発達障害で仕事が続かないのはなぜ?原因と長く続けるための対処法
更新日:2026/09/10
「またこの仕事も続かなかった」
「何度転職しても、長く働き続けられない」——
発達障害(ADHD・ASD・LDなど)の特性とともに働く方の中には、こうした思いを繰り返し、辞めたあとの自分を責めてしまう方が少なくありません。
ただ、発達障害で仕事が続かない背景の多くは特性と職場環境のミスマッチです。原因が見えないまま無理を重ねると、うつや適応障害といった二次障害につながることもあります。
本記事では、仕事が続かない7つの代表パターンとADHD・ASD・LD別の原因、「続ける・辞める」を迷ったときに確認したい3つの視点、今の職場で続けるための工夫(5ステップ)などを紹介します。
発達障害で仕事が続かないのは意志の弱さではない
「自分の頑張りが足りないせいだ」と感じてしまう方もいるかもしれません。ですが、仕事が続かない背景は、本人の努力だけの問題ではないことがほとんどです。
同じ特性があっても、合わない環境では出社前に体が動かなくなったり、ミスが続いて数ヶ月で退職に至ったりすることがあります。一方、業務内容や配慮が合う職場では、何年も働き続けているケースがあります。
これは実感の話だけではありません。ハローワークの紹介で就職した障害のある方を追跡した公的調査では、就職の仕方によって1年後の定着率に次の差が出ています。
| 就職の経路 | 就職後1年時点の定着率 |
|---|---|
| 障害者求人 | 70.4% |
| 一般求人・障害を開示 | 49.9% |
| 一般求人・障害を非開示 | 30.8% |
同じ「就職」でも、配慮を前提にできるかどうかで定着率は2倍以上変わります。続くかどうかを左右しているのは、本人の特性と職場環境の組み合わせです。なお、一般企業に就職した発達障害のある方(242人)の定着率は、就職後3か月時点で84.7%、1年時点で71.5%でした。
(出典:障害者職業総合センター「障害者の就業状況等に関する調査研究」調査研究報告書No.137/2017年公表)
※上表は身体・知的・精神・発達を合算した数値です。また同調査の発達障害の対象は、診断または指摘がある方に限られます。
同じ調査では、就職後3か月未満で離職した方の理由として「労働条件があわない」(19.1%)「業務遂行上の課題あり」(18.1%)が上位に挙がっています。早期の離職は、頑張りの量ではなく、条件や業務内容の合わなさが引き金になっているということです。
発達障害(ADHD・ASD・LD)とは
発達障害は、脳機能の発達のしかたに偏りがあることで、注意の調整・対人コミュニケーション・学習などの面に特性が現れる状態の総称です。幼児期から行動面や情緒面に特徴が見られることが多いとされています。
(出典:厚生労働省「こころの情報サイト」用語解説)
医学的な診断基準(DSM-5以降)では、ASD(自閉スペクトラム症)・ADHD(注意欠如・多動症)・SLD(限局性学習症)などに分類されます(本記事では、検索や日常会話で使われることの多い略称にあわせ、SLDをLDと表記します)。
働く場面では、このうちASD・ADHD・LDの3つが、それぞれ次のような困りごととして表れます。
| 特性 | 働く場面で出やすい困りごと |
|---|---|
| ADHD(注意欠如・多動症) 不注意・多動性・衝動性 |
提出物の抜け漏れ、優先順位がつけられず締切が重なる |
| ASD(自閉スペクトラム症) 対人コミュニケーション、こだわり、感覚過敏 |
曖昧な指示の解釈、急な予定変更、職場の音や照明による疲れ |
| LD(学習障害/限局性学習症) 読む・書く・計算など特定の領域 |
長文マニュアルの読解、口頭指示のメモ、伝票の数値処理 |
なお、大人になってから仕事上のつまずきや周囲との摩擦をきっかけに、自分の特性に気づく方も少なくないとされています。
(出典:政府広報オンライン)
「診断名は聞いたけれど、結局どういう特性なのか整理できていない」「家族としてどう接すればいいのか分からない」——こうした疑問については、発達障害そのものの定義・種類・接し方をまとめた関連ページで詳しく紹介しています。
関連ページ
