発達障害で休職した方へ|復職への5ステップと再休職を防ぐ働き方

更新日:2026/06/12

復職の日が近づくと、胸のあたりが重くなって、夜中に何度も目が覚めてしまう。「またあの場所に戻れるのだろうか」「戻っても、また同じように休んでしまうのではないか」——。発達障害の特性が背景にあって休職に至った方の中には、こうした問いを繰り返し抱えている方が少なくありません。

休職は、本人の努力が足りなかったから取る措置ではなく、心身を立て直すために設けられた制度です。復帰までの流れを知り、再発を防ぐ準備を一つずつ整えていけば、自分のペースで元の職場へ戻るためのステップや、主治医と相談しながら将来の働き方を落ち着いて考えられるようになる場合があります。

この記事では、厚生労働省の手引きに基づく復職までの5ステップ、リワーク(職場復帰支援)の選び方、傷病手当金や休職中の過ごし方、復職時に配慮をどう伝えるか、再休職を防ぐ働き方のヒント、相談先までを、順を追って見ていきます。

発達障害と二次障害──なぜ休職に至るのか

「自分はなまけているわけではないのに、なぜこんなに疲れてしまうのだろう」と、自分を責めてしまう方もいるかもしれません。発達障害のある方が休職に至る背景には、特性そのものよりも、特性と職場の環境や業務内容とのあいだに生まれたズレ(ミスマッチ)が積み重なったケースが少なくありません。

二次障害とは何か

二次障害とは、もともとある発達の特性に対して、職場や生活における過度な環境負荷やストレスが重なり、後天的に心身の不調があらわれる状態を指す一般的な言葉です。公的な支援場面などでは、環境への不適応によって生じる二次的な症状や精神疾患として扱われることもあります。具体的には、気分の落ち込み、不眠、強い不安、頭痛や腹痛といった体の痛みなど、さまざまな形であらわれる場合があります。

ここで大切なのは、うつ病や適応障害には、それぞれ医学的な診断基準があり、医師が総合的に診断するものだという点です。本人や家族が「これはうつなのか、適応障害なのか」と感じても、症状が似ていて見分けにくい場面があります。自己判断で結論を出すよりも、気になる症状が続くときは早めに主治医や専門医に相談することが、適切な治療と回復への近道になります。

なお、発達障害とは、自閉スペクトラム症(ASD)やADHD(注意欠如・多動症)、LD(SLD:限局性学習症・学習障害)などを総称した呼び方で、生まれつきの脳機能の特性によるものとされています「発達障害だから必ずうつになる」といった一方向の因果関係で語れるものではなく、本人の特性と、周囲の人間関係や業務負荷などの環境因子がどのように噛み合わなかったかを丁寧に見ていく視点が大切です。

休職に至るまでの流れの例

休職にたどり着くまでには、小さな心身の不調が少しずつ重なっていく経過をたどる方が多くいます。典型的なサインの例として、以下のようなものがあります。

  • 朝、体が動かない:目覚ましは鳴っているのに布団から出られず、出勤の支度に時間がかかる場面が続く。

  • 理由のわからない涙:通勤電車の中や仕事の合間に、自分でも理由がはっきりしないまま涙が出てくる。

  • ミスが増え、自分を責める:これまでできていた作業でミスが重なり、「自分はダメだ」と責める気持ちが強くなる。

こうしたサインは、個人の意志の弱さや努力不足ではなく、環境とのミスマッチの蓄積が心身の悲鳴として出てきた反応と捉えられます。主治医から休職(加療を要する旨の診断書)をすすめられたときは、それだけ心身の休養が必要な状態であると受け止めることが大切です。

なお、実際の休職手続きや期間については勤務先の就業規則に基づいて決定されるため、医師の意見を踏まえつつ、会社の担当窓口(人事や総務など)へ確認・相談を進めるのが一般的な流れとなります。

特性と二次障害、どちらの対処を優先するか

「生まれつきの特性による困りごとと、今起きているメンタル不調(二次障害)と、どちらを先に何とかすればいいのか」と迷う方もいらっしゃいます。

医療の現場や専門機関においては、一般的に、まずは心身の回復(二次障害であるうつ状態や適応障害の治療)を最優先する流れが推奨されます。脳や体が消耗している段階で、自分の特性分析や今後の働き方の調整を行おうとすると、かえって負担となり症状を悪化させてしまう場合があるためです。

十分な休養によってエネルギーが回復し、状態が落ち着いてきてから、主治医や専門の支援機関と相談のうえ、特性とのつき合い方や環境の調整について考えていくことになります。回復のスピードや進め方は個人の状況によって異なるため、主治医と並走しながら、段階的に進めていくことが大切です。

なお、休職に至る手前で「発達障害があって仕事がうまくできない」と悩んでいる段階の方は、特性そのものへの向き合い方をまとめた「発達障害があり仕事がうまくできないと悩む方へ|特徴・原因・対処もあわせて」をご覧ください。

うつ病・適応障害からの復職そのものについては、「うつ病と仕事|場面別サインと休職・復職・転職までの選択肢」「適応障害(適応反応症)とは|症状・原因・治療・うつ病との違い」で詳しく扱っています。

休職中の過ごし方とお金──傷病手当金と療養の時期

「休んでいるあいだの生活費はどうなるのか」「何をして過ごせばいいのか」という不安は、休職に入った直後に多くの方が抱える切実な悩みです。ここでは、生活を支える公的なお金の制度と、療養の進み方の目安を整理します。

