発達障害のある方の転職|雇用形態別の進め方と職場の選び方を解説
更新日:2026/05/30
いまの仕事が合わない気がする。同じ理由で離職を繰り返してしまう――発達障害(ASD・ADHD・LDなど)のある方の転職は、定型発達の方とは少し異なる準備が結果を左右します。
求人を探す前に自分の特性を言語化し、一般雇用クローズ・一般雇用オープン・障害者雇用の3パターンを比較してから働き方を選ぶ順序が大切です。この順序を踏むことで、ミスマッチによる早期離職を避けやすくなります。
以下では、特性別の職種選び・雇用形態の比較・自己理解の進め方・実例の4軸で、転職準備から定着までの流れを見ていきます。
発達障害の転職は「自己理解→雇用形態の選択→特性に合った職場探し」の順で進める
第一に、発達障害のある方の転職で最も重要なのは、求人を探す前に「自分の特性(得意・苦手・必要な配慮)を言語化すること」です。自己理解が不十分なまま転職活動を始めると、前職と同じ理由で離職に至るケースが少なくありません。
第二に、雇用形態を「一般雇用クローズ(障害を開示しない一般採用)」「一般雇用オープン(一般採用枠で開示する)」「障害者雇用(障害者手帳を活用した採用枠)」の3つから選びます。それぞれ給与水準・配慮の受けやすさ・キャリアの広がりが異なるため、本人の状態と希望に合わせて選ぶことになります。
第三に、ASD・ADHD・LDといった特性ごとに「集中しやすい職種」「合理的配慮があれば力を発揮できる職務」が異なります。特性ベースで職種・職場環境を絞り込んでいくと、定着しやすい転職先に出会いやすくなります。
そのうえで、「自己理解の言語化が一人では難しい」「次の職場では同じパターンを繰り返したくない」と感じている方には、自立訓練(生活訓練)や就労移行支援といった福祉サービスを転職活動の前段階に挟む選択肢もあります。
この記事では、上記の3ステップに沿って、転職の進め方・雇用形態の比較・特性別の職種選び・実例を順に整理していきます。
発達障害のある方の転職、何から始めれば良いか
「転職したい気持ちはあるが、まず何から手をつければ良いか分からない」と感じている方は少なくありません。
転職の準備段階で押さえておきたい3つの視点を整理します。
視点1|「いまなぜ転職したいのか」を言葉にする
最初に行うのは、転職理由を自分の言葉で整理することです。
「人間関係がつらい」「業務量が多すぎる」「指示が曖昧で混乱する」「感覚過敏で職場環境がきつい」――こうした理由を、できるだけ具体的に書き出してみます。
書き出したあとに「その状況のどの部分が、自分の特性とぶつかっていたか」を一段掘り下げると、次の職場で避けるべき条件と整えるべき条件が見えてきます。
たとえば「指示が曖昧で混乱する」が転職理由なら、避けたい条件は「口頭のみで指示が出る職場」、整えたい条件は「文書やチャットで指示が残る職場」と整理できます。
視点2|「次の職場に望む条件」を3つに絞る
転職活動を始めると求人情報の量に圧倒され、何を基準に選ぶか迷いやすくなります。
そのため、転職の最初の段階で「次の職場に望む条件」を3つだけ書き出して優先順位をつけておくことが、判断軸として機能します。
例としては、以下のような切り口があります。
- 業務内容(自分の得意な作業に近いか)
- 職場環境(感覚過敏に配慮できる空間か)
- コミュニケーションスタイル(口頭中心か文書中心か)
- 勤務時間(残業の有無、フレックスの可否)
- 雇用形態(一般雇用クローズ/オープン/障害者雇用)
- 通勤距離(在宅勤務の可否を含む)
3つに絞った条件を満たしている求人を中心に検討すると、「迷ったときに立ち返れる基準」ができます。
視点3|「いまの会社で配慮を求める選択肢」も検討する
転職を急ぐ前に、「いまの会社で合理的配慮を申し出る」「部署異動を相談する」「産業医・人事と面談する」といった選択肢を検討する余地がないかも確認しておきます。
転職にはエネルギーが必要で、収入の一時的な減少や新しい環境への適応など、負担も伴います。
「いまの会社で改善できる部分があるか」を見てから転職に進むほうが、結果的に消耗を減らせるケースも少なくありません。
