知的障害のある方の就職|就職率・就職先・進め方を実例で解説
更新日:2026/05/31
知的障害があるとどんな仕事に就けるのか、特別支援学校卒業後にどう動き出せばよいのか、在宅からもう一度働き始められるのか――状況によって最初の一歩は変わります。
知的障害のある方の働き方は、障害の程度(軽度/中等度/重度)、療育手帳の有無、いまの出発点(特別支援学校卒業/在宅/一般就労の経験あり)の3軸で、選びやすい進路が変わってきます。
本記事では、知的障害のある方の就職率・就職先の傾向・自立訓練から就職までの動き出し方について紹介します。
知的障害のある方の就職率と就職先の傾向
「実際にどれくらいの方が働いているのか」「どんな業種で働いている方が多いのか」――まずは全体像を整理します。
民間企業で雇用されている知的障害のある方は約27万5千人
厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」によれば、民間企業で雇用されている知的障害のある方は約27万5千人と推計されています。
これは前回調査(平成30年度)から増加傾向にあり、知的障害のある方の雇用機会は年々広がってきていると整理できます。
雇用形態の内訳は、正社員が約2割、契約社員・パート等が約8割という構成で、フルタイム勤務よりも短時間勤務や週4日勤務といった働き方が選ばれる比率が高い傾向にあります。
出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果」https://www.mhlw.go.jp/
就職先として多い業種
知的障害のある方の就業先として比率が高い業種は、次のように整理されます。
製造業:部品の組み立て・検品・梱包・ピッキングなど、決まった手順の繰り返し作業が中心となる職場で活躍されているケースが多い業種です。
卸売業・小売業:店舗のバックヤード作業(品出し・在庫整理・清掃)、ECサイトの出荷補助、商品の検品作業などで雇用される方が多くなっています。
医療・福祉:病院や福祉施設での清掃・配膳補助・洗濯業務・備品管理など、決まった工程を丁寧に行う作業を担当されるケースが多い分野です。
サービス業(飲食・宿泊など):店舗の清掃、洗い場、調理補助、客室メンテナンスなど、対人接客よりもバックヤード業務を中心に活躍される方が多い領域です。
運輸業・郵便業:配送センター内での仕分け作業、宅配物の積み下ろし補助、構内清掃などで雇用されるケースが見られます。
業種を選ぶ際は、「対人接触の量」「作業手順の決まりやすさ」「身体の使い方」の3点を整理すると、ご自身の特性とのフィットを判断しやすくなります。
就職率の捉え方
「就職率」と一口に言っても、「就労移行支援を利用した方の就職率」「特別支援学校卒業時の就職率」「障害者雇用枠の求人倍率」など、文脈によって意味が異なります。
参考までに、文部科学省「特別支援教育資料」によれば、特別支援学校(知的障害)高等部の卒業者のうち、卒業時に就職した方の割合は約3割前後とされており、残る方々は就労継続支援B型・A型、生活介護、自立訓練、就労移行支援などの福祉サービス利用や、進学・在宅などの進路を選んでいます。
「卒業後すぐに就職する方が3割」という数字は、裏を返せば「いったん福祉サービスを経由してから就職に進む方が約7割」とも読めます。
「すぐに就職できなかった」ことは、必ずしも遠回りではなく、自立訓練や就労移行支援で土台を整えてから就職に進むことで、長く働き続けられる職場と出会えるケースもあります。
出典:文部科学省「特別支援教育資料」https://www.mext.go.jp/
障害の程度(軽度/中等度/重度)別に見た就職先の傾向
「軽度/中等度/重度」という分類は、知能指数(IQ)と適応機能の両面から判断されます。
それぞれの程度別に、選ばれやすい就職先の傾向を整理します。
特定の程度の方だけが特定の仕事に就けるという話ではなく、あくまで傾向としてご参考ください。
軽度知的障害(IQおおむね50〜70)
軽度知的障害のある方は、日常生活はおおむね自立して送れる方が多く、就労面では「決まった手順の作業を一度覚えれば安定して継続できる」という強みを持つ方が多い傾向にあります。
