ADHDで仕事が続かない理由|辞める前にできることと立ち止まる選択肢
更新日:2026/08/13
「また辞めてしまった」「どこへ行っても、長くは続かない気がする」――朝、職場へ向かう足が重くなり、気づけば次の退職を考えている。
ADHD(注意欠如・多動症)の特性がある方の中には、仕事や転職で悩み、自分を責めてしまう方も少なくありません。
仕事が続かない背景には、必ず理由があります。その多くは意志の弱さではなく、ご自身の特性と職場環境とのミスマッチが積み重なっただけのこと。
どの特性がどんな場面でつまずきにつながるのかが少しずつ見えてくれば、次の一歩はきっと見つかります。
本記事では、ADHDのある方が「仕事が続かない」と感じやすいパターンと背景にある特性、就労継続の工夫、そして立ち止まって体制を整える選択肢を紹介します。
ADHDで仕事が続かないのは、あなただけではない
「ADHDの特性があり、仕事がなかなか続かない」と悩んでいる方は、決して少数派ではありません。厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」によると、発達障害がある方の平均勤続年数は5年1ヶ月で、身体障害がある方の12年2ヶ月や知的障害がある方の9年1ヶ月と比べると、短い傾向が見られます。ただし、これはあくまで障害種別ごとの平均値であり、ADHDの特性がある方一人ひとりの働き方を表す数字ではありません。
ここで大切なのは、勤続年数の長さを「能力の低さ」や「努力不足」と結びつけないことです。短い期間で退職したり、転職を繰り返したりする背景には、ご自身の特性に合わない業務内容を担当していたり、職場で必要なサポートを受けられなかったりと、いくつもの事情が重なっています。つまり、ご本人の努力だけの問題ではなく、特性と職場環境とのミスマッチが起きているケースが少なくありません。
実際に、同じようにADHDの特性がある方でも、環境や配慮が整った職場では、長く安定して働き続けているケースがあります。だからこそ、仕事が続かなかったことを、ご自身の力不足として抱え込む必要はありません。まずは「今の職場の何が自分に合わなかったのか」を落ち着いて振り返ることが、次の一歩につながります。
ADHD(注意欠如・多動症)そのものの特徴や、大人になってからの気づき方については、以下のページで詳しく解説しています。
関連ページ
― ADHDとは|注意欠如・多動症の特徴・症状・診断・治療を解説
― ADHDの特徴|3タイプと大人・子どもの場面別の困りごとを解説
― 発達障害で仕事が続かないのはなぜ?原因と長く続けるための対処法
ADHDで仕事が続かない6つの代表パターン
「仕事が続かない」と一言で言っても、その背景にある困りごとや具体的な状況は人によってさまざまです。 ここでは、ADHDの特性がある方の就労支援の現場などで見られる、6つのパターンを紹介します。 ご自身の経験に当てはまる部分がないか、参考にしてください。
パターン1:ケアレスミスや忘れ物が続いてしまう
書類の誤字脱字や、メールの送信漏れが起きてしまうことがあります。また、提出期限を忘れたり、スケジュールの確認が漏れたりすることもあるかもしれません。一つひとつは小さなミスに見えても、何度も積み重なると大きな悩みになります。
ミスが続くと、職場で注意を受ける機会が増えることがあります。その結果、周囲との関係に影響が出たり、「なぜ同じミスを繰り返すのだろう」と自分を責めたりしがちです。次第に自信を失い、職場で引け目を感じるようになる方も少なくありません。
会社に行くのが怖くなり、最終的に退職を選んでしまうケースも見られます。こうした状況には、ADHDの「不注意」の特性が影響している場合があります。
パターン2:マルチタスクや業務の切り替えで戸惑ってしまう
電話で相手の話を聞きながらメモを取ることが難しく感じる場合があります。また、複数の仕事を同時並行で進めることも、ADHDの特性によっては大きな負担になることがあります。一つの作業に集中しているときに、急な仕事が入ると混乱してしまうかもしれません。
どの仕事から手をつければよいか、優先順位をつけることが難しくなる場合があるためです。その結果、元の作業に戻るまでに時間がかかったり、何をしていたか分からなくなったりすることがあります。一生懸命取り組んでいても、「気づいたら夕方なのに予定の業務が終わっていない」という状態になることもあります。
予定通りに業務を進められないことが重なると、心身ともに疲れてしまい、働き続けるのが難しくなるケースも見られます。
