学習障害(LD)に向いている仕事・向いていない仕事と工夫例10選
更新日:2026/05/31
「読み書きや計算が極端に苦手で、いまの仕事が続けられるか不安」「自分に合う仕事の選び方が分からない」――そんな悩みを抱えて、このページにたどり着いた方も多いのではないでしょうか。
学習障害(LD/SLD)は、知的な遅れがないのに「読む・書く・計算する」のいずれかが極端に苦手になる発達障害のひとつです。職種そのものよりも、業務内容と苦手領域の組み合わせで働きやすさが大きく変わるという特徴があります。
この記事では、向いている仕事10例・向いていない仕事と理由・困りごとへの工夫10選・キャリア選びの5ポイント・支援サービスまでを順に整理してお伝えします。
結論:学習障害は「職種」ではなく「業務内容と環境」で選ぶことで働きやすくなる
学習障害(LD/SLD)の方が長く働き続けるための鍵は、職種名だけで決めるのではなく、苦手な領域(読み・書き・計算のいずれか)を避けやすく、得意な部分を活かせる業務内容と環境を選ぶことだと考えられます。
この記事の要点をはじめにまとめます。
- 学習障害は「読み・書き・計算」のうち特定の領域に限ってつまずく発達障害で、知的発達全般の遅れとは異なる
- 仕事との相性は「職種」よりも「業務内容」と「環境」で決まる。同じ事務職でも、読みが多い業務と数字入力中心の業務では負担が大きく変わる
- 向いている仕事の特徴は「業務が定型化されている」「苦手領域の比重が少ない」「自分のペースで進められる」の3つ
- 困りごとには「業務の工夫」「ツールの活用」「配慮の依頼」の3軸で対処できる
- 障害者手帳・自立支援医療・自立訓練・就労移行支援など、活用できる支援制度は複数ある
- 「働く前にまず自分の特性を整理したい」場合は、自立訓練(生活訓練)が選択肢になる
向いている仕事を探す前に、「自分はどの領域が苦手で、どんな業務であれば力を発揮できるか」を整理することが、長く続けられるキャリアの土台になります。
学習障害(LD/SLD)の仕事に関わる特性
仕事との相性を考える前に、学習障害の特性と、仕事の場面でどう影響しやすいかを整理します。
LDとSLDの違い|呼称の使い分け
学習障害は、英語の「Learning Disabilities」の頭文字をとって「LD」と表記されてきた経緯があります。文部科学省の定義をはじめ、教育現場ではこの呼称が長く使われています。
一方、医学的な診断基準であるDSM-5(米国精神医学会)以降は、「限局性学習症(SLD:Specific Learning Disorder)」という呼称が使われるようになりました。
「限局性」という言葉は、「知的発達全般に遅れがあるわけではなく、特定の領域に限ってつまずく」というニュアンスを正確に伝えるために加えられたものです。
教育現場では「LD」、医療現場では「SLD」、と使い分けられている、と理解しておくと混乱が少なくなります。
3つのタイプ|読み・書き・計算
DSM-5以降の診断基準では、SLDは主に3つの領域に整理されています。
読みの困難(ディスレクシア/読字障害):文字を読むことに困難がある状態です。文字を一文字ずつ拾い読みしてしまう、似た文字を読み間違える、行を飛ばして読む、音読のスピードが極端に遅い、といった特徴があります。
書きの困難(ディスグラフィア/書字障害):文字を書くことに困難がある状態です。漢字を覚えても書けない、文字の大きさ・形が整わない、手書きの文章で誤字脱字が多い、といった特徴があります。
算数の困難(ディスカリキュリア/算数障害):数の感覚や計算の処理に困難がある状態です。繰り上がり・繰り下がりが定着しない、暗算ができない、数字の位取りで混乱する、量の比較が苦手、といった特徴があります。
これらは「どれかひとつだけ強く出る」場合もあれば、「複数の領域が重なって出る」場合もあるとされています。
仕事の場面で表面化しやすい背景
学習障害は、本来は子ども時代の学校場面で気づかれることが多い障害です。しかし、大人になってから仕事を通じて初めて自覚するケースも一定数あるとされています。
仕事の場面で表面化しやすい背景には、扱う情報量・スピード・正確性の要求水準が学生時代とは大きく異なる、という事情があります。学校の宿題と社会人の業務では、求められる処理量が桁違いだという感覚を抱える方も少なくありません。