― 大人の発達障害とは|特徴・原因・診断・相談先までやさしく解説
発達障害のある方の勤続年数は能力の問題ではない
「自分はすぐ辞めてしまう」と感じている方は、決して特別な存在ではありません。厚生労働省「令和5年度(2023年度)障害者雇用実態調査」では、発達障害のある方の平均勤続年数は5年1ヶ月です。身体障害のある方(12年2ヶ月)・知的障害のある方(9年1ヶ月)と比べると短いものの、精神障害のある方(5年3ヶ月)とはほぼ同じ水準です。しかしあくまでもこれは平均値であり、職場環境で幅が大きくなるので注意が必要です。
(出典:厚生労働省「令和5年度(2023年度)障害者雇用実態調査結果」)
| 障害種別 | 平均勤続年数 |
|---|---|
| 身体障害 | 12年2ヶ月 |
| 知的障害 | 9年1ヶ月 |
| 精神障害 | 5年3ヶ月 |
| 発達障害 | 5年1ヶ月 |
ここで大切なのは、勤続年数の短さを「能力の低さ」と結びつけないことです。離職や転職が続く背景には、特性に合わない仕事を選ばざるを得なかった、配慮を求められなかった、といった環境側の要因が重なっている場合があります。まずはご自身(ご家族)を責める前に、「いつ・どの場面で・何につまずいたか」を書き出すところから始めてみてください。
関連ページ
―発達障害で仕事がうまくいかない|原因と対処法10選・続けるコツ
発達障害で仕事が続かない7つの代表パターン
「続かない」と一言で言っても、その背景は人によってさまざまです。ここでは、就労支援の現場で相談として挙がることの多い7つのパターンを整理しました。ご自身(ご家族)がどれに当てはまるか、複数重なっていないかを確認してみてください。
【7つの退職原因パターン】
- パターン1(ADHD傾向): ケアレスミスや忘れ物が積み重なり、叱責が続いて心が折れる
- パターン2(ASD傾向): 職場の暗黙のルールや空気が読めず、対人関係に疲弊する
- パターン3(LD傾向): 読み書きや計算に時間がかかり、業務スピードが追いつかない
- パターン4(共通): 電話対応などのマルチタスクや突然の割り込みに対応できない
- パターン5(過集中): 限界まで没頭して働き詰めた結果、ある日突然動けなくなる
- パターン6(生活リズム): 時間管理の難しさから生活習慣が崩れ、欠勤が増えてしまう
- パターン7(特性の秘匿): 職場に特性を相談できず配慮を得られないまま孤立する
※各パターンに添えた「(ADHD傾向)」などの表記は、そのつまずきの背景として関連が指摘されやすい特性を示したもので、診断名を判断するためのものではありません。特性の現れ方には個人差があり、複数の特性が重なる方もいます。診断や治療については医療機関にご相談ください。
パターン1:ミスや忘れ物が重なり叱責が続く(ADHD傾向)
書類の誤字、メールの送信忘れ、提出期限のうっかり——一つひとつは小さなことでも、積み重なると周囲からの信頼を失っていく場面があります。叱責されるたびに自己評価が下がり、出社そのものがつらくなって退職に至るケースがあります。
パターン2:暗黙のルールが読みにくく対人関係でつまずく(ASD傾向)
職場には、言葉にされないルール(先輩より先に帰らない、雑談の輪に入る、提案のタイミングを計る など)が数多くあります。ASD特性のある方は、これらを読み取りにくいことから、悪気なく場の空気を乱してしまい、人間関係に疲弊する場合があります。
パターン3:読み書きや計算に時間がかかる(LD傾向)
文字や数字の処理に特性のある方は、書類仕事・伝票処理・計算業務・長文メールの読解などで、人並みの速度を出すのに大きな労力がかかることがあります。表面的には「仕事が遅い」と見られやすく、評価が下がって続けるモチベーションを失ってしまう方もいます。
パターン4:マルチタスクで仕事が滞る(ADHD・ASD共通)
電話を取りながらメモを取る、複数の案件を同時並行で進める——こうした切り替えは、注意の配分や段取りを組み立てる力(実行機能)に偏りがあると、強い負荷になることがあります。一つの作業に集中している時に別件を割り込まれると、もとの作業に戻れなくなる場面もあります。
パターン5:過集中の反動で突然動けなくなる
