努力に依存するのではなく、環境側を本人に適合させていく「環境調整」が予防の第一歩となります。
就労環境や日常生活においては、指示やタスクを一度に複数与えず一つずつ明確に提示する、スケジュールや業務マニュアルを視覚化して見通しを立てやすくする、といった具体的な工夫が有効です。また、職場や学校などの組織に対して、法的な義務や努力義務に基づいた「合理的配慮」を具体的に相談・申請していくことが、過度な社会的ストレスの軽減に直結します。
自己理解の深化と対処スキルの獲得
自身の特性を正確に把握しないまま社会生活での要求に応えようとし、過度な無理を重ねてきたプロセスが二次障害を誘発しているケースは少なくありません。そのため、自分がどのような分野で能力を発揮しやすく、どのような場面で困難(適応上の課題)が生じやすいのかを客観的に知る「自己理解」の時間が、予防と回復の双方に役立ちます。
自身の特性を正しく理解できれば、負担の大きい環境や状況を事前に回避したり、周囲に対して的確な援助要請(ヘルプサイン)を出したりといったセルフケアが可能になります。「自身の怠慢や人間性の問題ではなく、特性と環境の不一致が原因であった」と認知を再構成することが、低下した自尊心や自己肯定感を回復させる契機にもなります。
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感情調節やコミュニケーションスキルの習得
ストレスや負荷がかかった際に自身の感情をどのようにコントロール(調節)するか、あるいは他者に対して自身の意見や困りごとをどのように適切に伝達するかという「対人関係スキル(ソーシャルスキル)」は、専門の支援機関などの安心できる環境において、段階的に練習し習得していくことが可能です。
こうしたスキルを身につけることは、職場や社会生活における新たな対人トラブルや孤立を防ぎ、精神的な安定を維持するための強固な防御要因となります。
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専門的な医療機関や福祉支援の活用
すでにうつ病、適応障害、強い不安症状、慢性的な睡眠障害などの症状が顕在化している場合は、まずそれらの精神症状に対する適切な医療的ケア(精神科や心療内科等での薬物療法や精神療法)が最優先されます。
二次障害の治療やケアにおいては、現れている精神疾患等の治療を並行して行いつつ、その背景にある発達特性への理解を深め、前述した環境調整や福祉サービスの導入を同時に進めていく多職種連携(メディカルケアとソーシャルケアの組み合わせ)が一般的です。
当事者個人や家族だけで問題を抱え込まず、精神保健福祉センター、発達障害者支援センター、障害者就業・生活支援センター、あるいは適切な医療機関などの専門的な支援基盤へと早期につながることが、持続可能な回復に向けた確実な一歩となります。
二次障害かもと思ったときの相談先
心身の不調や生きづらさの背景に二次障害の可能性が疑われる場合、適切な専門機関へ早期に相談することが回復への鍵となります。大人の発達障害やそれにともなう不調に対応している主な相談先や支援制度について解説します。
医療機関および公的な専門相談窓口
気分の落ち込み、持続する不安、睡眠障害などの精神症状が顕在化しており、日常生活や就労に支障が出ている場合は、精神科や心療内科などの医療機関を受診することが最優先されます。診断や症状に応じた医療的アプローチを受けることで、速やかな症状の緩和を図ります。
また、医療機関の受診と並行して、以下のような公的・地域的な専門窓口を活用することも有効です。
発達障害者支援センター
発達障害の当事者やその家族、関係機関からの相談に応じ、日常生活や就労に関する総合的な助言や情報提供、専門機関への紹介などを行う機関です。
精神保健福祉センター
心(精神)の健康全般に関する相談を受け付ける都道府県・政令指定都市の公的機関であり、精神保健福祉士や臨床心理士などの専門職が在籍しています。
基幹相談支援センター・地域活動支援センター
障害の有無にかかわらず、地域生活における困りごとを総合的に相談できる自治体の窓口です。