また、ビジネスメール・契約書・経理処理など、「読む・書く・計算する」の3領域がすべて重なる業務が、社会人になってから一気に増えるという背景もあります。
大人になってからLDの可能性を考えるようになった方の整理は、大人の学習障害の特徴と仕事の困りごともあわせてご覧ください。
他の発達障害との併存
学習障害は、ADHD(注意欠如・多動症)や自閉スペクトラム症(ASD)と併存(重なって持つ)するケースもあります。
「LD単独」というよりも「LDとADHDが重なっている」「LDとASDが重なっている」という方もいらっしゃるため、仕事の困りごとを整理する際には、ご自身の特性を複数の角度から見直すことが大切です。
併存している場合、苦手な領域も複数にまたがる傾向があり、仕事選びの際にはひとつの障害特性だけでなく、組み合わせとして整理していくことが必要になります。
学習障害の方に向いている仕事10例
ここから、苦手な領域(読み・書き・計算)の比重が小さく、得意な部分を活かしやすい業務の例を10件挙げていきます。
「LDだからこの仕事しかできない」というものではなく、業務選びの参考として活用してください。
1.製造・組立・検品などの軽作業
工場や物流センターでの製造・組立・検品・梱包・ピッキングなどの軽作業は、業務の手順が定型化されており、長文の読み込みや文章作成の頻度が低い業務です。
読みや書きが苦手な方にとっては、文字情報を扱う負担が小さく、身体を動かしながら集中できる業務として選びやすい傾向があります。
数字を扱う場面はありますが、検品票や数量のチェックが中心であり、複雑な計算が必要なケースは限定的です。
2.清掃・メンテナンス
オフィスビル・商業施設・公共施設などの清掃業務は、決まった手順を反復するルーティン業務が中心です。
読みや書きが苦手な方にとっては、文字情報を扱う頻度が低く、身体を動かしながら一定のペースで進められる業務として続けやすい傾向があります。
シフト制で勤務時間が決まっており、業務範囲が明確という点も、見通しを立てやすい要素のひとつです。
3.調理補助・厨房業務
飲食店・社員食堂・給食センターなどでの調理補助・盛り付け・食器洗浄などの業務は、レシピや手順が決まっており、口頭での指示が中心になるケースが多い業務です。
書きの苦手さがある方でも、手書き書類を作成する頻度が低く、手を動かしながら覚えていける業務として選ばれることがあります。
ただし、調味料の分量計算など、数字を扱う場面もあるため、計算が苦手な方は事前に作業内容を確認するのが安心です。
4.農業・園芸・畜産
農作業・園芸・畜産などの一次産業の業務は、自然のリズムに合わせて作業を進めていくため、長文の読み込みや複雑な計算が業務の中心になることは限定的です。
身体を動かしながら、季節や植物・動物の状態を観察して判断していく業務であり、文字情報よりも実物の観察が中心になります。
「文字を読むより、目で見て動くほうが分かりやすい」と感じる方には、選択肢のひとつとして検討できる業務です。
5.配達・宅配・運転業務
配達ドライバー・宅配スタッフ・配送業務などは、ルートの確認・荷物の受け渡し・伝票処理が業務の中心になります。
近年は配達アプリやハンディ端末が普及しており、住所や伝票番号は機械が読み取ってくれるため、読みの負担は以前より小さくなっています。
ひとりで作業する時間が長く、対人接触の負荷が小さい点も、集中して働きたい方に選ばれる理由のひとつです。
6.接客・販売(口頭中心の業務)
カフェ・小売店・コンビニなどの接客・販売業務は、対面でのやり取りが業務の中心です。
書きが苦手な方にとっては、手書き書類や文章作成の頻度が低く、口頭でのコミュニケーションを活かせる業務として選びやすい傾向があります。
レジ操作は機械が金額を計算するため、計算が苦手な方でも対応しやすい場面が多くなっています。
ただし、釣銭の確認やレジ締めなど、数字を扱う場面もあるため、計算が苦手な方は業務内容を事前に確認するのが安心です。
7.デザイン補助・映像編集補助
図形・映像・写真などのビジュアル素材を扱う業務は、文字情報よりも視覚情報が中心になります。
読みや書きが苦手な方でも、視覚的な処理が得意な方にとっては、力を発揮しやすい領域のひとつです。
完全に文字を扱わない業務はありませんが、デザイン補助・映像編集補助などの業務であれば、文字情報の比重を小さく保ちながら進められるケースがあります。