興味のある作業に深く没頭してしまう状態は、しばしば「過集中」と呼ばれます。ただし過集中は診断基準(DSM-5)に定められた項目ではなく、臨床や当事者の体験として語られてきた表現です。寝食を忘れて打ち込める反面、自分の疲労に気づきにくく、ある日突然エネルギーが切れて出勤できなくなることがあります。
パターン6:生活リズムが崩れて欠勤が増える
夜更かし・寝不足・偏った食事・運動不足が積み重なり、体調を崩して欠勤が増えていくパターンです。ADHDの診断基準(DSM-5)には「課題や活動を順序立てることが難しい」という項目が含まれており、時間の見通しを立てること自体が課題になる場合があります。生活リズムを保つことが大きな負担になる方もいます。
パターン7:自分の特性を職場に伝えられず孤立する
オープン就労(障害を開示して働く)ではなくクローズ就労(開示せずに働く)を選んだ場合、配慮を求めにくく、特性に合わない業務を抱えたまま、心身がすり減っていくことがあります。「言ったほうがいいのか」「言ったら不利益があるのか」と悩み続けた結果、辞めるしか選択肢が残らなくなる場合もあります。
関連ページ
―クローズ就労とオープン就労の違い|選び方とメリット・デメリット
ADHD・ASD・LD|特性別の「続かない原因」
7つのパターンの背景には、ADHD・ASD・LDそれぞれの特性が関わっています。特性は「個人の努力不足」ではなく、脳の働き方の違いから来るものです。
「なぜ続かないのか」をもう少し具体的にみると、多くは次のような特性が背景にあると考えられています。指示や段取りを一時的に覚えておく力(ワーキングメモリ)、優先順位づけや時間配分を組み立てる力(実行機能)、音や光などの刺激の受け取り方(感覚特性)——こうした部分に得意・不得意の偏りがあると、同じ業務でも人より負荷が大きくなり、ミスや疲れやすさにつながりやすくなる場合があります。ここでは特性ごとに、続かなさにつながりやすいポイントを整理します。
ADHD(注意欠如・多動症)の特性が影響する場合
- 不注意 注意の持続・配分が苦手で、ケアレスミスや忘れ物につながりやすい。
- 多動性 大人では「思考の多動」として、考えが次々に移り集中が続きにくい形で現れる場合がある。
- 衝動性 考える前に動いてしまいやすく、勢いでの退職・転職判断につながることもある。
- 実行機能の弱さ 段取り・優先順位づけ・時間配分を組み立てにくい。
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―厚生労働省 「発達障害の特性(代表例)」
―ADHDとは|注意欠如・多動症の特徴・症状・診断・治療を解説
―ADHDの特徴|3タイプと大人・子どもの場面別の困りごとを解説
―ADHDに向いている仕事10選|続かない理由と対策・働き方の工夫
ASD(自閉スペクトラム症)の特性が影響する場合
- 対人コミュニケーション 非言語的なサインや暗黙のルールの読み取りが苦手な場合がある。
- こだわり・興味の偏り 自分のやり方を変えづらく、柔軟さが求められる場面で負担が大きくなりやすい。
- 感覚過敏 音・光・温度・匂いなどの刺激で疲れやすい。
- 想定外への適応 急な予定変更や割り込み業務で、大きく調子を崩すことがある。
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―ASD(自閉スペクトラム症)のある方に向いている仕事を紹介します。
LD(学習障害/限局性学習症)の特性が影響する場合
- 読字(ディスレクシア) 長文の読解や、文章の素早い目視確認に時間がかかる。
- 書字(ディスグラフィア) 手書きやタイピングの速度・正確性に影響が出る。
- 算数障害(ディスカリキュリア) 数の処理・計算・表の読み取りが負担になりやすい。
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※これらは「治すべき欠陥」ではなく「自分の傾向」です。傾向を理解したうえで、自分に合った環境を選ぶ・配慮を求める・支援を活用する、というアプローチが現実的です。複数の特性を併せもつ方もいます。
続かない状態から、うつ・適応障害になることも