パターン3:過集中によって疲れがたまりやすい
ADHDの特性がある方の中には、興味のある仕事に深く没頭する「過集中」が起きやすい方がいます。時間を忘れて仕事に打ち込めるのは、素晴らしい強みでもあります。しかしその反面、自分の体や心の疲労に気づきにくくなってしまうことがあります。
知らず知らずのうちにエネルギーを使い、深く疲れてしまうケースも少なくありません。その結果、ある日突然疲れが重なって動けなくなり、出勤できなくなることがあります。「昨日まで普通に働いていたのに、朝になるとベッドから起き上がれない」という状態になる方もいます。
このような体調不良が続くと、仕事を続けるのが難しくなり、退職につながるケースも見られます。
パターン4:職場の暗黙のルールや対人関係で悩んでしまう
職場には、マニュアルに書かれていない「暗黙の了解」がよくあります。また、その場の状況に応じた、柔軟なコミュニケーションを求められる場面も少なくありません。相手の意図をすぐに読み取ることが難しく、認識の違いから周囲とのやり取りにズレが起こることがあります。
本人は一生懸命に対応していても、周囲との関係づくりに大きなエネルギーを使い、疲れてしまう方もいます。このように、業務そのものよりも対人関係への対応で悩んでしまい、職場にいづらくなってしまうケースもあります。
パターン5:感情的に退職を決めてしまうことがある
仕事や人間関係で強いストレスを感じたときに、先のことを考えるのが難しくなってしまうことがあります。十分な準備や検討をする前に、つい「今すぐ辞めたい」と退職を決めてしまうパターンです。こうした状況には、ADHDの「衝動性」の特性が判断に影響している場合があります。
また、焦って次の職場を決めてしまうことで、ミスマッチがふたたび起こることも少なくありません。入社したあとに「思っていた業務内容と違う」と気づくケースです。その結果、新しい職場でもなじめず、早くに退職を繰り返してしまうことにつながります。
パターン6:自分の特性を職場に伝えられず孤立してしまう
障害を開示せずに働く「クローズ就労」を選んでいる場合、周りの人に自分の特性を説明するのが難しいことがあります。そのため、適切な仕事の量を調整してもらったり、必要なサポートをお願いしたりできなくなってしまうケースがあります。
一人で困りごとを抱え込んでしまい、悩んでしまうことも少なくありません。また、「職場に相談することで、何か不都合なことが起きるのではないか」と不安になる方もいます。こうした不安から、誰にも頼れなくなってしまうこともあります。
すべてを一人で解決しようとした結果、心身ともに疲れ果ててしまい、退職につながる場合があります。
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― クローズ就労とオープン就労の違い|選び方とメリット・デメリット
仕事が続かない背景にあるADHDの4つの特性
これまでにご紹介した困りごとの背景には、ADHDの特性が関係している場合があります。こうした困りごとは、決してご本人の努力不足や甘えによるものではありません。脳の働き方の違いが影響していることが、医学的にも分かっています。
仕事が続かないと悩むとき、ご自身のせいにする必要はありません。まずは、長く働く上で大きな負担になりやすい主な特性について、一緒に見ていきましょう。
①不注意:注意を払い続けたり割り振ったりすることが難しい
一つの作業にずっと注意を向け続けたり、たくさんの情報の中から必要なものだけを選んだりすることが、特性によっては難しい場合があります。特に、単調な作業や興味が湧きにくい業務のときに、集中を維持するのが難しくなりがちです。そのため、書類の誤字脱字といったケアレスミスや、物の置き忘れ、スケジュールの確認漏れなどが起こりやすくなります。
ご本人は細心の注意を払って取り組んでいても、結果としてミスにつながってしまうことがあります。その結果、周りの人から「真面目にやっていないのではないか」などと誤解されてしまい、一人で深く悩んでしまう方も少なくありません。
②多動性:頭の中で考えが次々と浮かんで止まりにくい
子どものADHDで見られるような「じっと座っていられない」といった体の多動は、大人になると目立たなくなることが一般的です。一方で、大人の場合は「頭の中の多動」として現れるケースがあります。作業をしている最中に、次から次へと新しい考えやアイデアが浮かんで止まらなくなる状態です。