8.介護補助・福祉施設の補助業務
介護施設・福祉施設での補助業務は、利用者の方への声かけ・移動の支援・食事や入浴の介助などが中心です。
書きの場面では記録業務がありますが、近年は音声入力やタブレット入力が普及しており、手書きの負担は小さくなっています。
人と関わる仕事に挑戦してみたい、対面でのコミュニケーションを活かしたい、という方に選ばれる業務のひとつです。
9.工芸・職人系の業務
陶芸・木工・革製品・染織などの工芸や、大工・左官・板金などの職人系の業務は、手と目を使った技術が業務の中心です。
文字情報よりも、手の感覚・道具の使い方・素材の見極めが重要になるため、読みや書きが苦手な方でも、現場での実践を通じて技術を身につけていける業務です。
弟子入りや見習い期間がある業界が多く、口頭での説明や実演を通じて学ぶ機会が多いことも、文字情報の比重を小さく保てる要素のひとつです。
10.警備・施設管理
警備業務・施設管理・ビル管理などは、決まった巡回ルートや手順に従って業務を進めるルーティン業務が中心です。
文字情報を扱う場面はありますが、報告書のフォーマットが定型化されているケースが多く、ゼロから文章を作成する負担は小さい傾向があります。
夜間勤務や交代制の業務も多いため、対人接触の負荷を抑えながら働きたい方にも選ばれる業務です。
共通する3つの特徴
10例の業務に共通する特徴を整理すると、次の3つに集約されます。
特徴1|業務内容が定型化されている:作業手順がある程度決まっており、同じ流れで進められる業務は、新しい情報の読み込みや、その場での判断が少ないため、LDのある方にとっても取り組みやすい傾向があるとされています。
特徴2|苦手な領域の比重が少ない:読み・書き・計算のうち苦手な領域が、業務全体に占める割合が小さい仕事は、無理なく続けやすい傾向があります。
特徴3|自分のペースで進められる:締切のプレッシャーが強すぎず、自分のペースで作業を組み立てられる業務は、ミスを減らしやすい環境だと考えられます。
職種名だけで一律に判断するのではなく、「実際の業務内容にこの3つの特徴がどれくらい含まれているか」という視点で検討することが大切です。
学習障害の方に向いていない仕事と理由
「向いていない」という表現は、本来「業務との相性が悪い」という意味で使われるものです。
LDのある方が「絶対にできない仕事」というものはなく、苦手な領域が業務全体の中で大きな比重を占めると、本人への負担が大きくなりやすい、というのが正確な整理です。
以下では、苦手な領域別に「相性が悪くなりやすい業務の特徴」を整理します。
読みが苦手な方が負担を感じやすい業務
長文ドキュメントの読み込みが業務の中心になる仕事:法務・コンプライアンス・契約書のチェック業務、長文の仕様書を読み込むエンジニアリング業務、複数の文献を比較する研究職などが該当します。
メールスレッドが長く複雑な業務:複数部署とのやり取りが日常的に発生し、長いメールスレッドを正確に読み解く必要がある業務では、読み落としによる業務トラブルのリスクが大きくなります。
マニュアル・手順書から手順を組み立てる業務:新しい業務のたびに分厚いマニュアルを読み込み、頭の中で手順を組み立てる必要がある業務では、読みの苦手さが業務スピードに直結します。
書きが苦手な方が負担を感じやすい業務
手書き書類が中心の業務:申請書・送り状・宛名書きなどの手書き業務が大量にある仕事では、字の整え方や誤字脱字に時間を取られやすくなります。
長文の文章作成が業務の中心になる仕事:レポート作成・記事執筆・契約書作成・議事録作成が業務の中心になる仕事では、書きの苦手さが業務量に直接影響します。
正確性の要求水準が高い文章業務:法務文書・医療記録・契約書など、誤字や言い回しのミスが許されない文書を扱う業務では、ダブルチェックの体制があっても本人の負担は大きくなります。
計算が苦手な方が負担を感じやすい業務
経理・財務・会計などの数値処理が中心の業務:複数の数字を組み合わせた計算、桁の大きい金額の処理、税率計算などが業務の中心になる仕事では、計算の苦手さが業務量に直接影響します。
見積書・請求書の作成が業務の中心の業務:桁数の多い金額入力や、複数の項目を合算する業務では、入力ミスや桁の取り違えが起きやすくなります。