「続かない→自分を責める→さらに疲れる」という状態が長く続くと、うつ病や適応障害といった二次障害につながってしまう場合があります。発達障害そのものよりも、こうした二次障害のつらさで動けなくなり、受診のきっかけになる方も少なくありません。
二次障害は、我慢で乗り越えるものではありません。気分の落ち込みが続く、眠れない・眠りすぎる、食欲が大きく変わる、朝になると体が動かない——こうしたサインがあるときは、精神科・心療内科などの医療機関に早めに相談してください。自己判断で「気のせい」と片づけず、専門家の評価を受けることが大切です。
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今の職場で仕事を続けるための5ステップ
「今の仕事をなんとか続けたい」「もう少しだけ様子を見たい」という方に向けて、環境を整えるための5つのステップを紹介します。順番どおりに全部やる必要はありません。読んでみて「これならできそう」と思ったものから試してみてください。
ステップ1:困りごとを書き出す
「何がつらいか」を漠然と感じているだけでは対処できません。具体的に「いつ・どの場面で・何が起きるか」を紙やスマホに書き出すことで、対処の糸口が見えてきます。たとえば「会議のメモが取れない」「メールの返信を忘れる」「14時ごろに集中が切れる」「上司の指示が抽象的で何をすればいいか分からない」というくらい、場面と出来事がセットで分かる書き方にしておくと、あとで対策を考えやすくなります。
ステップ2:使えるツール・しくみを導入する
書き出した困りごとに、ツールやしくみで補えるものは補います。
忘れ物・ミス対策 チェックリスト、リマインダーアプリ、提出前のダブルチェック手順を決める。
集中切れ対策 タイマーを使い、25分作業+5分休憩のように区切る(ポモドーロ)。※特性によって集中できる時間は異なるため、自分が無理なく続けられる長さに調整して構いません。
マルチタスク対策 朝に「今日やる3つ」だけ書き出す、割り込みを受けない時間帯をつくる。
読み書きの負担軽減 音声入力・読み上げソフト・文字の拡大表示を活用する。
体調管理 起床・就寝の時刻を固定し、平日の昼食を決め打ちにする。
ステップ3:医療機関・専門家に相談する
発達障害の診断を受けている方は、まず主治医に「仕事が続かない」状況を相談してみてください。診断を受けていない方は、精神科・心療内科で評価を受けることも一つの選択肢です。環境調整・心理面のサポート・必要に応じた治療など、複数の方法があります。自己判断で抱え込まず、専門家に相談することが大切です。
ステップ4:職場に配慮を求める(オープン就労の検討)
障害を開示できる環境であれば、必要な配慮を具体的に伝えることで続けやすくなる場合があります。2024年4月1日に施行された改正障害者差別解消法により、民間事業者にも、過重な負担とならない範囲での合理的配慮の提供が義務づけられています。なお、合理的配慮は障害者手帳の有無を問わず、本人の意思表明があれば検討の対象となります。
(出典:内閣府「障害者差別解消法(改正法・2024年4月施行)」)
配慮を求めるときは、「配慮してほしい」と漠然と伝えるより、困りごととセットで具体的にお願いすると伝わりやすくなります。
- 指示は口頭ではなく、文書やチャットでお願いしたいです
- 複数の作業は同時にではなく、一つずつ振っていただけると助かります
- 急な変更があるときは、できれば前日までに教えてほしいです
- 電話の少ない席や、静かな環境だと集中しやすいです
このように言い換えておくと、職場側も対応を検討しやすくなります。
ステップ5:辞める前に休職・有給でリセットする
崩れかけている方は、無理を続けず、診断書を取って休職する選択肢もあります。「辞めたい」と感じたとき、退職だけが選択肢ではありません。部署異動・時短勤務・配慮の申請・支援機関への相談・休職といった、退職以外の手段を先に検討してみてください。
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「続ける」か「辞める」か迷ったときに確認したい4つのこと
「もう辞めたい」と感じたときに、いったん整理しておきたいことが4つあります。どれも「今すぐ辞めるべき/続けるべき」を決めるためのものではなく、判断材料をそろえるためのものです。