合理的配慮の申し出方や職場での伝え方は、発達障害のカミングアウトはどうすべき?親や職場への伝え方で詳しく整理しています。
転職前にやっておきたい「自己理解」の進め方
発達障害のある方の転職活動でつまずきやすいのが、「自分の特性をどう説明すれば良いか分からない」という壁です。
特に障害者雇用やオープン就労で応募する場合、面接で「どんな配慮が必要ですか」と尋ねられる場面が必ずあります。
ここで言葉に詰まると、企業側も配慮の見込みが立たず、内定や入社後の定着が難しくなりやすいといわれています。
自己理解で押さえる4つの要素
自己理解で整理しておきたい要素は、大きく次の4つです。
1. 得意なこと:集中力が続く作業、苦にならない作業、人より早くできる作業を書き出します。「データ入力は8時間でも疲れない」「Excelで関数を組むのは好き」など、できるだけ具体的に書きます。
2. 苦手なこと:負荷がかかる作業、エネルギーを大きく消耗する作業を書き出します。「複数の指示を同時に受けると混乱する」「電話対応の翌日は疲労が抜けない」など、状況とセットで書きます。
3. 必要な配慮:苦手なことを軽減するために、職場で工夫してほしい点を整理します。「指示は箇条書きで送ってほしい」「電話対応は週2回までに調整してほしい」など、具体的な行動レベルで書きます。
4. セルフケアの方法:自分が調子を崩したときの対処法、調子を保つために実践していることを整理します。「週末は予定を入れず休息する」「週3回は運動する」「服薬は朝食後に必ず取る」など、再現可能な行動として書きます。
この4要素を「働く上での自分の取扱説明書」としてまとめておくと、面接・入社後の上司との面談・産業医面談など、さまざまな場面で活用できます。
自己理解が一人で難しいときの選択肢
「特性を言語化したいが、何から書き始めれば良いか分からない」と感じる方も少なくありません。
自分の特性を客観的に整理するのは、自分一人で行うとブレやすい作業です。
そのため、自立訓練(生活訓練)や就労移行支援といった福祉サービスを活用して、支援者と一緒に整理していく選択肢があります。
自立訓練の概要は、自立訓練(生活訓練)とは|対象者・利用期間で詳しく解説しています。
実例:ADHDの20代女性が自立訓練で「自分の取扱説明書」を作って就職に進んだケース
20代女性のAさんは、ADHDの診断を受けたあと、就労移行支援に通われていましたが「働く前にまず生活と自己理解を整えたい」と感じ、自立訓練に切り替えました。
自立訓練のなかで自分の得意・不得意・必要な配慮を整理し、就職活動では『自分/支え方マニュアル』を企業面接で共有することで、安心して入社後の配慮の相談ができたといいます。
詳しいプロセスは発達障害(ADHD)の20代が自立訓練で就職準備を進めた方法もあわせてご覧ください。
雇用形態の3パターン|一般雇用クローズ/一般雇用オープン/障害者雇用
発達障害のある方の転職で迷いやすいのが、雇用形態の選び方です。
主な選択肢は「一般雇用クローズ」「一般雇用オープン」「障害者雇用」の3つで、それぞれメリット・デメリットが異なります。
3パターンの比較表
| 項目 | 一般雇用クローズ | 一般雇用オープン | 障害者雇用 |
|---|---|---|---|
| 障害の開示 | しない | する | する |
| 障害者手帳 | 不要 | 不要(提出は任意) | 原則必要 |
| 採用枠 | 一般採用 | 一般採用 | 障害者雇用枠 |
| 給与水準 | 一般水準 | 一般水準 | やや低い傾向 |
| 配慮の受けやすさ | 受けにくい | 受けやすい場合あり | 受けやすい |
| 求人数 | 多い | 中程度 | 限定的 |
| キャリアの広がり | 広い | 広い | 配慮内での広がり |
| 定着率の傾向 | 低めになりやすい | 中程度 | 比較的高い |
パターン1|一般雇用クローズ|障害を開示せずに一般採用で働く
一般雇用クローズは、障害があることを企業に開示せずに一般採用枠で応募・入社する働き方です。
メリットは、給与水準が一般採用と同じで、職種・キャリアの選択肢が広いことです。「障害があると伝えると不利になるのでは」という不安を抱えなくて済む点も、心理的な負担を減らします。