どこへ相談すべきか判断が難しい場合は、まずお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口や保健所・保健センターへ問い合わせることで、適切な窓口への案内を受けられるのが一般的です。
自立訓練(生活訓練)という福祉サービスの活用
医療的な治療やケアと並行し、社会復帰や安定した日常生活を目指すステップとして、障害福祉サービス(訓練等給付)の一種である「自立訓練(生活訓練)」を活用する選択肢があります。
自立訓練(生活訓練)とは、障害のある方が地域生活を営むために必要な生活能力の維持・向上のための訓練(生活リズムの構築、自己理解の深化、感情調節やコミュニケーションスキルの練習など)を提供する通所型等のサービスです。
二次障害の発症や急性期からの回復期においては、「早期に就職・復職しなければならない」という焦燥感が、かえって心身の過度な負担となり、不調を長期化させてしまう事例が少なくありません。就労(働くこと)へと直接向かう前段階として、まずは自身の特性に合わせた生活基盤や体調を整える時間を確保することが、結果として持続可能な社会復帰(次の一歩)へとつながる場合があります。
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自立訓練事業所「エンラボカレッジ」における支援アプローチ
ここでは、自立訓練(生活訓練)事業所「エンラボカレッジ」での取り組みを紹介します。二次障害の背景にある「自己理解」と「環境とのミスマッチ」に、時間をかけて向き合える場としての特徴です。
段階的なプログラムによる自己理解と感情調節の支援
エンラボカレッジでは、利用可能な最長2年間という期間を活用し、初期段階において自己理解を深めるプロセスを重視しています。
独自に展開されている「My Lab.」などのプログラムを通じて、自身の強みや適応上の困難が生じやすい場面を客観的に分析し、「自分/支え方マニュアル」として可視化する取り組みを行っています。このマニュアルは、当事者自身が体調や行動をコントロールするためのセルフケアツールとなるだけでなく、職場や支援者に対して具体的な合理的配慮(周囲からの必要なサポート)を的確に伝えるためのコミュニケーションツールとしても機能します。
さらに、感情学や対人コミュニケーションに関する複数のプログラムを組み合わせることで、ストレスへの対処法や他者との適切な関わり方を、心理的安全性が確保された環境のもとで段階的に練習・習得していくことが可能です。
就労に限定しない多角的な進路選択
同事業所における支援のゴールは、必ずしも一律の「一般就労」のみに限定されていません。
個人の体調や二次障害からの回復状況、生活基盤の安定度合いに応じ、復学、復職(リワーク)、就労継続支援(A型・B型)の利用、あるいは他の専門支援機関への継続移行など、それぞれのペースに適した多様な進路を並行して検討・選択していく仕組みをとっています。
二次障害を経験した当事者にとって、十分な生活基盤や精神的安定が整わないまま就労(働くこと)のみを急ぐことは、再発のリスクを高める要因となり得ます。まずは心身の状態を整え、自己理解を深めたうえで、主体的に次の一歩を選択できるプロセスを踏むことには重要な意義があると考えられています。
自立訓練(生活訓練)について
自立訓練(生活訓練)は、障害のある方が自立した日常生活や社会生活を営むために必要な能力の維持・向上のための訓練を行う、障害福祉サービス(訓練等給付)の一つです。二次障害の回復期において、乱れてしまった生活リズムの再構築や、自己理解の深化、対人コミュニケーションスキルの習得などを、本人の心身の状況に合わせて段階的に進めていく場としても活用されています。
自立訓練事業所を運営するエンラボカレッジでは、利用される方一人ひとりの課題や目標に応じたサポートを提供しています。
事業所内では、300以上の多種多様なワーク(プログラム)を用意しており、スタッフから専門的な知見を学ぶ講座形式のカリキュラムと、実際の社会生活を想定した事業所内での実践的な訓練を組み合わせたアプローチを行っています。
エンラボカレッジでは、無料での見学や体験利用を随時受け付けています。
よくある質問(FAQ)
二次障害は治りますか?
