発達障害の特徴とは?大人の発達障害の特徴や困りごとを場面・診断別に解説します。
公開日:2023/08/04
大人になってから、仕事や生活する中で「ケアレスミスが多い」「コミュニケーションがうまくいかない」などの悩みを感じるようになった方もいると思います。
そういった悩みの背景に、発達障害があるかもしれません。
発達障害とは、生まれつき脳機能の偏りがあることで、さまざまな困りごとが表れる障害のことです。
子供のころは気づかずに、大人になってから「自分は発達障害なのでは?」と考える人も多くいます。まずは自分の発達障害の特徴を知り、対処法を探していくことが大切です。
今回は発達障害の中でも、大人の発達障害の特徴や困りごと。相談窓口、支援先も紹介します。
発達障害の特徴
発達障害は生まれつきの脳機能の偏りによって特性が生じ、周りの環境との相性によってさまざまな困りごとが起こる障害のことです。
発達障害の特徴としては、「人とのコミュニケーションが苦手」「ケアレスミスが多い」「遅刻や忘れ物が多い」「特定の勉強を難しく感じる」などがあり、日常生活や仕事において困りごとが生じてきます。
そういった特徴から失敗を繰り返して思い悩んでしまい、うつ病などの二次的な症状が表れることもあります。発達障害の影響による辛さを減らすためには、自身の特徴を理解して、適切な対処を行っていくことが大切だと言われています。
特徴と特性の違い
発達障害について調べていると、「特徴」や「特性」という言葉を目にすることが多いと思います。似たような場面で使われていて「違いが分からない」という方もいると思いますので、特徴と特性の違いについて紹介します。
まず、「特性」とは固有の性質のことで、それ自体に良し悪しはありません。
そして、「特徴」とはほかの人と比べて目立つ要素のことで、良い面と悪い面の両方あり得ます。
これだと分かりづらいと思いますので、例を挙げて紹介します。
発達障害の特性の一つとして「不注意特性」があります。これは一つのことに注意を向けるのが難しいという、その人が生まれ持った性質のことです。
この特性とその人の過ごす環境がマッチするかしないかで得意や困りごととして特徴が表れます。例えば会議中に不注意特性があると、じっと話を聞くのが難しく内容が頭に入ってこないことが多いという特徴が表れてきます。
逆に不注意特性は、会議中に話している人以外の参加者の様子を観察することが得意という面もあり、うまく活かすことで視野が広いという良い面での特徴にもなり得ます。
そもそも発達障害とは?
特性や特徴についてお伝えしましたが、そもそも発達障害にはいくつか分類があり、その分類によって表れる特性や特徴も異なっています。
発達障害の分類には「自閉スペクトラム症(ASD)」、「注意欠如・多動症(ADHD)」、「学習障害(LD)」などがあります。
それぞれの特徴を紹介します。
知的障害とは?原因や発達障害との違い、種類・診断基準などを解説します。
自閉スペクトラム症(ASD)
自閉スペクトラム症はASDとも略され、興味関心の偏りや特定の物事へのこだわり、対人関係の困難といった特性のある発達障害の一種です。
自閉スペクトラム症のある方は、あいまいな指示や暗黙の了解の理解が難しく、学校や仕事で困りごとが起こりやすいという特徴が言われています。
また、自閉スペクトラム症のある方の中には、視覚過敏や聴覚過敏など感覚過敏がある方もいるといわれています。感覚過敏とは逆に、感覚を感じづらい感覚鈍麻(どんま)がある場合もあります。
注意欠如・多動症(ADHD)
注意欠如・多動症とは、「不注意」「多動・衝動性」という特性があって、さまざまな場面で困りごとが生じることのある発達障害の一種です。
不注意は注意を一つに向けておくのが難しいという特性で、多動・衝動性はじっとしていられない、頭に浮かんだことをすぐ言動に移すという特性です。
大人の注意欠如・多動症のある方は、授業や会議などでじっとしている場面が苦手なことや、遅刻や忘れ物・失くしものが多くなるといった特徴があります。
注意欠如・多動症の中でも、不注意特が表れやすい「不注意優勢型」、多動・衝動性が表れやすい「多動・衝動優勢型」、どちらも表れる「混合型」と人によって特徴が異なります。
学習障害(LD)
学習障害(LD)は限局性学習症(SLD)ともいい、「字を書く」「字を読む」「計算する」など特定の分野の学習だけが苦手という発達障害の一種です。
学習障害のある方は子供のうちは学校の勉強で特定の教科だけ困るといった特徴があり、大人になってからは議事録やメールの読み書きなどが難しい、口頭での指示理解が困難といった特徴も表われてきます。
知的障害とは何が違うの?