時間配分が厳格な業務:スケジューリング・進行管理・複数案件の並行管理など、時間の見積もりと配分が中心になる業務では、所要時間の見積もりの苦手さが業務全体に影響します。
複合的に負担を感じやすい業務
電話応対が中心の業務:聞きながらメモを取り、要点を整理し、必要に応じて関連情報を確認する、という複数の処理を同時に行うことに、強い負荷がかかります。コールセンター業務や、電話対応が主業務となる事務などが該当します。
マルチタスクが常態化している業務:複数の案件を同時並行で進める業務、頻繁に作業が中断される業務では、ひとつの処理に集中する時間を確保しにくく、苦手領域の影響が出やすくなります。
一律に「向いていない」と決めつけない視点
ここで挙げた業務も、配慮や工夫の組み合わせ次第では続けられるケースがあります。
たとえば、経理業務であっても、表計算ソフトに数式を組んで自動計算する形に変えれば、計算ミスは大きく減らせます。電話応対業務であっても、通話録音の活用や、後追いメールの併用ができれば、メモの負担は軽減できます。
「向いていない」と感じた業務を避ける選択肢もあれば、「向いていない部分を補う工夫を増やして続ける」選択肢もあります。
ご自身の状態と希望に合わせて、どちらを選んでも構わない、と整理しておくと、選択肢が狭まりにくくなります。
仕事の困りごとへの工夫10選
苦手な領域があっても、業務の進め方やツールの活用、職場への配慮の依頼によって、困りごとを減らしていくことは可能です。
ここから、現場で取り入れやすい工夫を10件挙げていきます。
工夫1|音声入力で書く負担を減らす
書きが苦手な方は、議事録・メール・報告書を音声入力で下書きし、テキストに整える方法が活用できます。
スマートフォンやPCの標準機能、業務用の音声入力ツールなどで、近年は変換精度が大きく向上しています。
「ゼロから文字を打つ」のではなく、「話した内容を整える」という流れに変えるだけで、書きの負担は大きく減らせます。
工夫2|テンプレートを使う
メール・報告書・申請書などの定型部分をテンプレート化しておくことで、書く負担を減らせます。
差出人・宛先・件名・冒頭挨拶・締めの定型句・案件ごとの定型表現などを保存しておくと、毎回ゼロから作る必要がなくなります。
業務単位でテンプレートを蓄積していくと、半年・1年経つ頃には、ほとんどの業務がテンプレートで対応できる状態になります。
工夫3|読み上げ機能で読む負担を減らす
長文の文書を音声で聞くことで、読みの負担を減らせます。
PCやスマートフォンの標準の読み上げ機能で対応できるケースが多く、メール・契約書・社内ドキュメントなどを耳で確認する形に変えると、目の疲労も軽減されます。
「読む」よりも「聞く」ほうが理解しやすい、という方には、特に効果が大きい工夫のひとつです。
工夫4|表計算ソフトに計算式を組む
計算が苦手な方は、手計算ではなく表計算ソフトに数式を組んで自動計算する形に変えることで、計算ミスを大きく減らせます。
経費精算・見積書・請求書などは、テンプレートに数値を入力するだけで計算が完了する形に整備しておくと、業務スピードも安定します。
「数字の処理は機械に任せる、自分は数字の入力と確認に集中する」という分担を意識すると、負担が整理しやすくなります。
工夫5|校正ツールで誤字脱字を減らす
書きの場面では、誤字脱字を自動でチェックしてくれる校正ツールを活用することで、提出前の見直し負担を減らせます。
ワード・メールソフト・ブラウザ拡張など、無料・有料を問わず複数のツールがあり、業務環境に合わせて選べます。
「自分で見直す」のではなく「ツールに見直してもらう」という発想に切り替えると、誤字脱字による指摘を減らしていけます。
工夫6|ダブルチェックを業務フローに組み込む
重要な書類や金額入力は、同僚や上司にダブルチェックを依頼する形を業務フローに組み込むことで、ミスの影響を抑えられます。
「LDだから特別にチェックしてもらう」のではなく、「業務全体のミス防止のためにダブルチェック体制を作る」という形にすると、職場全体の品質向上にもつながります。
工夫7|手順を一覧化して漏れを防ぐ
複雑な手順や桁数の多い計算は、確認手順を一覧化しておくことでミスを減らしやすくなります。
「入力後にもう一度桁を確認する」「単位を声に出して確認する」「送信前に宛先と件名を確認する」といった具体的な手順を明示しておくのが効果的とされています。
慣れてくると、リストを見なくても自然に確認の手順が身についていきます。