環境を変える余地はまだ残っていないか
配慮を求める、業務の一部を調整してもらう、部署異動や勤務時間の見直しを相談する——こうした「環境側でできること」をまだ試していない場合は、辞める前に一度試してみる価値があります。逆に、すでに配慮を求めても取り合ってもらえなかった場合は、環境を変えること(転職・休職・支援機関の利用)を前向きに検討してよい状況かもしれません。
心身に危険なサインが出ていないか
日曜の夜になると気分が重い、出社前に動悸や吐き気がある、眠れない・眠りすぎる、朝になると体が動かない——こうしたサインが続いているときは、「続けるか辞めるか」よりも先に、心身を守ることが最優先です。まずは医療機関に相談し、必要に応じて休職も含めて考えてみてください。無理を続けると、うつ病や適応障害などの二次障害につながってしまう場合があります。
特性と業務内容はどのくらいミスマッチか
「マルチタスクが常に求められる」「業務の大半が電話対応」「曖昧な指示が多い」——このように、業務の中心が自分の苦手な特性と真正面からぶつかっている場合は、同じ職種・環境で続けること自体が負担の原因になっていることがあります。工夫や配慮で補える程度なのか、それとも職種・環境ごと見直したほうがよいのかを、書き出して切り分けてみてください。
ひとりで決めようとしていないか
ひとり(ご家族だけ)で抱え込んで決めてしまうと、勢いに任せた選択になりやすくなります。主治医やかかりつけの医療機関、家族や信頼できる人、ハローワーク・発達障害者支援センター、就労移行支援や自立訓練などの福祉サービス——複数の相談先と並行して話すことで、選択肢を落ち着いて整理しやすくなります。「まだ相談していない先がある」と気づいた段階なら、続ける・辞めるの結論を出すのは、そのあとでも遅くありません。
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―大人の発達障害の相談先6つ|公的・無料の窓口と選び方を体系整理
休む・辞めるときに使える3つの支援制度
5ステップを試しても難しい、あるいは「もう何度目かの転職になる」と感じている方へ。転職を繰り返している方や心身が疲れきっている方は、すぐに次を決めるのではなく、いったん整える時間を取ることが結果的に近道になる場合があります。仕事を休む・辞めるとき、ひとりで次を探さなくてもいいように、公的な支援制度が用意されています。ここでは代表的な3つを、どんな状況の方に向いているかとあわせて紹介します。
休職中で復職を目指す場合:リワーク(復職支援)
すでに休職中で、同じ職場への復職を目指す方には、医療機関やリワーク施設での復職支援プログラムがあります。生活リズムの再構築、ストレスへの対処、職場復帰のシミュレーションなどに取り組みます。
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―リワークとは|医療・職リハ・福祉・企業内の4種類と選び方を解説
次の仕事を探したい場合:就労移行支援
「次の仕事を探したい」「就職に向けたスキルを高めたい」という方は、就労移行支援事業所が選択肢になります。原則2年の利用期間で、職業訓練・実習・就職活動のサポートを受けられます。
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―労移行支援とは|対象者・利用期間・費用・受けられる支援を解説
まず自分を整えたい場合:自立訓練(生活訓練)
自立訓練(生活訓練)とは、障害者総合支援法に基づく訓練等給付のひとつで、生活リズムの立て直しや家事・金銭管理といった生活スキル、そして自分の特性理解を、原則2年以内(自治体や状況により延長が認められる場合あり)の期間で身につけていく福祉サービスです。就労移行支援のように「就職」を直接のゴールとするのではなく、まず「自己理解と生活基盤づくり」に時間を使えるよう設計されている点が特徴です。
「発達障害で仕事が続かない」状態から、いきなり就労移行支援へ進むと、また同じパターンを繰り返してしまうことがあります。まず半年〜2年で自分の特性と必要な配慮を言語化し、そのうえで進路を選ぶ——このステップを踏める場が自立訓練です。