今紹介した困りごとは、知的障害のある方とも共通する部分が多く、「発達障害と知的障害はどう違うのだろう?」と疑問を持つ方もいると思います。
違いとしては、発達障害は先天的な脳機能の偏りの影響なのに対して、知的障害は発達期(おおむね18歳)までに生じた知的機能の低下によって生活に影響が出ている状態のことをいいます。
知的障害は、知的機能(IQ)の数値と、着替えや金銭管理、コミュニケーションなどの日常で困っていることを合わせて判断されます。
また、知的障害は生まれつきではなく、幼少期に感染症などで知的機能が下がった場合にも診断されることがあります。
しかし、知的障害自体は18歳未満に生じていても、子供のころは気づかれなかった方が、大人になって仕事などで困ることで判明するということもあります。
大人の知的障害のある方が困りがちな特徴としては、
- 仕事を覚えるのに時間がかかる
- 覚えたことをすぐ忘れてしまう
- 上司の指示の理解が難しい
- 漢字や複雑な表現がよくわからない
- 臨機応変な対応が難しい
といったことがあり、大人の発達障害のある方とも一見すると共通しています。
ただ、特徴が似ていても原因は異なっているため、対処法も異なってきます。それに、発達障害と知的障害が併存している場合もあります。
自身が発達障害か知的障害か悩むときは、病院を受診して診断を受けるなど、正しい理解のもと対処法を考えていくことが大事です。
知的障害と発達障害の違いについて知りたい方は、以下のリンクよりご確認ください。
大人の発達障害の特徴
発達障害は生まれつきの障害と説明しましたが、大人になってから発達障害があったと判明することも多くあります。
子供のころはコミュニケーションなど苦手な面を勉強でカバーしていて、それほど困難を感じていなくても、大人になってから一人暮らしや仕事をする中でさまざまな困難に直面し、病院に行ったところ発達障害と判明する方もいます。
発達障害の特性自体は子供も大人も基本的な部分は変わりがありませんが、ライフステージが変わることで表れてくる困りごとも変わってきます。
大人の発達障害のある方の場合は、例えば仕事の場面では「上司の指示がよくわからない」「マルチタスクができない」「いつも納期に遅れてしまう」などで困ることが多い、という特徴があります。日常生活では、複雑な計算や契約手続きなどで困ることがあるといわれています。
次の章で大人の発達障害のある方が場面や分類ごとに表れやすい特徴について、具体的に紹介していきます。
発達障害といっても、一人ひとり性格や周りの環境などによって困りごとは変わってきます。傾向として受診する場合や対策を立てる場合の参考にしてください。
「場面別」大人の発達障害の特徴や困りごと
ここでは、大人の発達障害のある方の日常生活や職場といった場面ごとの特徴や困りごとを簡単に紹介します。
「日常生活」発達障害の特徴・困りごと
まずは、大人の発達障害のある方が日常生活の場面で困りがちな特徴から見ていきましょう。
多く見られる特徴として、
- 約束の時間に遅れることが多い
- 人が話している最中に割り込んで話し続けることがある
- 電車のダイヤが乱れたときなどに臨機応変な対応が難しい
- 人混みや音の多い場所で疲れてしまう
- お釣りの計算がすぐにできない
- 役所の手続きや携帯電話の契約などが苦手
などがあります。大人の発達障害のある方は日常生活をする上で、移動や各種手続き、人間関係などの場面で困りがちな傾向があります。
「職場」発達障害の特徴・困りごと
次に、大人の発達障害のある方が、職場でよく見られる特徴や困りごとを紹介します。
こちらも多く見られるものとして、
- 「なるべく早く」などあいまいな指示が分からない
- 人への興味の偏りから対人関係を築くのが苦手
- 不注意によりケアレスミスが多い
- 遅刻や忘れ物が多い
- 必要な資料を失くしてしまう
- 計画を立てることが難しい
- 納期に間に合わないことが多い
- マルチタスクがうまくできない
- メールや議事録の読み書きに時間がかかる
などです。大人の発達障害のある方は仕事の場面で、指示理解や対人関係、業務の進め方といったことで困ることが多い傾向にあります。
「学校」の発達障害の特徴・困りごと
次は、大人の発達障害のある方が学校生活で表れる特徴や困りごとを紹介します。主に大学生の特徴を挙げていきます。
多く見られる特徴として、
- 大学の履修登録が一人では難しい
- 授業に集中するのが困難
- 授業に必要なものをよく忘れたり失くしたりする
- レポートなどの締め切りを忘れてしまう
- 定期テストから逆算して勉強の計画を立てるのが苦手
- 就職活動の進め方が分からない
といったことが挙げられます。