工夫8|タイマーで時間配分を補正する
所要時間の見積もりが苦手な方は、タイマーで実際にかかる時間を計測し、見積もり感覚を補正していくことが助けになります。
「30分で終わると思った業務に2時間かかった」という記録を残しておくと、次回からの見積もりが現実的になっていきます。
スケジュールの見積もりが業務に組み込まれている場合は、過去の実績を参考に余裕を持って計画を立てる、という形に変えるのが現実的です。
工夫9|業務内容を視覚的に整理する
文字情報から手順を理解することが苦手な場合、業務内容を図・写真・動画で残しておくことで、確認の負担を減らせます。
業務マニュアルを自分用に作り直す形でも構いません。文字だけの手順書を、フローチャート・写真付き手順書・動画マニュアルに置き換えていくと、確認のたびに読み込み直す負担が小さくなります。
工夫10|配慮の内容を書面で職場に伝える
苦手な領域や必要な配慮を職場に伝えること(合理的配慮の相談)は、長く働き続けるうえで大きな助けになる選択肢です。
伝える内容としては、「自分はこの領域が苦手」「こうした配慮があると助かる」「こうした業務であれば力を発揮できる」という3点を整理しておくと、上司や人事との対話がスムーズになります。
口頭での説明だけでなく、書面(メールや配慮事項シート)にまとめておくと、共有が広がりやすくなります。エンラボカレッジのMy Lab.プログラムでは、こうした自己理解の整理を『自分/支え方マニュアル』として言語化していく取り組みも行っています。
合理的配慮は、2024年4月から民間事業者にも提供が義務づけられました。苦手な領域があることを伝えることは、本人の権利の一部だと整理されています。
業務工夫やツール活用の整理は、大人の発達障害で悩む方の自己肯定感の整え方もあわせて参考にしてください。
学習障害の方のキャリア選び5つのポイント
仕事の選び方を考える際に、職種名以外で確認しておきたい5つの視点を整理します。
ポイント1|苦手な領域の比重で業務内容を確認する
求人票の「職種名」だけで判断するのではなく、「業務内容として、読み・書き・計算がそれぞれどれくらいの比重を占めるか」を、面接や見学の段階で確認することが大切です。
同じ事務職でも、書類作成中心の業務と、データ入力中心の業務では、求められる作業内容が大きく異なります。
「具体的にどんな作業を、1日のうちどれくらいの時間行いますか」という質問を、面接時に整理しておくと、業務との相性が見えやすくなります。
ポイント2|雇用形態(一般雇用/障害者雇用)を整理する
障害者手帳をお持ちの方は、障害者雇用枠での就職活動を選択肢のひとつにできます。
障害者雇用は、苦手な領域に対する配慮を最初から相談しやすい雇用形態であり、長く働き続けやすい環境を整えやすいとされています。
一般雇用と障害者雇用のどちらを選ぶかは、本人の希望・就労状況・体調・収入面の希望などによって変わります。
「いまの自分にとって、どちらが続けやすいか」を、支援者と一緒に整理することが、選択の起点になります。
ポイント3|配慮を伝える前提で職場を選ぶ
配慮の相談を歓迎する職場と、そうでない職場では、長期的な働きやすさが大きく変わります。
求人票や企業ホームページに、合理的配慮・障害者雇用・ダイバーシティに関する記述があるか、面接時に「苦手な領域の相談ができる雰囲気か」を確認する、といった視点を持つと、職場選びの判断材料が増えます。
「配慮を伝える」こと自体を負担に感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、配慮の相談は本人の権利の一部であり、長期的には自分を守る選択肢のひとつです。
ポイント4|試用期間・体験勤務を活用する
求人票や面接で業務内容を確認しても、実際の業務量や職場の雰囲気は、勤務を始めるまで分からない部分が残ります。
可能であれば、職場見学・体験勤務・トライアル雇用などを活用して、実際の業務内容を確認してから判断するのが安心です。
障害者雇用枠では、就労移行支援事業所や地域障害者職業センターを通じたトライアル雇用の制度が利用できるケースがあります。
ポイント5|働く前に土台を整える時間を確保する
「すぐに就職活動を始めるよりも、まず自分の特性を整理する時間を持ちたい」と感じる方もいらっしゃいます。