「自分は対象になるのか」「費用はどれくらいか」「どう申し込むのか」——対象者・利用料金・利用開始までの流れは、関連ページで詳しく紹介しています。診断を受けていない方が利用できる場合もあります。まずは見学・相談から始められます。
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―自立訓練と就労移行支援の違い|比較表で対象・期間・選び方を解説
ご家族が発達障害のある本人とどう関わるか
ご家族の立場で読まれている方も多いと思います。「どう声をかけたらいいのか」「見守るべきか、動くべきか」——正解が分からないまま、ご家族自身も疲れてしまうことがあります。ここでは、関わり方の手がかりを3つ紹介します。
「もう少し頑張れば」とは言わない
ご家族から見ると「あと半年我慢すれば慣れたのに」と感じることがあるかもしれません。ですが、続かない背景には特性レベルの理由がある場合があり、努力で乗り越えるよりも、環境を変える・配慮を得る・支援を活用するほうが現実的なケースは少なくありません。「頑張りが足りない」という言葉は、ご本人の自責をさらに強めてしまうことがあります。
相談先を一緒に増やす
ご家族だけで抱え込まず、医療機関・支援機関・自立訓練事業所など、複数の相談先と並行して話すことで、選択肢を整理しやすくなります。「次の仕事を探す」よりも先に「相談先を増やす」ことから始める選択肢もあります。「見学に行く気力もない」という段階でも、まずはご家族だけの相談から始められます。
ご家族自身の休む時間も確保する
支える側にも限界があります。ご本人の状態が気になって眠れない、自分の予定を後回しにし続けている——そうした状態が続くと、ご家族のほうが先に動けなくなってしまいます。ご家族が休む時間を持つことは、ご本人を放り出すことではありません。長く関わり続けるために必要な時間です。ご家族向けの相談窓口や家族会もあるので、抱え込まずに使ってみてください。
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―大人の発達障害と自己肯定感|下がる5つの背景と10の対処法
エンラボカレッジ(自立訓練)で取り組むこと
続けられるかどうかは、本人の特性と職場環境の組み合わせで決まる——記事の前半で見たとおりです。自立訓練は、その「自分の特性」を時間をかけて整理できる場です。ここでは、エンラボカレッジで約2年かけて取り組む内容を、カリキュラムの流れ・プログラム・卒業時に持ち帰るものの順に紹介します。
4ステージのカリキュラム
「発達障害で仕事が続かない」状態から抜け出すため、当事業所では約2年かけて4つのステージ(クール)でステップアップしていきます。
- ステージ 1(1〜6ヶ月): 自分を知る・学ぶ
- ステージ 2( 7〜12ヶ月): 学んだことができる
- ステージ 3(13〜18ヶ月): 学びを応用出来る
- ステージ 4(19〜24ヶ月): 自信を持ち次に進める
まずステージ 1では、ご自身の特性(ADHD的・ASD的・LD的の偏り)・生活リズム・感情の波・対人パターンを見える化し、「自分を知る・学ぶ」ことから始めます。
続かない原因に対応する8つのプログラム
エンラボカレッジでは、感情学/コミュニケーション/My Lab./アクティビティ/Life Lab./ソマティック Lab./Social Lab./スキルアップの8つのプログラムを通じて、続けるための土台をつくっていきます。
卒業時の独自成果物『自分/支え方マニュアル』
自立訓練の卒業時には、My Lab.プログラムで作成した『自分/支え方マニュアル』を持ち帰れます。これは、ご自身の発達特性、得意・苦手、必要なサポートを言語化したオリジナルの資料です。
次の職場で「自分の取扱説明書」として配慮を依頼するときに使える
家族・友人・同僚に自分の凸凹を理解してもらうときに使える
落ち込んだときに、立て直しの指針として見返せる
「発達障害で仕事が続かない」原因の多くは、自分の特性を自分自身が言語化できていないことに関係している場合があります。マニュアルとして手元に残しておくことで、次の職場でも再現性のある働き方に近づけます。