その結果、目の前の仕事に集中しきれなくなったり、複数の業務を同時に行うときに混乱してしまったりすることがあります。
③衝動性:深く考える前に行動してしまう
「面白そう」と感じたり、「今の職場を辞めたい」と思ったりしたときに、その場の勢いで動いてしまうことがあります。その後の見通しをゆっくり考える前に、すぐに行動へ移してしまいがちになるためです。今この瞬間の気持ちが最優先されやすいため、突発的に仕事を辞めてしまうことにつながる場合があります。
また、焦りから次の職場を急いで決めてしまうこともあるかもしれません。その結果、新しい職場の環境をよく確認できず、再びミスマッチが起こる原因になることもあります。
④実行機能の弱さ:段取りや優先順位を組み立てることが難しい
目標に向かって物事を計画的に進めるための脳の働きを「実行機能」と呼びます。ADHDの特性がある方の中には、複雑な業務を細かく分けることに難しさを感じる方がいます。「いつ、何から、どのような順番で」進めるかを組み立てるのが苦手なためです。
そのため、指示が曖昧な業務や、自分で段取りを立てる必要がある仕事では、特に戸惑う場面が増えがちです。その結果、予定通りに仕事が終わらず、一人でストレスを抱えてしまうことがあります。
これらの特性は、決してご本人の責任ではありません。まずは自分の特性や傾向を、客観的に知ることが大切です。
そのうえで、自分に合った環境を選んだり、職場に仕事の進め方を相談したりすることをおすすめします。また、自立訓練や就労移行支援といった専門の就労支援機関を活用することも、安心して長く働き続けるための選択肢となります。
ストレスが重なったときに起こりやすい心身の不調
仕事が続かないことや、周囲とうまくいかない経験から自分を責めてしまうことがあります。過度なストレスを抱えた状態が長く続くと、うつ病や適応障害といった「二次障害」につながることがあります。二次障害とは、発達障害の特性そのものではなく、周囲の環境とのミスマッチやストレスによって、後から起こる心身の不調のことです。
特にADHDの特性がある方は、過集中によって気づかないうちに多くの体力を使ってしまうことがあります。その反動で心身のバランスを崩してしまうケースも見られます。また、仕事でのミスが原因で職場で注意を受ける機会が増えると、自信を失ってしまうこともあります。
こうした状況が続くと、不安や落ち込みが大きくなるという悪循環に陥る場合があります。就労支援や医療の現場でも、ADHDの特性そのものより、こうした心身の不調をきっかけに初めて病院を受診する方が少なくありません。心身に起こる不調のサインは、個人の我慢だけで解決しようとせず、早めに対処することが大切です。
健康状態を保つためにも、以下のようなサインが見られる場合は、専門家への相談や受診を検討してみてください。
- 気分の落ち込みや強い不安感が続いている
- 寝付きが悪い、夜中に目が覚める、またはいくら寝ても眠い
- 食欲がわかない、あるいは食べすぎてしまう
- 朝、職場に向かおうとしても体が重くて動かない
こうした状態が見られる場合は、一時的な疲れや気のせいだと片付けず、心と体を休めることを優先してください。まずは精神科や心療内科などの医療機関、または身近な支援窓口に相談してみることをおすすめします。
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― うつ病と仕事|場面別サインと休職・復職・転職までの選択肢
― 適応障害(適応反応症)とは|症状・原因・治療・うつ病との違い
― 大人の発達障害の相談先6つ|公的・無料の窓口と選び方を体系整理
仕事が続かないと悩んだときに確認したい3つのこと
仕事が続かないと、自分はダメだと思い詰めてしまうことがあります。ですが、次のステップへ進む前に、一度立ち止まって確認していただきたい3つのポイントがあります。今の状況を落ち着いて振り返るための参考にしてください。
続かない原因が職場の環境にあるのではないか
仕事が続かない理由には、本人の要因だけでなく、職場の環境が影響しているケースも多くあります。例えば、過剰な業務量や、指示の曖昧さなどが挙げられます。また、適切な配慮が得られない環境や、過度なマルチタスクの要求なども環境側の要因です。
自分がすべて悪いと結論づける前に、これまでの職場でいつ、どのような業務で困ったのかを書き出してみてください。そうすることで、環境による影響を切り分けて考えることができます。周囲から、「もう少し我慢すれば慣れたのではないか」と言われる場面があるかもしれません。