その場合、自立訓練(生活訓練)や就労移行支援などの障害福祉サービスを活用して、働く前の準備期間を持つ選択肢があります。
「特性の整理」「苦手領域の把握」「配慮を伝える練習」「ツール活用の習慣化」などに時間を使ってから就職活動に進むことで、長く続けやすい働き方を見つけやすくなります。
利用できる支援サービス
学習障害のある方が利用できる支援サービス・支援制度を整理します。
すべてを一度に使う必要はなく、ご自身の状況に合わせて選んでいけるものです。
ハローワーク(障害者窓口)
ハローワークの障害者窓口では、専門の相談員が職業相談・職業紹介・職業訓練の案内などを行っています。
障害者手帳の有無にかかわらず相談できるケースが多く、求職活動の入り口として広く利用されています。
地域障害者職業センター
各都道府県に設置されている公的機関で、職業評価・職業準備支援・ジョブコーチ支援などを行っています。
「自分の特性に合った仕事の方向性を整理したい」「就職後の職場定着支援を受けたい」という方に活用されています。
障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)
就業面と生活面の支援を一体的に行う公的機関です。「なかぽつ」と略して呼ばれることもあります。
就職活動から職場定着まで、長期的な伴走支援を受けられる点が特徴で、地域の関係機関との連携も担っています。
就労移行支援
障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのひとつで、65歳未満の就労を希望する方が、就職に向けた訓練と職場定着支援を受けられるサービスです。
原則2年間の利用期間が設定されており、求人検索・応募書類の作成・面接練習・職場体験・就職後の定着支援などを受けられます。
詳しくは就労移行支援とは|対象者・利用期間もご覧ください。
自立訓練(生活訓練)
障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスのひとつで、18歳から65歳未満の方が、生活の組み立て直し・自己理解・対人スキルの整理などに時間を使えるサービスです。
原則2年間の利用期間が設定されており、就職活動の前段階として「働くための土台を整える時間」を持てる点が特徴です。
詳しくは自立訓練(生活訓練)とは|対象者・利用期間もあわせてご覧ください。
精神障害者保健福祉手帳
LDを含む発達障害のある方は、精神障害者保健福祉手帳の対象になるケースがあります。
手帳の取得により、税金の控除、公共料金の割引、障害者雇用枠での就職活動など、さまざまな支援を受けられるようになります。
申請には、初診から6ヶ月以上経過していること、医師の診断書が必要になることなど、いくつかの要件があります。
自立支援医療(精神通院医療)
精神科・心療内科への通院費用の自己負担を軽減する制度です。
世帯収入により自己負担額が決まり、医療費の負担が原則1割になります。LDの診療や、併存する症状の治療を継続する場合に活用できます。
制度を活用する順序
「すべての制度を最初から使う」のではなく、ご自身の状況に合わせて段階的に選んでいくのが現実的です。
たとえば、「まずは医療機関に相談して特性を整理する」「自立支援医療で通院負担を減らす」「手帳取得を検討する」「障害福祉サービスの利用を相談する」「障害者雇用枠を視野に入れる」――というように、状況に応じて選択肢を広げていく形が一般的とされています。
エンラボカレッジでの「働く前の土台づくり」アプローチ
エンラボカレッジは、神奈川県・東京都・大阪府・宮崎県で自立訓練(生活訓練)を運営する事業者です。
「就職をゴールにする」のではなく、「働くうえで/生きていくうえで本当に必要な土台を整える」ことに時間を使えるよう設計されています。
LDのある方が、自分の特性を整理し、苦手領域に向き合うツールを身につけ、職場への配慮の伝え方を準備する場として活用いただけます。
8つのプログラムで自己理解を深める
エンラボカレッジでは、8つのプログラム(感情学/コミュニケーション/My Lab./アクティビティ/Life Lab./ソマティック Lab./Social Lab./スキルアップ)を組み合わせて、自己理解と生活の組み立て直しを支援しています。
LDのある方の自己理解にとって、特に取り組みやすいプログラムを2つご紹介します。