休職は甘えではなく、立て直しのための制度

休職を「逃げ」や「甘え」のように感じてしまう方もいるかもしれません。けれども休職は、療養に専念して心身を立て直すために、就業規則などの会社規程によって用意された正当な仕組みです。無理を重ねて働き続けるより、いったん立ち止まって回復に時間を使うことが、結果として自分に合った形で長く働き続けるための大切な土台になります。

療養の3つの時期の目安

心身の回復プロセスには、おおまかに3つの時期があると捉えると、これからの見通しが立てやすくなります。

休む時期:まずは何もせず、しっかり休むことに専念する段階。眠れる時間に眠り、心身の緊張をほどいてエネルギーを蓄えます。

回復する時期:エネルギーが少しずつ戻り、散歩や軽い外出、趣味の時間を楽しめるようになる段階。

準備する時期:復職を見据えて、生活リズムを勤務時間に近づけたり、復職後の準備を始めたりする段階。

ただし、これらの時期の区切りや期間は、本人の病状や会社の規程によって大きく異なる場合があります。「いつまでに回復しなければいけない」と焦らず、主治医と相談しながら自分のペースで進めていくことが一般的です。

傷病手当金の条件・期間

病気やケガで仕事を休み、給与が支払われない期間の生活を支える公的な制度として「傷病手当金」があります。これは、会社の健康保険(社会保険)に加入している本人が、以下の4つの条件をすべて満たした場合に、加入している健康保険組合や協会けんぽから支給される仕組みです。

  • 業務外の事由による病気やケガの療養のための休業であること(業務上・通勤中の場合は労災保険の対象となります)

  • 仕事に就くことができない状態(労務不能)であると医師が認めていること

  • 連続して4日以上仕事を休んでいること(最初の3日間は「待期期間」と呼ばれ、4日目から支給対象となります)

  • 休業期間中に給与の支払合がないこと(給与が支払われていても、傷病手当金の額より少ない場合は差額が支給されます)

支給される期間は、支給開始日から通算して最長1年6か月です(※支給金額の目安は、おおむね支給開始日以前の直近12か月間の各月の標準報酬月額を平均した額の3分の2に相当する額となります)。なお、自営業者などが加入する国民健康保険では原則としてこの制度はありません。最新の条件や手続きの詳細は、ご加入の健康保険組合や協会けんぽ、または会社の総務担当者へご確認ください。

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― 休職手当(傷病手当金)の金額・期間・申請方法

 

休職中にやっておくと、復職がラクになること

心身が「準備する時期」へと回復してきた段階で、少しずつ取り組んでおくと復職後の負担が軽くなる工夫があります。

  • 生活リズムを整える:起床・食事・就寝の時間を、少しずつ実際の勤務時間や通勤スケジュールに合わせて近づけていく。

  • 自分の状態を記録する:どのような場面で疲れやストレスを感じやすいか、職場でどのような配慮があると助かるかを少しずつ書きとめておく。

この「自分の状態の記録」は、復職時に職場へ配慮を伝える際の大切な材料(取扱説明書)になります。ただし、過去のつらかった場面を振り返る作業は心身に負担がかかる場合もあるため、必ず主治医と相談し、体調に余裕がある範囲で行うことが推奨されます。自己理解を深める時間の使い方については、記事後半でもう一度ふれます。

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リワーク(職場復帰支援)とは──実施主体の違いと選び方

「復職前に、何か準備の場に通ったほうがいいのだろうか」「リワークは必ず受けなければならないのか」と気になる方もいらっしゃいます。ここでは、リワークプログラムの全体像と、自分に合う場の選び方を整理します。

リワークとは

リワーク(職場復帰支援)とは、メンタル不調などで休職している方が職場復帰に向けて、生活リズムの立て直し、体調管理、職場場面を想定したストレスとのつき合い方などを整えていくリハビリテーションの取り組みです。回復してきた時期に、実際の勤務に近いスケジュールや環境を試しながら準備を進められる点が特徴です。

主な実施主体の違い

リワークを提供している場には、いくつかの種類があり、それぞれ目的や費用が異なります。

  • 医療機関:精神科や心療内科などが、診療報酬上の「精神科デイケア」などの一環(医療行為)として実施する場合。健康保険が適用されます。

  • 地域障害者職業センター:独立行政法人が運営する公的機関が、職場復帰に向けた専門的な職能評価や支援を行う場合。利用料は無料です。

  • 企業内:休職者が所属する会社が、独自の福利厚生や人事制度としてリハビリ出勤などの復帰プログラムを設けている場合。

  • 福祉サービス:自立訓練(生活訓練)や就労移行支援などの障害福祉サービスを、復職に向けた準備に活用する場合。

どこを利用できるかは、本人の回復状態やお住まいの地域、会社の就業規則などによって変わります。

地域障害者職業センターのリワーク支援

公的な選択肢のひとつが、地域障害者職業センターが行うリワーク支援です。

うつ病などの精神障害により休職している方を対象に、主治医の助言・連携を得ながら、円滑な職場復帰のためのコーディネートや支援を行っています

 

同センターのリワーク支援には、次のような特徴があります。

  • 期間の目安は4〜6か月程度:利用説明会やコーディネートからプログラム終了までの期間の目安であり、開始時期・期間・内容は個別に相談して設定されます。

  • 休職中の社員・企業の担当者・主治医の三者による協働:三者の合意形成(職場復帰のコーディネート)を行いながら、復職プランと連携して進めます。

  • 対象は雇用保険適用事業所に雇用されている休職中の方:国・地方公共団体・行政執行法人・特定地方独立行政法人に在職中(公務員など)の方は原則として対象外となります。