しかし、個人の努力だけで乗り越えようとするのは、大きな負担がかかります。それよりも、自分の特性に合った環境へ調整したり変更したりする方が、安定して働き続けることにつながる場合が多く見られます。
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いま自分を整える時間を取れる状況か
離職や転職を短い期間で繰り返している方もいるかと思います。また、すでに心身に大きな疲れを感じている方もいるかもしれません。その場合は、すぐに次の仕事を探すのではなく、意識的に休む時間を取ることが大切です。
結果的に、それが安定して働き続けるための近道になるケースもあります。焦って次の就職先を決めるのではなく、少し立ち止まる期間を視野に入れてみてください。例えば、半年から2年といった期間をかけて、自分を整える方法もあります。
福祉サービスなどを活用しながら、自分の特性への理解を深めたり、生活リズムを整えたりするのも選択肢の一つです。
信頼できる相談先につながっているか
周囲に相談せず一人だけで退職や転職を決めてしまうと、焦りから自分に合わない職場を選んでしまうことがあります。以下のような専門機関や相談先と話をすることで、自分の状況や選べる道を落ち着いて見直しやすくなります。
- 主治医や精神科・心療内科などのかかりつけ医療機関
- 家族や自身の特性を理解してくれている身近な人
- ハローワーク(専門援助窓口)や発達障害者支援センター
- 就労移行支援や自立訓練(生活訓練)などの障害福祉サービス事業所
福祉サービスなどの利用にあたっては、お住まいの自治体による決定や一定の要件が必要となる場合があります。まずは各窓口へ相談し、どのようなサポートが受けられるか確認することをおすすめします。
今の仕事を無理なく続けるための5つのステップ
今の仕事をなんとか続けたい、あるいは、すぐに辞めるべきではないと思っている方は、まずは環境を整えていく方法があります。数ヶ月ほどの短い期間を視野に入れながら、次の5つのステップに沿って少しずつ進めてみましょう。
ステップ1:困りごとを具体的に書き出す
つらいと感じる内容が漠然としていると、どのように対応すればよいか迷ってしまうことがあります。具体的に「いつ、どの場面で、どのような困りごとがあるか」を書き出してみるのがおすすめです。紙やスマートフォンのメモ機能などに書き出すことで、解決の糸口が見えてきます。
例えば、以下のように少し細かく分けて書き出してみましょう。
- 会議のメモがうまく取れない
- メールの返信を忘れてしまう
- 14時ごろになると集中が切れてしまう
- 上司の指示が曖昧で何をすればいいか分からない
このように状況を細かく分けることで、ご自身の特性の傾向に気づきやすくなります。
ステップ2:使えるツールや仕組みを導入する
書き出した困りごとに対して、身近なツールや仕組みでカバーできるものがないか検討してみましょう。特性に合わせた具体的な対策として、以下のような工夫があります。
- ミスや忘れ物対策:チェックリストを作ったり、スマホのリマインダーアプリを活用したりする
- 集中力を保つ対策:タイマーを使って25分作業して5分休むなど、時間を細かく区切る
- マルチタスク対策:朝一番に「今日やる3つのこと」だけを書き出し、優先順位を絞る
- 過集中への対策:作業の区切りでアラームを鳴らし、意識的に休憩を挟むようにする
- 体調管理の対策:毎日の起床と就寝の時刻を固定して、生活のリズムを作る
まずはできそうなものを一つ選んで、試してみてはいかがでしょうか。
ステップ3:医療機関・専門家に相談する
ADHDの診断を受けている方は、まずは主治医に仕事が続かない状況を相談してみてください。まだ診断を受けていない方は、精神科や心療内科で専門的なアドバイスを受けることも一つの選択肢です。環境の調整や心理面のサポート、必要に応じた治療など、複数のアプローチを一緒に考えていくことができます。
自分だけで抱え込まず、専門家に相談することで安心感につながる場合があります。
ステップ4:職場に配慮を求める
障害を開示して働く「オープン就労」などを選べる環境であれば、必要なサポートを具体的に伝えることで、仕事が続けやすくなる場合があります。法律の改正により、企業には「合理的配慮」を提供することが義務づけられました。これは、会社側に過度な負担がかからない範囲で、障害のある方が働きやすくなるような調整やサポートを行う仕組みのことです。