選ばれやすい就職先としては、次のようなものがあります。
- 製造業の組み立て・検品作業
- 物流倉庫内の仕分け・ピッキング
- 小売店舗のバックヤード(品出し・在庫整理)
- 飲食店の調理補助・洗い場・清掃
- 事務補助(データ入力・書類整理・郵便仕分け)
- 清掃業(オフィス・商業施設・ホテル)
職場で求められる配慮としては、「業務マニュアルを写真やイラストで可視化する」「急な業務変更を避ける」「指示は短く具体的に出す」などが挙げられます。
軽度知的障害のある方の仕事に関する整理は、軽度知的障害と仕事|よくある困り事や対処法・向いている仕事について紹介します。もあわせてご覧ください。
中等度知的障害(IQおおむね35〜50)
中等度知的障害のある方は、日常生活の一部に支援が必要なことが多く、就労面では「シンプルで反復性の高い作業」を中心に活躍される傾向があります。
選ばれやすい就職先としては、次のようなものがあります。
- 製造業の単純作業(袋詰め・シール貼り・部品仕分け)
- 物流倉庫内のピッキング補助
- 清掃業(バリエーションの少ない一定エリアの清掃)
- 福祉施設での補助業務(洗濯物たたみ・備品整理)
- 農作業・園芸作業(種まき・収穫・選別)
職場で求められる配慮としては、「ジョブコーチや支援員のフォローを定期的に入れる」「作業の工程を細かく分けて1工程ずつ習得する」「業務量を段階的に増やす」などが挙げられます。
中等度の方の就職には、就労移行支援事業所や特別支援学校、就労継続支援A型・B型などの福祉サービスを経由するパターンが多くなります。
重度知的障害(IQおおむね20〜35)/最重度(IQおおむね20未満)
重度・最重度の知的障害のある方は、日常生活全般に支援が必要なことが多く、一般就労(障害者雇用枠を含む)よりも、就労継続支援B型や生活介護といった福祉サービスの利用が中心となるケースが多いとされています。
ただし、特例子会社(大企業が障害者雇用を目的に設立した子会社)の中には、重度知的障害のある方が安心して働ける環境を整え、サポート体制のもとで雇用するところもあります。
「重度だから働けない」ということではなく、「適切なサポートを受けながら自分のペースで働く場が選べる」という整理になります。
「程度」だけで進路を決めないために
軽度/中等度/重度の分類は、進路選択の参考にはなりますが、それだけで進路を決めるべきではありません。
同じ「軽度知的障害」の方でも、対人スキルの強さ、集中の持続時間、得意な作業の傾向は一人ひとり大きく異なります。
「IQの数値」よりも「実際に体験してみてどう感じるか」「どんな環境で本人が無理なく続けられるか」を重視して、見学・体験を通じて見極めていくことが大切です。
療育手帳の有無による選択肢の違い
知的障害のある方の就職活動では、療育手帳(地域によっては「愛の手帳」「みどりの手帳」などの名称)の有無が、応募できる枠の幅に大きく関わります。
療育手帳がある場合:障害者雇用枠を活用しやすい
療育手帳を持っている方は、企業の「障害者雇用枠」に応募できます。
障害者雇用枠は、障害者雇用促進法に基づき、一定以上の規模の企業に義務づけられている「法定雇用率」を満たすために設けられている採用枠です。
2026年4月以降、民間企業の法定雇用率は2.5%以上となっており、今後さらなる引き上げも予定されています。
障害者雇用枠で就職するメリットとしては、次のような点が挙げられます。
- 障害特性に応じた合理的配慮が前提となっている
- 通院や体調管理のための時短勤務・休暇取得がしやすい
- ジョブコーチや就労定着支援を活用できる
- 業務内容が「ご本人の得意領域」に絞られる傾向がある
一方で、給与水準は一般枠より低めに設定されるケースが多く、キャリアアップの選択肢が限定的になる側面もあります。
「働きやすさ」と「収入」のバランスを見ながら、自分にとって優先順位の高い軸を整理することが大切です。
療育手帳がない場合:取得を検討するか、一般枠で動き出すか
療育手帳を持っていない方の選択肢は、大きく2つに整理できます。
選択肢1:療育手帳の取得を検討する
療育手帳の取得は、住んでいる市区町村の障害福祉課で申請します。