デメリットは、業務上の困りごとがあっても合理的配慮を申し出にくく、特性とのミスマッチが起きたときに対処が難しいことです。
「特性は軽度で、配慮なしでも業務が回せる」「キャリアを最優先したい」という方に選ばれる傾向があります。
一方で、特性のために業務が回らなくなった場合、再びの離職や休職につながりやすい側面もあります。
クローズ就労の詳細は、クローズ就労・オープン就労とは?メリット・デメリットで整理しています。
パターン2|一般雇用オープン|一般採用枠で障害を開示して働く
一般雇用オープンは、一般採用枠に応募しつつ、面接や入社時に障害があることを企業に伝える働き方です。
メリットは、給与水準が一般採用と同じで、合理的配慮を相談できる点です。配慮の範囲は企業によって異なりますが、開示しないより配慮を受けやすくなります。
デメリットは、開示によって採用選考で不利になる可能性があり、配慮の質も企業の対応力に大きく依存することです。
「キャリアの広がりは確保したいが、特性への配慮はある程度必要」という方に選ばれる傾向があります。
開示のタイミングや伝え方は、発達障害のカミングアウトはどうすべき?親や職場への伝え方で詳しく整理しています。
パターン3|障害者雇用|障害者雇用枠で働く
障害者雇用は、障害者手帳を活用して、企業の障害者雇用枠で応募・入社する働き方です。
メリットは、企業側が障害があることを前提として採用するため、合理的配慮を受けやすく、定着率も比較的高い傾向にあることです。職場には他にも障害のある方が働いているケースが多く、配慮が制度化されている企業もあります。
デメリットは、給与水準が一般採用よりやや低い傾向があること、求人数が一般採用より少ないこと、職種・キャリアの広がりが配慮の範囲内に収まりやすいことです。
「安定して長く働きたい」「合理的配慮が確実に必要」という方に選ばれる傾向があります。
障害者雇用の詳細は、障害者雇用で働くメリット・デメリットで詳しく解説しています。
3パターンを選ぶ判断軸
3パターンのいずれを選ぶかは、本人の状態と希望によって異なります。
判断軸として、以下のような問いを自分に投げかけるのが現実的です。
- 配慮なしでも業務を続けられる自信があるか
- 給与水準を最優先したいか、定着率を最優先したいか
- 障害者手帳を取得済みか、これから取得を検討するか
- 過去の離職理由は「配慮があれば防げた」ものだったか
- いまの体調・特性で、配慮なしの環境に耐えられるか
「3パターンのどれが自分に合うか、自分一人では判断しにくい」という方は、支援機関に相談しながら整理することも有効です。
障害者雇用と一般雇用の比較は、障害者雇用とは?一般雇用との違いもあわせてご覧ください。
特性別|ASD/ADHD/LDの転職先の選び方
発達障害は「ASD(自閉スペクトラム症)」「ADHD(注意欠如多動症)」「LD・SLD(限局性学習症)」の3つに大別され、それぞれ得意・不得意の傾向が異なります。
転職先を選ぶときは、診断名にとらわれすぎず「自分はどんな特性が強いか」を起点に考えると、合う職種が絞りやすくなります。
ASD(自閉スペクトラム症)の方の転職
ASDの特性として知られているのは、ルールや手順への忠実さ、こだわりの強さ、感覚過敏、対人コミュニケーションの独特さなどです。
得意なこととして表れやすいのは、決まった手順の正確な反復、細部への注意、一つのテーマへの深い集中、データや事実の整理などです。
苦手なこととして表れやすいのは、曖昧な指示の解釈、複数の作業の同時並行、突発的な変更への対応、対人コミュニケーション上の暗黙ルールの読み取りなどです。
向きやすい職種としては、データ入力・経理・プログラマー・品質管理・校正・図書館司書・研究職・専門職などが挙げられます。
ASDの方に向いている仕事は、ASD(自閉スペクトラム症)のある方に向いている仕事で詳しく解説しています。
ADHD(注意欠如多動症)の方の転職
ADHDの特性として知られているのは、不注意(集中の維持が難しい)、多動性(じっとしているのが苦手)、衝動性(思いつきで行動する)です。