会社にサポートをお願いするときは、ただ「配慮してほしい」と伝えるよりも、困りごととセットで具体的にお願いすると伝わりやすくなります。伝え方の例としては、以下のような表現があります。
- 指示は口頭だけでなく、メールやチャットでも共有していただけると助かります
- 複数の作業は同時にではなく、一つずつ進めさせていただけるとありがたいです
- 急なスケジュールの変更があるときは、できるだけ前日までにお知らせください
- 電話の少ない席や、静かな環境にしていただけると集中しやすくなります
このように具体的に伝えることで、職場側もどのような対応をすればよいか検討しやすくなります。なお、障害を開示して働くか、開示せずに働くかについては、それぞれのメリットとデメリットをよく確認して選ぶことが大切です。
関連ページ
― クローズ就労とオープン就労の違い|選び方とメリット・デメリット
ステップ5:辞める前に休職・有給でリセットする
心身のバランスが崩れそうになっているときは、無理をして仕事を続けず、まずは有給休暇を使ったり、医師の診断書をもらって休職したりする選択肢もあります。「今の職場を辞めたい」と感じたとき、退職だけが解決策ではありません。まずは一呼吸置いて、退職以外の手段が使えないか検討してみるのも一つの方法です。例えば、以下のような選択肢が挙げられます。
- 部署異動を願い出る
- 時短勤務に変更してもらう
- 職場に新しい配慮を申請する
- 専門の支援機関に相談する
- 休職して心と体を休める
このように、会社を辞める前にできる工夫や仕組みはいくつか存在します。これまでの選択肢を先に検討してみることで、環境を変えながら今の職場で働き続けられるケースもあります。
関連ページ
― 発達障害で休職した方へ|復職への5ステップと再休職を防ぐ働き方
いったん仕事を離れて自分を整えるための中長期の選択肢
短期的な工夫だけでは仕事を続けることが難しい場合や、何度も転職を繰り返してしまっている場合は、いったん仕事から離れて自分を整える方法があります。半年から2年ほどの期間をかけて、じっくりと次のステップへ進むための代表的な3つの選択肢を紹介します。
リワーク(復職支援)
すでに休職をしていて、元の職場への復帰を目指している方には、医療機関やリワーク施設で行われている復職支援プログラムがあります。ここでは、生活リズムを整えたり、仕事でのストレスへの対処法を学んだり、職場復帰に向けたシミュレーションを行ったりします。
休職中の過ごし方や復職へのステップについて詳しく知りたい方は、リワークの特徴やメリットをまとめた記事も参考にしてください。
関連ページ
― リワークとは|医療・職リハ・福祉・企業内の4種類と選び方を解説
就労移行支援
新しく仕事を探したい方や、就職に向けたスキルを高めたい方には、就労移行支援事業所の活用が選択肢になります。就労移行支援は、原則として2年間の利用期間が設けられています。この期間の中で、例えば以下のようなサポートを受けることができます。
- 日々の体調管理の方法を学ぶ
- 実際の業務を想定した訓練や企業での実習を受ける
- 履歴書の添削や面接練習などの就職活動を支えてもらう
ご自身のペースに合わせて、じっくりと就職への準備を進められるのが特徴です。対象となる方や、具体的な支援内容について詳しく知りたい方は、就労移行支援について解説した記事をご覧ください。
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― 就労移行支援とは|対象者・利用期間・費用・受けられる支援を解説
自立訓練(生活訓練)
すぐに就職を目指すのではなく、まずは生活の基盤を整えたいという方に向けた選択肢が、自立訓練(生活訓練)です。就労移行支援とは異なり、最初に自分自身の特性を理解し、毎日の生活リズムを整えることに時間を使える点が特徴です。自立訓練と就労移行支援には、以下のような違いがあります。
【自立訓練(生活訓練)】
- 主な目的:生活する力や社会で生きる力を身につける
- 利用期間:原則2年
- 主な内容:自己理解、生活リズムの安定、対人スキルの向上、就労準備
- 向いている方:いったん立ち止まって自分を整えたい方
【就労移行支援】
- 主な目的:一般就労をして安定して働く
- 利用期間:原則2年
- 主な内容:具体的な職業訓練、企業実習、就職活動のサポート
- 向いている方:体調が安定しており、すぐに就職活動を始めたい方
自立訓練のあとの進路は、就職だけでなく、復職や復学、他の福祉サービスの利用など、多様な選択肢があります。仕事が続かないという悩みを抱えている場合、焦ってすぐに就職活動を始めると、同じ困りごとが起こってしまうことがあります。