My Lab.|『自分/支え方マニュアル』をつくる
My Lab.は、エンラボ独自の自己理解プログラムです。利用される方が「自分の取扱説明書」を作っていく時間として位置づけられています。
自分の得意・不得意、苦手な作業の傾向、必要な配慮、頼れる相手――こうした情報を本人とスタッフが一緒に整理し、ひとつのマニュアルとして言語化していきます。
LDのある方にとっては、「自分の苦手領域を職場にどう伝えるか」「どんな配慮を依頼すれば働きやすくなるか」を整理するうえで、大きな手がかりになる取り組みです。
このマニュアルは卒業後に職場や家族に共有する際の手がかりにもなります。
スキルアップ|実務に直結するスキル補強
スキルアップでは、PC操作・タイピング・ビジネスメール・電話応対など、就労や進学に向けた実用スキルを補強していきます。
LDのある方にとっては、音声入力ツールの活用、テンプレートの作成、校正ツールの併用など、苦手な領域を補うための実践的な工夫を、安心できる環境で身につける時間として活用できます。
多職種スタッフによる個別の関わり
エンラボカレッジでは、精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士など、複数の専門職スタッフが在籍しています。
LDのある方ごとに、苦手領域・困りごとの背景・必要な配慮は異なるため、定期的な個別ミーティングを通じて、プログラムの組み合わせや優先順位を一緒に検討していきます。
4ステージのカリキュラム
エンラボカレッジでは、利用期間を4段階に整理しています。
ステージ1(1〜6ヶ月):自分を知る・学ぶ
ステージ2(7〜12ヶ月):学んだことができる
ステージ3(13〜18ヶ月):学びを応用できる
ステージ4(16〜24ヶ月):自信を持ち、次に進める
LDのある方の場合、ステージ1で「自分の苦手領域がどこにあるか」を整理し、ステージ2・3で「業務工夫やツール活用を実践してみる」、ステージ4で「就職活動や復職の準備を整える」という流れが目安になります。
なお、ステージ4までいる必要はなく、数ヶ月で復職される方も、1年〜1年半で次の進路に進む方もいらっしゃいます。
40代から自立訓練で働き方を見直していった方のプロセスは、40代からの再スタート体験もあわせてご覧ください。
中盤CTA|無料見学・相談のご案内
「自分の苦手領域を整理する時間がほしい」「いきなり就職活動ではなく、まず土台を整えたい」と感じた方もいらっしゃるかもしれません。
エンラボカレッジでは、神奈川県・東京都・大阪府・宮崎県の各事業所で、自立訓練(生活訓練)の見学と無料相談を随時お受けしています。
実際の雰囲気を見てから判断いただけますので、まずはお気軽にご連絡ください。
具体的な利用の流れは、大人の自立訓練(生活訓練)の対象・期間・卒業後の進路もあわせてご覧ください。
よくある質問(FAQ)
学習障害の方に向いている仕事は何ですか?
「LDだから一律にこの仕事」というものはありません。大切なのは、ご自身の苦手領域(読み・書き・計算のいずれか)を避けやすく、得意な部分を活かせる業務を選ぶことです。
業務が定型化されている、苦手領域の比重が小さい、自分のペースで進められる、という3つの特徴を持つ業務は、無理なく続けやすい傾向があるとされています。
職種名だけで判断するのではなく、実際の業務内容を確認してから検討するのが安心です。
学習障害の方に向いていない仕事は何ですか?
「絶対に向いていない」仕事というものはありません。苦手な領域が業務全体の中で大きな比重を占めると負担が大きくなりやすい、という整理です。
たとえば、読みが苦手な方にとっての法務・編集業務、書きが苦手な方にとっての記事執筆・契約書作成、計算が苦手な方にとっての経理・財務、といった組み合わせは、相性が悪くなりやすい傾向があります。
ただし、配慮や工夫の組み合わせ次第で続けられるケースもあるため、一律に判断する必要はありません。
学習障害でも就職できますか?
就職そのものを諦める必要はありません。障害者雇用枠と一般雇用のどちらも選択肢があり、配慮の相談・ツールの活用・業務内容の選び方によって、無理なく続けられる働き方を見つけることが可能だとされています。
就職活動の段階では、ハローワークの障害者窓口・地域障害者職業センター・就労移行支援事業所などの支援を活用できます。
学習障害でも事務職に就けますか?