二次障害の現れ方は人それぞれで、一概に「治る・治らない」と言い切ることはできません。ただ、うつや不安などの症状に対する医療的なケアと、背景にある特性への理解・環境調整を組み合わせることで、症状が和らぎ、生活が立て直されていくケースは多く見られます。一人で抱え込まず、専門的な支援につながることが回復の土台になります。
大人になってからでも予防や回復はできますか?
大人になってからでも、できることはあります。自分の特性を理解し、環境を調整し、必要な支援につながることで、不調を和らげたり、これ以上の悪化を防いだりできる場合があります。「気づくのが遅すぎた」ということはありません。
子どもの場合、どのような初期サインに留意すべきですか?
児童期や思春期における二次障害のサインとしては、朝の頭痛や腹痛を訴えて登校を渋る、以前は楽しめていた活動に関心を示さなくなる、睡眠リズムが著しく乱れる、些細な出来事に対して過度な怒りや落胆を示す、自己否定的な発言が増える、といった行動や心身の変化が挙げられます。これらが継続し、日常生活に支障をきたしている場合は、環境とのミスマッチによる過度な心理的負荷が生じている可能性があるため、スクールカウンセラーや医療機関などの専門家に相談する目安としてください。
二次障害を発症すると、発達障害の診断名は変わるのですか?
二次障害の発症によって、もともとある発達障害(一次障害)の診断名自体が置き換わるわけではありません。生まれ持った脳の機能特性である「発達障害(ASDやADHDなど)」があり、それを背景に社会的ストレスなどが原因となって後天的な不調である「精神疾患(うつ病や適応障害など)」が併存する、という関係性になります。医療機関では、それぞれの状態に応じた適切な診断と治療が個別に行われます。
二次障害の治療には薬物療法(薬)が必要ですか?
現れている症状の種類や程度、本人の状況によって治療方針は異なります。うつ病や睡眠障害などの症状に対して薬による治療が有効と判断されるケースもあれば、環境調整やカウンセリング、ソーシャルスキルの習得などが中心となるケースもあります。どのような治療アプローチが適しているかは、医師が一人ひとりの臨床症状を総合的に見て判断します。自己判断での服薬の開始・中断は避け、必ず医療機関の専門医に相談してください。
まとめ
発達障害における二次障害とは、先天的な脳の機能特性そのものではなく、本人の持つ特性と周囲の環境や要求水準とのミスマッチ(環境のズレ)が継続し、社会的ストレスや失敗体験が蓄積することで、後天的に現れてくる心身の不調や精神症状のことです。その現れ方はうつ病、適応障害、不安症、慢性的な睡眠障害、ひきこもりや社会的な孤立など、多種多様です。
しかし、二次障害は発達障害のある方に必ず生じるものではありません。日常の生活や職場における初期サインにいち早く気づき、周囲が特性を正しく理解して環境調整や合理的配慮を行い、同時に本人が自己理解を深めて適切な対処スキルを身につけることで、発症を予防したり症状を軽減したりすることが十分に可能です。
すでに強い不調が現れている段階であっても、決して手遅れということはありません。精神科や心療内科などの医療機関による適切な治療と並行し、発達障害者支援センターや、生活能力の維持・向上のための訓練を提供する自立訓練(生活訓練)事業所といった専門的な福祉支援へとつながることで、持続可能な回復と社会復帰への道筋を立てることができます。
自身の特性に合った過ごし方を見つけ、次の一歩を自身のペースで踏み出すために、まずは専門機関への相談や事業所の見学・体験から始めてみてはいかがでしょうか。
この記事について【作成・監修】
本記事は、自立訓練(生活訓練)事業所「エンラボカレッジ」を運営する株式会社エンラボの専門職スタッフが作成・監修しています。
【在籍資格】精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士
【現場での実践】自立訓練(生活訓練)・就労移行支援などで、診断名・特性に合わせた個別支援を提供しています。