卒業後の進路は一人ひとり違う
エンラボカレッジの卒業先は、次のように多様です。
- 就労移行支援事業所で次のステップへ
- 一般企業への就職(一般就労)
- 休職中の職場へ復職(リワーク的な活用)
- 大学・専門学校への復学・進学
- 就労継続支援A型・B型の利用
ここで大切なのは、「働くこと」をあきらめる必要はない、ということです。就職に進む方もいれば、就労移行支援でもう一段準備を重ねてから就職する方、復学してから働き始める方もいます。訓練を始める時点で進路を決めきらなくてよく、自分を整えながら決めていける点が、就労移行支援との違いです。
仕事が続かなかった3名が次の一歩に進むまで
実際にエンラボカレッジを利用された3名が、どんな状況から、何に取り組み、どこへ進んでいったのかを紹介します。年代も特性も違う3名ですが、いずれも「自分の状態を言葉にできるようになった」ことが転機になっています。
※以下は自立訓練(生活訓練)エンラボカレッジを利用された方の支援事例です(医学的な症例研究ではありません)。
事例1:【ADHD・30代】就労移行支援後も仕事が続かなかったケース
利用前の状況: 就労移行支援を経て就職したものの、ケアレスミスや段取りの難しさが重なり、また仕事が続かなくなってしまいました。「自分は何をやってもダメだ」と感じ、次の一歩を踏み出せずにいた状態でした。
エンラボでの取り組み: 自立訓練で、まずは自分の特性と生活リズムを見える化することから始めました。感情学やMy Lab.を通じて、つまずきの起きる場面と、自分に合う工夫を一つずつ整理していきました。
その後の一歩: プログラムを通して他人の気持ちを知り、自分の気持ちや自分に必要な配慮を言葉にできるようになり、支援を受けながら次の働き方へと進んでいきました。
関連ページ
―就労移行支援後に仕事が続かず…ADHDの私が自立訓練で感情コントロールを身につけ、安定就職を実現【エンラボストーリー】
事例2:【うつ・ADHD・40代】疲れきって働けなくなっていたケース
利用前の状況: うつとADHDの特性が重なり、心身ともに疲れきって働けない状態が続いていました。40代という年齢から、再スタートへの不安も大きい状況でした。
エンラボでの取り組み: 生活リズムを整えることを土台に、自分の特性と必要な配慮を少しずつ言語化していきました。焦らず段階を踏むことで、働くための土台を整えていきました。
その後の一歩: 「不調が完全になくなるのが理想だが、避けられない不調にどう備えるかが大事」と考えられるようになり土台が整ったことで、安定した就労へと進んでいきました。
関連ページ
―うつとADHDの40代が自立訓練で土台を整え安定した就労へ【エンラボストーリー】
事例3:【ASD・うつ・20代】困りごとが周囲に伝わらなかったケース
利用前の状況: ASDとうつを抱え、「困っているのに伝わらない」もどかしさを感じていました。自分の状態を理解してもらえる場所が見つからずにいた状態でした。
エンラボでの取り組み: コミュニケーションやSocial Lab.を通じて、自分の特性を整理し、相手に伝える練習を重ねました。少しずつ「理解してもらえる」経験を積んでいきました。
その後の一歩:「言葉にしてもいいんだ」と気持ちを素直に開示できるようになり、自己理解と人への安心感が深まり、自信につながっていきました。
関連ページ
―ASDとうつで“困っているのに伝わらない”私が、自分を理解してもらえる場所に出会った【エンラボストーリー】
発達障害で仕事が続かないことに関するよくある質問
Q1. 発達障害だと、仕事は何年くらいで辞めてしまうものですか?
厚生労働省「令和5年度障害者雇用実態調査」では、発達障害のある方の平均勤続年数は5年1ヶ月で、身体障害(12年2ヶ月)・知的障害(9年1ヶ月)と比べると短く、精神障害(5年3ヶ月)とはほぼ同水準です。ただしこれは平均値であり、実際の勤続年数は働く環境や配慮の有無によって幅があります。大切なのは「何年で辞めたか」よりも、「自分に合う環境・配慮のもとで働けているか」です。合う環境では長く働き続けている方もいます。
Q2. 何度も転職を繰り返しています。転職回数は不利になりますか?