得意なこととして表れやすいのは、興味のあることへの集中、新しい発想、対人接触の機会の多い活動、変化のある環境への適応などです。
苦手なこととして表れやすいのは、長時間の単純作業、細かいミスのチェック、書類整理、スケジュール管理などです。
向きやすい職種としては、営業・企画・編集・接客・クリエイター・記者・コンサルタントなど、変化があり対人接触のある職種が挙げられます。
ADHDの方に向いている仕事は、ADHDに向いている仕事とは?で詳しく整理しています。
LD・SLD(限局性学習症)の方の転職
LD・SLDは、知的発達には大きな遅れがないものの、「読む」「書く」「計算する」のいずれかに特異的な困難がある状態です。
読みの困難(ディスレクシア)がある方は、長文の読解を要する業務よりも、図表や視覚情報を中心とした業務(デザイン・写真・動画編集など)が向きやすい傾向にあります。
書きの困難(ディスグラフィア)がある方は、手書きを要する業務よりも、PC入力中心の業務(音声入力ツールの活用を含む)が向きやすい傾向にあります。
計算の困難(ディスカリキュリア)がある方は、計算を要する業務よりも、言語・対人を中心とした業務(接客・カウンセリング・人事など)が向きやすい傾向にあります。
LDの特性に合わせて、補助ツール(音声読み上げ・音声入力・電卓など)を職場で使えるよう申し出ることで、業務の幅が広がります。
特性別に職種を選ぶときの注意点
「ASDだからこの職種」「ADHDだからこの職種」と単純に結びつけるのは適切ではありません。
同じ診断名でも特性の出方は人によって大きく異なり、ASDとADHDを併存している方も少なくないため、自分の特性を具体的に書き出してから職種を検討するのが現実的です。
発達障害の方に向いている仕事の整理は、発達障害のある方に向いている仕事(職種)や職場環境もあわせてご覧ください。
転職活動の具体的な進め方(5ステップ)
転職を進める具体的な流れを、5ステップで整理します。
ステップ1|自己理解の言語化(1〜3か月)
最初に、前述の4要素(得意・苦手・必要な配慮・セルフケア)を言葉にしていきます。
過去の職場で「うまくいったこと」「うまくいかなかったこと」を時系列で書き出すと、自分の特性のパターンが見えてきます。
一人での整理が難しい方は、就労移行支援・自立訓練・地域障害者職業センターなどの支援機関に相談する選択肢があります。
ステップ2|雇用形態の選択(並行して進める)
自己理解を進めながら、3つの雇用形態(一般クローズ/一般オープン/障害者雇用)のどれが自分に合いそうかを検討します。
障害者雇用を選ぶ場合は、障害者手帳の取得状況を確認します。
発達障害の方の手帳取得は、精神障害者保健福祉手帳(精神障害者手帳)が対象となるケースが多く、申請から交付まで概ね2〜3か月かかります。
手帳の取得を検討する場合は、主治医に相談のうえ申請を進めます。
ステップ3|求人情報の収集(1〜3か月)
雇用形態を決めたら、求人情報を集めます。
主な情報源は次の通りです。
- ハローワーク(一般窓口/専門援助部門)
- 障害者専門の求人サイト
- 一般の転職エージェント
- 障害者専門の転職エージェント
- 地域障害者職業センター
- 障害者就業・生活支援センター
「就労移行支援を経由して紹介された求人」「地域の障害者就業・生活支援センターから紹介された求人」は、企業側が障害者雇用に慣れているケースが多く、定着しやすい傾向があるとされています。
ステップ4|書類選考と面接(1〜3か月)
書類選考では、職務経歴書に「自分の強み」と「必要な配慮」を簡潔に記載します。
オープン就労や障害者雇用の場合、自己PR欄に「自分の特性と配慮事項」を3〜5行で書いておくと、面接時に話が進めやすくなります。
面接では、自己理解で整理した「得意・苦手・必要な配慮・セルフケア」を、具体的なエピソードとともに伝えます。
「過去の職場で困ったこと」「その困りごとを乗り越えるためにどう工夫したか」をセットで話すと、企業側に「配慮の見込みが立つ人材」として受け止められやすくなります。
ステップ5|内定後の調整と入社準備(1か月)
内定が出たら、入社条件の確認と職場での配慮の調整を行います。
確認しておきたい項目は次の通りです。