福祉サービスを活用する場合の注意点

就労移行支援や自立訓練(生活訓練)などの障害福祉サービスを休職中に利用する場合、法的な注意点があります。これらの福祉サービスは原則として離職者を対象としているため、休職者が利用するには「在籍企業からの復職支援が受けられないなどのやむを得ない事情があること」「復職後の雇用継続が見込まれること」などの要件を満たしたうえで、お住まいの市区町村(自治体)から特例として利用の承認(受給者証の交付)を受ける必要があります。自治体や個人の状況によって判断が異なる場合があるため、事前の確認が必要です。

リワークは必須か

リワークは、復職するために必ず受けなければならない義務ではありません。本人の体調や職場の受け入れ態勢、これまでの経過によって、利用したほうがスムーズな場合もあれば、リワークを使わずに主治医や産業医と相談しながら別の形で準備を進める場合もあります。「通うべきかどうか」「どのステップが最適か」も含めて、まずは主治医や勤務先の人事・産業医、専門の支援機関と相談して決めていくのが一般的です。

リワークの費用や選び方をもっと詳しく知りたい方は、リワークとは?通う意味や費用・選び方をご覧ください。

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リワークとは?

休職から復職までの5ステップ

「復職って、どういう手順で進むのだろう」と、全体像が見えずに不安になる方もいるかもしれません。国が示すガイドラインでは、休業の開始から復帰後のフォローアップまでを、5つのステップで整理しています。

厚生労働省の「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」では、職場復帰の流れを次のように示しています。

第1ステップ:病気休業開始および休業中のケア
主治医の診断書を会社に提出して休業が始まり、療養に専念しながら、必要な手続きや会社からの支援(傷病手当金の手続きなど)についての説明を受ける段階です。

第2ステップ:主治医による職場復帰可能の判断
心身の回復が進み、主治医が「職場復帰が可能」と判断した診断書を会社に提出する段階です。この際、就業上の配慮(短時間勤務の希望など)に関する医師の意見を診断書等に盛り込んでもらうことが一般的です。

第3ステップ:職場復帰の可否の判断および職場復帰支援プランの作成
会社が主治医の意見や産業医などの面談結果、職場環境の状況を総合的に勘案して、最終的な復職の可否を判断する段階です。復帰が認められた場合、具体的な復帰日や就業上の配慮、具体的な業務内容を盛り込んだ「職場復帰支援プラン」が作成されます。なお、主治医が復職可能と判断しても、会社(産業医)の基準により、即時の復職が見送られる場合もあります。

第4ステップ:最終的な職場復帰の決定
会社が職場復帰支援プランなどに基づき、最終的な復職を正式に決定し、就業上の配慮の内容や処遇とあわせて本人に通知・確認を行う段階です。

第5ステップ:職場復帰後のフォローアップ
復帰後の勤務状態や体調を確認しながら、作成したプランの適宜見直し(勤務時間の段階的な延長など)を行い、再休職(再発)の早期発見や職場適応をサポートしていく段階です。

手引きの位置づけと最新情報

この手引きは、本来は事業者(会社)が円滑な支援を行うための枠組みとして国が定めたものです。しかし、休職している本人がこの5つの流れをあらかじめ知っておくと、「自分は今、どのステップにいるのか」「次にどのような手続きが必要になるのか」という見通しが立ち、復職への不安が和らぐ場面が少なくありません。

なお、この手引きは平成16年10月に策定されて以降、複数回の改訂を経て、現在は令和2年(2020年)3月改訂版(関係法令の改正等に伴うもの)が最新のガイドラインとして運用されています(※公開資料の内容や解釈は時点によって変わることがあります。実際の運用ルールや手続きの詳細については、勤務先の就業規則や、主治医・産業医の指示に必ず確認してください)。

復職判断の目安と診断書のタイミング

「復職できるかどうかは、誰がどう決めるのだろう」「診断書はいつ用意すればいいのか」——復職を前にすると、手続きや判断の主体がわからず、不安や戸惑いを強く感じてしまう方もいらっしゃいます。各立場の役割と流れを整理することで、見通しが立ちやすくなります。

復職判断は誰が決めるのか

復職の最終的な判断は、主治医による医学的見地からの意見と、会社による労務管理上の判断の両輪で進められます。

主治医は、日常生活における病状の回復程度や、通院治療を継続しながら就労できるかという観点から復職の可能性を判断することが多いとされています。

一方で、職場で求められる業務遂行能力(安全に働けるか、提供できる業務があるかなど)まで回復しているかどうかは、産業医や人事担当者などが精査したうえで、会社が総合的に判断します。したがって、法的な契約関係において、最終的に復職を正式に決定(発令)するのは会社となります。

「自分の意思や主治医の診断だけでは決まらない」と聞くと心細く感じるかもしれませんが、複数の専門的な立場が関わることで、本人にとって無理のない安全な復帰プランが作られやすくなる側面もあります。

「復職可」の診断書のタイミングと内容

生活リズムが整い、勤務に耐えうる程度まで回復が進んできた段階で、主治医に「職場復帰が可能である」旨の診断書(または意見書)を書いてもらう流れになります。

このとき、診断書には単に「復職可能」とだけ記載してもらうのではなく、就業上の配慮に関する具体的な医学的意見(たとえば、当面は短時間勤務が望ましい、残業や休日出勤を免除・制限したほうがよい、特定の感覚過敏に配慮した配置が望ましいなど)をできるだけ詳細に盛り込んでもらうと、その後の会社との働き方の相談がスムーズになります。