まずは自立訓練などを活用し、半年から2年の時間をかけて、自分の特性や必要な配慮を確かめていくことも大切です。そのうえで自分に合った進路を選ぶことが、安定して働き続けるための近道になります。自立訓練のプログラム内容や、就労移行支援との違いについては、それぞれの解説記事も合わせて参考にしてください。
関連ページ
― 自立訓練と就労移行支援の違い|比較表で対象・期間・選び方を解説
「続かない」状態から自立訓練を活用した方の事例
※以下は自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジを利用された方の支援事例です(医学的な症例研究ではありません)。仕事が長続きしないという悩みを抱えながら、自立訓練を活用してどのようにステップを踏んでいかれたのか、3つの具体的な事例を見ていきましょう。
事例1:【ADHD・年代非公開】就労移行支援後も仕事が続かなかったケース
利用前の状況:
就労移行支援を経て就職したものの、ケアレスミスや段取りの難しさが重なり、また仕事が続かなくなってしまいました。「自分は何をやってもダメだ」と感じ、次の一歩を踏み出せずにいた状態でした。
エンラボでの取り組み:
自立訓練で、まずは自分の特性と生活リズムを見える化することから始めました。感情学やMy Lab.を通じて、つまずきの起きる場面と、自分に合う工夫を一つずつ確認していきました。
その後の一歩:
自分に必要な配慮を言葉にできるようになり、支援を受けながら次の働き方へと進んでいきました。
関連ページ
―就労移行支援後に仕事が続かず…ADHDの私が自立訓練で感情コントロールを身につけ、安定就職を実現【エンラボストーリー】
事例2:【うつ・ADHD・40代】消耗して働けなくなっていたケース
利用前の状況:
うつとADHDの特性が重なり、心身ともに消耗して働けない状態が続いていました。40代という年齢から、再スタートへの不安も大きい状況でした。
エンラボでの取り組み:
生活リズムを整えることを土台に、自分の特性と必要な配慮を少しずつ言語化していきました。焦らず段階を踏むことで、働くための土台を整えていきました。
その後の一歩:
土台が整ったことで、安定した就労へと進んでいきました。
事例3:【発達障害(ADHD)・20代】就職準備を進めたケース
利用前の状況:
20代で、これからの働き方に不安を抱えていました。自分の特性をどう扱えばよいか分からず、就職への一歩を踏み出しにくい状態でした。
エンラボでの取り組み:
自立訓練で自己理解を深めながら、生活リズムと対人スキルを少しずつ整えていきました。スキルアップのプログラムを通じて、働く心構えと必要な準備を進めていきました。
その後の一歩:
自分に合うペースで就職準備を整え、次のステップへと進んでいきました。
ADHDで仕事が続かないことに関するよくある質問
Q1. ADHDだと、仕事は何年くらいで辞めてしまうものですか?
厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」では、発達障害のある方の平均勤続年数は5年1ヶ月となっています。これは身体障害がある方の12年2ヶ月や、知的障害がある方の9年1ヶ月と比べると、短い傾向にあります。ただし、これはあくまで全体の平均値です。
大切なのは、「何年で辞めてしまったか」という期間の長さだけではありません。「自分に合う環境や、必要な配慮のもとで働けているか」に目を向けることです。ご自身の特性に合った環境を見つけることで、同じように悩みながらも、長く安定して働き続けている方はたくさんいます。
Q2. 何度も転職を繰り返しています。転職回数は不利になりますか?
これまでの転職回数を気にされる方は、決して少なくありません。採用の面接などで、これまでの経歴や転職の回数について確認されることはあります。しかし、回数そのものよりも大切になることが別にあります。
具体的には、「なぜ前の職場を辞めたのか」「次はどのような基準で職場を選ぶのか」を説明できるかどうかがポイントになります。これからは、ただ転職の回数を減らすことを目標にする必要はありません。それよりも、「次に自分が長く続けられる環境を選べているか」に目を向けてみませんか。
ご自身の特性に合う基準をしっかり持つことで、これからの仕事選びがぶれにくくなっていきます。
Q3. 「辞めたい」です。辞める前にできることはありますか?