- 業務内容(具体的にどんな作業を担当するか)
- 勤務時間(残業の頻度、フレックスの可否)
- 配慮の内容(指示の出し方、休憩の取り方、対人接触の頻度)
- 評価制度(業務目標の設定方法、達成度の評価基準)
- 相談窓口(困ったときに誰に相談するか)
入社後3か月は試用期間として、お互いに「配慮の調整」を進めながら定着を目指します。
入社直後は無理をせず、生活リズムと業務リズムを慣らすことを優先します。
「就労移行支援」「自立訓練」を転職活動の前段階に挟む選択肢
転職活動をスムーズに進めるための支援サービスとして、就労移行支援と自立訓練(生活訓練)があります。
就労移行支援|2年以内の一般就労を目指す訓練の場
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスで、原則2年以内の一般就労を目指して訓練を行う場です。
提供されるのは、ビジネススキル訓練・PC訓練・コミュニケーション訓練・自己理解プログラム・企業実習・求人紹介・面接対策・職場定着支援などです。
「自己理解を深めながら、企業実習で職場との適性を確かめて、就職に進みたい」という方に向いています。
詳細は、就労移行支援(就労支援)ってどんなところ?もあわせてご覧ください。
自立訓練(生活訓練)|生活・自己理解の土台作り
自立訓練(生活訓練)は、就労前段階の「生活リズム・対人スキル・自己理解・体調コントロール」の土台作りを中心にした障害福祉サービスです。
「いきなり就労移行支援はハードルが高い」「働く前にもう少し自分の特性と向き合いたい」「過去に就職を繰り返したが続かなかった」という方が選ばれる傾向があります。
利用期間は原則2年で、4ステージ(自分を知る→できる→応用→自信を持って次へ)のカリキュラムが組まれている事業所が多いです。
自立訓練の概要は、自立訓練(生活訓練)とは|対象者・利用期間で詳しく整理しています。
自立訓練と就労移行支援の使い分け
「すぐに就職活動を始めたい」「ビジネススキル訓練を中心に取り組みたい」方は、就労移行支援が選択肢として浮上します。
「働く前に生活と自己理解の土台を作りたい」「過去に就労移行を利用したが定着が難しかった」方は、自立訓練がフィットするケースが多くなります。
両者を順番に利用する方も少なくなく、「自立訓練で土台を作ってから就労移行に進む」二段階の使い方も可能です。
詳しい違いは、自立訓練と就労移行支援の違いで整理しています。
データから見る発達障害のある方の就労動向
「自分だけが転職を繰り返しているのでは」と感じる方もいらっしゃるかもしれません。
公的データを参考に、発達障害のある方の就労動向を整理します。
就労中の発達障害のある方は推計約4万人
厚生労働省「障害者雇用実態調査」によると、民間企業で就労する発達障害のある方は、近年増加傾向にあるとされています。
精神障害者保健福祉手帳を取得している発達障害のある方の障害者雇用は、年々増加しているのが実態です。
統計の母数は、企業規模・調査年・対象範囲によって異なるため、最新の動向は厚生労働省「障害者雇用状況の集計結果」「障害者雇用実態調査」で随時確認することをおすすめします。
平均勤続年数と定着率の傾向
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の調査では、発達障害のある方の平均勤続年数は、障害種別のなかで比較的短めの傾向にあるとされています。
職場定着率(就職後1年時点で就労継続している割合)は、就労移行支援を経由した場合のほうが、一般応募のみの場合よりも高い傾向があると報告されています。
これは、就労移行支援を経由することで「自己理解の言語化」「企業との配慮のすり合わせ」「定着支援の継続」が可能になり、入社後のミスマッチが減るためと考えられます。
業界最大手の就職事例から見える傾向
業界最大手の就労移行支援事業者の累計17,000名以上の就職事例では、発達障害のある方が「自己理解を深めたうえで企業実習を経て就職に至る」パターンが多く見られます。
事例として共通するのは、次のような流れです。
- 過去の離職経験を振り返り、自分の特性を整理する
- 企業実習を通じて職場との適性を確かめる