なお、診断書を会社に提出するタイミングや提出先(上司、人事、あるいは産業医宛てなど)は、勤務先の就業規則や復職規定によって期限(例:復職希望日の1か月前まで、など)が指定されている場合があります。自己判断で用意を進める前に、あらかじめ会社の窓口へ確認しておくことが一般的です。

主治医・産業医・会社の役割の違い

職場復帰に関わるそれぞれの立場には、以下のような役割の違いがあります。

立場 主な役割と視点
主治医 医学的な治療の専門家。病状の回復具合を診て、復職の可能性や必要な配慮について「医療の視点」から意見を出す。
産業医 労働衛生の専門家。主治医の意見と職場の業務負荷を照らし合わせ、安全に働けるかを「医学と労務の交差点」から精査し、会社へ助言する。
会社(人事・上司) 雇用主・労務管理の主体。集まった主治医・産業医の意見をもとに、職場の受け入れ態勢を考慮して、復職の可否と就業上の配慮を「最終決定」する。

それぞれの役割が分かれていることを知っておくと、復職手続きのプロセスにおいて「誰に、何を、どのタイミングで相談すればいいのか」が明確になり、すれ違いを防ぎやすくなります。

戻り先の3択──同じ職場/異動・配置転換/別の道

「正直、元の職場には恐怖感があり戻りたくない」「同じ環境ではまた体調を崩してしまうのではないか」という不安を抱えている方もいらっしゃいます。そのつらい気持ちを無理に否定する必要はありません。職場復帰を目指すといっても、その進路(戻り先)は一択ではなく、本人の体調や特性の状況に合わせていくつかの選択肢を並べて検討することができます。

同じ職場・同じ業務に戻る

もっとも一般的であり、多くの企業で最初に検討されるのが、休職前と同じ職場(部署)・同じ業務に戻る形です。慣れ親しんだ環境や人間関係であるぶん、新しい環境に適応するための余計なエネルギーを使わずに済むという利点があります。

厚生労働省の手引きでも、職場復帰の原則としては「まずは元の職場への復帰」としつつ、当初は業務負担を軽減(残業免除や業務量の削減など)しながら段階的に慣らしていく考え方が示されています。

異動・配置転換で環境を変える

人間関係のミスマッチや、特定の業務内容(マルチタスクなど)が誘因となって不調が出たケースでは、異動や配置転換によって働く環境そのものを変えたほうが、再発防止や回復につながる場合があります。これは、本人の発達特性に合わせて働く環境の障壁を取り除く「合理的配慮(障害者雇用促進法に基づくもの)」の有効な選択肢の一つでもあります。

ただし、合理的配慮の義務は「企業側に過度な負担を課さない範囲」とされているため、会社の規模や人員状況、組織の体制によっては、希望する部署への異動が必ずしも一律に実現するとは限りません。主治医の意見書などを会社(人事や産業医)に提示し、どのような環境であれば安全に業務が遂行できるか、現実的な調整を丁寧に協議していくことが一般的です。

別の道も選択肢に入れる

体調や職場の状況によっては、現在の会社に戻るのではなく、別の道を考えることが結果として心身の安定につながる場合もあります。たとえば、現在の会社を退職し、障害者手帳を取得して「障害者雇用」での再就職を目指す道や、障害福祉サービス(自立訓練や就労移行支援など)を活用してじっくりと次の進路を整えていく選択肢です。

なお、休職期間中に退職や転職活動を行う場合は、会社の就業規則の規定や、健康保険の「傷病手当金」を退職後も継続して受け取るための法的な要件(退職日までに被保険者期間が継続して1年以上あること、退職日に労務不能であり出勤していないことなど)を確認しておく必要があります。経済的な支えを失わないためにも、自己判断で急に退職を決めず、主治医やハローワーク、加入している健康保険組合などに確認・相談しながら慎重に進めることが大切です。

復職時の合理的配慮の伝え方・文例

「職場に配慮してほしいことはあるけれど、我慢すべきなのか、どう伝えれば会社に受け入れてもらえるのかわからない」と悩む方もいらっしゃいます。ここでは、障害者雇用促進法に基づく「合理的配慮」の視点を踏まえ、復職の場面に絞った具体的な伝え方のポイントを整理します。

復職時に配慮を申請する流れ

復職時の就業上の配慮や環境調整の相談は、主治医の診断書や意見書を起点に進めるのが確実でスムーズな方法です。

自分一人だけで会社に要望を掛け合うと、単なる「わがまま」や「怠慢」と誤解されてしまうリスクがゼロではありません。しかし、医学的な知見を持つ主治医の意見が後ろ盾(エビデンス)としてあることで、会社側も安全配慮義務の観点から真摯に対応を検討しやすくなります。診断書に書かれた就業上の配慮に関する意見をもとに、人事担当者、産業医、職場の上司を交えて面談を行い、実際の業務内容や配置の変更などへ落とし込んでいくのが一般的な流れです。

伝え方の文例(合理的配慮の提示)

会社へ配慮を希望する際は、単に「特性のためにこれができない」という不可能な点だけを並べるのではなく、「このような代替手段や環境があれば、安定して業務を遂行できる(能力を発揮できる)」という前向きな形で具体的に伝えることが、合意形成(相互理解)への重要なポイントとなります。以下に、復職後の働き方に絞った文例を挙げます。