判定は児童相談所(18歳未満)または知的障害者更生相談所(18歳以上)で行われ、知能検査と適応機能の評価をもとに、手帳の交付可否と等級(自治体によりA・B、1度〜4度などの区分)が決定されます。
「手帳を持つことに抵抗がある」「家族の理解が得られない」と感じる方も少なくありませんが、手帳は本人の選択で取得・更新を判断できるものであり、勤務先や家族に伝える義務はありません。
障害者雇用枠の利用、税制上の優遇、各種福祉サービスの利用条件が整うため、就職に向けて選択肢を広げたい方には、取得を検討する価値があるといえます。
選択肢2:手帳なしのまま、一般枠で動き出す
療育手帳がなくても、一般枠での就職活動は当然可能です。
軽度知的障害のある方の中には、「自分のペースで働ける環境を見つけて、手帳なしで長く働いている」という方も少なくありません。
ただし、職場での合理的配慮を受けにくい、就労定着支援などの制度を活用しにくい、といった点には注意が必要です。
精神障害者保健福祉手帳との関係
知的障害のある方の中には、うつ病・適応障害・不安障害などの精神疾患を併発しているケースもあります。
その場合、療育手帳に加えて精神障害者保健福祉手帳を取得して、両方の手帳を活用する方もいらっしゃいます。
どちらの手帳を主軸に就職活動を進めるかは、主治医や相談支援専門員と相談しながら決めていくのが現実的です。
出発点別の動き出し方:3つのパターン
知的障害のある方の就職への動き出しは、「いま、どこから始まるか」によって整理しやすくなります。
パターン1:特別支援学校(高等部)を卒業するタイミングから
特別支援学校(知的障害)の高等部を卒業するタイミングは、進路選択の大きな分岐点です。
学校在学中に、進路指導の先生や保護者、外部の就労支援機関と相談しながら、次の進路を決めていきます。
選択肢として整理されるのは、次のような進路です。
- 一般就労(障害者雇用枠を含む):卒業後すぐに企業に就職する選択肢。実習を経て採用に至るケースが多い
- 就労移行支援:2年以内に一般就労を目指す訓練を受ける選択肢
- 就労継続支援A型:雇用契約を結びながら働く選択肢
- 就労継続支援B型:雇用契約を結ばずに自分のペースで働く選択肢
- 自立訓練(生活訓練):生活面・自己理解の土台作りから始める選択肢
- 生活介護:日常生活全般に支援が必要な方が利用する選択肢
特別支援学校卒業後にいきなり一般就労やA型を選ぶことに不安がある場合、まず自立訓練や就労移行支援を経由して土台を整える流れは、近年広く選ばれるようになっています。
「学校から直接就職」と「学校→福祉サービス→就職」のどちらが本人に合うかは、本人の希望・体力・対人面の準備度を見ながら判断します。
特別支援学校卒業後の進路全般については、特別支援学校の卒業|進路や就職先の探し方について解説もあわせて参考にしてください。
パターン2:いまは在宅・家庭中心の生活から動き出す
「学校を卒業したあと、しばらく家庭中心の生活が続いている」「家族と一緒に過ごす時間が長くなり、社会との接点が減ってきた」という状態から動き出したい方も少なくありません。
このパターンで重要なのは、「いきなり就職活動を始めない」ということです。
家庭中心の生活が長く続いた状態から、いきなりフルタイム勤務やA型の雇用契約に移ると、体力・対人疲労・生活リズムの面で挫折しやすいリスクがあります。
おすすめの流れとしては、次のステップが現実的です。
ステップ1:地域の障害者就業・生活支援センター、または基幹相談支援センターに相談する
ステップ2:相談支援専門員と一緒に「いまの生活で気になっていること」を整理する
ステップ3:自立訓練(生活訓練)または就労継続支援B型から動き出し、まず通所のリズムを作る
ステップ4:通所が安定してきたら、就労移行支援にステップアップする
ステップ5:就労移行支援で訓練と実習を重ねながら、一般就労(障害者雇用枠)に進む
「いまの自分には大きすぎる一歩」を踏み出そうとすると、続けるのが難しくなります。
「小さな一歩を、確実に積み重ねる」という設計が、長く続けられる就職への近道です。
パターン3:一般就労を経験したが、続けるのが難しくなったタイミングから