- 入社後も支援員が定期的に職場訪問し、配慮の調整を続ける
このパターンを踏むことで、「合う職場に出会い、定着する」確率が上がるとされています。
出典:厚生労働省「障害者雇用状況の集計結果」「障害者雇用実態調査」/独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)「障害者の職場定着支援に関する調査研究」(最新版は各機関の公式サイトでご確認ください)
発達障害のある方の転職実例|自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジ利用者の事例
※以下は自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジを利用された方の支援事例です(医学的な症例研究ではありません)
自立訓練を経由して転職・就職に至った実例を紹介します。
実例1|ADHDの40代女性が自立訓練で土台を整え安定就労に至ったケース
40代女性のFさんは、うつとADHDを併存し、過去に何度か離職を経験していました。
自立訓練に通うなかで「自分のペース」「無理のない働き方」を整理し、生活リズムと体調管理を整えることで、安定した就労に至ることができたといいます。
「いきなり再就職するのではなく、まず生活と自己理解を整える時間を持ったことが、結果的に安定につながった」と振り返られています。
詳しいプロセスはうつとADHDの40代が自立訓練で土台を整え安定した就労へもあわせてご覧ください。
実例2|発達障害のある10代の方が自立訓練で「相談してもいい」と思えるようになったケース
発達障害のある10代のCさんは、長く「人に相談するのが苦手」と感じていました。
自立訓練のなかで支援員やほかの利用者と関わるうちに、「相談してもいい」「困ったときに人を頼ってもいい」と思えるようになり、その経験が就職活動の自信につながったといいます。
詳しいプロセスは発達障害のある10代の私が、自立訓練で「相談してもいい」と思えるようになるまでもあわせてご覧ください。
実例3|業界最大手事業者の累計17,000名以上の事例から見える「自己理解→企業実習→定着」のパターン
業界最大手の就労移行支援事業者の累計17,000名以上の就職事例では、発達障害のある方の就職パターンとして次の流れがよく見られます。
ADHDの20代男性が「新卒でエンジニアとして入社後、ストレスチェックで高ストレス判定を受けて退職を決意」したケースでは、就労移行支援で自己理解を深め、企業実習でIT業界の印刷会社に適性を確認したうえで、好条件で再就職に至っています。
別のADHDの20代男性は、「仕事が3か月続かない状態が続き、引きこもりからうつ状態に至ったあとADHDと診断」されたケースで、就労移行支援を経由して事務補助としてメーカーに就職しています。
こうした事例に共通するのは、「離職パターンを言語化する」「企業実習で適性を確認する」「入社後も定着支援を続ける」の3要素です。
実例から学べる共通点
3つの実例から見えてくる共通点は、次の3つです。
- 自己理解の言語化を一人で行わず、支援者と一緒に進めている
- 求人を探す前に「自分の特性に合う職場の条件」を整理している
- 入社後も支援機関とつながり、定着のための配慮調整を続けている
転職を成功させたい方は、この3要素を意識して進めることが現実的な道筋になります。
エンラボカレッジでの「自己理解→就労移行への切れ目ない伴走」アプローチ
エンラボカレッジは、神奈川県・東京都・大阪府・宮崎県の11拠点で自立訓練(生活訓練)と就労移行支援(宮崎拠点のみ多機能型で運営)を提供する事業者です。
発達障害のある方の転職・再就職に向けて、「自己理解の土台作り→就労移行→就職活動」の流れを切れ目なく伴走している点が特徴です。
自立訓練で「自分の取扱説明書」を作る
エンラボカレッジの自立訓練では、8つのプログラム(感情学/コミュニケーション/My Lab./アクティビティ/Life Lab./ソマティック Lab./Social Lab./スキルアップ)を組み合わせて、自己理解と生活の土台作りを進めます。