職場を「辞めたい」と感じたとき、退職だけが解決策ではありません。まずは一呼吸置いて、退職以外の手段が使えないか検討してみるのも一つの方法です。例えば、以下のような選択肢が挙げられます。
- 別の部署への異動を願い出る
- 時短勤務に変更してもらう
- 職場に新しいサポート(配慮)を申請する
- 専門の支援機関に相談する
- 休職をして心と体を休める
特に、心と体がとても疲れているときは、先のことを冷静に考えるのが難しくなりがちです。その場の勢いで決めてしまう前に、まずは主治医や身近な相談先と一度話をしてみることをおすすめします。
Q4. ADHDに向いている仕事を知りたいです。
「どんな職種が自分に向いているか」を具体的に知りたい方は、以下の関連記事を参考にしてみてください。向いている職種の傾向や、これからの仕事の選び方を詳しく解説しています。
関連ページ
―ADHDに向いている仕事10選|続かない理由と対策・働き方の工夫
本記事では、具体的な職種を選ぶ前に、まず「なぜ今の仕事が続かないのか」を振り返ることをおすすめしています。そのうえで、長く働き続けるための土台づくりを中心にご紹介しました。どちらの記事も合わせて読んでいただくことで、ご自身に合ったこれからの仕事選びがより進めやすくなります。
Q5. うつっぽくなってきました。続けるべきか休むべきか分かりません。
心や体に不調が出てきているときは、本当につらい状態だと思います。気分の落ち込みや不眠、朝に体が重くて動かないといった状態が続いているときは、無理を重ねてはいけないサインです。このようなときは、ご自身だけで「続けるべきか、休むべきか」を判断しようとせず、まずは医療機関に相談してください。
仕事がうまくいかないストレスなどが原因で、うつ病や適応障害などの「二次障害」につながっている可能性もあるためです。まずは専門の先生に今の状態をしっかり診てもらい、客観的なアドバイスをもらうことが大切です。お薬の力を借りたり、診断書をもらってお休みを取ったりすることで、心と体を守るための最善の方法を一緒に見つけていくことができます。
Q6. グレーゾーン・診断なしでも支援は受けられますか?
はっきりと診断が出ていない方や、いわゆる「グレーゾーン」と呼ばれる段階で悩まれている方もたくさんいらっしゃいます。結論からお伝えすると、診断書がなくても支援や福祉サービスを受けられる可能性は十分にあります。自立訓練(生活訓練)などの福祉サービスを利用するためには、自治体が発行する「受給者証(障害福祉サービス受給者証)」が必要です。
この受給者証を発行してもらう際、医師の診断書が必須となるかどうかは、実はお住まいの自治体によって判断や運用が異なります。そのため、正式な診断がまだ下りていない状態であっても、日々の生活や仕事での困りごとを伝えることで、サービスを利用できるケースが少なくありません。
まずは一人で悩まずに、お住まいの市区町村にある福祉窓口や、利用を検討してみたい支援事業所へ気軽に相談してみてください。
関連ページ
― 発達障害グレーゾーンの大人|特徴10例・仕事の悩み・相談先を解説
― 発達障害グレーゾーンと障害者手帳|申請条件と取れない場合の支援
Q7. 何度も転職していて、もう手遅れではないですか?
「もう手遅れかもしれない」と、これまでのキャリアを振り返って不安に思う必要はまったくありません。何歳からであっても、決して手遅れということはありませんので、まずは安心してください。実際に、30代や40代になってから自立訓練(生活訓練)などの福祉サービスを活用し、ご自身の特性に合った安定した働き方を見つけられた方はたくさんいらっしゃいます。
大切なのは、これまでの年齢や過去の転職回数に縛られてしまうことではありません。「これからの未来に向けて、どのように自分を整えていくか」という、前向きな考え方へと少しずつ変えていくことです。過去の回数を悔やむよりも、これから長く無理なく続けられる土台を、少しずつ整えていきましょう。
「ADHDで仕事が続かない」のまとめ
ADHDで仕事が続かない背景には、ご自身の特性によるものと、職場環境によるものの双方が絡み合っています。「続かない自分」を責めてしまう必要はありません。まずは「いつ・どの場面で・何につまずくか」を書き出して、自分に合うやり方や環境を見つけていくことが、次の一歩に繋がります。
身近な工夫から始めたい方は、ご紹介した5つのステップを参考に、職場環境や仕組みを整えてみてください。すでに心身が疲れてしまっている方や、「もう同じ失敗を繰り返したくない」と感じている方は、いったん立ち止まって自分を整える時間を取ることが大切です。
そのための選択肢として、まずは自立訓練(生活訓練)の見学から検討してみてはいかがでしょうか。エンラボカレッジでは、随時、無料の見学やご相談を受け付けています。一人で抱え込まずに、まずはあなたのお話を私たちに聞かせてくださいね。