  • 指示の出し方について 「口頭での複数の指示や曖昧な表現だと、聞き漏らしや誤解が生じてしまう場合があります。大変恐れ入りますが、作業の指示をいただく際はメモやメールなど、箇条書きのテキストで共有いただけますと、正確かつスムーズに業務を進められます」

  • 会議や打合せへの参加について 「その場で急に意見を求められると、頭の中の整理が追いつかず混乱してしまうことがあります。もし可能であれば、会議の議題や資料を事前に共有いただけますと、あらかじめ準備をして打ち合わせに臨むことができます」

  • 業務量やスケジュールの調整について 「復帰直後から複数の業務を同時に抱えると、過度な緊張から体調を崩してしまうリスクがあります。体調を保ちながら着実に業務に慣れていくため、復職後1か月程度はタスクを一度に1つに絞っていただき、段階的に業務量を戻させていただけますと幸いです」

伝える・伝えないの判断は人それぞれ

どこまで特性を伝えるか、そもそも発達障害があることを会社に開示するかどうか(オープン就労かクローズ就労か)は、本人の状況や価値観、職場の環境によって判断が分かれる部分であり、一概にどちらが正解とは言えません。

法的な「合理的配慮の提供義務」は、原則として会社側に障害の存在や必要な配慮が開示されている場合(オープン就労など)に適用されます。会社に特性を伏せている(クローズ就労)場合であっても、主治医の診断書(うつ状態などによる就業制限)に基づいた一般的な復職支援(短時間勤務など)を受けることは可能ですが、発達障害の特性に応じたピンポイントの環境調整を義務として求めることは難しくなる場合があります。主治医や専門の支援機関と相談しながら、自分の状況に合った開示の範囲を選択することが大切です。

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特性別・再発しやすいつまずきと職場場面の対策

「また同じところでつまずいて、再休職になってしまうのではないか」——この不安は、発達障害の特性を背景に持つ方が、復職を前にして最も抱えやすいもののひとつです。どのような特性が、復職後のどのような場面でつまずきや過度な疲労につながりやすいのかをあらかじめ知っておくことで、先回りして具体的な対策や配慮の相談をしやすくなります。

つまずきやすい特性と職場場面の対策

ここでは、復職後に再発(再休職)のリスクとなりやすい代表的な場面に絞って、特性に応じた困りごとと対策の例を整理します。

つまずきやすい特性の傾向 復職後に起きやすい具体的な場面 自分でできる工夫・会社への相談例
指示が曖昧だと動けない(ASDの傾向など) 「適当にやっておいて」「適宜進めて」と言われ、何から手をつけるべきか迷いフリーズしてしまう。 指示を箇条書きや具体的な手順書でもらうよう相談する。指示を受けた直後に「〇〇という理解で合っていますか」と復唱して認識を合わせる。
優先順位づけが苦手(ADHDの傾向など) 複数の依頼やタスクが重なり、どれも中途半端になったり、締め切りに間に合わなくなったりする。 タスクをすべて書き出し、上司に「どの順番で進めるべきか」締め切りや重要度の確認・並び替えを定期的に相談する。
マルチタスクが負担(ASD・ADHDの傾向など) 電話対応をしながらパソコン作業を行うなど、同時に複数の処理を求められて混乱し、激しく消耗する。 一度にひとつの作業(シングルタスク)に集中できるよう、時間帯によって役割を分けてもらうなどの業務調整を相談する。
対人疲労がたまりやすい 職場での雑談や打ち合わせ、周囲の視線が気になり続け、午後になると極激しい疲労感に襲われる。 休憩時間を細かく分割して取る、昼休みは一人になれる静かな場所(会議室や外部など)を確保して脳を休める。
感覚過敏がある(聴覚・視覚など) 周囲の話し声や電話の音、オフィスの強い蛍光灯の照明などが刺激となり、集中できず頭痛や疲労が出る。 静かな端の席への配置変更を相談する。業務に支障のない範囲で、遮音用耳栓やノイズキャンセリングイヤホン、PCのブルーライトカットフィルターの使用許可を周囲に確認のうえ活用する。

これらはあくまで代表的な一例であり、どのような場面に負担を感じるかは人によって千差万別です。大切なのは、休職期間中に「自分はどの場面でエネルギーを消耗しやすいのか」を客観的に把握しておくことです。

「また同じところでつまずくのが怖い」への向き合い方

過去につらい経験をしているからこそ、同じ失敗を繰り返すのが怖いと感じるのは、生物としてごく自然な防衛反応です。その恐怖心は、無理に消し去ろうとするのではなく、「自分の取扱説明書(トリガーと対策のリスト)」を作成することで、少しずつコントロールしやすくなります。

「自分がどのような環境で、どのような配慮や工夫があれば、体調を崩さずに働き続けられるか」をあらかじめ言葉にしておくと、実際の職場でつまずきが生じる前、あるいは小さなサインが出た段階で、早めに手を打てる場面が増えていきます。この自己理解の具体的な進め方については、記事の後半でもう一度詳しくふれます。

特性そのものの困りごとを広く知りたい方は、「発達障害グレーゾーンの方が仕事でよくある困りごと」「発達障害でコミュニケーションが苦手な理由」「発達障害のある大人の雑談」もあわせてご覧ください。