転職回数を気にされる方は少なくありません。採用の場面で回数が見られることはありますが、回数そのもの以上に、「なぜ辞めたのか」「次は何を基準に選ぶのか」を説明できるかが大切になります。回数を減らすことを目標にするよりも、「次に続けられる環境を選べているか」に視点を移すと、選択がぶれにくくなります。
Q3. ADHDとASDで「続かない理由」はどう違いますか?
大まかな傾向として、ADHDではケアレスミスや段取りの難しさ、衝動的な判断が背景になりやすく、ASDでは暗黙のルールの読み取りづらさ、急な変更への対応、感覚過敏が背景になりやすい、という違いがあります。ただし、両方の特性を併せもつ方もいて、はっきり分けられないこともあります。詳しくは本記事の「ADHD・ASD・LD|特性別の「続かない原因」」をご覧ください。
Q4. 仕事を辞めたいです。辞める前にできることはありますか?
退職だけが選択肢ではありません。部署異動・時短勤務・配慮の申請・支援機関への相談・休職など、退職以外の手段を先に検討してみてください。とくに心身が疲れきっているときは、勢いで決める前に、主治医や相談先と一度話してみることをおすすめします。
Q5. うつっぽくなってきました。続けるべきか休むべきか分かりません。
気分の落ち込みや不眠、朝に体が動かないといった状態が続いているときは、自己判断で「続ける/休む」を決めず、まず医療機関に相談してください。続かないことが二次障害につながっている可能性もあります。専門家の評価を受けることが大切です。
Q6. グレーゾーン・診断なしでも支援は受けられますか?
診断が確定していない方、複数の特性が重なっている方、グレーゾーンとされている方も多くいらっしゃいます。自立訓練などの福祉サービスを利用するには受給者証が必要です。診断書が必須かどうかは自治体によって運用が異なり、医師の意見書で代替できる自治体もあります。診断未取得でも、生活上の困りごとを示すことで利用できる場合があります。くわしくはお住まいの市区町村の窓口や、見学先の事業所にご相談ください。
Q7. 何度も転職していて、もう手遅れではないですか?
手遅れということはありません。30代・40代から自立訓練を活用して、安定した働き方に近づいた方も多くいらっしゃいます。年齢や転職回数よりも、「これから自分をどう整えていくか」という視点で考えてみてください。
Q8. 「すぐ就職したい」のですが、自立訓練は遠回りですか?
「すぐに就職したい」方には、自立訓練よりも就労移行支援のほうが向いている場合があります。自立訓練は「いったん立ち止まって自己理解の時間を取りたい」方に向いています。ご自身の状態によって、合う制度は変わります。どちらが合うか分からないときは、見学・相談で一緒に整理することもできます。
「発達障害で仕事が続かない」のまとめ
発達障害(ADHD・ASD・LD)で仕事が続かない背景には、特性レベルの理由と環境側の理由が絡み合っています。
「続かない自分(家族)」を責めるより、まず「いつ・どの場面で・何につまずくか」を書き出し、自分に合うやり方と環境を見つけていくことが、次の一歩につながります。
今の職場で続けられそうな方は、5つのステップで環境を整えていきましょう。
一方、すでに疲れきっている方や「もう繰り返したくない」と感じている方は、休職中であればリワーク、再就職を急ぐなら就労移行支援、まずはじっくり体調や生活を整えたいなら自立訓練(生活訓練)など、ご自身の状態に合った支援制度を活用することが大切です。
なお、自立訓練(生活訓練)は、休職中の方が復職を目指して利用できる場合もあります。
生活リズムの立て直しや体力・集中力の回復に時間を使えるため、「リワークの受け皿が地域にない」「休職期間はあるが何から始めればいいか分からない」という方の選択肢になります。エンラボカレッジでも、休職中の方にご利用いただけます。
ただし休職中の利用には、雇用先企業の意見書・主治医の意見書・相談支援事業所の理由書が必要で、企業や医療機関による復職支援、障害者職業センター等の利用が難しいことが前提になります。利用できるかどうかはお住まいの市区町村の判断になるため、見学・相談の際にお尋ねください。