なかでもMy Lab.は、利用される方が『自分/支え方マニュアル』という独自成果物を作る時間です。
このマニュアルには、自分の特性・得意・不得意・必要な配慮・調子の崩し方・調子を保つ方法などを書き込み、卒業後の就職活動や入社後の上司との面談で活用できます。
「面接で配慮を伝えるとき、マニュアルを共有することで言葉に詰まらず話せた」「入社後の上司面談でマニュアルを基に話したことで、配慮の調整がスムーズだった」といった声を伺うことがあります。
4ステージのカリキュラムで段階的に自信を育てる
エンラボカレッジの自立訓練は、4ステージのカリキュラムが組まれています。
| ステージ | 期間 | ねらい |
|---|---|---|
| ステージ1 | 1〜6か月 | 自分を知る・学ぶ |
| ステージ2 | 7〜12か月 | 学んだことができる |
| ステージ3 | 13〜18か月 | 学びを応用できる |
| ステージ4 | 16〜24か月 | 自信を持ち、次に進める |
このプロセスを段階的に進むことで、「いきなり就職」ではなく「土台を作ってから就職」という流れが実現します。
転職を急がず、しっかり自分と向き合う時間を取ることで、結果的に定着しやすい職場との出会いにつながると考えられています。
「自立訓練→就労移行」の切れ目ない伴走
自立訓練を経て就労移行支援に進む流れは、転職・就職を目指す方に多く選ばれる道筋のひとつです。
自立訓練で「自己理解」「生活リズム」「対人スキル」の土台を作り、就労移行支援で「ビジネススキル」「PC訓練」「企業実習」「求人紹介」「面接対策」を進めることで、段階的に就職への準備が整います。
エンラボカレッジでは、自立訓練の卒業時に「就労移行支援のどの事業所が本人に合うか」を支援員と相談し、切れ目なく次のステップに移行できるよう伴走しています。
宮崎拠点では自立訓練と就労移行支援を多機能型で運営しているため、同じ拠点・同じ支援員と継続して関われる強みがあります。
当てはまりにくい場合
「すぐに転職したい」「いまの体調で求職活動を始められる」方は、就労移行支援やハローワーク・障害者専門の転職エージェントへの直接相談のほうが目的に合うケースが多くなります。
エンラボカレッジは「自立の土台作り」が中心となるため、「土台から整えたい」「過去に何度か離職を繰り返した」「就労移行に通った経験はあるが続かなかった」という方の選択肢として、ご検討いただけますと幸いです。
よくある質問(FAQ)
発達障害のある人は転職を繰り返しやすいって本当ですか?
統計上、発達障害のある方の平均勤続年数は障害種別のなかで比較的短めの傾向にあるとされています。
これは「発達障害だから定着しない」のではなく、「特性に合わない職場・配慮のない職場では離職に至りやすい」と理解するのが現実的です。
自己理解を深めたうえで、特性に合う職場・配慮のある職場を選ぶことで、定着率は大きく変わります。
障害者手帳がないと障害者雇用には応募できませんか?
原則として、障害者雇用枠での応募には障害者手帳(精神障害者保健福祉手帳・身体障害者手帳・療育手帳のいずれか)が必要です。
発達障害のある方は、精神障害者保健福祉手帳の対象となるケースが多く、主治医に相談のうえ申請を進めます。
申請から交付まで概ね2〜3か月かかるため、転職活動と並行して進めるのが現実的です。
手帳の詳細は、発達障害のグレーゾーンの方は障害者手帳をもらえる?もあわせてご覧ください。
一般雇用クローズで転職したあとに、開示することはできますか?
入社後に開示することは可能です。
開示のタイミングは「業務上の困りごとが出てきて配慮を求めたい」と感じたときが多く、産業医面談や人事面談を通じて伝えるのが一般的です。
ただし、開示することで配慮を受けやすくなる一方、評価や配置への影響が出る可能性もあるため、職場の文化を見極めながら判断することが大切です。
転職活動と就労移行支援は並行できますか?
就労移行支援を利用しながら、ご自身で求人に応募・面接を受けることは可能です。
事業所によっては、求人紹介・面接同行・履歴書添削などの支援を提供しているため、転職活動全体を伴走してもらえます。
発達障害のある人に向いている職種は決まっていますか?