復職初日〜最初の1か月の過ごし方

復職初日が近づくと、「本当に以前のようにちゃんとやれるだろうか」「周囲からどう思われているだろうか」と、不安や緊張で頭の中がいっぱいになってしまう方もいらっしゃいます。復職直後の最初の1か月は、いきなり休職前の100%の力を出すのではなく、新しい環境や生活リズムに心身を「慣らしながら整えていく時期」だと捉えることが、再休職を防ぐための重要なポイントです。

試し出勤・短時間勤務を活用する

会社の就業規則や復職規定によっては、本格的な業務復帰の前に「試し出勤(リハビリ出勤)」や「短時間勤務(時短勤務)」といった段階的な復帰制度が用意されている場合があります。これらは、短い時間や軽度な作業から段階的に負荷を増やしていくことで、心身の急激な変化や不安を和らげるための有効なステップです。

ただし、これらの「試し出勤」などの制度は、法律で一律に義務付けられた一律の仕組みではなく、制度の有無や運用ルール(期間中の給与支給の有無や、万が一の事故の際の労災適用の扱いなど)は企業ごとに異なります。利用できる具体的な制度があるか、またその際の条件については、復職支援プランを作成する段階で、人事担当者や産業医にあらかじめ詳細を確認しておくことが一般的です。

タスクを絞る・期待値を下げる

復帰直後から、休職前と同じ量や質の仕事を完璧にこなそうとすると、心身に急激な過負荷がかかり、再発のリスクが高まります。最初のうちは、以下のような意識を持って業務に臨むことが、長く健康に働き続けるための大切な土台になります。

  • 一度に抱えるタスクを極力減らし、シングルタスク(1つの作業)を心がける。

  • 「最初はできなくて当たり前」「まずは職場に来て席に座っているだけで十分」と、自分への期待値をいったん下げておく。

  • 終わった作業は焦らず一つずつ確認し、スピードよりも確実性を優先する。

職場での気まずさとの向き合い方

「久しぶりの出勤で、周囲に迷惑をかけた申し訳なさや気まずさを感じる」というのも、復職者が抱えやすい自然な心理です。しかし、実際には周囲の同僚も「どのように声をかければよいか迷っている」ケースが多く、過度に相手の反応を想像しすぎると、それ自体が大きな消耗につながってしまいます。

休職に至った経緯を詳細に説明する必要は基本的にはありません。「この度は長らくお休みをいただき、ご心配とご迷惑をおかけしました。今日からまた体調に気をつけながら頑張りますので、よろしくお願いいたします」といった、簡潔で誠実な挨拶を用意しておくだけで十分な場面がほとんどです。

不調のサインに早く気づく仕組みとフォローアップ

無理が重なって再び体調を崩す前に変化に気づけるよう、自分なりのセルフモニタリングの仕組みを持っておくと安心です。

たとえば、日々の睡眠時間やその日の気分の波をアプリや手帳に簡単に記録しておくことで、「ここ数日、寝つきが悪いな」「不安が強くなっているな」といった客観的なサイン(初期症状)に気づきやすくなります。

また、厚生労働省の手引きに基づき、多くの企業では復職後1か月前後のタイミングで産業医や保健師、人事担当者による定期的な面談(フォローアップ)が実施されます。こうした場を積極的に活用し、「実際に働いてみて感じた特性上のつまずき」や「配慮の過不足」について、早めに会社側へフィードバックし、プランを微調整していくことが推奨されます。

再休職を防ぐ──予防・家族の関わり・グレーゾーンのまま休職中の人

「せっかく職場に戻れても、また同じように体調を崩して休むことになったらどうしよう」——再休職への不安や恐怖感は、復職後もしばらくの間、多くの方が抱え続ける切実な問題です。ここでは、再休職を防ぐための基本的な考え方と、周囲の適切な支え方を整理します。

再休職が起きやすい背景

まず知っていただきたいのは、再休職(症状の再発)は決して「本人の意志の弱さ」や「努力不足」が原因で起きるものではない、という点です。

厚生労働省の指摘や各種の労務データを見ても、回復しきる前に焦ってフルタイム勤務に戻してしまった、職場の理解やサポート体制が不十分だった、本人に合わせた必要な環境調整(合理的配慮)が行われなかった、といった「環境側の要因」が重なって再休職に至るケースが多く見られます。「自分がダメだからだ」と一人で罪悪感を抱え込まず、あくまで「特性と環境のミスマッチが解消されていなかったため」と客観的に捉えることが、持続可能な立て直しの第一歩になります。

再休職を防ぐ予防の3本柱

復職後の安定した就労を維持し、再休職を防ぐうえでは、次の3つの要素が大きな支えとなります。これらは復職時に一度整えて終わりではなく、実際の業務をこなしながら、主治医や会社と相談して少しずつ更新(アップデート)していく性質のものです。

予防の柱 具体的な内容と目的
1. 自己理解 自分が職場のどのような場面や業務(マルチタスク、騒音、曖昧な指示など)で疲れやすいか、また、どのような工夫や配慮があれば安定して能力を発揮できるかを客観的に把握しておくこと。
2. 配慮の言語化 把握した自分の特性や必要なサポート内容を、職場の環境や上司の視点に合わせて、具体的かつ建設的に伝えられる言葉(取扱説明書)にして準備しておくこと。
3. 相談先の確保 体調に異変や「おかしいな」というサイン(不眠や気分の落ち込みなど)を感じたときに、一人で抱え込まず、早い段階ですぐに相談できる社内外の窓口や人をあらかじめ確保しておくこと。