「過去に一般就労を経験したが、人間関係や仕事内容のつまずきで離職してしまった」「もう一度働きたいが、同じ失敗を繰り返したくない」という方も少なくありません。
このパターンでは、「次の就職で同じパターンを繰り返さないために、何が原因だったかを整理する」ことが、再就職への重要なステップになります。
整理するポイントとしては、次のようなものがあります。
- 業務量が多すぎたのか、業務内容が合わなかったのか
- 対人疲労が原因だったのか、作業の難易度が原因だったのか
- 体力面の問題か、対人面の問題か、両方か
- 職場で配慮を受けられなかったのか、配慮の伝え方が難しかったのか
これらを整理するには、自立訓練(生活訓練)や就労移行支援のアセスメントを活用することが効果的です。
自立訓練では、生活リズム・対人スキル・自己理解の土台作りに集中して取り組めるため、「次に向けた準備期間」として活用するケースが見られます。
その後、就労移行支援に進んで実際の職場を想定した訓練と実習を行い、自分の特性に合った職場と出会うことを目指します。
40代から自立訓練で働き方を見直していった方のプロセスは、40代からの再スタート|自立訓練で生活と働き方が変わった理由【エンラボストーリー】もあわせてご覧ください。
自立訓練→就労移行支援→就職という流れ
知的障害のある方の就職に向けた福祉サービスの活用は、「自立訓練(生活訓練)→就労移行支援→就職」という3段階で整理すると、進路が見通しやすくなります。
自立訓練(生活訓練)の役割
自立訓練(生活訓練)は、地域生活を送るうえでの「生活面の自立」を支援する障害福祉サービスです。
原則として2年(特例で3年)の利用期間内に、生活リズム・対人スキル・自己理解・体調コントロールといった「働くうえで/生きていくうえで本当に必要な土台」を整えます。
自立訓練で得られるものとしては、次のようなものがあります。
- 規則正しい起床・就寝・食事のリズム
- 公共交通機関を使った通所の習慣
- 他者との適切な距離感の取り方
- 自分の体調変化に気づく力
- 自分の得意・苦手の言語化
- ストレスへの対処方法
「いきなり就労移行支援に進むには、まだ準備が足りない」と感じる方が、自立訓練を経由するケースが多くなっています。
自立訓練の詳しい内容は、自立訓練(生活訓練)とは?対象者・利用期間・プログラム内容などについて解説します。で整理しています。
就労移行支援の役割
就労移行支援は、原則2年以内に一般就労を目指す訓練の場です。
職場を想定した作業訓練、ビジネスマナーの習得、企業実習(インターン)、就職活動のサポート、入社後の職場定着支援などを行います。
就労移行支援で得られるものとしては、次のようなものがあります。
- 職場を想定した作業スキル(PC操作・事務作業・軽作業など)
- ビジネスマナー(挨拶・電話応対・身だしなみ)
- 企業実習を通じた「実際の職場で働く経験」
- 履歴書・職務経歴書の作成サポート
- 面接練習・同行支援
- 入社後の職場定着支援(半年〜1年程度)
就労移行支援の詳しい内容は、就労移行支援(就労支援)ってどんなところ?対象・利用料・内容・就職率に関して解説します。で解説しています。
「自立訓練 → 就労移行」と「就労移行のみ」の使い分け
「自立訓練を経由したほうがよいか」「就労移行支援だけでよいか」は、ご本人の状態によって判断します。
自立訓練を経由したほうが合いやすい方
- 生活リズムが崩れていて、毎日の通所に不安がある方
- 対人疲労が強く、いきなり実習や就職活動に進むことが難しい方
- 過去に就労経験があるが、自分の特性をまだ整理できていない方
- 「働く前にもう少し気持ちを整えたい」と感じる方
就労移行支援から始めやすい方
- 生活リズムは整っていて、毎日決まった時間に通所できる方
- 過去の就労経験から「次の就職で何を変えたいか」が明確な方
- 「2年以内に就職したい」という目標がはっきりしている方
どちらが正解という話ではなく、ご本人の現在地と目標から逆算して判断していく整理になります。
知的障害のある方の就職の実例|自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジ利用者の事例