「決まっている」というよりは、「特性ごとに向きやすい職種の傾向がある」と整理するのが現実的です。
ASDの方はルールや手順が明確な職種、ADHDの方は変化と対人接触のある職種、LDの方は補助ツールが活用できる職種に向きやすい傾向があります。
ただし、同じ診断名でも特性の出方は人によって大きく異なるため、自分の特性を具体的に書き出してから職種を検討するのが現実的です。
詳細は、発達障害のある方に向いている仕事(職種)や職場環境で整理しています。
自立訓練と就労移行支援はどう使い分ければ良いですか?
「働く前に生活と自己理解の土台を作りたい」「過去に就労移行を利用したが定着が難しかった」方は、自立訓練がフィットするケースが多くなります。
「すぐに就職活動を始めたい」「ビジネススキル訓練を中心に取り組みたい」方は、就労移行支援が選択肢として浮上します。
両者を順番に利用する方も少なくなく、「自立訓練で土台を作ってから就労移行に進む」二段階の使い方も可能です。
転職活動中に体調を崩したらどうすれば良いですか?
無理をせず、いったん転職活動を休止して体調回復を優先することが大切です。
転職活動はエネルギーを消耗する作業のため、体調を崩した状態で続けると判断力が落ち、結果的に合わない職場を選んでしまうリスクがあります。
主治医・支援員・家族と相談しながら、休む期間を取ることも、転職を成功させる戦略のひとつです。
転職エージェントは利用したほうが良いですか?
利用には一定のメリットがあります。
求人情報の収集・書類添削・面接対策・企業との条件交渉などを代行してもらえる点が、特に転職経験が少ない方には大きな助けになります。
ただし、エージェントは求人成立で収益を上げる仕組みのため、本人の状態と希望に合わない求人を勧められるケースもあります。
「障害者専門の転職エージェント」「就労移行支援事業所の求人紹介」「障害者就業・生活支援センターの紹介」など、複数の情報源を併用するのが現実的です。
発達障害の診断はあるけど手帳はない場合、どうすれば良いですか?
診断はあるが手帳がない場合の選択肢は、次の3つです。
- 一般雇用クローズで応募する
- 一般雇用オープン(手帳なしで開示)で応募する
- 手帳取得を検討する
手帳取得を検討する場合は、主治医に相談のうえ精神障害者保健福祉手帳の申請を進めます。
手帳がなくても利用できる支援サービスもあるため、地域の障害者就業・生活支援センターや就労移行支援事業所に相談するのが現実的です。
入社後に「やっぱり合わなかった」と感じたらどうすれば良いですか?
入社後3か月程度は「合う・合わない」の判断には早すぎる時期です。
新しい環境への適応には時間がかかるため、最初の数か月は「慣らし期間」と捉え、無理をしない範囲で業務に取り組むことが大切です。
それでも合わないと感じる場合は、上司・人事・産業医・支援員に相談しながら、配慮の調整・業務内容の変更・部署異動などの選択肢を検討します。
すぐに退職を決めずに、選択肢を広げてから判断することをおすすめします。
まとめ
発達障害のある方の転職は、「自己理解の言語化→雇用形態の選択(クローズ/オープン/障害者雇用)→特性に合った職場探し」の順で進めることが、定着につながる現実的な道筋です。
次の一歩は、「次の職場に望む条件」を3つに絞って書き出すこと、そのうえで支援機関(ハローワーク専門援助部門・障害者就業生活支援センター・就労移行支援など)に相談することです。
「自己理解を一人で進めるのが難しい」「過去に転職を繰り返した」という方には、自立訓練(生活訓練)を転職活動の前段階に挟む選択肢もあります。エンラボカレッジでも見学・無料相談を随時お受けしています。
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この記事について【作成・監修】
本記事は、自立訓練(生活訓練)事業所「エンラボカレッジ」を運営する株式会社エンラボの専門職スタッフが作成・監修しています。
【在籍資格】
精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士
【現場での実践】
自立訓練(生活訓練)・就労移行支援などで、診断名・特性に合わせた個別支援を提供しています。
【運営会社】
株式会社エンラボ/設立2015年4月/神奈川県を中心に首都圏・関西・宮崎で11拠点運営