大人の発達障害のある方は学校生活では、授業中だけでなく授業の選択やテストの対策、それに就職活動などでも困りごとが生じるという特徴がよく見られます。
「診断別」大人の発達障害の特徴や困りごと
この章では、自閉スペクトラム症や注意欠如・多動症など診断別の特徴や困りごとを紹介します。
一部先程の場面ごとの特徴と重複する箇所もありますが、ご了承ください。
自閉スペクトラム症(ASD)の特徴
大人の自閉スペクトラム症のある方の困りがちな特徴として、以下のようなものがあります。
- 人への関心に偏りがあり、対人関係を築くのが苦手
- 職場の暗黙のルールの理解が難しい
- あいまいな指示を受けると混乱してしまう
- 急な予定変更があると臨機応変な対応が難しい
- 感覚の過敏があり、眩しい光や大きな音が苦手
大人の自閉スペクトラム症のある方は、日常生活とともに職場において指示の理解や業務の進め方で困りごとが多い傾向にあります。
また、感覚過敏がある方は、さまざまな音が聞こえる場所など特定の環境では集中しづらいといった特徴もあります。
注意欠如・多動症(ADHD)の特徴
大人の注意欠如・多動症のある方が困りがちな特徴としては、以下のようなものがあります。
- ケアレスミスが多い
- 会議などじっとしている場面が苦手
- デスクの整理整頓ができずになくしものが多い
- 予定を組んで業務を進めることが難しい
- 遅刻や納期を守れないことが多い
大人の注意欠如・多動症のある方は、業務でのケアレスミスやマルチタスク、スケジュール管理といったことで困難が生じる傾向があります。
学習障害(LD)の特徴
大人の学習障害のある方が困りがちな特徴としては、以下のようなものがあります。
- 暗算や複雑な計算があると手が止まってしまう
- 議事録やメールの文章を読むのに時間がかかる
- 様式通りに字を書くことが難しい
- 口頭での指示が理解できない
- 図形のあるマニュアルがわかりづらい
大人の学習障害のある方は、仕事などで漢字や計算など苦手な分野に対して困りごとを抱えることが多いようです。
また、日常生活でも難しい表現や様式の決まっている役所の手続きなどにも困難を感じる傾向もあります。
大人の発達障害の特徴と一致したら?
ここまで大人の発達障害の特徴を紹介してきました。自分が感じている困りごとと、紹介した特徴が一致している場合には、専門機関への相談や医療機関の受診を検討することをおすすめします。
発達障害の特徴とは?大人の発達障害の特徴や困りごとを場面・診断別に解説します。
まずは相談する
発達障害の特徴に当てはまったら、まずは専門機関に相談することが大切です。
というのも特徴がどれだけ一致しても、発達障害とは別の原因によって生じているかもしれません。また、発達障害と知的障害など複数の障害が併存していることも考えられます。
そのため、専門機関に自分がどんなことに困っているかを伝えた上で、病院に行った方がいいのかなど次の行動を相談するといいでしょう。
大人の発達障害を相談できる窓口については、次の「大人の発達障害に関する相談先」にてお伝えします。
診断・検査する
相談した結果、病院を受診した方がいいとなった場合は、発達障害の診断ができる病院で検査を受けるようにしましょう。
発達障害の診断には問診や各種検査などがあります。大人の発達障害の場合は、問診で子供のころの様子を聞かれることが多いため、通知表やテストの結果などをあらかじめ用意しておくといいでしょう。
また、各種検査は大人の場合は精神科や心療内科で受けることが多いです。といってもすべての精神科などで発達障害の検査が行えるわけではないため、自分でインターネットなどで探すか、専門機関に紹介してもらうといいでしょう。
検査は一日だけでなく数日にわたって行われ、後日検査結果をもとに問診や他の指標と合わせて医師により診断が下されます。
検査にも診断にも時間がかかるため、予定に余裕を持ったうえで受診するようにしましょう。
特徴や困りごとの対処方法を考える(うまく付き合う方法)
発達障害の診断が出た後は、検査結果や主治医からのアドバイスなどをもとに、困りごとのへの対処法を考えていくことが大切です。
対処法の例として、大人の自閉スペクトラム症のある方で「職場であいまいな指示がよくわからない」という困りごとがあった場合、「もう少し」などの表現ではなく、具体的な数字で指示してもらう」「口頭ではなくメールなど文字で指示をしてもらう」などの対処法があります。
ほかの例も紹介します。大人の注意欠如・多動症のある方で「スケジュール管理ができずに納期に遅れてしまう」とう特徴がある方は、対処法として「見える場所にTODOリストを貼っておき、常に確認する」「朝礼と終礼で上司と一緒にその日の作業を確認する」といった方法があります。