家族・パートナーの関わり方

ご家族やパートナーなど周囲の方々の中には、「本人のためにどう声をかければいいのか」「強く励ましたほうがいいのか、それともそっとしておくべきか」と、対応に悩まれている方も少なくありません。

メンタルヘルスや発達特性の支援において大切なのは、先回りしてアドバイスや指示を与えたり、「頑張れ」と強く励ましたりするよりも、まずは本人の不安やつらい気持ちに静かに耳を傾ける(傾聴する)姿勢です。安心できる家庭環境があることが本人の精神的な安全基地となり、過度な焦りをおさえることにつながります。

厚生労働省の手引きでも、円滑な職場復帰やその後の定着には、医療機関や企業だけでなく、家族による情緒的なサポートや理解が極めて重要な役割を果たすと示されています

診断がつかないグレーゾーンのまま休職している人へ

「発達障害の傾向(特性)はあるかもしれないけれど、病院での確定診断はついていない(グレーゾーン)」という状態で休職している方も多くいらっしゃいます。「明確な病名や診断書がないから、会社に配慮を求めてはいけないのではないか」と一人で悩む必要はありません。

法的な観点(労働安全衛生法など)において、企業は従業員に対して「安全配慮義務」を負っています。これは、発達障害としての確定診断や障害者手帳の有無にかかわらず、現に何らかの心身の不調(二次障害としてのうつ状態や適応障害など)によって休職している労働者全員に対して適用されるものです。

したがって、主治医の診断書(加労を要する、就業上の制限が必要である旨の意見など)があれば、それに基づいた一般的な就業上の配慮(短時間勤務、業務量の調整、指示系統の明確化など)を会社に相談し、対応を求めることは十分に可能です。一人で「診断がないから何も言えない」と抱え込まず、まずは主治医や地域の支援機関に、自分の特性に応じた復職の進め方を相談してみてください。

グレーゾーンの方の特徴や、自己肯定感との向き合い方については、「発達障害グレーゾーンの大人|特徴10例・仕事の悩み・相談先を解説」「大人の発達障害と自己肯定感|下がる5つの背景と10の対処法」もあわせてご覧ください。

相談先・支援機関

「復職の手続きや生活リズムの立て直しについて、結局どこに相談すればいいのかわからない」と迷う方も少なくありません。復職に関わる専門の相談先・支援機関は、役割ごとにいくつかに分かれています。それぞれの特徴を知り、自分の目的(体調の相談、復職訓練、生活習慣の改善など)に合わせて適切に選択することが大切です。

役割ごとの相談先一覧

社外の主な公的機関・専門窓口の役割の違いは以下の通りです。

相談先の分類 具体的な機関・窓口 主な役割と利用するメリット
医療の専門家 主治医・精神科・心療内科 病状の回復具合を診て、医学的な治療を行う。復職の可否に関する医学的判断を担い、会社へ提出する診断書や意見書の作成を行う。
行政の専門機関 地域障害者職業センター 独立行政法人が運営。ハローワーク等と連携し、うつ病などで休職中の方を対象とした公的なリワーク支援(職場復帰プログラム)や職能評価を専門的に実施する。
行政の総合窓口 発達障害者支援センター 発達障害に特化した地域の総合相談窓口。大人の発達障害に関する生活や就労の悩みの相談を受け付け、地域の適切な専門機関へとつなぐハブ(仲介)の役割を担う。
福祉サービス 自立訓練・就労移行支援など 障害福祉サービスに基づく事業所。一定期間通いながら、日中の生活リズムの立て直し、自己理解(特性の把握)、働くための基礎体力を無理のないペースで整えていく。

それぞれの役割の違いと選び方

復職までのプロセスにおいて「今、自分が何を必要としているか」という観点で見ると、相談先を選びやすくなります。

病気の治療や医学的な就業制限の判断は「主治医」、雇用保険に加入している企業へのスムーズな職場復帰プログラム(三者連携など)を希望する場合は「地域障害者職業センター」を活用するのが一般的です。

一方で、医療や行政の枠組みだけではカバーしきれない「日中の生活リズムがどうしても崩れてしまう」「自分の特性に合わせた取扱説明書をスタッフと一緒にじっくり作りたい」といった、生活面と自己理解の土台からの立て直しには、障害福祉サービス(自立訓練など)を活用する選択肢が有効です。

関連ページ

自立訓練(生活訓練)とは|対象者・期間・プログラム・費用を解説

また、「そもそも自分が発達障害なのか、どのような支援が地域にあるのか全体像を知りたい」という場合の総合的な相談の入口としては、発達障害者支援センターなどの窓口が適しています。

一人で抱え込まず、それぞれの専門性を組み合わせて頼ることが、無理のない復職への近道となります。

大人の発達障害の相談先をもっと詳しく知りたい方は以下の関連ページより参照してください。

関連ページ

大人の発達障害の相談先6つ|公的・無料の窓口と選び方を体系整理

精神科デイケアとは

リワークとは|医療・職リハ・福祉・企業内の4種類と選び方を解説

自己理解に時間を使い、自分のペースで「次」を選ぶという選択肢

復職の時期が近づくにつれて、「すぐに元の状態に戻って働けるようにならなければ」と自分を過度に追い込み、焦ってしまう方も少なくありません。しかし、休職という時間は、これまでの働き方を見つめ直し、自分自身の特性に合った環境をじっくりと整理するための貴重な機会でもあります。障害者総合支援法に基づく福祉サービスである自立訓練(生活訓練)「エンラボカレッジ」は、その大切な充電と準備の時間を専門的に支える場の一つです。