※以下は自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジを利用された方の支援事例です(医学的な症例研究ではありません)。
事例1|自立訓練で土台を整え、障害者雇用で安定就労に至ったケース
エンラボカレッジの自立訓練(生活訓練)を利用された方の中には、自己理解と対人スキルの土台を整えてから就労移行支援に進み、障害者雇用枠で安定した就労に至ったケースが多くあります。
たとえば、自立訓練を経て障害者雇用での就職を実現した30代の方のケースでは、入所時は「自分の得意・苦手をうまく言葉にできない」「職場で何を相談すればよいか分からない」という状態でしたが、自立訓練のMy Lab.プログラムで作成した『自分/支え方マニュアル』を職場と共有することで、必要な配慮を受けながら長く働き続ける土台が整いました。
→ 詳しくは 自立訓練で就労準備を整え、障害者雇用で安定就労するまで【エンラボストーリー】 をご覧ください。
事例2|40代からの再スタートで働き方を見直したケース
40代から自立訓練を利用された方の事例として、「過去の就労経験はあるが、いまの自分に合う働き方を見つけたい」という動機で入所されたケースがあります。
8つのプログラム(感情学/コミュニケーション/My Lab./アクティビティ/Life Lab./ソマティック Lab./Social Lab./スキルアップ)を通じて、自分の凸凹と必要なサポートを言語化し、卒業後の進路を一緒に整理していきました。
「再スタートに年齢は関係ない」「自分の特性を理解してから動き出すほうが、結果として早道だった」という声を伺うことが多くあります。
→ 詳しくは 40代からの再スタート|自立訓練で生活と働き方が変わった理由【エンラボストーリー】 をご覧ください。
業界全体の支援傾向|公的データと業界事例の参考
知的障害のある方の就職傾向については、業界事例と公的データから次のような傾向が報告されています。
業界事例1|軽度知的障害のある方が「合う仕事」を見つけたケース
就労支援の現場かに集中する作業は苦手だった」というケースが見られます。
このケースでは、支援員が視点を切り替えるサポートを行い、本人の身体特性に合う「立ち作業中心のバックヤード業務」に焦点を切り替えた結果、飲食店のバックヤード業務で安定就労に至ったとされています。
ここから学べるのは、「最初に希望した職種が、必ずしも自分に合うとは限らない」ということです。
実習や体験を通じて、自分の身体・集中力・対人特性に合う仕事を探していくプロセスそのものが、就職活動の重要な一部だと整理できます。
業界事例2|アルバイト経験を経て自分の特性に気づいたケース
業界最大手の就労移行支援事業所の事例には、「高校卒業後に始めたアルバイト先で、人間関係のもつれをきっかけに精神面の不調が出て、その過程で知的障害とパニック障害の併存が判明した」という30代の方の事例も含まれています。
このケースでは、本人が「自分の特性を知らないまま働き続けたことで、不調が大きくなった」と振り返っており、就労移行支援で自己理解を深めてから、自分の特性に合う雑貨店のバックヤード業務で再就職に至ったとされています。
知的障害は18歳までの発達期に生じる知的発達の遅れに基づくものですが、ご本人やご家族が気づかないまま大人になるケースもあり、社会に出てから困りごとが顕在化することがあります。
「いまの仕事がうまくいかない原因が分からない」と感じている方は、医療機関や相談支援事業所での相談を通じて、自分の特性を整理し直すことも選択肢の一つです。
公的データから見る就職傾向
厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」によれば、知的障害のある方の平均勤続年数は約9年とされており、いったん職場との相性が合えば、長く働き続けられる傾向が示されています。
また、障害者雇用枠で雇用されている知的障害のある方の週所定労働時間は、「30時間以上」が約6割、「20時間以上30時間未満」が約3割となっており、フルタイム勤務と短時間勤務の両方の選択肢が存在しています。
「フルタイムでないと働けない」「短時間勤務だと採用してもらえない」ということはなく、ご本人の体力・体調に合わせて働き方を選ぶことが可能です。