事務職といっても業務内容は多岐にわたるため、一律に「事務はNG」とは判断できません。
読みが苦手な方でも、データ入力中心で長文ドキュメントをほぼ扱わない事務であれば、無理なく続けられるケースがあります。書きが苦手な方でも、テンプレートの活用が認められる職場であれば、書きの負担を抑えながら働けます。
「事務職」と一括りにせず、具体的な業務内容を確認してから判断するのが安心です。
障害者雇用と一般雇用、どちらを選ぶべきですか?
どちらが正解、ということはありません。配慮の相談しやすさ・収入面の希望・希望する職種・体調などを踏まえて、ご自身に合った選択肢を選ぶ形になります。
障害者雇用は配慮を最初から相談しやすい雇用形態であり、長く働き続けやすい環境を整えやすいとされています。一般雇用は職種の選択肢が広く、収入面での選択肢も広がる傾向があります。
「いまの自分にとって、どちらが続けやすいか」を、支援者と一緒に整理することが、選択の起点になります。
学習障害は障害者手帳の対象になりますか?
LDを含む発達障害のある方は、精神障害者保健福祉手帳の対象になるケースがあります。
申請には初診から6ヶ月以上経過していること、医師の診断書が必要になることなど、いくつかの要件があります。詳しくは主治医や市区町村の障害福祉課にご相談ください。
大人になってから学習障害の診断は受けられますか?
大人になってからの診断も可能です。精神科・心療内科のうち、「大人の発達障害」の診療に対応している医療機関で相談できます。
事前にホームページや電話で対応の可否を確認しておくのが安心です。発達障害者支援センターでも、医療機関の紹介を受けられるケースがあります。
自立訓練と就労移行支援、どちらを選べばよいですか?
「働く前にまず生活と自分を整えたい」と感じている方は自立訓練(生活訓練)、「就職活動の準備に直接取り組みたい」と感じている方は就労移行支援が、それぞれ目的に近い選択肢となります。
ただし、事業所によりプログラム内容は異なるため、複数の事業所を見学・体験してから決めるのが安心です。
詳しくは大人の自立訓練(生活訓練)の対象・期間・卒業後の進路もご覧ください。
まとめ
学習障害(LD/SLD)のある方の仕事選びは、「職種名」ではなく「業務内容と環境」で考えることが、長く続けられるキャリアの土台になります。
向いている仕事の特徴は、業務が定型化されている、苦手領域の比重が小さい、自分のペースで進められる、の3つです。製造・組立・清掃・調理補助・農業・配達・接客・デザイン補助・介護補助・工芸・警備など、業務内容の幅は思っているよりも広く存在します。
向いていない仕事についても、「絶対にできない」というものはなく、配慮や工夫の組み合わせ次第で続けられるケースが多いとされています。
困りごとには、業務工夫(音声入力・テンプレート・確認手順の一覧化・ダブルチェック)、ツール活用(読み上げ機能・校正ツール・表計算ソフト・タイマー)、配慮の依頼(書面で伝える・段階的に伝える)の3軸で対処できます。
キャリア選びのポイントは、苦手領域の比重で業務内容を確認する、雇用形態を整理する、配慮を伝える前提で職場を選ぶ、試用期間・体験勤務を活用する、働く前に土台を整える時間を確保する、の5つです。
ハローワーク・地域障害者職業センター・障害者就業・生活支援センター・就労移行支援・自立訓練など、活用できる支援サービスは複数あります。すべてを一度に使う必要はなく、ご自身の状況に合わせて段階的に選んでいけるものです。
「働く前にまず自分の特性を整理したい」「苦手領域を補うツールを身につけてから就職活動に進みたい」と感じた方は、自立訓練(生活訓練)が選択肢のひとつになります。
エンラボカレッジでは、自立訓練(生活訓練)として、自己理解と生活の組み立て直しを支援しています。「自分の苦手領域を整理する時間がほしい」「働く前に土台を整えたい」と感じた方は、まずは見学・無料相談からお気軽にご連絡ください。
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この記事について【作成・監修】
本記事は、自立訓練(生活訓練)事業所「エンラボカレッジ」を運営する株式会社エンラボの専門職チームが作成・監修しています。
【在籍資格】
精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士
【現場での実践】
自立訓練(生活訓練)・就労移行支援などで、診断名・特性に合わせた個別支援を提供しています。LDを含む発達障害のある方の自己理解・働き方の整理・職場定着までを、現場の支援経験に基づいて整理しています。
【運営会社】
株式会社エンラボ/設立2015年4月/神奈川県を中心に首都圏・関西・宮崎で11拠点運営