「就職ありき」ではない設計

エンラボカレッジは、自立訓練(生活訓練)として、まず「生活する力・社会で生きる力を身につける」ことをすべての土台に置いています。そのうえで、プログラムを終えた後の進路を一つに限定することはありません。

休職中の会社への復職はもちろん、障害者手帳を取得しての障害者雇用での就労、就労継続支援(A型・B型)の活用、あるいは大学や専門学校への復学など、本人が本当に進みたい方向をスタッフと一緒に相談しながら決めていきます。「とにかく早く復職・就職すること」を急かさず、自分の心身のペースに合わせて次のステップを選べることが、エンラボカレッジの大きな特徴です。

自己理解に時間を使える設計

「就職や復職のゴールだけを急がない」からこそ、自己理解、他者理解、そして体調や感情のコントロールといった、働くうえでも生きていくうえでも基盤となる部分にしっかりと時間をかけることができます。

法律上の標準利用期間は原則2年間と定められていますが、勤務先の休職期間の上限や本人の回復状況に合わせて、数か月間の短期集中で復職に向けて活用される方もおり、過ごし方は一人ひとり異なります。最初の段階で自分の特性や不調のサインと丁寧に向き合っておくことが、復職後に職場へ必要な配慮を伝えるための大きな力(自己開示のスキル)へとつながっていきます。

自分の特徴と必要なサポートを一冊にまとめられる

エンラボカレッジでは、日々の活動を通じて、自分の特徴や得意・不得意、職場で必要なサポート内容を客観的に一冊にまとめた成果物(『自分/支え方マニュアル』)を作成することができます(自己理解を深める独自プログラム「My Lab.」を通じて作成します)。

このマニュアルは卒業後や復職後も手元に持ち歩くことができ、この記事の前半で解説した「自分の取扱説明書」としてそのまま活用できます。復職時の面談で人事や上司に具体的な配慮を伝える場面や、異動先の新しい職場で自分の得意・不得意をあらかじめ理解してもらうための強力なコミュニケーションツールになります。

生活・対人・自己理解・就労準備を無理のないペースで

生活面、対人面、自己理解、就労準備といったステップは、決して無理をせず、その日の体調に合わせたスモールステップで一つずつ整えていくことができます。目的の異なる複数のプログラムを組み合わせ、本人の状態や課題に合わせてオーダーメイドのカリキュラムを組んで取り組んでいきます。

  • 感情学:自分の感情の波やストレスの正体を知り、扱い方を学ぶ

  • コミュニケーション:職場や日常での無理のない他者との関わり方を練習する

  • My Lab.:自分の特性や強み、弱みを整理してマニュアルに落とし込む

  • アクティビティ:軽めの運動などを通じて、健康的な基礎体力を養う

  • Life Lab.:生活習慣の改善や、自立した日常生活のスキルを整える

  • ソマティック Lab.:身体の感覚に目を向け、緊張をほぐすリラクゼーションを学ぶ

  • Social Lab.:社会の仕組みや地域の資源について学び、視野を広げる

  • スキルアップ:パソコン操作や事務作業など、実際の就労に近い作業を試す

利用された方のストーリー

自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジを利用された方の中には、自身の発達障害の特性と丁寧に向き合いながら、自分に合った無理のない進路を見つけていった方々がたくさんいます。

※掲載にあたり、プライバシーへの配慮から一部表現を編集しています。

復職を現実的に目指している段階の方も、今の会社に戻るべきか別の道を歩むべきか迷っている方も、まずは無料の見学や相談を活用して、自分にとって安心できる環境かどうかを実際に確かめてみることができます。

まとめ

発達障害の特性が背景にあって休職に至ったとき、焦らずに復職へのステップを進め、再休職を防ぐ働き方を整えていくためには、以下の3つのポイントを押さえておくことが大きな支えとなります。

  • 厚生労働省の手引きに基づく「職場復帰への5ステップ」の全体像を知り、今自分がどこの段階(療養・回復・準備など)にいるのか見通しを持つこと。
  • 「同じ職場への復帰」「異動・配置転換による環境調整」「別の道(障害者雇用や転職)」という複数の選択肢から、主治医や会社と相談のうえ、自分の状態に合わせて柔軟に選ぶこと。
  • 「自己理解」「配慮の言語化」「相談先の確保」という再休職を防ぐための3本柱を意識し、自分の取扱説明書を少しずつ整えていくこと。

休職から復職にいたるまでのどの段階にいても、すべての課題を一人で抱え込む必要はありません。主治医や産業医、地域の専門的な支援機関、そしてエンラボカレッジのような障害福祉サービスなど、信頼して相談できる先を一つでも多く持っておくことが、心身の確実な立て直しと自分らしい働き方の獲得への大きな助けになります。

これからの進路や休職中の過ごし方に少しでも不安や迷いがある方は、まずは無料の見学や相談など、小さな一歩から始めてみてください。

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出典・参考

  • 厚生労働省・独立行政法人労働者健康安全機構「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」
  • 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)東京障害者職業センター「リワーク支援」
  • 国立障害者リハビリテーションセンター 発達障害情報・支援センター「発達障害者支援法」「復職支援」

監修

株式会社エンラボ 専門職チーム 精神保健福祉士・社会福祉士・臨床心理士・作業療法士・理学療法士が在籍し、福祉・医療・心理の専門的な視点から記事内容を確認しています。

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