出典:厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査結果」https://www.mhlw.go.jp/
知的障害のある方の就職活動の進め方
ここからは、実際の就職活動を進める際の手順を整理します。
ステップ1:相談先を決める
最初に行うのは、「困ったときに相談できる場所」を決めることです。
主な相談先としては、次のようなものがあります。
- 障害者就業・生活支援センター(通称:なかぽつ):就業面と生活面の両方を、地域に根ざして支援する機関
- 基幹相談支援センター:障害福祉サービス全般の入り口となる相談機関
- ハローワーク 専門援助部門:障害のある方向けの求人紹介・職業相談
- 市区町村の障害福祉課:障害福祉サービスの受給者証申請の窓口
- 特別支援学校の進路指導の先生:在学中・卒業後の進路相談
「どの窓口にまず行けばよいか」が分からない場合は、お住まいの市区町村の障害福祉課に電話で問い合わせると、地域の相談機関を案内してもらえます。
ステップ2:自分の状況を整理する
相談先が決まったら、次のような点を整理していきます。
- 障害の程度(軽度/中等度/重度)
- 療育手帳の有無・等級
- 過去の就労経験(職種・期間・離職理由)
- 体力・通勤可能な範囲
- 得意な作業/苦手な作業
- 希望する働き方(フルタイム/短時間/週何日通えるか)
- 経済的な希望(収入の目安)
これらを一気に整理するのは難しいため、相談支援専門員や福祉サービスのスタッフと一緒に少しずつ言語化していくのが現実的です。
ステップ3:福祉サービスを活用するか判断する
自分の状況を整理した結果、「いきなり就職活動を始める」のではなく、「まず福祉サービスで土台を整える」と判断する場合は、自立訓練・就労移行支援・就労継続支援などの利用を検討します。
利用には「障害福祉サービス受給者証」が必要となるため、市区町村の障害福祉課で申請手続きを進めます。
申請から受給者証の交付までは、自治体によりますが概ね1〜2か月程度かかります。
ステップ4:見学・体験を通じて事業所を選ぶ
候補となる福祉サービス事業所が絞れたら、見学と体験に行きます。
事業所によって雰囲気・利用者層・スタッフの関わり方・取り扱う仕事内容は大きく異なるため、1か所だけでなく2〜3か所を比較するのが基本です。
「ここなら通い続けられそうか」「スタッフは話しやすいか」「利用者の雰囲気はどうか」を、ご本人の感覚を大切にしながら確かめてください。
ステップ5:就職活動を開始する
就労移行支援を活用する場合は、概ね利用開始から半年〜1年後を目安に、企業実習(インターン)や就職活動に進みます。
応募する求人の探し方としては、次のようなチャネルがあります。
- ハローワーク 専門援助部門の障害者求人
- 障害者向け就職サイト
- 就労移行支援事業所が紹介する求人
- 特別支援学校が連携する企業からの求人(学校在学中)
応募〜面接〜採用〜入社のプロセスでは、就労移行支援事業所のスタッフや支援員が同行・同席するケースが多く、本人ひとりで対応する負担が軽減されます。
ステップ6:就職後の定着支援を活用する
就職した後も、「職場で困ったことが起きたときに相談できる場所」を持っておくことが大切です。
就労定着支援は、就労移行支援を経て就職した方が、入社後3年6か月までの間、職場との調整を継続的にサポートしてもらえる障害福祉サービスです。
「業務内容で困っていることがある」「同僚との関係で悩んでいる」「体調管理がうまくいっていない」というときに、職場と本人の間に入って調整してくれる存在は、長く働き続けるうえで大きな安心材料になります。
知的障害のある方の就職に関するよくある質問(FAQ)
知的障害があると、どんな仕事に就けますか?
製造業・卸売業/小売業・医療福祉・サービス業・運輸業などで、決まった手順の作業や反復性の高い業務を中心に、幅広い職種で就職実績があります。
軽度知的障害の方は、事務補助やバックヤード業務、データ入力なども選択肢に入ります。
「IQ」だけで職種が決まるわけではなく、本人の得意・興味・体力との相性を見ながら、見学・体験を通じて選んでいく流れが現実的です。
療育手帳がなくても就職できますか?