最後に大人の学習障害のある方で「漢字のあるマニュアルが読みづらい」という方は、対処法として「口頭で指示をもらう」「音声読み上げソフトを使用する」「マニュアルにフリガナを振ってもらう」などがあります。
ここで挙げた対処法は一例で、診断名が同じでも一人ひとり表れる特徴は大きく異なります。そのため、まずは自分自身がどういった場面でどう困るのかといった特徴をしっかり把握することが大事になります。
自分だけで特徴の把握や対処法を考えることに難しさを感じる方は、大人の発達障害のある方が利用できる支援機関を活用することも一つの方法です。
支援機関の中の「自立訓練」では発達障害のある方をはじめとして、生活で困っていることがある方の自立への支援を提供しています。
自立訓練では専門的な知識や経験のあるスタッフと一緒に、一人ひとりの悩みに合わせて例で挙げたような「自分にとって理解しやすい指示」「スケジュール管理方法」「使用するツール」などの対処法を考えていくことができます。
大人の発達障害のある方で日常生活や仕事で困りごとを抱えている方は、一度相談してみると解消のヒントが見つかるかもしれません。
大人の発達障害に関する相談先
大人の発達障害について、困りごとや受診先などの悩みを相談できる窓口がいくつかあります。ここで紹介する窓口は基本的に診断名や障害者手帳などがなくても相談することが可能です。
自治体の障害福祉窓口
自治体にある障害福祉窓口では、大人の発達障害の相談をすることができます。発達障害での困りごとなどの状況を確認したうえで、適切な支援機関などの紹介を受けることも可能です。
自治体によって名称が異なることがありますので、わからない場合は総合案内に確認してみるといいでしょう。
ほかにも、自治体によって発達障害の相談ができる窓口が設けられていることもあります。ほとんどの場合は自治体のホームページに一覧が掲載されていますので、気になる方は確認してみるといいでしょう。
発達障害者支援センター
発達障害者支援センターとは、年齢にかかわらず発達障害のある方や家族などから相談を受け付けている専門機関です。
発達障害のある方が地域で生活しやすくなるように、医療や福祉、就労など多くの関係機関と連携しながら困りごとへのサポートをしています。
「仕事が続かない」といった悩みや「診断を受けるか悩んでいる」といった相談も受け付けていて、発達障害の診断ができる病院の紹介なども行っています。
障害者就業・生活支援センター
障害者就業・生活支援センターは発達障害をはじめとする障害のある方へ、生活と仕事に関する支援を提供している機関です。
医療や福祉、就労系の支援機関とも連携し、仕事だけではなく生活に関してもサポートを行っています。
仕事についてだけでなく日常生活でも困りごとがある場合は、一度相談してみるといいでしょう。
自立訓練
自立訓練とは、障害のある方が自立した生活を送ることができるように、困りごとを解消するプログラムなどサポートを提供している支援機関です。
自立訓練には生活訓練と機能訓練という種類があり、機能訓練には身体のリハビリも含まれています。
生活リズムや金銭管理、家事や整理整頓といった身の回りのスキルの向上から、人間関係やコミュニケーションの苦手の解消、自身の発達障害の理解についてなど、その人の困りごとに合わせたプログラムの提供をしています。
また、仕事を目標としている方には、自分に合った職場環境の整理や働きやすくするための具体的な対処法の検討など、長く働くために必要な支援も行っています。
自立訓練事業所のエンラボカレッジでは、発達障害のある方一人ひとりのお悩みを伺ったうえで計画を作成し、困りごとを解消できるように最適なサポートを提供しています。
相談は無料でいつでも受付中です。「人間関係がうまくいかない」「転職を繰り返している」「苦手への対処法がわからない」とお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。
大人の発達障害の特徴まとめ
子供のころは発達障害の特徴が表れずに、大人になってから職場での困りごとなどを通して発達障害が判明することがあります。
大人の発達障害のある方は、「マルチタスクが苦手」「指示がよくわからない」「スケジュール管理ができない」「人間関係がうまくいかない」など職場や日常生活で困る場面が出てきます。
発達障害には注意欠如・多動症、自閉スペクトラム症、学習障害などの分類があります。しかし、診断名が同じでも一人ひとり困りごとや特徴は異なり、それとともに対処法も一人ひとり異なってきます。
自分で発達障害の特徴をつかむことや、対処法を見つけるのが難しいと感じる方は、大人の発達障害のある方が利用できるサポートも活用していくことが大事です。