療育手帳がなくても、一般枠での就職は可能です。
ただし、障害者雇用枠の応募、職場での合理的配慮、就労定着支援などの制度を活用するためには、療育手帳の取得を検討する方が選択肢が広がります。
手帳を持つことに抵抗がある場合は、主治医や相談支援専門員と一緒に、メリットと不安の両方を整理してから判断するのが現実的です。
特別支援学校を卒業してすぐに就職する必要がありますか?
卒業時にすぐ就職する方は約3割で、残る方々は就労継続支援や就労移行支援、自立訓練、生活介護などの福祉サービスを経由するケースが多くなっています。
「すぐに就職しなければならない」と感じる必要はなく、本人の状態に応じて、福祉サービスを経由してから就職に進む流れも一般的な選択肢のひとつです。
在宅生活が長くなってしまいましたが、就職できますか?
在宅生活が長く続いた状態から、いきなりフルタイム勤務やA型の雇用契約に進むのは、体力・対人疲労の面で挫折リスクが高くなります。
まず自立訓練(生活訓練)や就労継続支援B型から動き出し、通所のリズムを作るところから始めるのが現実的です。
体調と相談しながら少しずつステップアップしていけるため、「いまから始めても遅くない」と整理できます。
一般就労を続けるのが難しくなりました。次の選択肢
過去の就労経験を経て離職された方は、自立訓練(生活訓練)や就労移行支援で「次の就職で同じパターンを繰り返さないための準備」をしてから、再就職に進む流れがあります。
「離職してしまった」ことは、今後を考えるうえで大切な情報になります。
何が原因で続けられなかったかを整理しなおすことで、次の職場選びの精度が上がるケースが多くあります。
ジョブコーチとは何ですか?
ジョブコーチ(職場適応援助者)は、障害のある方が職場に定着できるよう、本人と職場の両方を支援する専門員です。
業務の習得サポート、職場での人間関係の調整、必要な配慮の伝え方など、入社初期の不安を支える存在として機能します。
ジョブコーチ支援は、地域障害者職業センターや、就労移行支援事業所などで利用できます。
障害者雇用枠と一般枠、どちらを選ぶべきですか?
障害者雇用枠は、合理的配慮を前提とした働きやすさが特徴ですが、給与水準は一般枠より低めに設定されるケースが多くなります。
一般枠は、給与水準やキャリアアップの選択肢が広い一方で、職場で配慮を受けにくいリスクがあります。
「収入の最大化」と「働きやすさ」のどちらを優先するか、ご本人の価値観に応じて選ぶのが現実的です。
迷う場合は、就労移行支援事業所のスタッフや相談支援専門員と一緒に、両方のメリット・デメリットを整理してから判断するとよいでしょう。
知的障害の方が長く働くために大切なこと
長く働くためのポイントは、「自分の特性を職場と共有できているか」「困ったときに相談できる相手がいるか」「無理のない業務量と勤務時間に調整できているか」の3点に集約されます。
これらは、本人の努力だけでなく、職場の理解と就労定着支援のような外部のサポートを組み合わせて実現していくものです。
「ひとりで抱え込まない」設計を、就職活動の段階から意識しておくことが大切です。
知的障害と発達障害の両方がある場合、どんなサービスが使えますか?
知的障害と発達障害は併存することが多く、両方の特性に応じた支援を組み合わせて利用できます。
療育手帳と精神障害者保健福祉手帳の両方を取得して活用する方もいらっしゃいます。
知的障害のある方のコミュニケーションで気をつけること
知的障害のある方は、長文の指示や抽象的な表現を理解することが難しい場合があります。
「短く・具体的に・一度に1つずつ」を意識した伝え方が、職場でも家庭でも有効です。
職場では、業務マニュアルを写真やイラストで可視化することも、理解の助けになります。
エンラボカレッジでの「働く前の土台作り」アプローチ
エンラボカレッジは、神奈川県・東京都・大阪府・宮崎県で自立訓練(生活訓練)と就労移行支援を運営している事業者です。
知的障害のある方ご本人やご家族から、「就職に向けて準備したいが、何から始めればよいか分からない」「特別支援学校を卒業した後、家庭中心の生活が続いている」「一度就労したが、続けるのが難しかった」というご相談を多くいただいています。
8つのプログラムで「自分/支え方マニュアル」を作る
エンラボカレッジの自立訓練(生活訓練)では、感情学/コミュニケーション/My Lab./アクティビティ/Life Lab./ソマティック Lab./Social Lab./スキルアップの8つのプログラムを組み合わせています。
なかでもMy Lab.は、利用される方が『自分/支え方マニュアル』という独自成果物を作る時間です。
このマニュアルは、自分の凸凹・必要なサポート・調子の悪い日の対処方法を、ご本人の言葉で言語化したもので、卒業後の進路先(就労移行支援事業所・職場・地域の支援機関など)でも継続して活用できます。
「自分のことを言葉で説明するのが苦手」と感じる方にとって、『自分/支え方マニュアル』があることで、職場との配慮の伝達がスムーズになる効果が期待できます。
4ステージのカリキュラム
エンラボカレッジでは、ステージ1〜4の4段階で「自分を知る・学ぶ→学んだことができる→学びを応用できる→自信を持ち、次に進める」というカリキュラムを組み立てています。
| ステージ | 期間 | ねらい |
|---|---|---|
| ステージ1 | 1〜6ヶ月 | 自分を知る・学ぶ |
| ステージ2 | 7〜12ヶ月 | 学んだことができる |
| ステージ3 | 13〜18ヶ月 | 学びを応用できる |
| ステージ4 | 16〜24ヶ月 | 自信を持ち、次に進める |
2年いる必要はなく、数か月で次のステージに進む方も、1年〜1年半で卒業される方もいらっしゃいます。
ご本人のペースに合わせて、無理のない設計で進めていきます。
卒業後の進路の多様性
エンラボカレッジを卒業された方の主な進路は、次のように整理されます。
- 就労移行支援事業所で次のステップへ
- 就労支援センターを活用し就職
- 休職中の職場へ復職
- 大学・専門学校への復学・進学
- 就労継続支援A型・B型の利用
「就職」だけに絞らず、ご本人の希望と状態に応じて、多様な進路から一緒に選んでいく姿勢が、エンラボカレッジの特徴のひとつです。
まとめ
知的障害のある方の就職は、「障害の程度」「療育手帳の有無」「いまの出発点」の3軸で整理すると進路が見通しやすくなります。いずれの出発点でも、自立訓練→就労移行支援→就職という3段階の流れを意識すると、無理のないステップアップが設計できます。
次の一歩として、お住まいの市区町村の障害福祉課または障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)に相談し、療育手帳の有無と地域のサービス一覧を確認するところから始めるとスムーズです。
「働く前の土台作りから相談したい」「家族と一緒に見学したい」というご相談は、エンラボカレッジ(自立訓練・就労移行支援)の無料相談で承っています。
ご見学・無料相談のご案内
エンラボカレッジでは、自立訓練(生活訓練)と就労移行支援の見学・無料相談を、神奈川・東京・大阪・宮崎の11拠点で随時お受けしています。
「知的障害のある家族の就職について相談したい」「特別支援学校を卒業した後の進路を一緒に整理してほしい」「在宅生活が長くなった本人と、まず動き出すきっかけを作りたい」――そうしたご相談も歓迎しています。
ご見学・無料相談のお申し込みは、エンラボカレッジ公式サイト、またはお電話(050-5538-0786/平日10:00-18:00)からお気軽にどうぞ。
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この記事について【作成・監修】
本記事は、自立訓練(生活訓練)事業所「エンラボカレッジ」を運営する株式会社エンラボの専門職スタッフが作成・監修しています。
【在籍資格】
精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士
【現場での実践】
自立訓練(生活訓練)・就労移行支援などで、診断名・特性に合わせた個別支援を提供しています。
【運営会社】
株式会社エンラボ/設立2015年4月/神奈川県を中心に首都圏・関西・宮崎で11拠点運営






